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烏帽子岳(2066m)・湯の丸山(2105m)

2003.02.25 烏帽子岳・湯ノ丸山  2009.03.21 烏帽子岳

長野県 2009.03.21 単独 マイカー      烏帽子・二等三角点(亡失)
コース 地蔵峠(7.05)−−−烏帽子・湯の丸のコル(7.45)−−−烏帽子岳(8.30)−−−烏帽子・湯の丸のコル(9.00)−−−地蔵峠(9.40)
中腹から烏帽子山頂をのぞむ

空は抜けるようなピーカン、雲ひとつなし。

早朝、スキーヤーの車もまだ少ない地蔵峠駐車場から出発。
踏跡はごつごつした凹凸のまま凍っている。今日の先行者はいないようだ。

キャンプ場先のカラマツ林を抜けると湯ノ丸への分岐表示となる。ここからしばらく水平道がつづく。ワカンもアイゼンも不要。
大きく開けた湯ノ丸山とのコルに着く。右へ行けば湯ノ丸山、目指す烏帽子岳は左へのトレールを進む。踏跡を追って登りにとりつく。6年前の2月、真冬の烏帽子を目指したとき、ここから大変なラッセルを強いられ、にっちもさっちも行かなくなって、途中敗退した思い出がある。

雪こそあるが表面は締まっていて足がもぐることはない。しばらく登ったところで、雪面が硬くなってきたので、万一のためにと携帯してきた6本爪アイゼンを装着する。(ここにカメラを木の枝にかけたまま、忘れて置き去りにしたまま登ってしまった)
前回深雪にもがいて敗退したのはこのありだったなあ、と懐かしく思い出しながら、快晴の陽を浴びた斜面を登っていく。

いつか雪面の踏跡は強風に消されていて、あとは自分でルートを判断して登っていく。ほぼ直登のコースをとったために、勾配はけっこうきつい。
こんなところで滑落したら物笑いの種、慎重に足を運んで山頂から数十メートル南の稜線へ登りついた。あとは雪の剥げた岩の間を縫って、なだらかな稜線を北へ進めば山頂だった。

360度みごとな展望、早速カメラを・・・・、あれ?ない。あのアイゼンのときだ。同じような失敗を何回してきたことか。しかたない、目に焼き付けて帰ろう。

北アルプスは白馬から槍・穂高と白銀の屏風。乗鞍、御嶽、中ア、富士、南ア、奥秩父、浅間、黒斑山、籠ノ登山、目の前には湯ノ丸山と馴染みの山々が錚々として連なる。さらに四阿山、志賀の山々、赤城、日光連山、頚城の山々、まさに枚挙にいとまのない山岳展望をしばし楽しんだ。

帰りはカメラを回収しそこなわないよう足跡を忠実にたどって、無事回収。日射しを受けた雪は、1時間ほどの間にかなり緩んでいた。

長野県 2003.02.25 単独 マイカー
コース 地蔵峠(8.15)−−−烏帽子・湯の丸のコル(9.25)−−−烏帽子岳頂稜手前−−−烏帽子・湯の丸のコル(10.20)−−−湯の丸山(11.20)−−−ツツジ平の鐘−−−地蔵峠(12.25)
烏帽子岳を敗退、その足で湯の丸山へ

予想したより天気は芳しくない。地蔵峠は小雪が舞っている。この2、3日は平地でも雨が降ったり雪が降ったりして天気はぐずつき気味だった。峠の食堂の脇から烏帽子・湯の丸山コルへの登山道へ入ると、かなりの新雪が積っている。5分も歩かないうちに、目の前を先行した4人パーテイに「お先にどうぞ」と言われて前に出されてしまった。新雪に覆われて踏跡はほとんど消えいているが、注意するとなんとなくコースは判別できる。しかし一歩外すと膝上まで沈んでしまう。  これまでワカンを持って山へ入ったことはなかったが、今回はじめてワカンを携帯した。

無雪期なら頭上にあるはずの木の枝が、顔や胸の高さになっていて、通過するたびに枝の雪を頭からかぶってしまう。  
烏帽子・湯の丸山のコルまで、ややわかりにくい所もあったが、コースを外すことなく、またワカンも使わずに1時間10分で到着。私の足にしてはやや時間がかかり過ぎだが、新雪を分けての登りではこんなものだろう。

