Leica M3 vs Nikon SP

   〜 日・独、頂点の比較 〜


 生まれから言っても、どうしてもSPとM3の比較をしたくなるのが人情というものでしょう。以下、主観的に相違ポイントを比較してみましょう。




〜 ファインダー 〜

 M3の最大の特徴と言えば、ファインダーです。ほぼ等倍(0.91倍)で、明るく見易く、また実像式で距離計像がファインダー像内にしっかりとした境界を持って定位するため、距離計のフチを使っての上下像合致式(スプリットイメージ)のピント合わせが可能です(二重像合致式の約3倍の精度を持つとされます)。また、装着したレンズに合わせてブライトフレーム(90・135mm。50mmは常時表示)が自動的に切り替わるのは極めて便利です。


 一方のSPのファインダーは等倍で倍率ではM3を若干上回りますが、接眼レンズ前に距離計像を結ばせない虚像式であるため、距離計像の輪郭はぼんやりとしています。このためピント合わせは基本的に二重像合致式でしか行えません。ファインダー像全体はM3よりやや暗く緑がかった感じで、距離計像も黄色がかっています。また、視線が光軸からずれた場合に距離計像が見にくくなりやすいのも確か。従って、単純に「ファインダー像の見易さ」を比べれば文句無くM3に軍配が上がります。


 ただ、やや暗めの視野内に、丁度バルナック型ライカのコントラスト・フィルタを付けた様に見える距離計像は意外に見易く、焦点距離のファインダーカバー範囲が短焦点(広角)側にも広げられていることを考えれば、実用上はSPのファインダーも使い易いものです。


 なお、ブライトフレームは巻戻しクランクと同軸に設置されたダイヤルで切替える手動式(50・85・105・135mm)です。長焦点になるにつれフレームの表示が増えることになり煩雑な感じもしますが、“常に一番内側のものを使う”と思えば特に問題はありません。但し、レンズ交換時に切り替えをうっかり忘れるというリスクはあります。ちなみに有効基線長はSPが60mm、M3が62.3mmで、精度面のスペック上は殆ど差がありません。


 また、SPではメインのファインダーの他に広角用のファインダーが隣接して設けられています。一般に「夫婦(めおと)ファインダー」と呼ばれる所以です。広角用は28・35mmに対応しており、M3が3種類の焦点距離(50・90・135mm)にしか対応していないのに対して、SPでは6種類にも対応(28・35・50・85・105・135mm)と、等倍のファインダーを維持しながら単体(外付け)ファインダーなしでの多種対応となっている点は大きな特長です。広角用ファインダーは倍率が低く(0.34倍)像の湾曲も多少認められます。とは言え、ごく僅かな視点の移動で視野の確認ができるのは、ピントを確認しながらの広角撮影には結構便利なものです。ただ、RF機+広角でのスナップでパンフォーカス的に撮影をするにはピントをさほど重視する必要は無いので、実用上は外付けファインダーを使用した方が迅速なスナップが出来る、という考え方もあります。この辺は好みと使いこなしの問題でしょう。




〜 外観・操作 〜

 操作上での相違点と言えば、先ずはフィルム装填です。

 SPの裏蓋が底と一体になって外れる方式に対して、M3以降全てのM型ライカでは底蓋は独立して外れ裏蓋の一部のみが開く方式です。現代のカメラの裏蓋が蝶板で横に開閉するのと比べれば、何れも本体から外れる部品があるために手間が掛かる点は同じです。ボディシェルを前後一体構造としているM3の方が精度保持には有利ともされますが、フィルムの装填状態を直視的に確認しにくいため、慣れを必要とすることは確かでしょう。
 

