季節外れの 花ごろも? (お侍 習作101)

        *お母様と一緒シリーズ

 


 一年かけた辛苦の結実、実りの秋をたまなしにして来た悪鬼たち。鋼の機巧躯を武装で固め、力づくで襲い来る“野伏せり”どもへの迎撃準備に、住人総動員で勤しんでいる神無村。日々の一刻たりとも無駄には出来ぬという態勢ではあったれど、それでも 四方に広がる田圃を見渡せば。金色に輝く稲の穂たちが、重たげな頭を風に揺らして海のよう。ススキの銀穂が揺れ出すまでには、まだまだ間があるものの、秋の気配の訪れは明らかで。周辺の野や山の装いを、瑞々しかった緑から、茜や金紅、色鮮やかな綾錦へ塗り替えんとしてもいる。

 「といっても、体を動かせば まだまだ小汗をかいてしまいますが。」

 助っ人…というよりも主戦力として、どうかご助力をとお越しいただいたお侍様たち。遠い大戦でも大きに立ち働いた方々ゆえに、戦さの要領というものも重々心得ておいで。村そのものを守りの固い要塞にせんと、物見のある砦や石垣にて固めた堡をあちこちへ設置し。武装だって用意しましょうぞと、半端な規模じゃあない巨大さの弩を建造中。村人たちへも参戦をと呼びかけて、造成関係の力仕事とは別口、戦力としてより士気を高めることの方が主眼目だろう、弓を操る術の手ほどきをしてもいて。迅速身軽で、飲み込みも素早く、住人たちの間に入っての、そんなこんなな戦さ支度のその合間。自分たちの日々の生活の補助のほうまでも、遺漏なきよう、きっちりと整えておいでなのが。皆の惣領、カンベエ様の傍らにあって、目配せだけで総意を酌める、そりゃあ頼もしき元・副官殿。槍使いのシチロージ殿という御方。あちこちに散らばった作業場の進捗調整や作業指揮は勿論のこと、お仲間の集う詰め所のあれこれ、口にされるお茶の支度や、囲炉裏の火の番、着替えの補充に、消耗品の管理。砂ぼこり一つなく磨き上げられた寝間に、日なたで干した寝具が待ち構えているなどなどと。微に入り細に入りという級にて、至れり尽くせりを極めておいで。さすがに、

 「そのくらいは私たちが致します。」

 誰にでも出来るような瑣末なことへなど心砕かれず、どうか戦さ支度へ集中なさってとでも言いたいか。水分りの巫女様なぞは恐縮しもってのそれでも生真面目に、そんなお言いようをなさるほど。だがだが、それこそ人生経験の差が出るというものか、

 「ですがねぇ。
  年頃のお嬢さんや妙齢のご婦人方に、
  むくつけき男どもの下履きなんぞ、触らせるワケにはいきませんし。」

 厭味のない笑顔でにっこり微笑ってはおられたが、結構 明け透けな言いようをなさってのクギを刺したりしたものだから、お食事以外のお世話は要りませんとの意をさりげなく通じさせたお人だったが、

  ―― そこまで言うのは勘ぐり過ぎかもしれないが。

 瑣末なことほど日々の有り様を素直に反映してもおり、例えば…替えの手ぬぐいに目尻を拭った跡が多いが、もしやして体調を崩しておいでではないか、とか。そういや昨日はとうとう着替えに来てないみたいだが、またもや根を詰めてやおられぬか、とか。一手に管理しているほうが、変化変調に気がつきやすいからと、それで掌握していたいとなさっておいでなのかもしれず。そのような深い洞察を呈したゴロベエ殿へ、

 『それと気づけないようでは、私なぞまだまだ奥行きが甘いのでしょうね』

 自分は ただ単にこまごましたお仕事がお好みの性分だとしか思ってなかったと、反省してか俯いてしまった若侍殿よりも、すぐの間近にいるくせに。その実…もっともっと純粋な把握しかしないらしいお人がいたりして。





