平成16年(ワ)第387号損害賠償請求事件
原 告 ちゃありぃ
被 告 無責任なスノーボーダ君
準 備 書 面 -3-
被告指摘事項に対する反論
平成16年5月27日
横浜地方裁判所 第6民事部 はB係 御中
原 告 ちゃありぃ 印
平成16年4月5日被告書証および4月22日被告準備書面での原告書証に対
する指摘、事故発生場所、および、損害賠償請求に対する指摘に関して反論する。
第1 甲8号証は証拠として成立する
第2 甲3号証の「相手(被告)の不注意」の記述はパトロールの判断である
第3 事故はゲレンデ右端1〜2メートルの地点ではなく、通常滑走するコース
上で発生した
第4 損害請求は正当かつ常識の範囲の請求である
第5 現在の受傷部の病状
以上の順に述べる。
第1 甲8号証は証拠として成立する
被告は、書証認否書8項にて、「甲2はF氏の作成、甲3はF氏の同僚氏の作成
であることから、作成者でないT氏からの回答では、その内容の真実性を基礎づ
けることはできない」としているが、以下の理由により甲8号の5は「背後から
衝突された」という原告の主張を裏付ける書証として問題なく成立する。
1 甲8号の4の〇印はF氏が付けたものである
甲8号の4の〇印は、T氏が見ている前でF氏が〇印をつけたものである。
このことは、甲19号証でF氏も認めており、必要があればF氏がサインす
ることも了承している。
2 署名したT氏はスキーパトロール隊長であり、責任者である
T氏は神立高原スキー場スキーパトロール隊の隊長であり、パトロール隊の
責任者である。
第2 甲3号証の「相手(被告)の不注意」の記述はパトロールの判断である
甲3号証の事故の間接原因に記載された「相手(被告)の不注意」の記述につ
いて、被告は「パトロール隊員が相手から聞いた通りに印を付けただけで、パト
ロール隊員の判断で作成されたものではないことは明らか」と被告陳述書で主張
したが、以下のとおり、事故の間接原因が「相手(被告)の不注意」との記載は、
スキーパトロール隊の判断に基づき書かれたものである。
1 甲3号証の記載事項につき、約半数は原告が申告していない項目である
甲3号証の作成にあたり、原告が担当のF氏の同僚氏に伝えた項目は「年齢」
「スキー検定の有無」「経験年数」などパトロール隊が判断できない項目であり、
甲3号証の記載事項すべてを伝えたわけではない。
2 「事故の間接原因」はパトロール隊の判断に基づき記載された
甲3号証作成にあたり、事故の間接原因をはじめ約半数の項目に対し、原告へ
の質問はなかった。つまり、事故の間接原因が「相手(被告)の不注意」だった
との記載は、事故状況を双方から聴取した事故調査の内容に基づいてパトロール
隊のF氏の同僚氏が判断し、記載したのである。
3 事故調査カードは受傷者の一方的な主張により記載されることはない
平成16年4月18日午後13時20分ごろ、原告は、F氏の同僚氏への電話
にて、事故調査カードは受傷者の一方的な主張により記載されることがないこと
と、もし仮に受傷者の申し出が調査結果と異なる場合は事故の相手に対しても確
認をとり合意をとって記載していることを確認している。(甲20号証)
第3 事故は右端1〜2メートルの地点ではなく、通常滑走するコース上で発生
した
事故発生場所は、プロキオンコースからポルックスコースへ繋がる連絡コース、
通称「旧プロキオンコース」と呼ばれている斜面である。また、原告が倒れて止
まった地点は斜面開始位置から約100メートル下った地点、斜面の右端から1
0メートル程度はある位置であった。(甲25号証、甲24号証 1項)
1 事故は「プロキオンコース」上で発生した
被告は「事故発生場所はポルックスコース内である」と主張しているが、事故
発生場所は「プロキオンコース(通称旧プロキオンコース)」と呼ばれているコー
スである。このことは、神立高原スキー場スキーパトロールT氏、F氏に確
認済みである。
2 事故現場を詳細図で示す
事故発生場所に関して、被告が異を唱えていることは平成16年4月の被告書
証で初めて知った。このため、概略図であった甲5号の1、甲6号の2に対して、
平成16年3月20日に原告と原告の夫が行った事故発生現場の測定結果を基に、
詳細図(甲25号証)を作成した。また、この詳細図はスキーパトロール隊のT
氏、F氏にも確認を済ませている。
なお、被告は乙1号証にて「甲5の1や甲6の2に指示されている事故現場で
はありません」「甲6号の1のAの写真の右側に林が映っていますが、その横の辺
りです」と書いているが、これらは全て同一地点を示したものである。
3 事故は被告の主張する「ゲレンデ右端1〜2メートルの地点」ではなく、通
常、スキーヤーやスノーボーダーが滑走するコース上で発生した
被告は準備書面 第2 被告の主張 において、「ゲレンデ右端1〜2メートル
の地点を直進滑走していた」と主張し、あたかも事故が斜面の右端1〜2メート
ルの地点で起きたような印象を与えようとしている。
しかし、事故発生直後、原告は斜面の右端から10メートル程度はある位置に
