裁判官

   スキーの経験は,どのくらいですか。

      十数年,スキーを始めてからたっております。ですが,年間の滑走日

      数が30曰以上ありますので,技能検定等は持っておりませんが,ど

      んな斜面でも滑れるだけの技術っていうのは持っております。

   この事故当時,どういう滑り方で降りてたんでしょうか。パラレルターンと

   か,いろんなターン。

      比較的大き目のパラレルターンで,斜面下方に向かって通常のターン

      をしながら滑走していました。

   スピードは分かりますか。

      かなりゆっくり目だったと思います。

   例えば自転車が走るのが15キロとか20キロぐらいだと思うけども,それ

   よりは出てる。

      ちょっと自転車のスピードとの体感は分からないんですが,斜面とし

      てはかなり斜度がなくて。

   何度ぐらいの斜面ですか。

      数値は分からないんですが,この斜面は,出だしのところは少し落ち

      ているんですね。ですけれど,それが終わるとすく, もう本当に広く

      て斜度もなくて,初級コースですので,非常にゆったりとした感じの

      斜面でした。

   初級コースですか。

      はい,初級コースです。

   あなたは,ここに至るまで,どういうコースで来たんでしょうか。リフトは

   上に上がるときに,どのリフトを使ったんですか。

      名前は覚えてないんですけれど,左の,神立の一番メインのリフトな

      んですけれど,それから降りまして,プロキオンコースの初めの始点

   のところから夫と一緒に滑り降りました。先どのFさんのところ

   で×印をつけたところ,ここが,私どもは,プロキオンとボルックス

   の連絡コースだと思ってたんですが,後でパトロールの方にお名前を

   お聞さして,旧プロキオンコースっていう名前だということなんて,

   今これの証言では,私はずっと旧プロキオンコースと,そこの事故の

   起きたところを呼ばせていただきますが。その旧プロキオンコースヘ

   の曲がり角のところ,ここはT字路みたいになってるんですが,そこ

   のところで,私と私の夫は一たん一時停止をしました。なぜかという

   とそこはちょっと,先ほども言ったとおり,出だしのところが少し落

   ちてるんですね。前方がちょっと見づらいんです。なんて,私と私の

   夫は,ここのところで一時停止をして前方確認をしました。それで,

   夫はそのまま滑っていって,その後に,しばらくして,私も付近に,

   後ろから来る人がいないことを確認してから滑走し始めまして,事故

   に遭いました。

衝突のころは,ご主人は,あなたよりも下にいたわけですか。

   はい,そうです。

あなたは,その旧プロキオンコースを滑った後,ボルックスコースに出て,

そのまま下に降りていくという予定だったわけでしょうか。

   はい,そうです。

先ほど,大き目のパラレルターンで降りていったということですけれども,

回転の弧を急に変えるというようなことはあったんでしょうか。

   いえ,本当にゆったりとした気持ちで通常の普通のスピードでターン

   を,ただ単に下のほうに向かってやっていたという状況です。

あなたは旧プロキオンコースの,下から見て,真ん中なのか右なのか左なの

か,どの辺を滑ってきたんですか。

   下から見て左側です。

斜面の幅はどのくらいなんですか。

   斜面の幅は,その後,ちょっと径我が治ってから一応全部測量に行っ

   たんですが,構幅っていうのは測定できなかったんですね。人がいっ

   ぱい滑っていて危なくて。ちょっと正確な数値は分からないんですけ

   れど,比較的幅は広くて,ちょっと違っているかもしれませんけれど,

   少なくとも50メートルぐらいはある,それ以上あるかもしれません。

あなたがパラレルターンをしてきたのは,その真ん中あたりですか。下から

見て右側ですか。

   下から見て右側ですが,比較的右側で通常の滑走コース,大体衝突が

   起きたときに座ってた位置というのはよく記憶してるんですが,斜面

   の右端から10メートルぐらいのところだったというふうに記憶して

   いるんです。

斜面の上から見て右端から。

   はい,上から見て。衝突したときというのは,結構私画像が鮮明に覚

   えていまして,上を見たんですね。まず,スキーヤーって,板が脱げ

   たときっていうのは,どこに自分の板があるのかなというのを見るの

   は結構習性でして,そのときの見たときの画像をよく覚えでるんです

   が,私のいた斜面の右端から10メートルよりも,さらに斜面の中側

   に入ったところに被告の方が,そのとき右側で,なおかつ10メート

   ル以上上にいたことっていうのを,すごくよく記憶しています。

右側というのは,どっから見て。

   斜面の下から見て右側なんて,斜面の上から見ると左側。私よりもで

   すね。

あなたは,この旧プロキオンコースの下から見て右側から滑り出して,斜面

