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東北百名山 燧ケ岳（2346ｍ）

登頂年月日　 1995.09.23	天候　曇り	単独		マイカー	爼�ｰニ等三角点
御池（5.25）−−−広沢田代（6.05）−−−熊沢田代（6.45−6.55）−−−爼�ｰ（7.45-.8.05）−−−柴安�ｰ（8.05-8.30）−−−温泉小屋（10.10）−−−三条の滝（10.45-11.05）−−−兎田代（11.25）−−−休憩１５分−−−渋沢（12.15）−−−天神田代（12.25）−−−上田代（13.00-13.10）−−−御池（13.25）
熊沢田代から平ケ岳をのぞむ ７年前の燧ケ岳は大雨の中の登頂となり、柴安�ｰまで足を延ばすことができずに、爼�ｰだけで引き返してしまった。それ以来の心残りを果したいという思いで再訪した。 東京を深夜12時に出発して、御地に着いたのは4時15分。夜明けまでは間があり車内で仮眠するが寒い。明るくなるのを待って燧へ向かった。 勾配のきつい登りがつづくが、負担感もなく高度をかせいであっけないほど簡単に広沢田代の湿原に登り着いた。わずか40分だった。草もみじの湿原は秋色に装い、池塘越しには会津駒ヶ岳が横たわっている。 木道で湿原を横断し、いったん樹林へ入る。 再びあらわれた湿原は熊沢田代。湿原入口から見下ろす風景は、絵葉書などでおなじみのもの。木道が途中で『く』の字に曲がっているのが特徴だ。 平ケ岳、中ノ岳、越後駒ヶ岳、荒沢岳など会越国境の名峰が、池塘を前景として連なる。燧も目の前にこんもりとした高みを見せている。ガイドブックで『尾瀬で一番美しい道』と 紹介される熊沢田代である。 再び樹林へ入る。山頂までは後2時間。沢をいくつもまたぎ、山腹をトラバースするように高度を上げて行く。 振り返ると熊沢田代が眼下となり、会津駒や帝釈山塊、如峰山などを見ながら、いっか森林限界を越えたようだ。 岩場になって山頂近しのが感があるが、時間的には少し早すぎる気がする。しかし間違いなく爼�ｰの山頂だった。 曇ってはいるが眺望は十分。目の前にはコルを挟んだもう一つのピーク柴安�ｰ、眼下には尾瀬沼の全貌と黄葉のはじまった樹林、日光連山、少し遠いが那須連峰や赤城山、帝釈山塊、会津駒、巻機山、谷川連峰と360度の眺望が広がる。スケッチをしたりして展望をしばらく楽しんだ。 予定より早く山頂へ着くことができたため、燧裏林道から三条の滝を回ることにする。 コルまで下り、一投足で柴安�ｰへ立つ。頂上からは尾瀬ケ原の広がりが一望される。 原の先には至仏山、その左には笠ケ岳、武尊山へとつづく。居合わせた二組の夫婦から梨をごちそうになる。信州飯田市から来たグループだった。 温泉小屋への下りは、転げ落ちそうな急坂である。ハイマツや色づいたナナカマドの潅木から、ダケカンバ林へと入って行く。途中パラパラと雨が落ちて来たがたいしたことにはならなかった。傾斜が緩んで沢状の道となってからが長い。 温泉小屋は尾瀬散策のメインコース、三条の滝見物の途中という立地、行き交う人の列、散策向きの軽装、温泉小屋の休憩所で休むハイカーなど、別世界に飛び込んだように感じる。尾瀬銀座とでも形容したいほどだ。 三条の滝へ向かう道は、小さく上下しながら、さらに高度を下げて行く。途中燧裏林道の道を分け、平滑の滝を過ぎると散策者の数は急に少なくなって来た。山を揺るがすような豪快な音が響いてくると間もなく三条の滝である。 100メートルの落差をもって一気に落下する豊富な水量は、さすが名瀑、迫力も満点である。 ひと休みしてから御地へ戻ることにした。 燧裏林道へは予想外の急登をひと登りしなければならなかった。急登を終ってひと息つくと兎田代の湿原となるが、見るほどのものではなかった。渋沢温泉への道を分けた先で、燧裏林道の木道へ合流する。木道はこの後延々と御地までつながっていた。 御地までほとんど平坦と思った燧裏林道は、三条の滝から最高点の上田代まで、登りの標高差が約400メートルもあった。 裏林道はブナがみごとなコースである。ブナ林の美しさを鑑賞するだけでも、このコースを歩く値打ちはある。三条の滝と違って人の姿も少ない。途中のベンチに腰を下ろして少休憩、持参の梨がみずみずしくてうまい。 渋沢の橋を渡った先の天神田代は、渋沢温泉への分岐にもなっている。田代と言っても湿原の雰囲気には乏しく、ただの潅木帯という感しだ。 間もなく西田代、横田代、上田代と次々に傾斜湿原があらわれる。湿原はイワショウブやキンコウカが一面の草もみじと化し、周辺部にはヤマウルシやドウダンが深紅に燃えている。その中を貫く一本の木道。池塘の水面をトンボの尾が軽いタッチでたたく。チングルマの実が風に乗って飛ぶ日を待っている。趣溢れる秋の湿原である。 傾斜湿原の背後には、平ケ岳から越後三山や荒沢岳というおなじみの山が景観を引きしめていた。 裏林道に足を延ばしてよかった。こんなにいいところとは知らなかった。御地からなら２時間もあればゆっくりと湿原を観賞できる位置にある。裏林道にすっかり満足して御地まで戻った。 休憩込みで８時間、登り下りを繰り返し、累計では1400〜1500メートルは登っただろう。疲れた体を檜枝岐村の温泉に浸かってから家路についた。

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