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越後百山 中の岳(2085m)兎 岳(1926m)丹後山(1829m)

登頂年月日 
1993.07.17
天候 晴れ 単独 マイカー 中の岳 三等三角点
兎 岳 三等三角点
丹後山 二等三角点

東京(1.00)===六日町===十字峡(5.45)−−−1合目(6.10)−−−千本松原(6.35)−−−日向山(7.45)−−−小天上(8.25)−−−中の岳(9.20-55)−−−小兎岳(11.05-10)−−−兎岳(11.30-40)−−−大水上山(11.55-12.00)−−−丹後山(12.25-30)−−−ジャコ平(13.15)−−−3合目(13.50)−−−1合目鉄砲平(14.25)−−−栃の木橋(14.3)−−−十字峡(15.05)===五十沢温泉===東京(20.30)

2日行程を一日で踏破。
深夜1時に東京の自宅を出発。高速道途中で30分ほど仮眠を取ったが、登山口の十字峡着は6時前。三国ダムがほば完成して、十字峡付近の様子はガイドブックとは大きく変っていた。中の岳登山口道標の先で橋を渡ると一般車進入禁止となり、そこが行き止まりだった。

中岳山頂
谷間から見上げる空は隙間なく雲に覆われている。
道標から登山道に取り付いた。セメントで固めた階段が導く登山道は、はなから厳しい急登で始まった。歩きはじめの足慣らしにはちょっときつい。登山道はよく手入れされている。25分で1合目、出だしのペースは快調だ。
1合目を過ぎるとはっきり尾根らしい感じになってきた。登山道は刈り払いが済んだばかりで快適そのものである。さらに25分で標高1100メートル、千本松原の標柱の立つ2合目に到着。もう600メートルの高度を稼いでいる。コースタイムを確認 してびっくり、2時間のコースタイムを50分しかかかっていない。5分の少憩。前方に盛り上がる円頂の上に小屋のような建物が見える。それが日向山であった。わけなく行き着けそうに見えながら、結構歩きでがあった。
登山道両脇の潅木はだんだん背が低くなり見晴らしもきいてくる。背後に阿寺山が競り上がり、八海山の1峰で昨秋登頂した入道岳も頭を見せて来た。曇ってはいるが、意外に見とおしはよい。

3合目、4合目と標石を確認して5合目、標高1561メートルの日向山到着は7時45分、ここでもコースタイムを大幅に短縮。笹に囲まれた小広い平地でかっこうの休憩地である。正面に初めて中の岳の全容が姿をあらわした。重量感のある巨体が視野一杯に広がり、迫力も申し分ない。中の岳に寄り添うようにして御月山も頭を見せている。中の岳から丹後山への稜線が起伏しながら延びているのも確認できる。あの長い稜線を踏破して日帰りできるだろうか。5分の休憩で出発した。

丹後山山頂
ややぬかった溝状の道を下って行く。快適な道はさきほどの日向山までで、その先からは刈り払いこそされているが、ぬかったり、刈り払われた笹で足が滑ったりで神経を使う。しばらく下った鞍部が生姜畑、ここはまだ雪田で、雪解け水を避けて笹薮の中をかき分けて通過する。キヌガサソウ、シラネアオイが見ごろだ。この先も飽きるほどシラネアオイを見ることができた。
そのあとも2回ほど大きな雪田を渉って小天上と呼ばれる小ピークへの急登にかかった。低潅木の痩せ尾根となって展望も一層よくなってきた。特に丹後山への稜線が適度な起伏をもって魅力たっぷりに目を楽しませてくれる。コイワカガミ、ニッコウキスゲ、アカ モノなど花も楽しい。
七合目、小天上のピークに立つと中の岳はぐっと目の前に迫ってきた。5分の休憩、水を一口飲んでから最後の登りにかかった。厳しい登りを一歩一歩足を運ぶ。幸いなことに少しづつ青空も見えてきた。傾斜が緩くなって前方が明るくなり、突然低潅木を抜けだして主稜に立った。9合目、池の段である。眼前が一挙に開けて高山の雰囲気に満ちた景観に変わった。足元からは北の又谷が雪を残してカール状に悠揚たる斜面の広がりを見せ、正面に三角錐の荒沢岳が聳える。周囲は華やかなハクサンゴサクラの群落、ピンク濃いコイワカガミ、黄色く存在を主張 しているのはタカネスミレ。
中の岳へは左にアルプス的な岩稜を少し登って行く。タテヤマリンドウ、ミヤミキンポウゲ、キバナシャクナゲなどの花が迎えてくれる。天気は一層よくなってきた。山頂まではわけなかった。ハイマツやキバナシャクナゲの目立つ稜線を一投足で山頂に立った。
9時20分、高度差1500メートルをたいした疲労もなく登りついた。コースタイム7時間余を3時間30分で歩けた。
越後三山最高峰の中の岳、頂には山頂を示す標石と三等三角点があった。これで越後三山の駒ヶ岳、八海山と併せて三山の登頂が完成した。ここはまた日本三百名山でもある。