 また、M3では巻取りスプールを外してフィルム先端を差込む方式のため、少々装填には手間が掛かります。



  巻戻し機構(撮影後にフィルムをパトローネ内に巻戻すためのもの。最近のAF一眼はモーターによる自動化がされているので、そもそも用意されていないものが多いです)も、M3の引上げノブ方式に対してSPではS2以来のクランク式となっていて、文句なくSPの方が迅速な操作が可能です。M型ライカでも、M4以降はクランクが採用されることになります。



 マウントは何れもバヨネットですが、M3の4つ爪に対して、SPは3つ爪で、内と外にそれぞれ爪を備えるダブルマウントです。また、SPはボディ側にヘリコイド機構(距離に応じてレンズを繰り出す仕組み)を持つため、内爪を使って装着する標準レンズはその全体がボディ側のヘリコイド機構と一緒に回転することでフォーカシングを行うので、レンズ側はシンプルな構造となります。これらの点はコンタックスのRF機と同等ですが、フランジバックが異なるため、両者のレンズは基本的に共用できません。
 


 ピント合わせの操作は、M3は当然レンズのヘリコイドリングを左手で回して行うのですが、SPはやはりコンタックス式にボディ側に焦点調節ギアを持つため、右手中指でもフォーカシングが行えるのが特徴です。例えば右手だけでカメラを操作することを想定(例えば、頭上にカメラを高く掲げてノーファインダーで撮る)すれば片手で操作が完結するSPが有利とも言えますが、これはよほど特殊な場合でしょうし、ノーファインダーでピント操作をすることにどれ程の精度が期待できるのかは不明です。個人的には、やはりM3同様左手でレンズを掴んで回す方が好みではあります。

 ついでにレンズの絞りリングの操作について触れると、Sシリーズのレンズは絞り指標が鏡筒と共に回転するものが多く(全て?)、広角レンズ系でレンズ前面に指標のある(ライカLレンズの頃に似た)旧式なタイプでは余り不自由を感じないのですが、50mmを始め首絞りとなっているものでは、絞り指標がレンズと一緒に回ってしまうので却って使いにくいのが難点です。この点ではライカMレンズの方がかなり操作性に優れていると言えます。


 シャッターダイヤルは何れも一軸不回転式で外付けの露出計との連動が可能であり、秒時もB・1〜1/1000と同スペックです。但し幕速はSPが速い様で、スピードライト同調速度はSPの1/60以下に対してM3は1/50以下ですが、実用上の差はないでしょう。本SPはシャッター幕がチタン製の方なので布幕のM3とは材質が異なりますが、幕速とは関係ありません。ただ、RF機には一眼レフと異なりミラーがありませんから、うっかりレンズを太陽に向けてしまった場合にシャッター幕破損の惧れがあります。その意味ではSPのチタン幕の方が有利だとは言えるでしょう。ニコンはチタンの採用に積極的で、銘機・Fでシャッター幕に初採用し、その登場後は並行生産されたSPでも幕をチタン化しています。


 レリーズボタンの位置は、SPではボディの裏蓋側に寄っています(スプロケットと同軸)が、M3は巻き上げレバーと同軸に設置されており、配置としてはM3の方が一般的でしょう。SPの配置が変わっているのは、Sシリーズが焦点調節ギアを備えており右手中指でこれを操作するため、人差し指は必然的に後ろに行くためと思われます。


 形状面では、SPがボタン上面が平らでケーブルレリーズはボタンを包み込むように基部(受け皿)にねじ込むのに対し、M3はレリーズボタンにネジ穴があってここにケーブルレリーズをねじ込む形で、これもM3の方が一般的です。なおSPでは受け皿がスプロケットギアの開放レバー(巻戻し時に切替える)を兼ねています。M3でこれに相当するのは、ボディ右前面のレバーです。

 ややマニアックな話になりますが、SPではフィルム巻き上げ時にスプロケットの回転に連動してレリーズボタンが回転します。これがはっきり分かるようにレリーズボタン上面に赤指標が偏心して設けられており、スプロケットの開放レバー(レリーズ受皿)との併用で多重露光を行うことが出来ます。