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越後百山 鉾ケ岳=ほこがたけ(1316m)〜権現岳(1104)
登頂年月日 2003/05/21 天候 晴 同行者 単独行 マイカー、自転車利用
柵口橋付近(6.20)・・・・・自転車・・・・・井の口バス停先(6.45)−−−島道鉱泉入口(7.15)−−−島道鉱泉(7.30)−−−島道コース・溝尾コース分岐(7.50)−−−三重の滝望見所(8.20)−−−大沢岳(10.10)−−−鉾ケ岳(10.23-35)−−−トッケ峰(11.05)−−−権現岳(11.40-12.00)−−−白滝展望所(12.43)−−−登山口(13.00-05)−−−柵口橋(13.30)

トッケの峰から鉾ケ岳を見る

事前の下調べもいい加減に、思い立ったように出かけた。
鉾ケ岳は越後百山、一等三角点という魅力は感じていたが、お遊び気分で登れる山と思っていた。 日本海に面した豪雪地帯ということはわかっていたが、登山者がたくさん入って、何ら問題なく歩けるとの勝手な予測は甘かった。
残雪、急峻なコース、久々にタフな山歩き味わうことになった。

未明に長野を出発。北陸高速道能生ICからR246を柵口温泉方面へ向かう。権現岳登山口の道標手前の空地に駐車。載せて来た自転車でR246を戻り、鉾ケ岳登山口へ向かう。下り勾配でラクチン。鉾ケ岳登山口の道標のある大沢から、島道鉱泉方面へ折れて、今度は緩い上り坂を、えっちら、おっちらと自転車を漕ぐ。1キロほど坂を走ったが、しんどくなって井の口バス停先の橋のたもとで自転車を降りる。あとは島道鉱泉まで45分の車道歩き。

島道鉱泉で登山届を書いて登山道へ入る。小さな里山でも、最近はクマに注意の看板が目につく。鳴り物を持つようにと書いてある。念のためにと用意してきた鈴は、自動車の中へ置き忘れてきたらしい。出たら出たときのこと。芽吹きで新緑に染まった道をしばらく登ると、以前は車でも通ったように思われる広い道に突き当った。ここは道標で右折。コンクリートで蓋をしてある用水路の上を行く。こんな山の上に用水路があるのが不思議な気がする。
しばらく歩くと、白い棒杭に山腹の急斜面に取りつく踏跡方面を「溝尾コース」、水平の用水路の上を行くのが「島道コース」と表示している。どっちがどうなのか、その違いがわからない。持参した案内書を見てみたが、案内書はどっちのコースを案内しているのか曖昧だ。とりあえず用水路の上を直進。
用水路は崖のような急斜面手前で終る。どこを登ればいいのか・・・見るとロープがある。これで急斜面を突破。カタクリの花が一面に咲いている。 チゴユリ、ショウジョウバカマ、タニウツギ、ニリンソウ、キクザキイチゲなど入れ替わり立ち替わり、次々と春の花の饗宴がつづく。一株ふた株というしみったれたものではない。足の踏み場もないほどの群落を作って咲いている。まさかこれほど花が楽しめるとは思ってもいなかった。

急登を登って小さな尾根を乗越すと、また用水路施設のようなものがあらわれた。よくもこんな険しい所を工事したものと感心する。乗越した先は大きな沢で、急峻な山稜からデルタ状に残雪が詰まっている。コースは雪の下かと思ったら、残雪のシッポの部分から対岸へ渡渉するコースが見える。ロープで沢まで降りて渡渉。飛び石で濡れずにすんだ。
三重の滝という道標からは、三段になって落下する滝が、対面の山腹に眺められる。山の斜面全体が絶壁の感がある。急登につぐ急登。地図を見ると鉾ケ岳から権現岳にかけては、等高線がびっしりと詰まっている。さらに崖、崩壊地の記号がいたるところ目につく。険しい山岳であることが一目瞭然。
シラネアオイ
シラネアオイ、イワカガミ、イワウチワ、エンレイソウ、キバナノコマノツメなどの大群落も出現。何回も足を止めてはカメラに撮り込み、しゃがんで見入ったりを繰り返した。
たっぷりと汗をかいて、「あれが大沢岳だ」という道標に登りついた。眺めると、残雪をまとった山稜が見える。まだ遠く高い。そう簡単には行きつけそうもない。

