kai-073 山梨百名山一覧表へ  「山岳巡礼」のトップへ戻る

山梨百名山 飛竜山(2069m)
登頂年月日 1993/12/11 天候 晴れ 同行者 単独 マイカー利用
八王子IC===後山林道終点(7.15)−−−三条の湯(7.45)−−−北天のコル(9.20)−−−飛竜権現(9.50)−−−飛竜山(10.10-15)−−−休憩10分−−−北天のコル(11.00-11.10)−−−昼食10分−−−三条の湯(12.00)−−−後山林道終点(12.25)

シラビソ樹林の中の飛竜山々頂
飛竜山だけを登ろうとすると、アプローチは意外なほど不便な山である。

未明4時半、大田区の自宅を出発したが、後山林道終点の登山口へ着いたのは、2 時間半後の7時だった。
電車、バスの公共交通機関利用では、日帰りはとても無理である。

奥多摩湖畔を過ぎて“お祭”から三条の湯の看板を目印しに後山川に沿った林道へ入る。昨夜の雨で落下したらしい2〜30センチの岩片が方々に散らばっていて、また落ちて来るのではないかと心配になる。ダートをほば30分走ったところで林道は終っていた。

夜来の強い冷雨もすっかり上がり、狭い渓谷の頭上にはコバル トブルーの空が広がっている。
林道終点手前の駐車スペースに自動車を残して出発。登山道へ入り、青谷川にかかる橋を渡ると、三条の湯への気持ちいい落葉樹林の道となる。樹木名が記された札を見ながら歩くが、木の名前はなかなか覚えられない。 アオシデ、ナツツバキ、カツラ、ウリハダカエデ、イヌシデ、ミズメなどのこの林には、“山梨県の林百選”の看板があった。

体が暖まってきたころ三条の湯の建物が見えてきた。山腹を削った猫の額ほどの小平地に建っている。山間に溶け込むような自然にたたずまいで、周囲の景観によく同化 していた。
三条の湯で道は三つに分岐する。雲取山方面とサラオ峠方面、それに私がこれから向かう飛竜山方面の三つ。建物の背後に登って行く道が飛竜山への道である。
相変わらず明るい樹林の道はよく整備され、落ち葉 が厚く積もっていかにも冬の日だまりの心地よさを感じる。柔らかな初冬の陽差しを背中に負って歩く道には、50メートルごとに海抜高度が表示されている。ペースを図ると、50メートル5分だった。つまり1分間に10メートルづつ高度を稼いでいるわけである。1時間600メート ルならば日ごろの自分の認識と一致、納得する。

汗がしきりに流れる。たまらず1400メートル地点でTシャツ1枚になった。縦走路の稜線は雪が白く見える。登山道は稜線目がけて山腹を斜行するようにつけられていた。
足元に薄く塩をまぶしたほどの雪が見えて来た。そしてはっきりとした足跡が雪の上に残るようになって来た。それでも依然としてTシャツ1枚で歩いてちょうどいいくらいの暖かさだった。
高度が1700メ ートルを越えて来ると、さすがに肌に感じる風は冷たくなってきて、長袖シャツをまとった。  

雪の上には鹿やタヌキ、狐の足跡がつづいている。 稜線の北天のコルまでは、三条の湯から約1時間30分だった。標高差が800メートルだからまずまずである。このコルは雲取山から甲武信岳、金峰山方面への奥秩父縦走路にある。その雲取山は指呼の距離に見える。大菩薩連嶺方面がややぼやけているものの、幾重にも峰を重ねて連なっていた。
縦走路の雪は10センチくらい、足跡もない道を飛竜山へ向かった。
登山道は稜線からやや下がった南側につけられている。飛竜山は遠くから望むと、あばら骨を剥き出しにしたような皚々とした険しさを見せているが、登山道もやはりそんな斜面を危なっかしくへつるように拓かれ、丸木造りの桟道がいくつも架けられていた。
吹き留まりの雪は30センチを越す所もある。

雪を踏んで稜線を約30分、飛竜権現の社の前に着く。十字路になっていて、直進する縦走路、南へ下って行く前飛竜山への道、そして黒木の樹林の中を北へ登って行くのが飛竜山ピークヘの道。
ピークヘの踏み跡は分かりにくいと聞いていたが、思ったよりはっきりしていて、迷うようなことはなかった。神社からひと登りした後、一度小さく下ってもう一度登ると、黒木樹林の中の平坦部となって、その一角が三角点のある山頂だった。まことに素っ気ないような地味な山頂で、縦走路から外れているため、わざわざ訪れる人も少ないようだ。眺望もほとんどきかず、ただ南側がわずかに切り開かれて大菩薩方面が望めるだけだった。

記念写真を撮ってすぐに来た道を引き返した。
三条の湯から稜線を振り仰ぐと、天候は急変してしぐれの気配だった。早く下山してきてよかった。
(1993年12月記)



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