300メートル先の避難小屋まで足を延ばす。
小屋は笹と低潅木の中に、屋根の葺き変えを終えたばかりの頑丈な造りで建っていた。小さな石碑や祠が小屋の前にまとまっている。そしてさえぎるものもない大パノラマは文句なしの一級品であった。駒ヶ岳は独立峰然とした威容で聳えている。駒が兄とすれば弟は八海山。斑模様の残雪と緑のコントラストが際だち、絵画的にも今が最も美しいときだ。小屋の前で写真を撮ったりしてから三等三角点標石の山頂へ戻った。三等では惜しい、一等にして上げたいような360度の大展望であった。守門、浅草岳、会津朝日岳、さらに飯豊連峰までのぞめる。東には鋭峰荒沢岳と青いシルエットの平ケ岳が霞む。南には兎岳、丹後山とその先に残雪も豊かな巻機山や朝日岳。西には八海山と遥か後方の雲に浮かぶは妙高山や志賀の山々だろう。

時刻はまだ10時、兎岳、丹後山を縦走することにした。コースタイム14時間を1日で歩くのはちょっとやり過ぎの感もあるが、多分歩けるだろう。
池の段から先は急激に下降して行く。笹がきれいに刈り払われて道ははっきりしている。シナノキンバイ、シラネアオイ、 タテヤマリンドウ・・・花が実に豊富だ。斜面の残雪が眩しく陽に輝く。草原の中にはニッコウキスゲがひときわ目立っている。
兎岳手前の最低鞍部からは300メートル近い登り返しとなる。だらだらとした登りではあるが、展望の楽さに満たされて足は軽く苦にならない。大きな雪渓を慎重にわたる。コバイケイソウの穂花が雪渓とよく似合って、それを前景にした荒沢岳のシルエットが絵葉書のようだ。もう一度大きい雪渓をわたった先の高みに小兎岳の標識が立っていた。足元の斜面には大きな雪田が広がり、周囲はコバイケイソウがみごとな群落を作っている。
兎岳が目の前にこんもりと盛り上がっていた。
一休みしてから一度鞍部に下って兎岳への登りについた。コースタイム通りに歩いても、夕方には下山できることがわかってゆっくりと足を運ぶ。
池の段から1時間30分で兎岳の頂上に到着した。振りかえると中の岳、駒ヶ岳、八海山の越後三山すべてが小さな枠の中に収まっていた。
丹後山へのゆったりとした稜線が明瞭となり、巻機山も近くなった。図体の大きい平ケ岳が正面に見える。これから足を運ぶ稜線はのびのびとして開放的で、北海道大雪の山を偲ばせるものがあった。

これから先のコースは大水上山から丹後山まで、絨毯を敷いたようなチシマザサの女性的な山稜が続く。ササの間の道を緩く下り、また緩く登って大水上山へと足を運ぶ。
大水上山々頂の展望も文句ないものだった。気がつくと急激に低い雲が広がりだして、既に八海山はガスに姿を消し、駒ヶ岳にも雲がかかりはじめている。大水上山は利根川の源流としても知られるが、訪れる登山者は少ない。案内書にも中の岳から丹後山までは道も不明瞭で、かすかな踏み跡程度しかないと記されていたが、実際にはルートは明瞭だった。
大水上山を後にすると、起伏の少ないチシマザサの稜線は雲上漫歩そのものであった。
丹後山もそんななだらかな稜線の一地点であった。中の岳の姿は雨雲らしい中に姿を消していた。山頂の先、ちょっと下ったところの窪地に避難小屋がある。中を覗いてみると毛布が10枚ほどあって、食料さえあれば宿泊は可能だ。山頂から小屋の周辺一帯は、学術的にも貴重な自然保護地域として、広範囲に立ち入り禁止の表示があった。

小屋から少し先が十字峡と越後沢岳との分岐だった。
山襞にたっぶり雪を残した巻機山の山容が雄大だ。
一休みして下山の途についた。十字峡から中の岳への登路に比べると、いま下っているこのコースの方が道の状況はずっといい。見晴らしのいい尾根は、やがて樹林帯へと入り、下りに下って6合目のジャコの峰あたりでついに雨が落ちて来た。稜線で展望に恵まれたことを思えば、行程の最後で少しばかりの雨は許して上げよう、そんな気分にもなれた。
雨具を着て急な坂道をひたすらかけ下って林道へ降り立った。そこが栃の木橋である。ここから十字峡へは一般車通行禁止の林道を3キロばかりある。緩急を交ぜた渓流や滝を観賞しながら、スタート地点の十字峡へと足を速めた。


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