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山梨百名山 王 岳(1623m)
登頂年月日 1995/01/07 天候 快晴 同行者 単独 マイカー
根場民宿村(7.00)−−−林道終点(7.25)−−−鍵掛峠(8.15)−−−古沢山(8.25-35)−−−王岳(9.15-50)−−−鍵掛峠(10.30-45)−−−根場民宿村(11.30)

王岳山頂

この年の初山行は、富士山の眺めを楽しむことにして、正月明けに王岳へ出かけた。御坂山塊西部、精進湖の北に位置して、標高は1623メ ートル。標高差600メートルの軽いハイキング。

富士五湖のひとつ西湖西端の根場集落を、北の山へ向かって少し入った所に『薬明大神』がある。ここに鬼ケ岳登山口の表示があり、道路脇の空き地に駐車して歩きはじめる。
今朝の冷え込みは厳しかった。薬明神社から林道を行く。毛糸の手袋をしていても指先がじんじん痛むほど。早く体を暖めようと、手を大きく振って早いテンポで足を運ぶ。冬枯れの山は、朝陽を浴びて薄紫色に輝いている。25分ほどで林道が終り、山道に変わると勾配も急になって来た。
樹林の中をじぐざぐに登って行く。この道は、以前十ニケ岳 〜鬼ケ岳と歩いたとき、下山に使った道であるが、記憶もすっかり薄れている。
ようやく体も暖まって来ると、足の動きもなめらかになってきた。山道を1時間近く歩いて稜線上の鍵掛峠に着いた。北の谷から頬を突き刺すような凍った風が吹き上げていた。南には端正としか言いようのない富士山が、大きなただずまい見せている。いろいろな山に登り、さまざまな角度、さまざまな高さ、さまざまな距離から、春夏秋冬、朝昼夕、さんざん眺めて来た富士山であるが、この角度から眺める冬の富士が一番美しいような気がする。山頂から裾野まで余すところなくその全容を眺望し、雪化粧した山肌に射す朝陽はまだ東面のみ、北面は綱鉄のような堅い翳となって引き締っている。
斜光線の富士山は注意深く眺めると、山襞の重なり具合や、山頂の小さな凹凸の変化も鮮明に浮かび上がって、新しい発見をしたような新鮮さがある。

鍵掛峠から稜線を西へたどり、最初のピーク、古沢山で休憩をしながら富士山をスケッチする。稜線は潅木のためあまり展望はきかないが、それでもときどき北に奥秩父、八ヶ岳が見え隠れする。
コースは少し薮っぼいが、道ははっ きりしていて心配はいらない。積雪を予想して来たが、日陰にわずかに認められる程しかない。しかしうっかりすると落ち葉の下の凍った地面に足を滑らせる。

鍵掛峠から1時間余で目的の王岳へ到着。ニ等三角点を確認、山頂は樹木に遮られて全く展望はない。好展望地を探して少し先まで行ってみたが無駄だった。
記念写真を撮ってから鍵掛峠へ戻る途中、3メートルほどの岩塊突起に上がって見ると、南アルプスから八ヶ岳へかけての展望が得られた。
甲斐駒ヶ岳、 仙丈ケ岳、白峰三山、塩見岳、荒川三山、赤石岳、聖岳と南ア3000 メートル峰がすべて望める。白銀に輝くその連嶺は、まさに紺碧の空を画する巨大な屏風だった。
岩塊下の南面の枯れ草に腰を下ろし、冬陽に抱かれながら富士山を眺めてひとときを過ごした。

富士山展望の目的を果たした初登りだった。
(1995年1月記)

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