kai-035 山梨百名山一覧表へ  「山岳巡礼」のトップへ戻る

山梨百名山 奥秩父 鶏冠山(2115m)
登頂年月日 2003/05/29 天候 晴れ 同行者 計4名 マイカー利用
牧丘道の駅(2..30-4.30)===西沢渓谷入口駐車場(5.00)−−−渡渉(5.35)−−−休憩(6.30-35)−−−尾根上(7.10-15)−−−第1岩峰(7.45-55)−−−第2岩峰(8.30-40)−−−第3峰=鶏冠山標柱(9.25-45)−−−第4峰=2115m(10.10-40)−−−第5峰(10.55-11.00)−−−第4峰(11.17-25)−−−第3峰北の分岐(11.45)−−−第2岩峰(12.37-50)−−−休憩(13.40-50)−−−鶏冠谷出合(14.30-35)−−−駐車場(15.20)
 
鶏冠山第3峰

山梨百名山の中で、整備された登山道がないなどの理由で、熟達者のみ登頂可能と言われている山が二つある。一つは南アルプスの笹山、もう一つが今回登った鶏冠山である。敢えて言えば南アルプス鋸岳もその範疇に入るのかもしれないが、整備不充分なるも一応登山道はあるので、体力にさえ問題がなければ誰にでも登ることができる。
結論から言えば、この鶏冠山は岩場などの慎重を期さなくてはならない箇所は何ヶ所かあるものの、ルート的には道標などの整備もされているし、踏跡も判然としていて、ほとんど問題は感じることなく登れる山になっていた。多分山梨百名山に選定されてから、登山者の数が増えたことによるものだろう。

山梨の山に精通したベテラン同行もあって、構えて挑んだ気持ちが、少し拍子抜けするくらいだった。
今回の山行に案内として同行してくださった山梨県在住のC子さんとEさんは、鶏冠山へは何回も登っている精通者、それと1周間前に登ったが生憎の雨天、山の味わいを確かめる余裕もなく、もう一度登って困難と言われる山の正体を確認したいというF子さん、合わせて4人。

牧丘道の駅4時半集合、西沢渓谷入口駐車場を出発したのが5時。上空には紺碧の空が広がり、申し分のない登山日和となった。
西沢渓谷左岸沿いの遊歩道をしばらく進むと、二俣吊橋を渡る。揺れる橋の中ほどからは、朝日を浴びた岩峰鶏冠山の眺めがいい。険しさにチャレンジする意欲が湧いてくる。
吊橋の先で遊歩道と別れて東沢へ入るが、この入口にはロープが張られて「立入禁止」の表示がある。この先も道はしっかりしているし、道標もきちんとしていて迷うことはないから、進入禁止とすることもなさそうに思われる。「初心者には困難なルート」くらいの表示にすればどうだろうか。
ロープをまたいで進入した東沢沿いのルートは、踏跡も明瞭で普通の登山道となんら変わりはない。堰堤の先で転石の河原へ降りる。右岸から左岸へ、左岸から右岸へ、また右岸から左岸へと3回の渡渉を繰り返す。水量は膝下で楽に渡渉する。私は渡渉と岩稜歩きに備えて、足ごしらえはジョギングシューズ。履き替えの必要もなく、濡れたままでいっこうに構わない。履き替えは煩わしいし、時間のロスも考えていつもこのスタイルである。
3回目の渡渉が終ったところが鶏冠谷との出合。河原の枯れた大木に「鶏冠谷出合」の明瞭な表示、見落とすことはない。

右手の鶏冠谷へ入るとすぐに左手の山腹へ取りつく。先ほどは「立入禁止」の表示があったのに、道標の方は完備されているのが面白い。最初はほどよい勾配の一般登山道と何ら変らない。まぶしいばかりの新緑を透かして紺碧の空とのコントラストが素晴らしい。肺の中が洗われるような気分だ。しかしそんなのんびりムードは最初だけ、そのあとは鉄砲登りとなって、急登につぐ急登がつづく。たちまち汗がしたたる。
一本道で迷うところはない。オーバーハング気味にせりだした岩屋のようなところを2箇所通過。途中で一本立ててから尾根上へ登り着いた。約2時間かけて600mの高度をかせいだというこになる。
本格的な登りはまだこれからも待っている。

尾根を登り詰めたところが岩峰の南端“第一岩峰”、やれやれという気持ちにさせてくれる雰囲気がある。花に造詣の深いF子さんがクモイコザクラを見つけて教えてくれる。ハコクサンコザクラをさらに可憐にした感じの花だ。涼風に汗が引いて行く。
一息入れて出発。しばらくは一般登山道と同様の道がつづくが、やがて岩場が現われる。奥秩父の名花シャクナゲが次々と出迎えてくれる。今年はウラ年ということだが、それでも十分にピンクの花を楽しむことが出来る。コメツガ樹林も奥秩父の雰囲気を感じさせる。
コースがやや分かりにくい箇所には、赤テープなどの目印があるから心配は要らない。注意を要する岩場の通過も、特別難路というほどでもない。とは言え、普通の山なら当然ロープか鎖の取りつけられるような岩場、慎重さが求められる。
ロープは携帯していたが、使うこともなく第二峰へ立つ。「第二岩峰」の表示がある。展望良好。富士山の姿は8合目から上あたり、金山、乾徳山は目の前だ。
第三峰は東側の迂回路を巻くことになる。藪っぽい道を、道標とテープに導かれて少し下り、稜線へ登り返すと道標がある。南方向へ少し戻り気味に2、3分進んで山梨百名山の標柱のあるピークに立つことができた。山梨百名山の91座目である。

富士山、奥千丈岳などの山並みを眺めながら、しばし満足感を味わった。
地図によると鶏冠山は、この先の2117メートル第4岩峰ということになっている。なぜその手前の第3峰に山梨百名山の標柱が立てられたのか、ちょっと不可思議な点であるが、明確な理由はわからない。我々は2117メートルピークの4峰へ向かった。特に危険を感じる箇所もなく4峰へ到着。木賊山の陰に隠れて、なかなか姿を見せてくれなかった奥秩父の雄甲武信岳が、その三角錐をよやく目の前にあらわした。この4峰は狭いピークである。

4峰へザックを残して、さらに5峰を往復することにした。
5峰のピークも展望は絶佳、木賊山、甲武信岳、奥千丈岳、朝日岳、富士山・・・・。しばし展望を楽しんでから引き返した。

下山時は、コースが迂回したりするところで、間違えないように赤テープなどの確認を怠らないことが必要。こうした岩山は、うっかり谷へ下りてしまうと、ニッチもサッチも行かずに立ち往生する危険性がある。
第2岩峰からの岩場の下りで、念のためにザイルを出したが、ザイル無しでも降りられないことはない。しかし下山時に事故の多いことを考えると、ザイル使用が適切だろう。今回の山行でザイル使用はこの1ヶ所のみであった。
下山は3時20分、行動時間10時間余の行程であった。
終日快晴に恵まれ、仲間に恵まれて思い出に残る山行となり大満足。

鶏冠山は、木の根につかまり、木の幹にしがみつく急登がつづき、脚より腕の方が主役という感じさえする。さしづめ手で登った山と言っていいかもしれない。


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