GSYZ02
2 日本文化の特質
2−1 現在の日本の集団や組織の中に,長年「ムラ」の場で養われてきた人間関係が生き続けている。このような人間関係の特徴についての記述として適当でないものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。
@
人々が個性を強調したり自己主張をしたりすることは,「出る杭は打たれる」のたとえのように,集団の調和を乱すものとして否定的にとらえられる。
A
人々は集団の「そと」の者を排除するが,「うち」の者については親密な一体感をもって交わり,以心伝心のコミュニケーションを発達させる。
B
人々の行動は,普遍的な基準よりも,隣近所や世間の人の思わくを重視し,世間に顔向けできるかどうかという点で判断される。
C
「親しき中にも礼儀あり」と言うように,思いやりや人情に厚い関係の中でも,基本的なことについては互いの契約が重視される。
2−2 イエ(家)やムラ〈村)における伝統的な社会生活の記述として最も適当なものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。
@
本家と分家が,何かにつけ対立・競争しあう。
A
人々は,年齢や性の区別なく自由に行動できる。
B
ムラに多大な迷惑をかけても村八分にもされず,ほとんど許される。
C
生活維持のために,いくつかのイエが結を作って協力しあう。
2−3 日本の伝統的な思考や行動の様式の内容説明として適当でないものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。
@
自分の信念や信条に照らして正しいかどうかよりも,周囲の人々がどのように評価するかを基準にして行動する。
A
タテ(縦〉の人間関係を大切にし,上に対しては忠誠を尽くし,下に対しては恩恵を施すように努める。
B
何ごとによらず父系の血のつながりを重んじ,その血族に利益や繁栄をもたらすことを最高の価値として行動する。
C
自分の帰属する集団は非常に大切にするが,集団の外に対しては排他的な態度をとる。
2−4 日本で伝統文化が存続して来た理由として最も適当なものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。
@
伝統文化を尊重するように,国家が絶えず強権的に統制してきた。
A
日本人は,古くより一貫して伝統文化に誇りをもってきた。
B
日本の伝統文化は,欧米の文化より優れていることが明確になった。
C
伝統文化に従うほうが社会は安定しやすく,その運営も円滑にできた。
2−5 日本の伝統文化を現代社会に生かすための具体的な説明として最も適当なものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。
@
伝統的な直系家族の形態を見直すとともに,そのなかでの夫や親の権威を強化する。
A
町内会などによる古いタイプの地域社会運営は解消して,住民の自主自発的な人間関係のみにもとづく地域生活の様式を推進する。
B
組織の運営では,個人の主張や意見を抑圧しないように注意しつつ,全体の和も崩さないよう共に協調しあうようにする。
C
職場は,あくまで能力主義にもとづいて合理的・非人格的に運営し,集団主義的な要素もすべて排除する。
2−6 熱帯植物であった稲の栽培を可能にした日本の自然的特色の説明として最も適当なものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。
@
夏の乾燥と冬の湿潤を規則的に繰り返す穏やかな自然に恵まれた。
A
モンスーン地帯にあたり夏には降雨量が多く高温多湿である。
B
台風や洪水などの自然災害を克服するために高い農耕技術を生んだ。
C 乾燥が激しく草原も少ない厳しい自然のために強い団結が求められた。
2−7 日本人の考え方や生き方の特色の説明として最も適当なものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。
@
自然現象の背後に法則を見いだしていく。
A
国際的に技術を教え合っていく。
B
感情に流されずに理性的に考える。
C
論理よりも情緒によって考える。
2−8 異文化と理性的に対決する姿勢を未成熟にとどまらせた要因として,最も適当なものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。
@
日本人は,豊かな自然に恵まれて生活し,自然と一体となった感情を大切にしてきたこと。
A
日本人は,島国に生活して外敵の侵入を受けることが少なく,海外の様々な文化と積極的に接触する機会を欠いてきたこと。
B
日本人は,仏教や儒教など大陸文化を,日本人の心情に合うように受容してきたこと。
C
日本人は,主語のないことばを多用して,感情的に深く理解し合うことを大切にしてきたこと。
2−9 客観的・普遍的に妥当するような規範を求める態度に合わない考え方を,次の@〜Cのうちから一つ選べ。
@
あなたは,あなたの意志の主観的な原理が,常に同時に普遍的な立法の原理となるように行為しなければならない。
