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山梨百名山 雁ガ腹摺山(1874m)
登頂年月日 1989/11/26 天候 快晴 同行者 単独 マイカー利用
東京自宅(4.00)===金山民宿村(6.10)−−−金山鉱泉(6.25)−−−金山峠(7.10)−−−百軒干場(7.20)−−−白樺平(8.10)−−−雁ガ腹摺山(8.40-9.15)−−−白樺平(9.35)−−−姥子山(9.50-10.20)−−−百軒干場(10.50)−−−金山峠(11.05)−−−金山民宿村(12.15)

500円札裏面と同構図(雁ガ腹摺山より)

500円札が硬貨に変わる前、紙幣裏面の
富士山図柄は雁ガ腹摺山から見たもので、そのためにこの山が広く知られるようになったようです。
今や500円紙幣は流通していないのでなじみが薄く、ましてや裏面の図柄が富士山だった事を思い出す人もほとんどいなくなったと思われる。中央線からも雁ガ腹摺山が見えるということであるが、何回車窓から眺めても私にははっきりこれだと言えるほどに確認できたことはない。手前に幾つもの尾根が重なり、雁ガ腹摺山自体抜きん出た背丈もな く地味で目立たないこともあって、探しずらいのかもしれない。
それにしても、雁ガ腹摺山とは長ったらしい、語呂の悪い名前ではないか。山名の由来はそのものずば り、渡りの雁が北から南へ、あるいは南から北へ、その尾根を腹を摺るがごとくに越えて行く山であるところからついたらしい。
この付近に、笹子雁ガ腹摺山、牛奥の雁ガ腹摺山というのもあって、多分この辺りは雁の渡りの銀座通りとでもいうところだろうか。雁は今では宮城県の伊豆沼にしか渡って来ないのだそうだ。
できたらいい写真をと思ってカメラ、三脚を担いで出掛けた。

自動車で大月インターを下りて金山に向かう。
ありが白みはじめたのを機に出発した。澄明な冷気の中、渓谷沿いの道を瀬音を耳にしながら上流へと向かう。15分も歩くと渓谷を挟んで二軒の建物のあるのが金山鉱泉だった。ここまで自動車を入れてもよかった。
鉱泉の少し先で自動車道は切れて、登山道が左手の山腹に登っている。山腹を高巻く感じで林を抜け、再び沢筋におりた。沢筋の紅葉はまだ見ごろがつづき、青空によく映えている。 散り急いだもみじ葉は霜を載せ、その絵模様は足に踏みしだくのも惜しい。
沢を右に左に飛び石を伝い、桟橋を渡って渓谷の奥へと進んで行く。沢の流れはいつしか、か細くなってついに途切れ、浅利川の源頭に来たようだ。ここで砂地のナギを越えるといよいよ金山峠への登りとなる。じくざぐの急登で女性4人パーティーを追い越す。随分早発ちの人たちだ。ひとしきりこの急登に汗を流す と、展望が開けて金山峠の表示があった。背後には富士山が朝日に輝いている。絶好の登山日和となった。

峠から山腹を絡むようにして雑木の道を行き、少し下って渓流の縁に下りた。ここは百軒干場 という妙な名前がつけられていた。昔、収穫した山菜などを広げて干した場所なのかもしれない。
橋を渡り対岸の山裾にとりつく。最初裾を巻いた道はすぐに本格的な尾根を直登する急坂に変わった。勾配が一段落 して尾根道となり、いくつか起伏を越えると、今度は工事中の林道を横断する。再び急斜面の登山道に取り組むと、ほどなく雨量観測計の置かれた広場に出た。そのすぐ先が白樺平だった。道標は右に姥子山、左に雁ガ腹摺山を指している。ここで腰をおろして小休止をとる。

500円札と同じ富士山が見ら れるという期待で、ゆっくりと休んでいるのも惜しく雁ガ腹摺山への最後の急斜面にかかる。右に左に凍りついた地面を踏んでどんどん高度を稼ぐ。大岩が道を遮るように立ちはだかっているところで岩の間を抜けると、雑木の刈り払われた斜面に出た。奥多摩方面の山並みが手に取るように眺められる。左手にカヤトの原があらわれ、登山者の姿が見えてきた。雁ガ腹摺山の三角点はカヤトの原を登ったところにあった。原の中には4〜5人のカメラマンが三脚を据えてレンズを富士山に向けていた。
富士山は秀麗そのもの、まさに日本一の山の貫禄で聳えていた。
山頂にいる人々の多くは大峠からわずか3〜4 0分で登って来た人たちだった。 持参した500円札と見比べると、その図柄どおりであった。

眺望を堪能したあとは、姥子山でゆっくりすることにして、人気の多い山頂を辞した。
姥子山への分岐白樺平からは歩く人も少ないのか、踏跡は薄く、背を越す笹が両側から覆いかぶさり、その下を頭を低くして通り抜ける。工事用のトラックやブルドーザーが置かれている林道を横切って、もう一度笹薮を漕ぐと雑木林の登りとり小さなピークに立った。ここは殆ど眺望がきかない。薮越しにもう一つ先に見えるピークが姥子山々頂だった。一旦下って岩の露出した登り となり、その上の姥子山山頂に立った。狭いながら岩頭という感じの頂上は、東面と南面が遮るものもなく見通せる。むしろ雁ガ腹摺山より眺望は優れていた。山頂を一人独占して、柔らかく降り注ぐ冬の陽の中で、眺望を楽しんだ。

金山鉱泉で風呂に入れてもらう。小さいながらも奇麗な風呂だった。ふうふう言って入るような熱い風呂で汗を流してから帰途についた。
(1989年11月記)


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