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小松原湿原から日蔭山へ=ひかげやま(1860メートル)  (霧の塔)

新潟県 2005.06.25 単独 マイカー 三角点なし
コース l林道ゲート(5.40)−−−車に便乗(6.25)===小松原湿原入口(6.35)−−−上屋敷(7.45)−−−避難小屋(7.55-8.00)−−−日蔭山(8.50-8.55)−−−避難小屋(9.30)−−−上屋敷(9.40-9.50)−−−小松原湿原入口(10.35)−−−車に便乗(10.45)===林道ゲート(11.15)
ワタスゲの揺れる小松原湿原上屋敷の池塘

『いつか登ってみたい』そんな思いを暖めている山はけっこうたくさんある。全部は到底登れっこないが、今回訪れた小松原湿原もその中の一つ。苗場山の北山腹とも言えるところに位置している。
行くなら初夏と思っていたが、どうやらそれに近いタイミングで実現できた。

最初は秋山郷手前の栄村見倉からのコースを予定、新しく出来た見倉トンネル入口の駐車場から歩き始めた。手持ち地図の風穴はすぐに分かったが、その先急登が始まるはずなのにそのコースがわからない。山腹を巻くような平坦道を20分ほどいったところで駐車場まで戻る。40分のロス。
このコースはあきらめて、津南グリーンピア先の林道からのコースに予定変更、車を移動することにした。


津南グリーンピアから「大場」の道標を頼りに進む。道標のない分岐があったりして感を頼りにダートの林道へ入る。荒れが目立つ林道を2キロほどだろうか、ゲートで封鎖されていてその先へは進めない。道標のたぐいは一切無く、小松原湿原へのコースという確信はない。鍵を開けて入って行く山菜採りらしい地元の人に尋ねると、このゲートからそのまま林道を行けばいいことがわかった。

タニウツギやタムシバの咲く林道を45分歩いたところで通りかかった山菜採りの人が「乗っていけ」と声をかけてくれた。ありがたく便乗させてもらう。乗車10分ほどで小松原湿原入口の道標があった。
道標入口から木道が敷設されているが、最初の湿原が下屋敷、草が生えるだけの小さな原で湿原らしい雰囲気はほとんどない。登山道の足元にはひっそりと咲くミツパオーレンやイワカガミ、それに潅木の中に咲くピンクのツヅジがよく目立つ。
潅木林の道を高度が上がるつれて見事なブナ林に変った。梢からの野鳥の囀りが降り注ぐようにして絶えない。勾配も急になってきて階段登りとなる。200メートルほど標高を稼ぐと再び湿原があらわれる。このあたりが中屋敷の湿原で、潅木林との間に小規模の湿原が点在する。シラビソに囲まれ池塘の点在する湿原も見えるようになる。
エンレイソウ、サンカヨウなどの花を目にしながらさらに一投足で、小松原湿原の核心部とも言うべき上屋敷の湿原となる。空の蒼を吸いこんだような池塘群、池塘の周囲はワタスゲが風に揺れ、ピンクのイワカガミが彩りを添える。よく見ると隠れるようにしてヒメシャクナゲもたくさん咲いている。コバイケイソウは葉の中心部に少しだけ穂を出し始めたばかりで開花はまだ1週間ほど先だろう。
漂う雲が池塘に映り、聞こえるのはカエルの鳴き声だけ「グググ・・・ケロケロ」。下界は35度の猛暑だったというのに、ここはやさしいそよ風が心地よく肌をかすめてゆく。尾瀬のような大規模なものではないが、たった一人天上の楽園のような雰囲気に包まれる気分はまさに至福のひととき。

上屋敷からさらに小湿原をいくつか通過して小松原避難小屋となる。きれいな沢水も流れ、泊るには快適な環境にあった。
ここで引き返す予定にしていたが、さらに足を伸ばして日蔭山まで行くことにする。これは神楽峰・苗場山へのルートでもある。
しばらく進むと雪の詰まった沢を渡る。下が空洞になった雪をおっかなびっくり渡渉、その先でも同じような沢の雪渓を渉ってから樹林の急な登りにかかる。歩く人も少ないのか、道は少し荒れてきている。落ちた枝が散乱し、大きな倒木もそのまま放置されている。ひと登りすると、イワカガミが列をなして咲き競う明るい平坦道がしばらくつづく。日蔭山まではもう一度急な登りが待っている。避難小屋から30分もあれば十分と思っていたが、歩きにくい道ということもあって、50分もかかってしまった。地図を見なおすと小屋から300メートルの標高差があった。

【日蔭山】
日蔭山は山頂という感じはなく、古びた杭が立っているだけの尾根の乗越のようなところだった。
今日のコースで唯一の展望地、正面間近に苗場山と神楽峰、西には鳥甲山から志賀につづく山々を望むことができた。
この先には高低差100m余の霧ノ塔(1994m)がある。花の百名山だ。時間にしたら30分もかからないだろう。
このルートの花のメインは小松原湿原、わざわざ霧ノ塔まで足を延ばすこともなかろう・・・と思い、日影山で折り返すことにした。

上屋敷の楽園のような雰囲気をもう一度ゆっくり味わってから、同じコースを林道まで下った。途中、夫婦連れと4人グループに出あっただけの静かな山行だった。

林道をゲートへと下って行くと、10分ほど歩いたところで呼びとめられた。今朝方便乗させてくれたのと同じ人、また乗っていけと声をかけられ好意に甘んずることにする。この林道、上りを全部歩けば1時間半ほどかかる長さがある。
ゲートまで戻ると、採ってきたタケノコ(根曲り竹)をどっさりと分けてくれた。険しい山の中で藪を這うようにして3時間以上もかかって採ってきたものを、惜しげも無くわけてくれる親切、せめて心ばかりのお礼を渡そうとしたがどうしても受け取ってもらえなかった。都会ではめったに味わえない田舎の人の純朴な好意、やさしさを改めて感じ取りった山行でもあった。
 
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