樹林帯を抜けたコルで視界が開けたが、左手の烏帽子岳、右手の湯の丸山とも、頂稜はガスっていて見とおせない。コルは風衝帯となっている小広い平地で、踏跡は完全に消えてルートがわからなくなった。見当をつけて烏帽子への尾根に取りつく。
尾根に取りついたあとも、ルートはほとんどわからない。ただ忠実に尾根をたどると、どうやら踏跡を踏んでいる感じで、深雪に埋まることなく進んでいける。
突然大腿までもぐってしまった。ここでワカンを着用。
勾配を強めてきた尾根を外さないよう足を運ぶが、距離がなかなか稼げない。無雪期ならコルから山頂まで30分程度、ところがこれでは1時間かけても無理だろう。吹きさらしの尾根は小雪混じりの寒風が頬をたたく。汗と雪で毛糸の帽子は、頭の上で板のように固く凍っている。
南北に長い頂稜の南端へ登りつかなくてはならないが、ガスで見通しがなく、その南端がわからいな。尾根通しに直登してみようとしたが、雪にもがくだけで全然上へ登れない。トラバース気味にあるはずのルートを探してみたが、どこも大腿までもぐってしまう深雪、うろうろしたあげく、結局見つからないままに退散を決めた。
コルへ戻る途中、今朝ぼとの4人と熟年夫婦が上がってきた。果たして山頂へ行き着けるかどうか。

これまでの10数年の山行で、目的の山頂をきわめることが出来ずに敗退した経験はそんなにはない。思いあたるのは暴風雨の水晶岳やトムラウシ、降雪直後の深雪に阻まれたお坊山、真冬の深雪丹沢縦走など。体調や天候などで途中引き返そうと思いつつ、こんなことで負けてたまるかと発奮、山頂を踏んだことは数多くある。今回はあっさりと敗退を決めてしまった。これも歳のせいかもしれない。

コルまで戻ると青空が見えてきた。烏帽子岳の頂稜も見え隠れしてきて、これなら何とかなるかもしれないと思いつつ、再び登り返す気にはなれなかった。
コルから湯の丸山山頂へ向けて、途中まで踏跡らしい形跡がかすかに確認できる。せっかく出かけてきたのだからという思いで、湯の丸山を目指してみることしにした。  
隠れたり現われたりする、薄い踏跡を頼りにたどると、ワカンが埋まることもなく、頂上へ向けて直登して行くことが出来る。徐々に天候が回復して、中腹から振りかえると烏帽子岳も良く見えるようになっていた。私の歩いた足跡を見ると、頂稜南端にもう一息というところまで行っていて、そこでうろうろした足跡の乱れまで確認できた。登って行った4人と夫婦の影は下ったのか、どうしたのか確認できない。

さて湯の丸山頂へ向けて、途切れ途切れながらも頼りにしてきた踏跡が、吹きさらしの斜面から確認できなくなってしまった。山頂まで残り3分の一くらいという感じがする。引き返すのも癪だ。頑張ってみよう。ワカンごと大腿までもぐることもしばしば。ルートを右に取り、左に取り、足跡に出あうのを期待したが、ついに出あうことなく、コースを示すロープが目に入ったときは、そこはもう山頂の一角だった。すぐに道標の立つ南峰、冷たい強風がたたきつけてきた。三角点のある北峰はそこから数分先にある。
露岩に囲まれた三角点は、等級が確認できなかった。
天候は回復しつつあるが、まだ雲も多くて好展望台として知られるこの頂も、正面に敗退させられた烏帽子岳、それに浅間山、黒斑山、籠ノ登山などが見えるだけだった。

下山はスキー場経由で地蔵峠を目指す。新雪に覆われてルートはまったく不明。眼下遠くに見える地蔵峠の建物を目安にして、雪の急斜面をワカンでずり落ちるように下って行く。峠が見えているから何とかなるだろう。
急斜面を下りきって、ツヅジ平の平地に入り、四阿屋先の鐘のところで、はじめての休憩、テルモスの熱いお茶で乾いた喉を潤すと、ようやく安堵感と人心地がついた。 あとは地蔵峠までわけなかった。

烏帽子岳山頂は踏めなかったが、それより39メートル高い湯の丸山を登ったことで一応満足することにした。
 
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