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山梨百名山 アサヨ峰(2799m)
登頂年月日 1990/10/21 天候 晴れ 同行者 妻 マイカー利用
●東京(4.00)===広河原(7.05)−−−白凰峠入口(7.20)−−休憩2回−−白凰峠(10.10)---赤薙沢の頭(10.30−11.00)−−−広河原峠(11.35)−−−早川小屋(12.10) ●早川小屋(5.25)−−−2463m三角点(6.10)−−−ミヨシの頭(6.40)−−−アサヨ峰(7.20-30)−−−栗沢山(8.15)−−−仙水峠(9.00-9.20)−−−仙水小屋(9.40-50)−−−北沢峠(10.50)===広河原

背後がアサヨ峰
≪第一日≫
鳳凰三山と仙水峠の間に位置するこの早川尾根は、夏の最盛期でも登山者が比較的少ないという。アサヨ峰2799メートルをはじめとして 2500メートルを超えるいくつかのピークを有する、堂々たる山稜である。

夜明前の4時に自宅を出て、登山基地の広河原着6時50分。気持ち良く晴れ渡った空を仰いで出発した。1ヶ月前に日本百名山完登を果したあとは、雪の舞う平標山へ登ったのみ、一区切りついたあとの山行が大変新鮮に感じる。北岳が朝日に映える姿が凛々しい。大樺沢の紅葉は今が盛 りのようだ。
北沢峠へのシャトルバス専用道のゲートから10分ばかり車道を歩き、白凰峠への道標で登山道へ入る。最初の一歩から鼻がつかえるような急登だ。針葉樹林の薄暗い道を妻のペースでゆっくりと登っていく。ときおり背後を振り返って樹間越しの北岳を眺める。
トラバース気味の緩やかな勾配に一息いれたり、岩場を梯子で通過したりしたあと、もう一度厳しい登りが待っていた。視線を足元に落してひたすら足を持ち上げて行く。黒木の樹林がまばらになって明るくなると、間もなく針葉樹林を抜け出る。

岩の道を伝うと突然目の前が開けて岩石重畳とした斜面に変わった。今まで閉ざされていた視界がいっペんに広がり、眼前に北岳の威容が迫力をもって迫って来た。大樺沢を突き上げた絶巓が紺碧の空に聳立し、両翼に池山吊尾根と小太郎尾根を引いて、北岳をこんなに大きく見たのは初めてのことだった。その山容を眺めながら大休止。足下の斜面に鮮やかな黄葉はカラマツだろうか。そして北岳の山腹は赤や黄色の絵の具を飛ばしたように錦秋の模様を作っていた。

岩石帯を後にして樹林に入ると早川尾根、白凰峠はすぐだった。
広河原からここまで900メートルの標高差を3時間の登りだった。峠は静まりかえっていた。右が鳳凰三山、 左が早川小屋への道である。
潅木の茂る少し薮っぼい道をだらだらと登って行くと、ようやく展望のきく小ピークに出た。赤薙沢の頭(2553m)と呼ばれるピークだ。大展望が視界に飛び込んで来た。まず目につくのが兜のような甲斐駒ヶ岳、 西方にはこれから辿るミヨシの頭(2553m)からアサヨ峰(2799m)へと起伏 して連なる早川尾根。南には北岳が相変わらず巨躯を見せている。ここから見る仙丈ケ岳はやや凡庸だ。

広河原峠へ向けて一気に下って行く。 もったいないような下りがつづき思わず嘆息が洩れる。とどまるところなく、どこまでも下って行ってしまいそうだ。下り着いた鞍部が広河原峠で、シラベの中に大きなダケ樺が一本、峠の目印のように立っていた。
峠からひと登りすると平坦道となり、樹林の切り開きに建つ早 川小屋は意外に早くあらわれた。まだ誰も入っておらず、窓の板戸を押し開けてから入ってみると中は結構広かった。
小屋の南に面してテント場もある。シラベの梢越しには北岳の頂上部が見えていた。昼食を済ませてから、30分ほど登ったところの好展望ピークまで行ってみた。摩利支天を正面にした駒ヶ岳が一層近く見える。富士山も遠望できる。角度を変えた北岳は三角錐の鋭さが際立っていた。 この日の早川小屋は12〜3人の宿泊となった。

≪第二日≫
5時少し前に起床。外に出ると降るような星空だった。真っ白に霜が降りている。簡単な朝食を摂って、まだほとんどが寝入っている小屋を後にした。
15分も歩くと明かりも要らないほどになる。鳳凰三山の上がオレンジに染まり日の出がま近い。雲ひとつなく晴れ渡った空にもかかわらず、日の出のそこだけに雲が残り、期待した御来光は見られなかった。
昨日足をのばした早川尾根の頭からモルゲンロートに染まる山岳展望を楽しむ。昨日にも増して素晴らしい展望が広がる。北岳、甲斐駒、仙丈、鳳凰、富士、八っ、蓼科、奥秩父、中ア、白山、御岳、乗鞍、北 ア・・・遠く妙高方面や谷川、日光の連山。 またとない快晴に恵まれて、浮き浮き気分でミヨシの頭にかかると、いよいよ森林限界を越えて、目に余る程の大展望がほしいままである。

本コース最高峰のアサヨ峰(2799m)はさすがに風が冷たい。昨夜ここに幕営した登山者が、寒くて寝られなかったらしい。
頂上からはやや険しい岩稜の下りで、悪天のときにはルートがわかりずらく手こずりそうだ。岩稜を慎重に下って鞍部から再び登り返した頭が栗沢山(2714m)。ここからは甲斐駒が目に入りきらないほどに大きい。花崗岩に覆われた山肌に錦を散りばめたような紅葉の紋様が、一服の絵を見るような心地であった。
早川尾根縦走が終ると仙水峠に向けて一気の下りとなる。落ち込むようなガラガラした急斜面が、やがてハイマツやミヤマハンノキの道となっても、相変わらずの急勾配がつづき、膝ががくがくするころやっと樹林の中に入って仙水峠の近いことを感じる。 秋の陽が燦々と降り注 ぎ、傍らにはナナカマドが真っ赤に色付いている。
仙水小屋経由で北沢峠へと下ってこの山行を終った。

(1990年10月記)


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