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残雪登山
鍋倉山
(796m)
大地山(1167m)・初雪山(1610m)

富山県 2005.04.25 7人パーテイー マイカー 鍋倉山 三等三角点
大地山 三等三角点
初雪山 三等三角点
コース 夢創塾登山口(5.35)−−−鍋倉山(7.35-7.40)−−−途中休憩5分−−−大地山(9.00-9.20)−−−1431P(11.05-11.20)−−−1247P(10.15)−−−初雪山(12.05-13.05)−−−大地山(14.50-15.00)−−−鍋倉山(15.50-16.05)−−−夢創塾(16.50)
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三角点三つ、小ピーク8つを越える雪稜のロングコース、快哉の残雪山行でした。
初雪山々頂へは、この雪稜をたどって行く


長年山に親しんできたのに「初雪山」の名前を知らずにいた。残雪登山の山としては知られた存在らしい。
山友からの誘いを受けて、はじめて魅力的な名前のその山を知り、ネットで検索してみると、文句なしに素晴らしい雪稜登高を楽しめそうだった。

メンバーは男性3名、女性4名。リーダーは富山県の山に精通した80歳のA氏。歳を感じさせない健脚ぶりに後で感嘆させられる。
メンバーは登山口「夢創塾」の小屋に前夜宿泊。私は都合で当日未明に合流した。

≪アクセス≫
朝日ICを出たあと小川温泉へ向かう県道45号線へ入る。小川ダムの下流「羽入集落」のしまいで「蛭谷」へ渡る赤い橋を左手に見てさらに1キロ直進すると、左手対岸に小川第二発電所が見えてくる。発電所への青い橋を渡ったら右折する。ダートの道を1キロ走ると登山口の夢創塾となる。

≪5時35分登山開始≫
夢創塾敷地の山側に「大地山登山口」の道標がある。装備はワカン、軽アイゼン、スキー用ストック。
のっけから急登が待っている。歩きはじめるとすぐに尾根となる。ところどころロープの設置された急登を喘ぐと、イワウチワの群落が足元に見えるようになる。ショジョウバカマ、タムシバ、マンサクそれにカタクリも何株か・・・・。芽吹いたばかりの初々しい浅緑の若葉が目を癒してくれる。
638mピークの先あたりから雪を踏むようになる。よく締まっていてワカンなどは不要、地道より快適だ。背後に剣、毛勝山などが目に入るようになるが、緩むことのない急登にのんびりと景色を眺める余裕もない。
稜線状の尾根に登り着くと初雪山が正面に望める。はるか彼方だ。稜線は左にコースをとり、流れる汗をぬぐいながら、あと一息頑張れば鍋倉山々頂。600メートルの高低差を2時間かけての登りだった。うねるように延びた雪稜の果て、初雪山が鈍色に輝くいぶし銀の造形美を見せてくれる。はるかなその初雪山をのぞめば、行程はまだまだ序の口、やれやれという気分ではない。しばし剣、朝日岳方面の展望を楽しみながら休憩。

鍋倉山から次のポイント大地山が二つのコブを重ねるようにして見える。それほど時間はかかりそうにも見えない。ところがこれが長くきつかった。地図に表れないような小さなコブを越え、400メートル近い高低差を一歩一歩稼いで行く。上空は抜けるような青空、陽光が眩しく降り注ぐ。雪の締まり具合もいい。
急登に喘いで額から背中から汗は流れっぱなし、サングラスがすぐに曇ってしまう。
長かった急登を終わって第二ポイントの大地山へ着く。山頂はわずかに潅木の枝先がまばらに見えるだけ、深い雪に覆われた頂からは360度の展望が広がる。目指す初雪山がかなり近づいた気がするが、まだここから3時間の行程が残されている。初雪山へ延びる雪稜を望見すれば、亀裂の入った雪庇も目に入り、あらためて気を引き締める。

大地山から初雪山までの高低差は440m、普通なら1時間強で歩けるが、その間には目だったピークだけで5つ、これを越えていかなくてはならない。累積高低差は何割も多くなる。剣・毛勝山方面、白馬・朝日岳方面、そして果てしない日本海の広がり、正面には我々を待つ初雪山。まさにこれ以上は望めないような贅沢な雪稜プロムナード、この山岳展望があるからこそ厳しい登りを頑張れる。
この先もワカンの必要がないと判断、ここまでかついできたワカンをデポする。一つピークを越えるごとに高度を少しづつ稼いで行く。そして初雪山もさらに大きく優雅に到着を待ち構えている。
雪庇の亀裂を避けて藪の中を迂回、わずかな距離だが足の置き場もないような酷い藪だ。スパッツに穴をあけてしまうほどの藪だった。

ときおり水分補給で立ち止まるだけ、出来るだけ休まずに足を進める。すでに6時間近い登りに足の疲労感も増している。やや急な雪稜を一歩一歩踏ん張ってようやく最後の大きなピーク1431mに立つ。初雪山はもう手の届くところ、もう一歩の頑張りだ。目の前の小ピークが最後のコブで初雪山の肩、そこまで行けば山頂には手が届く。そのまま休まずに最後の小ピークまで踏ん張った。下ってきた4人パーテイーに「あと15分」と励まされる。樹木1本とてない雪の円頂へ最後の喘ぎがつづく。そして後続の追いつくのを待って一同同時に山頂へ立った。80歳のA氏もほとんど遅れることなく我々と同時だった。私が力を抜いて歩いてわけではないが、ほとんど同じ脚力を持っているのに、まさに舌を巻くほどの驚きだった。

山頂には高さ10mほどの鉄柱が一本、そして日当たりの雪解け斜面に雪の下からわずかに潅木の頭が見えるだけ。360度展望を遮るものはない。西方に剣・毛勝・駒、僧ケ岳など、東には栂海新道の長大な尾根、とりわけ犬ケ岳が目の前に大きな図体を見せている。南に目を向けると朝日・白馬、清水岳とつづく峨々皚々たる雪稜の連なり。万金に値する展望を楽しんで最後の後続が到着するまで1時間を山頂で過ごした。

下山の行程も長い。目立ったピークだけでも7つ8つ越えていかなくてはならない。
夕暮れの迫る前には下山したい。のんびりと歩いているわけにはいかない。ときおり初雪山を振りかえり、山岳展望を復誦しながら、重くなった足を引きずって上ったり下ったりを繰り返して行く。水分補給で飲んだ量だけ水筒に雪を足して水ぎれとならないように心がける。脱水症状が怖い。大地山まで戻ればあとは大きな登りはない。ほとんど下り一方となった雪稜を、ときにはグリセードもどきを楽しむ。

鍋倉山で最後の休憩、初雪山への別れを告げてから登り2時間を要した急な長い下りに向かう。膝痛の不安と、疲労の蓄積した脚に気を使いながら、それでも45分で無事夢創塾登山口へ降り立つことが出来た。
久々に味わった残雪山行の醍醐味に心から満足して帰路についた。


●数多くの小ピークを越える分を除いて、登山口から初雪山頂までの単純高低差が1400メートル余、長大な雪稜を日帰りするのは、ハードコースの名に恥じないものがあります。しかし天気さえよければ特別に難しいコースではなく、ハードの見かえりに余りある抜群の展望を満喫することが出来ます。健脚を自負する岳人には是非訪れてみて欲しい山です。
●なお大地山までは登山道が開かれていて、無雪期でも登れるということです。
●持参した装備で使ったのはスキーストックのみ。
●市振駅南部の大平から登る方が行程は短く楽なようです。ただし展望については鍋倉山〜初雪山ルートが各段に優れているということです。

 
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