雪渓を横断したりして、高度を稼いで行くが、それにしてもしんどい登りがつづく。こんなはずではなかった。ちょこっと登って来るつもりだった。 だんだんと余裕もなくなってきて、花どころではない。
急峻な雪渓に突きあたった。ジョギングシューズにしなくてよかった。アイゼン無しではちょっと厳しそうだ。樹林の藪を迂回できないか見まわしたが、それは無理なようだ。この雪渓を登るより方法はない。2回、3回とつま先を蹴こんでステップを作り、一歩一歩慎重に登って行く。下を見ると急傾斜で落ち込んでいて、その先は見えない。ようやく樹林帯の夏道へ入ってやれやれという気分、この先こんな雪渓の無いのを祈る。2度3度と雪渓はあるが、危険を感じるようなものはなく、開けた小平地に出たところではじめての休憩。ここが「金冠」だろうか・・・・ちょっとわからない。 休憩してからわずかに登ると大沢岳の道標がある。道標には何と私の登って来た方角とは逆方向に金冠を指している。私は金冠を通ってこの大沢岳へ至るルートを歩いて来たつもりだ。いったいどういうこと?それでは私はどこを歩いて来たの?
(用水路から溝尾コースを取るのが、金冠経由の普通のコースで、私の歩いた島道コースは一般コースとはちがうのかもしれない)
案内書には鉱泉から大沢岳まで1時間20分、ところが私の所要時間は2時間40分。私の足でそんなバカな。どうやら考えたいたのとはちがうコースを歩いてきたらしいことを、ここではじめて気がついた。
コースを間違えたおかげで、見きれないほどの花を楽しむことができた。鉾ケ岳山頂まではすぐだった。

山頂の避難小屋が少し邪魔者の感じがする。山頂から少し外して建てられなかったのだろうか。残雪はなく、まず一等三角点を確認する。小屋の裏手に回ると、ここは分厚い残雪に覆われていて展望がいい。
高曇りで視界は劣るが、残雪の火打山、焼山、金山、鋸岳、雨飾山など、さらにおぼろげに北アルプス白馬連峰方面が望めた。
山頂で一服したあと「トッケの峰」経由権現岳へ向かう。トッケまでは残雪で埋め尽くされている。それにトッケへの登りはかなり急峻に見える。アイゼンなしで登れるだろうか。不安を抱えながら、雪の斜面を一気にコルまで下る。おおむね残雪の上をたどるが、ときおり夏道が現れたりする。鉾ケ岳から眺めたほどの急な勾配ではなく、意外に簡単にトッケへ登り着くことができた。

トッケは藪の中のピークで展望はないと書いてあったが、雪に覆われて視界を遮るものはなく、火打山、焼山などの眺めが素晴らしい。
昼食は権現岳でとることにして、休まず先へ進む。
垂直の岩場の下降も、案内書のようなスリルを感じることもなく通過。ロープに助けられたりして岩場の下降をつづけて行くと、再び一面のお花畑が待っていた。
権現岳で、鉾ケ岳や火打山などを目にしながら昼食。5月中旬はこのあたりシャクナゲで埋め尽くされるというが、ほんのわずか時期が遅かったようだ。それでもまだ花を楽しむには十分だった。
先の焦げた竹筒がひと塊放置されている。夏の松明登山の残骸だろう。

権現岳からは岩場の下降が、イヤになるほど何回も繰り返す。ロープがなかったら難渋するような箇所も多い。ここを登る場合は、脚力ではなくて腕力勝負というところだろう。
本当に通り抜けられるか訝るような「胎内洞」をくぐり抜け、さらにロープに助けられて「白滝」の道標まで来ると、ようやく普通の登山道となった。降り立った登山口には駐車スペースもある。あとは車道を歩いて自動車まで25分だった。

このあと自転車を回収して帰路についた。
気合を入れて歩いた7時間は、久々に燃焼感のある登山となった。


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