の向く方向に沿って,徐々に徐々に,下から見て左側のほうに寄っていった

という感じですか。

というよりも,もうずっと同じラインを普通に滑っていたという感じ

   です。もともと右側端といったけれど,多分右側から10メートルぐ

   らいのところから滑り姑めて,10メートルぐらいのところで,多分

   衝突が起きたんだっていう感じですね。

ただ,このコースは恐らく,あなたが一たんとまって滑り出したところは,

下から見て右側に寄ったほうだということですけども。

   50メートルぐらいあったうちの,10メートルぐらいっていう。

そこから真下のラインをたどると,ややコース右側に寄っていきませんか。

   いや,そんなことないと思う,非常に広いコースですので。

広いコースでも,斜面が,上から滑るときにねじれてるとか,右下がりとか

左下がりとか,そういうことはないですか。

   ないです。非常にまっ平で,非常に変化のない感じの。

あなたは,Aさんのことは全然見てませんね。

   はい,見てません。私の後ろから衝突されたので,衝突前の被告の方

   の滑り方っていうのは,全く分かっていません。

衝突を避けることはできませんでしたか。

   私はスキーの基本に従って,自分の滑走方法である斜面の下方に視線

   を合わせて滑走していましたので,斜面の上方,つまり私の後ろから

   いらっしやる被告のほうを,衝突前に確認することは不可能です。

先ほどから話題になっている,接触事故報告書というものがあるんですけれ

ども,これをFさんが作成するに当たって,あなたから事情を聞いたと思

うんですが,あなたはどういう説明したんでしょうか。

   私は,ともかく自分の後方のほうから,急激にものすごい力で突き飛

   ばされたんだということだけを伝えました。そのときFさんは,多

   分,その前に被告を,相手を見ましたかという質問をされたと思うん

   ですが,それに対しては先ほどお答えしたように,衝突前は見てませ

   んということを伝えました。ですので,この甲2号証については,古

   屋さんは,ずっとAさんからお話を聞いて,Aさんの証言をもと

   に全部書かれたと私は思っています。ご自身の証言から書かれた甲2

   号証なのに,裁判になって,なぜ,違うとかおっしやってるのかなと

   いう気持ちがします。

Fさんが,Aさんから事情を聞いてるところを,あなたは見てますか。

   はい。私が救護室で,こっちでF証人の同僚さんと話をしてる間に,すぐ横

   でFさんAさんが事故伏況というのをヒヤリングされて記載さ

   れてました。

Aさんは,Fさんに何て言ってましたか。

   いや,私はF証人の同僚さんとお話をしていたので内容までは知りませんが,

   特にもめるような感じもなくて,淡々とされていたように記憶してま

   す。

衝突のときのあなたの進行方向というのは,上から見たことで答えてもらい

たいんですが,右側にターンをしたときなんでしょうか,左側にターンした

ときなんでしょうか。

   私右ターン,左ターンがあんまりよく分かんないんですけれど,右足

   を山にしたときです。

左足が谷足になっているときに衝突された。

   はい。

あなたが,その事故当日ぐらいの事故後ということで考えてもらいたいんで

すけど,事故後,Aさんは,自分の後ろから来たにせよ,右のほうから来

たのか,それとも左のほうから来たのか,その辺のとこ分かりますか。

   いや,それは分からないです。

平成15年1月24日,被告との間で電話で話をしましたか。

   はい,しました。

被告は何と言ってましたか。

   この電話で被告は,スキー場での事故はお互いさまで,賠償などを請

   求する筋合いはないので,今後このことでは一切連絡するつもりはな

   いとおっしゃいました。被告の陳述害では,この電話で,被告は私に

   対して,あなたが急に出てきたと言ったと書いてあるんですが,その

   ような話はこの電話では全くなくて,終始,遊び場での事故では賠償

   責任はないんだってことをずっと主張されていました。ですので,私

   としては,交通事故の例などを挙げて,他人に怪我させた場合は,そ

   れ相応のことをしなければいけないということを,必死に説得した記

   億があります。

この事故によって傷害を負ったわけですけれども,具体的な損官等について

は陳述書等で書かれてる内容で,そのとおりでよろしいですか。

   はい。

一番苦痛をこうむったと思ってるのは,どういう点でしょうか。

   私が一番苦痛を感じたのは,実は,痛かったとかいろいろあるんです

   けれど,それ以上に職場のポジションでの変化が,私にとっては非常

   に一番大きな痛手です。この事故が起きる前っていうのは,私は部下

   が4人いまして,ちょうどチームリーダーっていうポジションで管理

   職の直前のポジション。そして,大きなプロジェクトをちょうど立ち

   上げ終わったところだったんですけれど,骨折によって長期休暇を余

