Rolleiflex 2.8F(Planar)

 〜 優しい“紳士”の微笑み 〜
    


 TLR(二眼レフ)の最高峰、ローライフレックス。中でも2.8Fと3.5Fという2つの“F”は、その“王座”に君臨するモデルと言って差し支えないでしょう。ちなみに2.8Fの搭載レンズは80mm f2.8、3.5Fは75mm f3.5であり、それぞれにCarl Zeiss社製Planar(プラナー)のモデルと、Schneider社製Xenotar(クセノタール)のものとがあります。本モデルはプラナー搭載モデルです。



 ローライフレックスは、ステレオカメラから派生したものです(ステレオ写真−撮影角度の異なる2枚の写真を同時に撮影し、専用のスコープを通して立体画像を楽しむもの−は、当時の一般家庭に於ける代表的な娯楽だったそうです)。

 独・フォクトレンダー社出身の2人、Paul FrankeとReinhold Heideckeが興したFranke & Heidecke社が、6×6版(127・120)ロールフィルムを使用するステレオカメラとしてヒットさせた「ロライドスコープ(Rolleidoscop)」の、次の主力商品として開発したカメラ。それは、横長ボディのロライドスコープから撮影レンズを一つ取り外し、ボディを縦に使って上方から覗き込み撮影するスタイルのTLRでした。ロール(roll)フィルムを使用するレフレックス(reflex)カメラ、ということでRolleiflexと名付けられ発表されたのが“オリジナル”(1929年)です。これは当時既に廃れていたTLRというスタイルが、ロールフィルム使用の小型軽量カメラとして復活したことをも意味していました。

 その後のローライフレックスは、進化の過程でクランク式のフィルム巻上げ機構やセレン露出計を採用し、最大の特長と言える「オートマット」(ロールフィルムの1コマ目で自動的に巻上げを止める)の仕組みを完成させ、デザイン・使い勝手の面でも数々の改良を重ねて、このF型に至ったと言えます。2.8Fは3.5Fから2年遅れて1960年に登場しましたが、ローライフレックスは正に円熟の時期にあり、2.8Fは高級二眼レフというカテゴリの象徴とも言うべきモデルとなりました。



 2.8Fを実際に手に取ってみると、何より驚かされるのがそのファインダー像の美しさ。両方の眼でフードの奥の大きなスクリーンを覗き込むと、日常の何でもない風景でも、やや幻想めいた立体的な像となって、そこに映し出されます。“その南の島の一日は、僕のスクリーンの中で、潮風といっしょにゆっくり流れていった”なぁんて調子で(笑)、小説が書けてしまいそうな気がします。

 実際、ローライフレックスで撮影するリズムは、とてもゆったりとしています(いや、電光石火の如く行っても、勿論一向に構わない訳ですが)。

 適度な重みの感じられるクランクを半回転させてフィルムを巻き上げ、戻してシャッターをチャージ。フードを覗き込みながらフォーカシングノブを送ってピントを合わせると、ぼんやりとしていた風景が、擦りガラスの中にくっきりと浮かび上がってきます。両手で捧げ持つようにホールドしたボディに押し込むようにレリーズすると、“チャッ”と微かなコンパーシャッターの音。四角く無骨にも見える黒いボディは、大柄な風貌に似合わず、実にさり気無く一瞬を切り取ってしまうのです。



 TLRというスタイルは、35mm一眼レフに慣れた目からすれば非常に“特異”なものでしょう。でも、ローライフレックスは単にクラシックというだけでなく、とても威厳に満ちていながらどこか優しい表情を、レンズを向けた人に見せてくれるようです。ローライフレックスで写真を撮る・或いは撮られる時間。その表情は、あたかもトラッドなジャケットを自然に着こなした熟年紳士が“ゆっくり行こうよ”と、時間に追われるように生きる現代人に語り掛けてくれるかのような、優しい微笑み…そんな風に思われてなりません。



〜 Specifications 〜

形式         
画面サイズ
撮影レンズ
ビューレンズ
シャッター形式
シャッター速度
絞り
フィルム巻上げ
フィルムカウンター
セルフタイマー
ボディサイズ
重量
レンズシャッター式二眼レフカメラ
6×6cm
80mm f2.8(Carl Zeiss Planar or Schneider Xenotar)
Heidosmat 80mm f2.8
Synchro-Compur MXV/CR0
B・1〜1/500秒
5枚羽根 最小絞りf22
クランク式
自動復元順算式
内蔵
105(W)×148(H)×112(D) mm
1220g