  ◇  ◇  ◇



 「はい、これで終しまいですね。」

 今日はまた随分といいお日和だからということで。寝具の敷布をまとめて洗い、裏庭にロープを張り巡らせての干し出した大仕事。さすがにこれは一人でこなすには荷の大きかっただろう代物だったが、洗うという箇所では小さなお嬢さんお二人にご尽力いただき、大きなタライの中、裸足で駆け回っていただいての踏み洗いで難なくしおおせ。干し出しには、いつもの助っ人、次男坊が立ち寄ったのでお手伝いをお願いし。綱をピンと張りの、大きな晒し布を幾枚も広げて留めのと、互いの衣紋がその裳裾をあおられつつの、悪戯な風との格闘になりながら、それでもあっと言う間に片付けてしまわれ、

 「やはり頼りになりますね、皆様のお手は。」

 どっちかというと足を貸したコマチやオカラが、ちょっぴり誇らしげに照れ笑いをしたのへは。蜂蜜をかづらの糖蜜で練って煮詰めて柔らかく固めた小粒の飴を、内緒のご褒美にと小さなお口へそぉっと放り込んで差し上げ。さあそれではお友達と遊んでいらっしゃいと送り出し、

 「キュウゾウ殿も、どうぞ。」

 さすがにお子たちと一列に並ばせてというのは体裁が悪かろうと思ったか。二人を一緒に見送ってから、金髪痩躯の寡黙な若者へも、あらためての手づから琥珀色の飴玉を差し上げて。ちょいと押し込んだその拍子、大好きなおっ母様のほのかに暖かな指先が唇へ触れたのへ、

 「〜。////////

 ぱぁっと真っ赤になったキュウゾウ殿だったのへ、
“さすがに このお年で甘いものが好きだというのは恥ずかしいのかしらね”
などと、はっきり言って大きく方向間違えて微笑ましいなと感じておいでの、相も変わらず微妙に天然なシチロージさんなのは さておいて。
(苦笑)

 「さあ、次は。」

 さすがは働き者のおっ母様。まだまだ休むつもりはないか、詰め所へ入るとそのまま次の間へと向かい、壁に作り付けとなった引き戸の棚を開け、行李の蓋を幾つか開け閉め。塗り薬の補充は朝のうちに済ませたし、ヘイさん謹製 雨に濡れても消えない松明も各家へ配り終えてるし。ああそうだ、縁起でもないかも知れないが、それでも手当て用の晒し布を多いめに用意しといてもらわねば。もしも向こうが数で押して来たなら、武力や戦さ慣れを考えずとも、どうで無傷では済まなかろう。

 “とはいえ、怖がらせることなく、どうやって伝えたもんでしょうかね。”

 百姓は非力ゆえに臆病だとはキクチヨの言いようだったが、そのせいか何事も悪いほうへと考える性分の者が少なからずいるのは重々承知。楽観的に構えてのんびりしておれる状況ではないから尚更のこと、指揮を担う自分たちの物言い一つで、恐慌を招く引き金にだってなりかねない。ご婦人方へ、矢作りや縄綯いなどの作業の暇々を見て、お天気がいいうちに洗い物は済ませといて下さいネなんてな声をかけておくべきか?

 “…それでは薮から棒ですよね。”

 それでなくとも、お家のことは二の次と放っぽり出していただいてる最中だってのに。戦さ支度の方が先であろうがと、それこそカンベエ様だって眉を顰めてしまわれよう。では、キララ殿へ告げての伝えてもらう…とか?

 “でもねぇ、あのお人はどうも肩に力が入るから。”

 杞憂にされませぬようにとの注意を授けておけば、それなりに頑張ってのこと、生真面目で四角い伝令へとはしなかろうけれど。それでも、巫女様が布を用意せよだなんて仰せとは はて?と、やはり皆様から勘ぐられてしやしまいか。

 “………う〜ん。”

 要らない刺激はしないように運ぶにはどうしたもんだかと。棚と向かい合っての小首を傾げ、一時停止状態になっていたおっ母様。そんな隙を衝くように、

  ――― ふわり、と。舞い降りた影ありて。

 窓は小さな刳り貫きの連子窓しかないお部屋。それでもそのつやが蜜色に映えている、鳥の子色の金のお髪
(おぐし)を きゅっと絞っての結い上げた、特徴ある三本まげを隠すよに。頭の上からおおいかぶさってきたものがあり。

 “え? え?”

