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山梨百名山 九鬼山(970m)
登頂年月日 1995/01/21 天候 晴 同行者 単独 電車
新宿駅(7.09)〓〓〓大月駅(8.44-9.00)〓〓〓富士急田野倉(9.15)−−−紺場休場(10.20-35)−−−九鬼山(11.10-12.45)−−−朝日小沢(13.35)−−−猿橋駅(14.35)〓〓〓新宿駅
このあと春日山へ

大月市郊外にひっそりとたたずむ九鬼山は、冬の日だまりハイキ ングのために存在するような小さな山だった。

高尾駅で甲府行に乗り換え。かなり冷え込んだが好天に誘われてかハイキング姿の乗客が目立つ。大月駅から富士急行線二つ目の田野倉で下車、ここから歩き始める。
案内書では『駅から畑の中の道を・・・』とあるが、そ のあたりは新しい家が建ち並ぶ住宅地に変わっていた。国道と平行する道をしばらく辿る。登山口を見落とさないように歩いていると、国道付近の工事車両出入口をガードしている警備員が、大きく手を振って何やら合図している。相手は私らしい。身振りで「その道は違う」と言っている。左折しろと合図していることがわかった。その意味を理解し、手を上げてお礼の意を表して左折すると、そこに九鬼山登山口の道標があった。

陽を遮る木立の林道に入ると、寒々として沢の流れも凍りついていた。このまま林道を礼金峠まで辿り、そこから九鬼山へのコースを考えていたが、林道途中の『九鬼山』標識の余白に、右手の沢へ入って行く別のコースをマジックで書き足してあるのが目に入った。見れば沢沿いにも比較的明瞭な道がついていた。林道は味気無いので予定を変更して沢沿いの道をとった。
ときおり崩落しかかった斜面などもあったが、まずは心配なく遡上。そのうちに道形が怪しくなって来て、ついには道が消えてしまった。途中で間違えたようだ。戻るのも面倒だったので、沢を離れ尾根目がけて急斜面を撃じ登って行った。ずるずると崩れる軟弱な斜面を、潅木にしがみつき手足をフル動員して強引に体を引き上げて行く。道がなくてもたかが1000メートルの山、どっちへどう進んだところで心配するほどのことはないが、予想外の難渋となってしまった。30分ほどのアルバイトですっかり汗をかいたころ、突然はっきりした踏み跡に出た。これが途中見失ったコースのようだった。
歩きよくなった緩い勾配を行くと、すぐに広い平坦地になった。紺場休場という標識があり、礼金峠から来るハイキングコースとの合流点であった。予定外の薮を分けた結果、礼金峠を飛ばして距離をかなり短縮してしまったようだ。木の間越しには滝子山から黒岳、雁力腹摺山等小金沢連嶺が見通せるのを、一服かたがたスケッチしてから九鬼山へ向かった。

九鬼山から小金沢連峰をのぞむ
コースは九鬼山を左へ大きく旋回しながら稜線へ通じている。冬木立のトラバース道は10分ほどて終わって稜線へ合流、そこには朝日小沢の集落へ下る道が、小さなプレートに表示されていた。
九鬼山へは右への稜線上を登って行く。早くも下って来るハイカーに行き違う。岩の露出した急な登りを15分で九鬼山頂上へ到着した。頭上は樹木に遮蔽されて陽もささずうすら寒く、ただ北面が展けているのみで、雲取山から小金沢連嶺の眺めが得られただけだった。
荷物を頂上に残して、この先に好展望の有無を確かめに行くと、思いがけず大きな富士山が見える南斜面があって、数人のハイカーが憩っていた。荷物を取りに戻り、この南斜面で昼の大体憩にした。
正面の富士山の外、北岳、間の岳の白く輝く峰頭や、八ヶ岳を目にしながら、真冬とも思えぬ暖かい陽差しの中で、スケッチを楽しんだり、草に寝そベったりして過ごした。ハイ カーが次々と到着し、声高のおしゃべりが耳障りになって腰を上げた。

下山はハイキングコースを使って禾生駅へ降りる予定だったが、時間の余裕もあったので、思いつきでコースを変更。先ほど目にして来た朝日小沢への下山コースが頭に浮かび、ひとまずそこまで戻ることにした。朝陽小沢集落を示す小さな道標を確認して、薄い踏み跡へ入った。尾根通しに冬枯れの静かな潅木林の中を、落ち葉を踏んでゆっくり下って行く。地元民が山仕事用に使う道であろう。道は細々ながら何とか続いていた。最後は滑り落ちそうな急傾斜を、樹木に体を支えながら下って行くと沢へ降り立った。後ははっきりした道を進むとほどなく朝陽小沢の集落だった。人影もなく昼下がりの小さな集落は、ひっそりと静まり返っていた。
舗装された車道を約1時間で猿橋駅に着いた。
(1995年1月記)


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