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山梨百名山 杓子山(1598m) 鹿留山(1632m) 高座山(1260m)
登頂年月日 1991/01/05 天候 快晴 同行者 単独 電車利用
新宿駅〓〓大月〓富士吉田駅==バス==内野(9.10)−−−立塚峠(9.50)−−−子の神−−−鹿留山(10.35-45)−−−子の神−−−杓子山(11.10-12.00)−−−高座山(12.40)−−−鳥居地峠(13.05)−−−下吉田駅(14.25)

鹿留山・・三等三角点   杓子山・・三等三角点   高座山・・四等三角点

杓子山
正月松の内、初登りは富士山展望の杓子山。三ツ峠山と並ぶ富士山展望の山だという。
自宅を早朝4時過ぎに出て、大月経由富士急線富士吉田駅へ。吉田駅からバスに乗車、終点ひとつ手前の内野で下車。

内野峠への道を、居合わせたおじさんに尋ねると、親切に教えてくれた、ところがどうも様子が変だ。いったん戻って、自分の判断で道を拾って行くとそれが正解だった。
冷え込みが厳しい。舗装道から地道に変わり山の中に入って行く。道幅は広く自動車が楽に通れるほど。山道らしい分岐があったので、味気ない林道を捨ててその山道らしい踏み跡を辿ってみることにした。
やがて倒木が行く手を邪魔しはじめた。踏み跡も頼りなくなってきた。薮の薄そうな右手斜面を這い登って尾根に出れば、先程の林道に出会えるだろうと判断、がむしゃらにその斜面を撃じ登る。汗が流れる。尾根に登ってみたが林道は見当たらない。地形から推測して、林道はさらに向こうの尾根の先を巻いているようだ。この尾根を登って行くよりしょうがない。登り詰めて主稜に出れば、それが内野峠から鹿留山へのルートの途中であるはずだ。薮を分けたりして道のない尾根を登って行く。
なんとなく踏み跡らしい様子が見られるようになり、ひと登りするとはっきりした登山道に出ることができた。これが内野峠から鹿留山への正規のルートだった。

やれやれという思いでひと息ついてから、やや下ったカヤトの鞍部から本格的な急登となる。ひとしきり足場も不確かな急登がつづく。
露岩の登りもあったり して、急登を終ったところが子の神で、ここで小休止。さて鹿留山へと進むがそれらしいピークがない。見回すと先程小休止した子の神ピークの逆方向に、樹木に覆われた盛り上がりが見える。それが鹿留山山頂だ。逆戻りして鹿留山のピー クに立った。
ブナの巨木に囲まれた静かな山頂だ。樹間を透して富士山が見える。御正体山が東方に大きく、西にはこれから向かう杓子山、それに三ツ峠山も間近く、その背後には南アルプスの銀嶺が峻険を連ねている。  

再び子の神を通って杓子山へ向かう。ここからは終始富士山を目にしながらの気持ち良い展望の尾根歩きだ。子の神からすぐの露岩の上は富士山の申し分ない展望台、裾から山頂まで遮る物もなく、それこそ全容を一望のもとだった。今年は雪が少なく、六合目から上が雪化粧で、全体としてはまだ黒っぽさの残る富士山だった。

冬の陽差しを受けながら、こぶを二つほど上下すると杓子山山頂だった。
裸地の山頂には数人の登山者が休んでいる。
澄明度の良い冬の大気に、清々しい眺望が展開していた。
視野一杯に飛び込んで来るのは富士山。山中湖がきらきら光り、芦の湖と箱根連山、河口湖と御坂山塊、愛鷹山、雨ケ岳・・・と富士を取り巻く山々。そして目を引くのは3000メートル連嶺を連ねる南アルプス。さらに北部の展望が加わる。それは金峰山、甲武信岳の奥秩父連峰から始まり、滝子山、大菩薩嶺、黒岳、雁ガ腹摺山、飛竜山、さらに奥多摩の雲取山、川乗山、三頭山、御前山、大岳山という馴染みの山々。
雲ひとっない快晴の山頂で1時間近くも展望を楽しみ、のんびりとしたひと時を過ごした。

明日は1月6日、私が直腸ガンの手術を受けて、満5年を迎える日だ。吸い込まれそうな青空の下で、富士山をぼんやりと目にしながら、5年前のその日のことが思い出された。こうして山を歩いていられるのが不思議な気さえする。

帰路は山頂から急斜面をかけおりて、15分ほどで林道に出た。相変わ らず富士山の眺めがいい。その先は林道を離れて、高座山から鳥居地峠経由のコースをとる。
潅木の小さな登り降りを過ぎて高座山の山項に立つと、ここも遮るもののない富士山だった。山頂下には冬枯れのカヤトの原が延びやかに広がり、のどかな景観を見せていた。

長い長い舗装道を辿りながら、富士山展望の一日を反芻して下吉田駅へ向かった。

(1991年1月記)


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