 侍ともあろう者が いとも容易く不意を突かれたことへも含め、これへはさすがに狼狽
(うろた)えたシチロージだったのだが。片手を上げて咄嗟に振り払おうとしかかったその所作の中、すぐの横手にあったのが…見慣れたお顔。

 「…キュウゾウ殿?」

 他のお人が見たのなら、寡黙な無表情との違いが判りにくい、感情薄いお顔ではあったれど、

 「何で、微笑って…。」

 おいでなんですか?と、だからこそ手が止まったおっ母様へは、
「あ…。」
 彼の撫で肩までを覆ってしまった“何か”の正体が、その答えを出してくれた。羽根か霞か、重さなどほとんど無いかのような、薄い薄い絹の布。周囲の縁をぐるり、ほつれないよう きちんと処理された、

 「これって、かづきじゃないですか。」

 頭や肩にかける“被
(かず)く”から転じたもののこと。日よけや はたまた公式の席などでお顔を隠すためにかぶる、主に軽い生地の布のことをいい、頭から肩へまで、そりゃあなめらかな曲線を描いてかかっているそれは、少々くすんだ色合いながらも、純白の一枚布だったので、

 「あ、布を探して下さったのですね。」
 「…。(頷)」

 家事好きな性分のお人へ どれほど魅力的な空気を醸しているからなのか。棚に向かい合っての ぼんやりしていた母上は、その手へ真っ白い布をお持ち。そっか、それを必要となさっているのだと気がついて。自分もと思い立ったらしい次男坊。隣りの囲炉裏のある板の間から覗ける、こちらの居室の天井板の上、そこも納戸らしい空間へひょいと登って見て来た彼だったらしく。

 「…。」

 戻って来てのあらためての正座をなさったお膝の前へ、どぞとすべらせるようにして差し出したのは。これまた陽に晒された歳月をどれほど染ませたそれなのか、薄汚れた飴色になっている桐の小箱。そこに入っていたらしく、蓋をどけられた中には別の布がまだ入っている様子。

 「これ…何処にありました?」

 ここの中には一通り、棚や納戸の全てへ眸を配った筈なのに。なのに見覚えがない代物なのでと訊いたれば、

 「〜。」
 「あっ、いえ、叱っているんじゃありませんて。」

 ほのかな瞬きの気配を呈したのを見ただけで、この、鬼でも斬るだろ冷徹な剣豪殿が、びくびくっと怯んでたじろいだのだと判ったところがまた、とんでもないツーカーなおっ母様なのは…今更な話なのでスルーして。
(おいおい) 何となりゃ血縁者でも問答無用で斬って捨てるだろ、南軍にその人ありきと謳われた鬼神“紅胡蝶”殿が。叱られたと感じたその途端、速攻で怯むほど、お慕い申し上げているおっ母様だったから。声をかけたり肩に手を置いたりして、考えごとのお邪魔はしたくないけれど、でもあの、見つけたよというお知らせはしたくてのお茶目だったらしく。叱ってなんかいませんよと、青玻璃の眸を細め、生身の方の白い御手延べ、いい子いい子と頬を撫でての促せば、

 「…。」

 あのねと紅の双眸が見上げたのが天井裏であり、それでシチロージにもやっとの得心がいった模様。

 「そうでしたか。」

 相変わらずに かあいらしいお人だと、くすすと微笑ったおっ母様だったものの、

 「ですが、これは勿体ないから使えませんね。」
 「???」

 掛けられたそのまま、真白な頬に触れそうに垂れたかづきの縁を、きれいな指先で そおとしごくように摘まんで撫でて。
「此処に住まわっておられたは、結構な物持ちの方だったらしいですね。」
 おっ母様がつくづくと感心したほどだったのは、

 「これ、正絹の極上品で作った婚礼用の衣裳ですよ?」

 ほら、だいぶ痩せてますがこっちは綿が入ってるから打ち掛けかな?と。箱の中に収まってる方の布を手にして、そろりと引っ張り出し、自分のお膝の上へ丁寧に広げて見せる。ここ神無村の皆様の衣裳とは、しゃれではないが微妙に意匠の異なる型のもの。上背があって御々脚も長い、そんなシチロージのお膝や腿を覆い尽くして なお余っての、随分と裾長な打ち掛けの方には、鶴だの松竹梅だのというおめでたい図柄が織り込まれてもあり。しかも素材が、相当な金を積まねば買えぬだろうランクの正絹。