倒れており、衝突地点も同様に斜面右端から10メートル程度はある位置と推定
できる。
このことは、以下からも裏付けられる。
(1) 無線で呼ばれて原告が倒れていた地点に行った原告の夫も、原告が倒れて
いた地点が、斜面右端1〜2メートルではなく、斜面右端から10メート
ル程度はある位置であったと記憶している(甲24号証 1項)。
(2) 原告は自力で滑走可能か試すために、倒れていた地点から右側に滑り出し
たが、怪我のためにターンができずコース脇でたおれた。(甲8号証5 10
項、乙1号証)このことは、倒れていた地点の右側には、足に怪我をした
原告がターンするのに十分な距離があったことを示している。例えば、仮
に右端2メートルや5メートルの地点であったとしたら、怪我をした原告
が右側に滑り出すことは絶対に有り得ない。
4 事故発生直後、被告は原告より斜面上方にいた
乙1号証5項で被告は「相手が自分の上に乗り、自分は斜面の下の方、相手は
斜面の上の方で止まりました。」と記載しているが、原告は衝突の衝撃で斜面下方
向に突き飛ばされており、被告の体の上に乗った感触の記憶は全くない。かつ衝
突直後、被告は原告の位置よりかなり上方で、原告より少し斜面中央寄りの位置
に被告がいたと記憶している。
第4 損害請求は正当かつ常識の範囲の請求である
1 有給休暇であっても休業は補償される
日本損害保険協会発行「損害賠償の知識」などにおいても有給休暇使用の損害
賠償は認められており、常識の範囲の正当な請求である。
2 長年積み立て獲得したヘルスケア休暇をすべて消費した
使用した休暇33日のうち、20日分はヘルスケア休暇という通常の有給休暇
と異なる制度のもとでの休暇を充当している。このヘルスケア休暇とは、使用し
なかった有給休暇を何年かに渡り積み立て、健康上の理由による長期休業の際に
のみ利用可能という特別な休暇であり、これを本件対応にてすべて消費した。
3 持病の子宮筋腫の手術が出来ない状態が続いている
原告は、子宮筋腫という持病をもっており手術に備え、毎年の有給休暇をすべ
て消費せずに少しずつこのヘルスケア休暇を積み立てていた。このヘルスケア休
暇の積み立てがなくなったことにより、平成15年夏に婦人科医から手術をすす
められたが休暇がないため断念せざるを得ず、子宮筋腫による貧血症状、腰痛、
頻尿など日常生活に支障を生じている。近い将来手術を受けることが予想される
が、給与支払いのあるヘルスケア休暇はなく、給与が支払いされない欠勤で手術
を受けねばならない状況に陥っており、本請求は正当である。
4 休暇残がないため、体調が悪い時に休暇を取得できず
さきに述べたように原告は子宮筋腫による貧血症状のため、本事故前は月1度
程度、最も症状が酷い日には有給休暇をとることもあった。有給休暇を使い果た
し、また抜釘手術のための有給休暇確保たため、体調がすぐれない時にも有給休
暇が取得できなかったなど損害を受けた。
5 長期休暇により査定ダウン
すでに甲1号証の2で述べたように、長期休暇による査定ダウンにより次年度
の給与の減額をこうむっている。
近年企業は成果主義を導入しており、原告のみならず、原告の夫の勤める企業
においても、長期有給休暇取得に対し給与は支払うかわりに、例え休暇であって
も成果の出ていない社員に対しては次年度の月報をダウンさせており、有給休暇
を充当したとしても休業補償を請求することは妥当である。
6 家事労働休業請求
勤務先の休業日のみ家事労働休業を請求しており加算ではない。(勤務先の休
業日に対しては会社休業補償は請求していない。)かつ家事労働算出基礎金額と
して原告と同年齢の女子の平均賃金を元に算出しており、妥当な請求である。
家事労働休業補償は家事ができないため出前をとったり、原告の母や近隣の主
婦に家事を代行依頼した際の謝礼などを支出しており正当な要求である。
7 付き添い費請求は被告からの交通費の負担を無視されたための正当な要求
原告は平成15年3月17日まで屋外での自力移動ができず、付き添いが必要
な状態であり、家族の協力がなく付き添いがない場合は通院にタクシーなどの移
動手段が必要であった。また、平成15年1月6日に被告への移動手段確保のた
めの費用負担を打診したが被告から無視されており(甲27号の1)本請求は正
当な要求である。
また、夫のみならず、年間約450万円の自営業収入のある原告の父が付き添
いを対応しているがこれに対しては休業保障も請求しておらず、良心的な範囲の
請求である。
第5 現在の受傷部の病状
原告の受傷部は、本件訴状提出後も、朝は階段を左右交互に降りることができ
ないなどの症状は残っていたが、平成16年4月19日ごろより、右足受傷部の
痛みのために足をひきずり、夕方に急に歩けなくなるなどの症状が出るようにな
った。その頻度は、数日に1度程度ではあるが、症状が改善しないため5月15
日に整形外科医の診察を受けたところ、MRI (核磁気共鳴画像)による詳細検査を
受けるよう指示があり、現在検査順番待ちの状況である。