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東北百名山 小又山=こまた(1367m)火打岳ひうち(1236m)
登頂年月日 2007.06.19 天候 快晴 同行者 単独 小又山 三等三角点
火打岳 一等三角点
地図 夏油温泉南東
新道コース登山口(4.00)−−−2.5合目表示(4.45)−−−二の坂(4.55)−−−5合目表示(5.20)−−−三の坂−−−8合目表示(6.00)−−−火打岳(6.20-6.30)−−−砂利口(7.00)−−−休憩(7.50-7.55)−−−小又山(8.40-9.05)−−−砂利口(10.15-10.25)−−−沢(10.50)−−−土内川渡渉(12.00)−−−新道コース登山口(12.40)

牛形山は『東北百名山』とともに『日本の山1000』でもある。
火打岳


前日牛形山を下山、夏油温泉で汗を流してからこの火打岳登山口へ移動してきた。夕刻火打岳から下山してきた中年の男性から情報を入手。この界隈の山にかなり詳しく、参考になることも多かった。
ルートとして考えていた砂利口コースは、近ごろ歩く人も少なく、荒れていてわかりにくいかもしれないという。コース状況としては吊橋から新道コースをとるのがいちばん無難だろうとのアドバイス。ただし火打、小又2座の日帰りは体力的にもかなりハードになるようだ。
(砂利口コース、新道コースとも2万5千図には載っていない。)

ネット情報でもこの2座を日帰りしたという記録は1件しか見当たらず、それも何年か前に砂利口コースをとったものだった。諸情報を重ね合わせると、新道コース利用で2座を往復すると11時間〜12時間コースになりそうだ。数年前だったらこの程度は考える必要もなく即座にチャレンジしていたが、この歳になるとやはり慎重にならざるを得ない。
体力的、時間的に無理と判断したらそこで引き返すことにして、新道コースからの2座日帰りに挑戦することにした。幸いにもいちばん日の長い時期、天気も間違いなく快晴という予報で条件は申し分ない。



神室山地の大きな登山案内看板の立つ吊橋前の広場に車を止めて車中泊。

明るくなるのを待って出発する。吊橋を渡り、杉林の中をしばらく進むと待ってましたとばかりに急登が立ちはだかる。長々とつづく固定ロープを頼って腕力脚力の両方で這い上がっていく。体調はすこぶる良好、いい感じで歩けそうだ。
気がつくと樹相は落葉樹に変わっている。ひたすらの我慢で高度を稼いで行く。火打岳までの標高差は800メートル余、それほど大変な登りではないが、そのあと小又山への長い行程を考えるとのんきにはなれない。

2.5合目の表示で時計を見ると45分経過、これで計算すると山頂まで3時間ということになる。登山口の案内版には3時間20分となっていたものの、標高差との関係で計算すれば3時間でもかかりすぎだ。

いったん緩んでいた勾配が急登に変わる。『二の坂』と表示されている。しょっぱなの急登よりは楽だ。
5合目表示地点通過が1時間20分、さらに5分歩くと『三の坂』の表示となる。この坂を登りきった先の窪地状のところは長さ40メートルほどの残雪歩きとなる。
8合目表示を過ぎてロープのある急坂を登ると森林限界に飛び出し、小又山方面への緑の稜線が視界に入ってくる。
西火打岳のピークはどこかわからないうちに通過、前方に高みが迫ってくる。それが目指す火打岳だろう。最後の登りを苦もなく登りきると360度大パノラマの火打岳山頂だった。まずは一等三角点を確認する。ここまで休憩なしで所要2時間20分だった。登山口の案内板より1時間早かった。これでどうやら小又山まで安心して足を延ばせそうだ。

火打岳山頂 小又山山頂

涼風に汗が引いていく。目指す小又山は延々として延びる尾根の彼方だ。この神室山地の風貌はアルペン的と評されるが、どちらかというと南アルプスを連想させる雰囲気を持っている。
目をめぐらせば月山、鳥海、朝日連峰、飯豊連峰などの名峰がのぞめる。

しばしの休憩で腰を上げる。
転げ落ちそうな急勾配をコルの『砂利口』へと下っていく。高低差230メートルの大きい下りだ。帰りの登り返しはつらいだろう。慎重に下って30分でコルに立つ。このコルが『砂利口』ここから小又山方面へは刈り払いがされている。この1両日の作業だ。見ると砂利口からの砂利口コースも同時に刈払いされた様子がうかがえる。これなら迷うことなく砂利口コースを下れる可能性がある。火打岳へ登り返す苦労から逃げられるかもしれない。