 「他所の土地からお輿入れして来たお嫁さんが、
  その折にお召しになられたのを取ってあったのでしょうにね。」

 先の大戦よりずっと前に、血縁が途絶えたという話の家。最後の家族は他所の土地へ越して行ったというけれど、そんなご一家の忘れ物がそのまま、荒らされもせで こうして残っていようとは。ここの皆様がどれほど善良な村人なのかも測り知れるというもので。

 「………。」

 普通の生活の、普通の幸い。華美でもなく、刺激もなく、でも、それが一番だと欲もかかず。いつからなのかも判然としないほどの昔から、それだけを繰り返して来た米作にだけ勤しんで来た、小さな小さな平和な村。お庄屋さんだか名主さんだか、ここいらで随一だったのだろうお大尽のお屋敷へ。綿帽子をかぶってお輿入れして来た花嫁さんは、桜の中を来たのかな、それともこの錦景に迎えられて?

 「………。」

 そんなこんなへ想いを馳せて、心和ませていたシチロージ。少しほどうつむいて…目許も伏せ気味にした横顔に、連子窓からの仄かな薄日が差しており。それが かづきの落とす淡い陰と重なって、何とも言えぬ優しい趣き。

 「〜〜〜。////////

 あんまり儚げな印象なのへ。お膝を揃えたまんまにて、ほやりと見ほれていたキュウゾウ殿は、声もないままだったのだけれど。そのまた背後から立ったのは、

 「あっ、モモタロさん、お嫁様みたいですvv」
 「んだな〜。それもハンパない別嬪さんだなや〜vv」

  ――― え?

 ぼんやりしていたのはこちらの不覚。それもあってのドキィッとばかり、座ったままの姿勢で飛び上がりかかったほどびっくりしたシチロージが、何事ですかと顔を上げれば、

 「…コマチ殿?」

 先程送り出したはずの小さなお嬢さん方が、いつの間にやら戻ってらして。こちらの間との境の板戸にしがみつくようにし、その陰からお顔を覗かせておいで。思わぬ顔触れに、それも呆気顔を見られていたのへ、
「な…なんでまたっ。」
 あわわと慌てて訊いてみたれば、

 「キュウタロさんにあやとりの紐を貸してたの、うっかり忘れてしまってたです。」
 「…はい?」

 何だか意外なお返事過ぎて、意味が飲み込めないまま一時停止しかかった槍使い殿。そんなシチロージのすぐ傍らにいた、こちらさんはあんまり驚いちゃあいない双刀使いさんの、そのすぐ傍らまでを駆け寄ると、座っておいでなのをいいことに、その髪へと小さな手を延べて、しゅるり、引っ張ったのが赤い組み紐。

 “はい?”

 正面から見た彼の髪形に…まるきり変化がないあたり、どこにどのような効果があったやら。それでも、お仕事の邪魔になろうからと、彼女なりに心を砕いての結って差し上げていたらしく。それを思い出しての回収に来たらしいお嬢さんがただったらしいが、

 「モモタロさん、本物のお嫁さんみたいで凄っごい綺麗ですvv」
 「あ、や、えと、あの…。////////

 どうしたものか、いつものお軽いノリで“そうでげしょvv”なぞと調子を合わせた言いようをしておけばよかったものが…妙に気恥ずかしくなってしまったシチロージであり。きっとその原因は、

 「…。/////////

 やはりやはり慣れのない人には判別が微妙なそれながら、目許をきゅうっと細めての“似合う、綺麗”と言いたげな、誰かさんの無邪気なお顔が間近にあったせいかも知れず。しかもその上、

 「…。(これも)」

 くいくいと軽くとはいえ、お膝に広げていた打ち掛けを引っ張って見せ、まとって見せてという“おねだり”をした彼だったのへ、

 「いや、えと、あのですねぇ。////////

 それはさすがに…と言い淀んだものの、





  ◇  ◇  ◇



 わくわく・うるうるという期待の潤みに煌いていた、無垢な眼差し三人分、どうやって誤魔化せば振り切ることが出来たでしょうや。いつもの恰好の上からではあったが、立ち上がってのふわりと肩へ、純白の打ち掛けを羽織って見せれば。

 『うわ、綺麗ですvv』
 『ほわ〜。////////
 『………。////////

 衿元を軽く持つと長い裳裾を少しほどたくしあげ、肘を上げてのくるりと頭上を通してからげ。立ち姿を斜めにずらして止まって見せた、一通りの衣さばきからして堂に入ったる優美な所作・仕草だったその上に。少しばかり衿を抜いてのうなじを覗かし、撫で肩をなお引いての、いかにもな心得のある まといよう。端正なお顔は元々から、凛々しいばかりの清楚さとそれから、どこか嫋やかな艶も秘めておいでであったから。即席もいいところな衣裳だてであったにも関わらず、何とも美麗なお嫁様が降臨なさり、