   儀なくされて,そして,出張等も行けませんし,アウトプットもほと

   んど出ませんので,復帰したときにはチームリーダーの職をとかれて,

   そして部下も全くいなくなっていました。今回,それの損害っていう

   のは,全くどうやって計算していいのか分からないんで損害請求はし

   てないんですが,ご自身の不注意によって起きた事故が,一人の技術

   者を,職場でのキャリアのパスを非常に変えられてしまったというこ

      とを,少し認識していただきたいなというふうに思います。それが本

      当に一番,私にとっては苦痛なことです。

被告代理人

   衝突直前の状況は,覚えてらっしやらないということですね。

      覚えてないというより,見えないです。

   この衝突事故は,スキー開始後どの程度の時間が経過してから起こったんで

   しょうか。

      9時ぐらいに滑り始めたと思うので,2時半だったので,5時間半で

      すか。ですがその直前に,実は遅い昼食を食べてたんですね。何で十

      分休んだ後に,その一本目で,いきなりこの事故です。

甲第3号証を示す

   これはF証人の同僚さんに事情を話して,F証人の同僚さんが,それに従っ

   てマルを書いたと,印をしたということですか。

      いや,全部を聞かれた記憶はありません。比較的,こういうことです

      ねっていう感じで,ポイント,ポイントだけを聞かれて,あとはセキ

      ネさんが書かれたと思います。ですので,さっき話題になっていた,

      スノーボーダーなのにスキーヤーっていう件も,多分救護室ではもう

      スノーボード履いてないんですよね,彼は。ですから,ちょっとその

      辺で確認的に,F証人の同僚さんの思い込みというのが少し入ったか

      もしれません。

甲第2号証を示す

   この内容は,間違いないということで署名されたわけですね。

      ええ。ですが,私の後ろから衝突したっていうことが記載されていな

      いっていうことに対しては,ちょっとチェックミスっていうか,そう

      いうふうに思いました。ですが,一応確認はしました。後で,

      んに,私の主張が入ってないですけれどっていうことを,ちょっとメ

      一ル,電話でお話ししたところ,その左前方が,後ろから衝突された

      ということだというふうにお伺いしたので,その記載で間違いない。

      私の言ったことはただそれだけなんで,そう思います。

   この署名をしたときには,特にクレームはつけてないということですね。

      はい。

甲第6号証の1及び甲第6号証の2を示す

   1の写真,これは甲6の2で拡大して,@,Aとありますね。

      はい。

   その位置から,この矢印の方向に向かって写真を撮ったんですか。

      これを撮ったのは夫なんて,私はちょっと本当は分からないんで,も

      しお聞きになりたいんでしたら,夫を証人に申請したいんですけれど。

      ここに書いてあることを,私も場所は分かってますので,こちら側が

      プロキオンコースです。

甲第6号証の1を示す

   これで何かおっしゃりたいの。

      この拡大図でいうとこの,お日様の書いてあるラインがプロキオンコ

      ースですね。そちらがここの甲6号証の1。

   方向が分かるんでしょう。 どっからどっちに向かって写したと思いますか。

   甲6号の2の@の位置から,この矢印の方向に撮ったんですか。

      正確には分かりません。マッピングできないですけど,大体同じ位置

      をあらわしてると思います。

   じゃAについても,同じようなことですか。

      Aについては,もう少し上かもしれませんね。

   甲6号証の1の写真のA,この左のところにネットみたいなのが書いてあり

   ますね,見えますね。

      はい。

   これが境のネットですか。

      そうですね,この下のところが結局落ちていて,このちょっと手前の

      ところにカレーハウスがあるっていうことです。

甲第25号証の2を示す

   これが,この境のネットですかと聞いてるわけ。25号証の2,ここの右端

   のところに赤いの,これがネットと書いてあるでしょう。

      はい。

   これが甲6号証の写真A,左側の図でいうこのネットではありませんか。

      そうだと言ってます。

甲第27号証の3を示す

   被告のに送ったのは,この診断書ですね。

      はい,そうだと思います。

   このほかに診断書を送ったことはありますか。

      診断書は,1回だけだと思います。

   これしか送ってないですね。

      はい。

   これは,平成15年1月20目に作成されたものね。

      はい。

   この済生会病院に行かれたのは,平成15年1月14日の診断書ね。

      はい。

   受傷をしたのは,いつだろう。

      1月1日です。