小又山
さてここから小又山へはいくつかのコブをアップダウンしながら400メートル近い高低差を登って行くことになる。先は長い。刈払い直後という幸運はあっても、軽々と足が進むというわけにはいかない。コースは視界を遮るもののない稜線、右手に緑したたる深い谷を見ながら、時には少しづつ遠ざかる火打岳を振り返りながら、一歩一歩と歩を進めていく。コバイケイソウの花が目につく。

いくつかコブを越えたあと、平坦道になったあたりで小又山が急に近づいた気がする。時間的にも快調に来ているようだ。足元にイワイチョウの花が咲いている。
山頂へ向かう最後の尾根道を、目ではっきりと確認できるようになると足の方も元気づく。尾根道の両側にはミネカエデ、ナナカマドなどの低潅木の植生が、高山の雰囲気を漂わせる。

今の体力では日帰りは無理かと思ったが、そんな心配はまったく無用、登山口から4時間40分で東北百名山小又山の山頂へ着くことができた。

広場のような山頂には三等三角点標石、低潅木が少しあるのみで展望も抜群。ここが神室山地の最高地点、神室山より2メートル高い。
目の前には神室山地の主峰神室山、そして振り向けば火打岳が鋭く天をさしている。なかなかいい姿だ。雪をたっぷりと残した鳥海山、遠く朝日連峰。はるか遠くに見えている山は早池峰山だろうか。
二度と訪れることのないであろう山頂での展望を楽しんでから帰路についた。



砂利口まで戻ったところでしばし考える。無難に来た道を戻るか、それとも最短の砂利口コースを下るか。火打岳への登り返しがつらいほどの疲労はなかったが、やはり少しでも楽な方をという誘惑に負けて、とりあえず砂利口コースを少し下って道の様子を確認してみることにした。どうやら下まで刈払い作業はされているようだ。
一服してから急勾配の道を下って行く。道型は不安もなくしっかりとしている。途中水場、キャンプ場の表示を見たりして、30分弱で沢へ降りたった。
しかしここからが長かった。沢の転石に赤ペンキでマークがつけられている。これを丹念に拾っていけば間違うことはないが、頻繁に渡渉を繰り返す。乾いた石の頭を踏んでの渡渉はいいが、濡れた石はどうにもならないほどよく滑る。用心していてもツルっといってしまう。何回目かにはついにどぶんと水没、腰から下がずぶぬれになってしまった。さらに小さいとは言え高巻きの数も多い。
石の頭だけでは渡渉できずに、靴のまま水に入ることも多く、靴の中は水浸しになってしまった。
こんな繰り返しでストレスは溜まる一方、楽なコースを選んだつもりが、結果は裏目に出てしまった。自分で選んだことも忘れて騙されたような気分になってくる。こんなことなら火打岳へ登り返して、新道コースを下ったほうがずっと楽だったし、時間的にも早かったはずだ。

いまさら引き返すことも出来ずに、辛抱辛抱で沢を歩きつづけ、ようやく平坦な杉林に入ると土内川の渡渉だった。
濡れた靴を今さら脱いでもしょうがないが、一応靴を脱ぎ、ズボンを膝上まで捲り上げて流れを渡り、その先の林道へと出た。
林道を30数分で最初の登山口へ戻った。

全行程は8時間40分、予定していた11時間より大幅に短い時間で歩くことができた。まだこの足も捨てたものではない、歩き終わってみればイヤな沢歩きも忘れて、満足感に浸っていた。



1ヶ月前にマイカーを買い替えた。新車での泊りは今回の山旅が始めて。言ってみれば新車の山デヒューというところか。
山登りを始めて林道をタフに走れるRV車としてニッサンテラノ(6気筒3000CC )と、トヨタサーフ(4気筒2700CC ) を通算18年間使ってきたが、今回の車はニッサンのミニバン『セレナ』、これはいわゆる街乗り用の車、それで土内の林道を走ったところ、みごとに傷つけてしまった。
歳を考えて、これからは悪路の林道を走ることもなかろう、それより寝心地の良い車をと思ったが、ちょっぴり後悔も残る新車選びだった。


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