 「…で、お嬢さんたちの間で
  “おままごと”ならぬ“お嫁様ごっこ”が流行ったのは
  そんな理由があったせいだったワケですね。」

 そんないきなりな風潮への顛末を、後日になってまとめて訊いたヘイハチやゴロベエが、語った…というか語らせた格好のシチロージを前にして、いかにも愉しげにくつくつと笑って見せる。軍師としては天賦の才を持ちながら、世渡りはいかにも苦手そうな御主・カンベエ様を、身を粉にしての支えたらしき副官殿。遊里で過ごした歳月の中、多少は人あしらいへの融通も身につけたつもりだったのに、選りにもよってあんな小さな和子らを前にして、体よくあしらうことが出来なかった彼であり。………根が素直と言いますか、幇間としての厚顔さも薄い塗り、実は純情なお人だったといいますか。
「〜〜〜。///////
「まあまあ。」
 不甲斐ないとでも思ったか、身を縮ませるおっ母様へ、
「そのお陰様、どこから引っ張り出して来たの、この子はと、かづきや打ち掛け代わりにしたらしい、仕舞い込まれていた晒し布が、あちこちから発掘されたそうではありませぬか。」
 それをこそ要りようだと思ってたところだったのでしょうよと、小柄な工兵殿が慰めるよに言い足してやれば、
「それはそうなんですが。」
 得られたものも大きにあることを“幸い”と思いましょうよとか何とか、お言葉が続くかと思や、
「キュウゾウ殿のお手柄ですよね。」
「それはそうなんでしょうけど…。」
 でもね、あの場に居合わせたのがコマチやオカラだけだったなら。いやですよう、こういうのは妙齢のお嬢さんが着るものですてと、もしやしたらば誤魔化せたかも。すっかり大人でおいでの筈が、あの二人よりもそういう“道理”が判らないのではなかろうかと。キュウゾウに対して、ともすりゃ失礼な部類のそんな想いがしてしまって。それでのつい、押し切り切れずに袖を通してしまった訳であり、

 “ホント、罪なお人ですよねぇ。”

 紅蓮の魂を持ちながら、どんな穢れも撥ね除けて来た強靭な白。心に疚しいところがあれば、その一瞥にて圧倒されよう、無垢で真っ直ぐなまんまの魂をしたお人。人斬りを捕まえての言いようではないかもしれないが、何故だろか、彼にはなんだかそんな印象ばかりがしてならず。そして、そんなお人に懐かれていることが、ほこほこと胸を温めてやまず、おっ母様の今一番の至福であったりし。


 「で? どんな別嬪さんになられたんですか?」
 「はい?」
 「我らにも見せて下さらねば、不公平というものでしょう?」
 「いかにもいかにも♪」
 「ちょ…なんでそうなりますかっ。」
 「さぁさ、肩へと羽織って下されませ。」
 「ゴロさん、それっ。どっから出して来ましたかっ。」
 「カンベエ殿だって見ておきたいですよねぇ?」
 「そうさの。」
 「カ、カンベエ様?」


  まだまだ平和だ、神無村。
(苦笑)





  〜どさくさ・どっとはらい〜  08.4.13.


 *俳界での“花衣”は、花見のための衣装のことなので春の季語なのですが、
  ここに出した“花ごろも”は別物なので、どか ご容赦を。
  そうなんですよね、神無村の話は秋が舞台なんですよね。
(う〜ん)

  シチ母様に逢いたくなっての
  お久し振りの神無村Ver.でございまし、
  少々勝手を忘れていたか、途中で手間取りましたが、
  座っていても違和感のするお膝もなんのその。
  終しまいには書き手まで癒してしまう、おっ母様パワーおそるべし。
(おいおい)
  目許を細めてのにっこりと、嫣然と微笑って見せたなら、
  さぞや麗しいお嫁様になったに違いなく。
  …キュウゾウ殿が、そのためにも島田倒すべしと燃えたりしてな。
(こらこら)

めるふぉvv めるふぉ 置きましたvv **

**

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