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東北百名山 志津倉山(1234m)
登頂年月日 1996.06.12 天候 晴れ 同行者 単独 マイカー利用
登山口(12.15)−−−雨乞岩(12.30)−−−水場(12.47)−−−シャクナゲ坂の上(12.57)−−−三本松(13.03)−−−志津倉山(13.25-42)−−−細ヒドコース下山口(13.50)−−−登山口(14.25)

志津倉山山頂
昭和温泉で一浴後、志津倉山登山口へ向かった。
大辺峠最高地点を過ぎて下りにかかったところで、耕運機で下って行く老人に、志津倉山登山口を尋ねると、「まだず−うっと下だ。山へ登るのか」 「そうなんですが・・・」 「この間熊が出たでな、危ねえから山へは入らねえようにって言ってるだがな」 「最近ですか」 「そうだ。熊にやられて大変だったでな。子供でも連れていたのかなぁ、 唸って飛び付いて来たそうだ。俺も山菜採りに行きてぇだが、気持ち悪くて様子をみているとこだ」 「止めたほうがいいでしょうか」 「そうよな、登るにしてもよっぽど気をつけてな」
そんな会話を交わしてから坂を下って行くと、『5月28日熊出没、人身事故が起きました。当分の間入山を禁止します』という張り紙がある。
しかたがない、志津倉山登山は諦めようかと思った。 しばらく下ると志津倉山登山口があり、そこにもまた同じ張り紙がある。駐車場には自動車が3台止まっていた。男一人、女二人の3人パーティーがいた。
「もう登って来ましたか」 「これからです」 「熊が出たそうですが・・・・大丈夫でしょうか」 「・・・?私達は登って来ますが」 熊のことは余り気にしていない様子だ。そこへ単独の若者が下山して来た。彼は「熊の爪跡はあるが、熊には会いませんでしたよ」という話を聞いて気が変わった。
『皆で渡ればこわくない』であった。
これから登る3人パーティーに先立って志津倉山の山頂を目指した。3人パーティーが『一緒にどうぞ』といってくれたが、多分私とは足が違い過ぎるだろうと思って辞退した。

登山路の入口には『志津倉山の鐘』がある。景気づけと熊の恐怖を追い払うような気持ちで威勢よく鳴らすと、ためらいが消えて登頂への意欲が湧いてきた。
ぬかるんだ沢沿いの道を進んでブナ林の道へと入って行く。鬱蒼としたブナの巨木林は、素人目にも熊が生息していそうな雰囲気だ。呼子を吹いたり、音痴の歌を歌ったり、熊を警戒しながら歩く。
しばらくはたんたんとした道を登ったり下ったりして行くと、巨岩の雨乞岩を仰ぐ地点に立つ。傾斜を持った1枚岩を水流が落下、なかなか迫力ある眺めだった。  『最後の水場』という表示を過ぎると胸を突く急登のシャクナゲ坂に取り付いた。息が切れて歌も出ないような本格的な急登を、鎖を頼ったりして登り切ると、足下が切れ落ちた痩せ尾根になる。「シャクナゲ坂」と言われるほどにはシャクナゲは多くはなかったが、それでもいくつか薄桃色の花が見られた。

シャクナゲ坂を登りきった痩せ尾根のあたりが『三本松』で、このあと尾根をたどると『ブナ平』という主稜線に登りつく。名前のとおり見事なブナの巨木が立ち並んでいた。
ブナ平から主稜線を右にわずかで志津倉山の山頂に着いた。
切り開かれた山頂はいい展望台だったが、霞がかかって遠望が効かない。それでも飯豊連峰、御神楽岳、会津駒ヶ岳などが確認できた。

20分ほど山頂で過ごしてから下山にかかった。
見事なブナのつづく稜線を10分弱で細ヒドコース下山口だった。急坂を足を滑らせたりしながらぐんぐん下って行く。沢沿いまで下ると、そこで始めて登山者に出会った。そかから登山口まではすぐだっ た。
登山口には今下山して来たばかりのファミリーが、山支度を解いていた。案ずるより生むは易し、熊にも会わずに無事登頂を完了。普通なら1日かけてゆっくり楽しむ登山コースながら、たった2時間ほどで歩いてしまい、いささかあっけなかった。

この日は駒止湿原、爼倉山、志津倉山と歩いたが、今日はここまで、この後宮下温泉で汗を流し、ひと仕事なし終えたすがすがしい気分で、明日登山予定の博士山登山口まで自動車を走らせ た。
(1996年6月記)


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