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山梨百名山 小楢山(1713m)
登頂年月日 1991/01/19 天候 快晴 同行者 単独 マイカー利用
勝沼===豊平(7.00)−−−池平入口分岐(7.15)−−−ダルマ岩前(7.55)−−−小楢峠(8.45)−−−小楢山(8.55-9.35)−−−小楢峠(9.40)−−−ダルマ岩前(10.10-20)−−−豊平(11.00)

小楢山からの富士山
真冬の東京は晴天がつづく。快晴の天気予報に誘われて奥秩父前衛の小楢山ハイキングにで かけた。
未明に大田区の自宅を出発。塩山市から登山口までは、ぶどう畑の中を縦横に走る道にとまどったが、2時間余で到着。シルエットの富士山に暁光があたって、茜に染まって行くところだった。
“あっ、あけない。登山靴を忘れた”
どうする、登山をやめるのもいまいましい。雪さえなければ、このジョ ギングシューズでも心配ないが、雪に埋まるようだと無理だ。行けるところまで行ってみることにした。

寒い、マイナス5度はあるだろう。耳が痛い。
富士山を振り返りながらぶどう畑の中を、つま先上がりに上って行く。ぶどう畑が終わると舗装が途切れて山間に入る。しかし自動車の通れるほどの幅がある。日陰にわずかに残っていた雪も、徐々に多くなって来た
左側がカラマツ、右は赤松林に挟まれた林道を、雪が靴にくっつかないように気をつけて歩く。靴が埋まる程ではないので、いまのところ濡れる心配はない。

1時間でだるま岩の前に着く。『左峠道、右古那羅道(母恋し路)』の標識がある。雪がやや多くなってきた。ここで林道が終わって、いよいよ山道となり傾斜が増して来た。
気温が低いせいかさらさらした雪で、靴にべったり付着しないので助かる。まだ引き返すまでの状態ではない。

本格的な登りとなって汗が流れる。登り着いた稜線が小楢峠だった。左へ行くのが幕岩から父恋し路、右が小楢山。急に雪が深くなる。靴は完全に埋まってしまう。小楢山まではあと15分、靴が濡れてもいいから頂上まで行ってみよう。せっかくここまで登って来たのだ。
無垢の雪に足跡を残して小楢山へ。吹き留まりではくるぶしまで潜る。しかし乾いた雪が幸いして、すぐには濡れて来る気配はないが、足首の靴下が湿ってきた。
10分ほどで四阿屋のある山頂に着いた。足を踏み入れるのが勿体ないような、処女雪の山頂だった。
山頂は潅木等が邪魔をして好展望とは言い難かったが、南側が開けていて富士山が御坂山塊の後方に美しい。
山頂北側の広々とした錫杖ケ原がいい展望台だった。白銀の八ヶ岳連峰が、紺青の空と対比して素晴らしいコントラストを呈している。甲斐駒から南へ、南アの連峰も鮮やかに浮かび上がっている。靴など気にしないでここまで登って来てよかった。
すぐ先にはカヤトの乙女高原がなだらかだ。その向こうに奥秩父の金峰山五丈岩もはっきりと見てとれる。 頂上付近を歩き回っているうちに、靴がすっかり濡れてしまった。足が凍えてくる。まさか凍傷の心配はな いと思うが、1703メートル、頂上の気温は氷点下何度か、かなり低いはずだ。素晴らしいこの展望に、もう少し滞頂したかったが、足が冷たくなりきらないうちに急いで下山することにした。

歩き出すと体が暖まり、いつか足の冷たいことは忘れていた。

〔1991年1月記〕


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