   何で,1月1日に行かれたS整形外科の診断書はお出しにならなかったの。

      それは,事故は現地で起きていて,事故が起きたときに,まさかこん

      な,骨折じゃないと思ったなんていうことを,信じてもらえないと思

      いませんから応急処置だけを済ませて,地域の横浜の病院を受けまし

   たので,そこの1月1日に診断書などは求めませんでした。

整形外科ではレントゲン提ったでしょう。

   撮りました,はい。

そのレントゲンはどうされましたか。

   レントゲンは,医療は,基本的には本人に渡しませんよね。その医療

   機関のほうで保管されると思います。

済生会病院に行ったときに以前のレントゲン,一番最初に整形外科で撮っ

たレントゲンというのは引き継がれてないんですか。

   それ以上に,済生会病院というのは地域の手術とかをする専門の

   総合病院なんてすね。その前に私は,病院という一般病院を受

   診してます。ですから,その後に済生会病院に,手術が必要だという

   ことで紹介状をもらって行ってます。ご質問のことを述べますと,K整形

   外科さんだったと思うんですけど,整形外科では,レントゲンのコピ

   ーはもらいました。それを,その病院に提出しています。でも,

   それはもう封をされている状態ですね,患者が見れる状態ではなくて。

   病院のほうでレントゲンを撮って,それを持って済生会N病院に行

   ってます。

                                以上

 

 

平成16年(ワ)第387号損害賠償請求事件            

原  告  石  橋  裕  子

被  告  浅  井  高  行

 

準 備 書 面 1-

事故概要、事故原因に関する反論概要事故状況に対する反論

 

平成16年27

横浜地方裁判所 第6民事部 はB係 御中

 

原 告  石  橋  裕  子 印 

 

 平成16年4月22日被告作成準備書面の被告の主張する事故状況に対する原告の反論を述べる。

 

第1 本件事故の大要

 原告は、斜度のゆるやかな初級コースを、通常スキーヤーが滑るようなS字形のパラレルターンでゆっくり下方に向かって滑走していた。数ターン、コース斜面開始地点から約85〜100m下方にさしかかったところ、被告がゲレンデ上方よりスノーボードで直滑降し、原告の足首に被告のスノーボードを衝突させた。その際原告が受けた衝撃はあたかも全くブレーキもかけていないかのような猛スピードを思わせるような衝撃であり、その衝撃により原告の体は下方に約20メートル近くも突き飛ばされた。この衝突事故により原告は骨折という重症を負ったものである。

 

第2 被告主張の事故状況への反論

1 事故は原告の滑走ルートに被告が後方から突込んで来たことにより発生

 原告は急激なコース変更は全く行っておらず、一定のリズムのターンで斜面下方に向けて滑走していただけである。事故は、原告の通常のスキー滑走ルートに被告が上方(後方)から猛スピードで突っ込んで来たものであり、原告の飛び出しであるかのごとくの被告の主張は事実に反する。

 

2 衝突時の衝撃は猛スピードを想像させるほどの強度であった 

 衝突時に被告が受けたものすごい衝撃は、ほとんどブレーキもかけずにまっすぐ突っ込んで来たかのごとくの強い衝撃であった。尻餅を突きスピードが吸収された後の衝突衝撃であるかのごとくの被告の主張は事実に反する。

 

第3 原告の主張概要

 事故は、一定のリズムで通常のパラレルターンをしていた原告の滑走ルートに、被告が斜面上方(後方)から猛スピードで一方的に追突してきたものであり、原告に何ら過失はない。

 このことは、事故直後に作成された甲2号証、甲3号証、および甲8号証3で裏付けられている。また事故調査の場で、被告が原告の後ろから突っ込んだことと事故原因が被告にあることとを被告が認めて謝罪していたことにつき、新たに本件事故調査を担当したパトロール隊員の証言が新たに得られている。(甲19号証)

 

 被告は、事故後に原告に連絡をとらなかった理由について、事実を曲解し、原告の行動に問題があった為かのごとくの事実と異なる主張を行っている。これと同様に、事故原因についても事故発生直後は自分の非を認めていたにもかかわらず、裁判に至ってはじめて前言を翻し、原告に過失があったかのような事実と異なる主張を行っている。

 

 後方滑走者であった被告には、前方注意義務、衝突回避の責任がある。衝突を回避できないスピード超過状態であったことの他にも、一時停止し安全確認していない、斜面中央側を確認しずらい姿勢をとり続けた、という前方滑走者の発見の遅れを誘発するような行動をとっている。このことは被告陳述書で確認できる。

 

 以上の原告主張、反論根拠につき、下記の文書構成にて詳細を述べる。

(1)準備書面 -1-  事故概要、事故原因に関する原告反論概要(本準備書面)

(1)準備書面 2-  事故原因に関する原告反論(詳細)

(1)準備書面 3-  原告提出書証への被告指摘事項に対する反論

(1)準備書面 4- 「誠意のない対応」に関する被告弁明への反論