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燕岳(2763m)〜北燕岳〜東沢岳(2497m)

長野県 2004.08.25 単独 マイカー 合戦の頭 三等三角点
燕岳   三等三角点
奥燕岳  三等三角点
コース 中房温泉登山口(5.05)−−−第三ベンチ(6.17)−−−合戦小屋(7.05-7.10)−−ー燕山荘(7.50)−−−燕岳(8.15)ー−−北燕岳(8.30-8.45)−−−奥燕岳三角点往復(15分)−−−東沢乗越(10.00-10.05)−−−東沢岳(10.45-10.50)−−−東沢乗越(11.15)−−−西大ホラ沢出合(11.40-11.45)−−−奥馬羅尾沢(12.25)−−−中房温泉(13.20)
燕岳

3か月前、前立腺癌による全摘手術を受けてから小さな山は何回か登ったものの、山らしい山からは遠ざかっていた。夏山を楽しむこともないままにこの夏が過ぎようとしていた。

燕岳に登ったのは40年以上も昔、職場の仲間と中房温泉からか日帰りしたときと、20年前に表銀座縦走で歩いたとき以来である。

明け早々、温泉橋の駐車場を出発、登山口売店の裏から合戦尾根に取りつく。ブナタテ尾根、岳沢重太郎新道と並ぶ北アルプス三大急登の一つ、とっつきから急登が待ちうける。
一定のペースを保って高度を稼いで行く。サルオガセのからみついたシラビソ林が幽玄の雰囲気を漂わせている。第一ベンチ、第二ベンチは通過、第三ベンチで立ち休み。1時間10分で560mほどの標高を稼いだ。まずまずのペース。

さらに40分余り登って合戦小屋となる。ここまで登ると厳しい急登は終る。常念山脈方面の展望も開けてやれやれという気分になれる。

5分の休憩で出発。12、3分で合戦の頭、土中に埋まっているはずの三角点標石基部が大きく浮き出している。

大天井岳の背後に槍ケ岳が姿をあらわす。頭上に見えてきた燕山荘は、瀟洒な洋館のように朝日に輝いている。ミヤマアキノキリンソウ、オヤマリンドウなど名残の花を見ながら燕山荘に登り着く。と、その瞬間目の前に展開する槍ケ岳の雄姿に圧倒される。さらに鷲羽、野口五郎など裏銀座の連嶺、遠く笠ケ岳の姿も確認できる。

花崗岩のオブジェの間を縫うようにして、脚にやさしい砂礫を踏みながら燕岳の山頂へと向かう。吹きつける北風に思わず肩をすくめ、ウインドヤッケ代わりに雨具をまとう。

急いだわけではなかったが、ガイドブックの4時間40分に対し、3時間10分で燕岳山頂に立った。山頂からは立山、剣、そして餓鬼、烏帽子、船窪岳方面の展望が広がっている。
しばし展望を楽しんでから北燕岳へ。砂礫の道を15分、北へ向かうルートを外れて花崗岩を攀じ登ると北燕岳山頂。北方を眺めると花崗岩の稜線はさらに延びて奥燕岳へと達している。はるかに南アルプスと思われる山嶺も薄墨色に望むことができた。

北燕岳からいったん東側へ大きく下ってから再び花崗岩の稜線へ登り返すと、砂礫が大きく広がっている。奥燕とも言われるところだ。平坦のハイマツの中の踏跡を少し進んで、東沢三角点を往復したあと、東沢乗越へ向けて500メートルの大きな下りとなる。登山者がそれほど多いとは思えないが、ルートは明瞭だ。

間もなく森林限界からダケカンバやシラビソの樹林帯へと入る。とても500メートル程度とは思えないような大きな高度差を感じて長い下りを終る。ここが東沢乗越の道標の立つ分岐となる。この乗越(コル)から中房温泉へ通じるコースが東沢登山道、東沢岳ピークを往復したあと、このルートを下ることになる。

ハイマツと花崗岩の東沢岳

5分の休憩ののち東沢岳への登りにつく。笹などの刈りはらいがごく最近行われたばかりで歩きやすい。頂上まで高低差250メートル、疲れの出てきた足には少しきつく感じる。スローペースで登って行く。樹林帯を抜け出ると一面のハイマツ帯が広がる。ガスが出はじめて燕岳への稜線は視界が閉ざされてしまった。ケンズリから餓鬼岳、唐沢岳が見え隠れしている。

クロマメノキ、コゼンタチバナなどは秋の実をつけている。ハイマツ帯をひと登りすると、餓鬼岳方面へのルートを外して花崗岩の積み重なったピークへの踏跡がある。これをたどって東沢岳の山頂へ立った。
三ツ岳から野口五郎岳あたりのカーキ色の山並みが正面にある。その下のエメラルドグリーンの湖面は高瀬ダムだ。

東沢乗越まで引き返し、東沢登山道を使って中房温泉への下りに入る。ここも刈りはらい済みで歩きいい。中房温泉までの高低差800m、コースタイム2時間、楽勝で下山と思ったのは甘かった。
西大ホラ沢までの急な下りは25分ほどで終る。あとは沢沿いをのんびり歩けると読んでいた。

沢は出水による荒れがひどく、ルートがわかりにくい。赤丸印を探しながら石の頭を利用して渡渉を何回となく繰り返す。おおむね左岸を行く。小さな高巻きがあったりしたあと、一山越えるような大きな高巻きが待っていた。この高巻きを終ったところが奥馬羅尾沢でそこに「これより急登」という表示があった。つまり中房温泉から登ってきても、この高巻は急登の大きな高巻と言うことだ。

コース取りがわかりにくい上に、砂防堰堤越えあり、老朽化で頼りない桟道、朽ちたハシゴ、一般登山者向けとは言いがたく、体力を消耗するコースである。
ようやく沢沿いのしっかりとした道となり、脚の負担も軽くなったころ吊り橋で右岸に渡ると、間もなく中房温泉だった。

乗越からの時間は休憩なし、脚を緩めることなく歩いて約2時間。標準コースタイムの2時間はかなり厳しいのではないかと思われる。

久しぶりに体の芯から汗を搾り出したような爽快な山歩きだった。

 
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