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 富士嶽山(1034m)

長野県 2003.02.12 単独 マイカー
コース 大圓寺駐車場(8.15)−−−キノコ小屋(9.10)−−−登山口を探してロス20分−−−登山口(9.30)−−−小社のピーク(10.35-40)−−−三角点ピーク(11.00-11.10)−−−小社ピーク(11.30)−−−登山口(12.05)−−−大圓寺(12.55)===独鈷温泉
低山を、雪の急斜面をもがき苦しんで山頂へ
小社のピーク、背後は頭に雲を乗せた浅間山

名前だけ見ると、まるで霊峰富士山の兄貴分のようである。その名は『富士嶽山』という標高1034メートルの低山、所在は鹿教湯温泉の近くにある。
どっちを向いても山ばかりの信州であるが、冬の間は私が気楽に登れるような山は以外と少なく、1000mくらいの数少ない低山を探して登り歩くことになる。
富士嶽山は長野市内からそう遠くもなく、まさに私向きの山と見て出かけてみた。慣れない道に少し迷い、登山口着まで30分ほど余計に時間をかけてしまった。上田市内から平井寺トンネルへ向かい、トンネル手前の平井寺集落あたりから奈良尾の集落へ入って行く。いちばん立派に見える道を右折、道なりに上がって行くと、大圓寺というお寺の境内の駐車場で行き止った。
住職に駐車を断り、富士嶽山への道を尋ねる。大圓寺すぐ手前の林道を登って行くのだと教えてくれた。しかし林道は雪で4WDでも通行困難、歩くよりしかたない。林道入口は“見晴台”の大きな看板が目印だ。

10センチ前後の雪はクラストしていて、一歩一歩足が前につかえて歩きにくい。歩く予定になかった林道を、約1時間でキノコ小屋へ着く。登山口を探すがわからない。足跡のある沢をたどってみたが、歩ける状態ではなくなって引き返していた。林道へ戻りもう一度丹念に探してみた。脱色した小さな赤布を発見、どうやら間違いなさそうだ。結局20分のロス。

3、4分登ると痩せた岩稜の尾根に出る。小さな社が岩の上に祀られている。雪の上には人の歩いた形跡はまったく見えない。ところどころ赤布が見えるので、登山道であることはまちがいなさそうだ。
やがて胸を突く急登に変ってきた。半端な勾配ではない。ロープがつづいているが、ほとんど雪の下にもぐっていて役には立たない。雪は膝上から大腿あたり、雪道用のゴム長靴は一歩進んでも、一歩あるいは一歩半ズルズルと後退。これではさっぱり前に進めない。とにかく一歩一歩に費やすエネルギーが大きく、もう汗ぐっしょり、帽子の庇からは汗の滴が流れつづけている。1000メートルの低山でこんな苦労を強いられとは思わなかった。
コースが北側というのもいけなかった。南側にも登路はあったのに、これは選択の誤りだった。

夏なら訳ない登りを、ほうほうの体で登りきると小社の立つピークだった。小社には“富士嶽神社”の額がかかっている。周囲の山は雲がからんであまり展望はよくない。頭に雲を乗せた浅間山や、湯の丸山、烏帽子岳など、それに目の前には独鈷山の姿が見えるだけだった。
雪の中をもがくようなアルバイトに、途中いく度も引き返そうと思った。山歩きをしているとたまにこうした投げやり気分になることがあるが、こうした感情は久しぶりのことだった。
三角点のヒークはさらに30分ほど行ったところにあるようだ。積雪状態が悪くなかったらと勝手に条件をつけて行ってみることにした。いったん鞍部へ下って登り返すことになるが、稜線状の尾根は案外雪は少なく、それに薄くなってはいるが足跡も残ってる。20分でピークに到着。樹木に取り囲まれて展望はほとんどない。あっちこっち雪を掘ってみると三等三角点が見つかった。

同じ道を小社のピークへ戻り、もがき苦しんだ雪の急斜面の下りはあっという間だった。 林道歩きがなければ、1時間も要さずに小社ヒークまで登れる山。それが大圓寺まで戻ったときには、疲労感でぐったり、大きな山へ登ったあとの気分に似ていた。  
帰宅の途中、独鈷温泉で温まっていると何となく満足感のようなものが湧いてきた。

 
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