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山梨百名山 三方分山(1422m)
登頂年月日 1995/03/14 天候 快晴 同行者 単独 マイカー利用
精進湖(6.05)−−−パノラマ台(7.00-7.15)−−−三方分山(8.30-40)−−−休憩50分−−−精進湖(10.40)

人知れぬ地味な山頂
読み方がわからなかったが、以前から変わった名前の山だという印象を持っていた。“さんぽうぶんざん”と読むらしい。精進湖のすぐ北の山である。

登山口付近の精進湖県営駐車場に着いたのが6時前、明るくなりはじめてちょうどいい時間だった。上々の好天、日の出前の黒い富士山が、精進湖の向こうに泰然と聳えている。間もなく暁の光を浴びて赤銅色に染まって行くはずだ。
パノラマ台バス停が登山口で、案内板にしたがって登りについた。観光客用に整備された道で、一歩ごとに精進湖の水面が低くなって行く。20分ほど歩いたころ、朝日が射して富士の雪嶺が眩しく輝く。
セピア色一色に見える冬木立も、陽光を受けると急に生き生きとして、微妙な色の変化を見せて、思いのほか豊かさがあふれている。

歩きはじめは雪はなかったが、そのうちに氷化した雪 を見るようになる。稜線に近づくと完全に雪道に変わった。ハイカーに踏み固められ、足の幅だけのトレールがついている。
稜線まで登ると道標があり、右が三方分山、左がパノラマ台となっている。パノラマ台へ寄り道をしてみることにした。稜線を左へ入ると積雪は30センチ、しかしトレールはしっかりしている。15分ほど登って行くと樹林のピーク、当然このピー クが展望台と決めて登ってきたのに、樹木に囲まれて展望台の雰囲気ではない。訝りながらトレールを追って下って行くと、突如展望が開けて、視野一杯の富士山が目に飛び込んできた。ここがパノラマ台で雪の中に四阿屋が建っている。見飽きるくらい見てきた富士山であったが、やはり整ったその見事な美しさには圧倒される。360度の展望盤があるが、実際には樹木が邪魔して南アルプス北部や奥秩父方面は望むことができない。聖・赤石・笊ケ岳などが白銀に輝き、雨ケ岳は目の前にあった。  

登って来た稜線の道を道標まで戻り、三方分山への表示を確認して、そのまま稜線を北上。雪の踏み跡を利用して歩くが、歩幅が合わなくて歩きにくい。踏跡を外すとすねの下あたりまで埋まる。
ミズナラ、アセビの潅木がつづく、気持ちのいい雪の稜線だ。ときどき左手の木立を透かして南アルプス連峰がかいま見えたりする。
索道痕跡の残るピークに出る。周囲の樹木は皆伐されているために展望がいい。ことに南アルプスの眺めがよかった。鳳凰三山から北岳・間ノ岳・塩見・ 荒川三山・赤石・聖・上河内岳とつづく高峰群は銀の鎧を朝陽に輝かせ、藍色の空に対比するその素晴らしい景観に魁せられた。

小さな突起をいくつか越えて行くと、ピークというほどには見えない雪の高みに、三等三角点が頭をのぞかせていた。これが三方分山かと思ったが何の表示も見当たらない。三方分山ではないらしい。
稜線を下降した鞍部が精進峠だった。三方分山はもう少し先にあった。
精進峠から三方分山まではひと登りと思ったが、けっこう急な長い登りだった。急登が緩んで山頂の近いことを感じ、意気込んで達したピークは、思いもかけぬ地味さで、展望もなくがっかり。雪の中の小広い空間に、三方分山と書かれた小さなプレーとが、立木にかかっているだけだった。
カメラを持たずに来たので、山頂の感じをスケッチにとどめた。ここから釈迦岳をピストンすることを考えたが、その釈迦岳はこの山頂より200メートルも低く、再びここまで登り返して来る気分になれず、今日はこれで下山することにした。

女坂の鞍部まで下り、王岳への稜線コースと別れて、精進湖への道を下った。

(1995年3月記)


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