A
主君の御恩に報いて御用に立とうと覚悟をきめ,親しく召し使われる時はますます私なく奉公をつとめ,浪人や切腹すら奉公のうちだと思う。
B
人間は自然的にはすべて自由,平等で独立しているから,だれも彼自身の同意なしに他人の政治権力に服従させられることはない。
C
自然の道理である天にしたがうものは存続するが,これに逆らう者は滅亡する。
2−10 稲作の農耕儀礼の説明文として適当でないものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。
@
稲作には多くの困難や苦労が伴うために,特殊な宗教文化が形成されるが,農耕儀礼もその一つである。
A
稲作に伴う多くの困難や苦労を除くために,自然の変化を機械的・法則的にもっとよく知ろうとして,そこに農耕儀礼が生まれる。
B
稲作の農耕儀礼の中には,アニミズム的な原始信仰や仏教的な考え方の影響などがみられる。
C
稲作の農耕儀礼の中心は,神に豊作を祈願することと,最初の収獲物を捧げて感謝することにある。
2−11 日本人の対人意識の特徴として,(1)他人に依存することや他人から依存されることへの期待,(2)身近でない他人に対して気をつかって遠慮を心がける,(3)自分との結びつきの弱い他人に対しては依存も遠慮もしないで彼らからの非難の目も意に介さない,といった3つの側面が指摘される。それぞれの特徴を表わす諺として適切なものを,次の@〜Eのうちから一つずつ選べ。
@ 出る杭は打たれる
A 江戸のかたきを長崎で討つ
B 井の中の蛙,大海を知らず
C 旅の恥はかきすて
D 大家といえば親も同然,店子といえば子も同然
E 船頭多くして船,山に登る
2−12 前問の(1)〜(3)の意識に基づいた行動としてもっとも適当なものを,次の@〜Eのうちから一つずつ選べ。
@ 旅行中,身の上話をきっかけに見知らぬ人と親しくなる。
A 寄附や募金の際に,まわりの人に出した額を気にする。
B たとえ人に知られなくても,行楽先でのゴミは始末して帰る。
C 知人から借金を申し込まれても,相手のためにならないと思ったら断わる。
D 列車の座席をわれさきにとる。
E 目上の人がおごってくれないと,「冷たい」と思う。
2−13 前問及び前々問のような日本人の対人意識の重層性の意味として最も適当なものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。
@
相手との親しさの程度に応じて異なる対応をする。
A
相手に本心をさとられないような対応をする。
B
相手との身分の差をたえず気にかけた対応をする。
C
相手の行動に応じて,同じ相手でも異なる対応をする。
2−14 対人意識の対象となる「他人」の範囲が日本人と欧米人とで異なるという主張の意味として最も適当なものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。
@ 日本人にみられるような他人への依存意識は,欧米人にはみられない。
A 日本人は欧米人と違って,どんな範囲の他人の目も気にしない。
B 日本人が無神経にふるまう範囲の他人に対しても,欧米人は気をつかうことがある。
C 日本人は欧米人とは異なり,義務感や責任感から他人に遠慮し協調する。
2−15 新しい文化の要請への対応として適当でないものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。
@ 東西文化の総合による新しい独創的な文化の形成に努力する。
A わが国の文化について正しく認識し把握するよう努める。
B 国家としてはこれまで不在であった文化政策を正しく進める。
C わが国の伝統文化の優秀性を世界に誇示する。
2−16 日本の伝統文化にはどのような自然とのかかわりがあるか。その説明として正しいものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。
@
自然と仲よくつきあい,自然の規則性を把握し,それを利用して自然を支配することにより,自然に対して人間を主人公とする文化を形成した。
A
自然とたたかい,自然から人間生活をたたかいとることを通して,対抗的・戦闘的な性格の文化を形成した。
B
自然に従えば豊かな人生が得られるとし,自然を受け入れ自然と一体となるように努め,自然をとりこんで生かす文化を形成した。
C 自然を畏怖し,その背後の絶対的な超越者へ随順することで個人生活と社会生活を安定させるという宗教性の濃い文化を形成した。
2−17 日本の外来文化受容についてのべた文章のうちで適当でないものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。
@
一定の原理に基づく厳しい選別による受容を行って伝統を保った。
A
外来文化への積極姿勢と国粋化との相互的な繰り返しがみられる。
B
「東洋の道徳,西洋の芸術」にみられるような和魂の伝統がある。
C
日本文化には外来文化の受容とその重層的な累積構造がみられる。
2−18 戦後,日本が豊かな生活のモデルをしてきた「アメリカ的生活様式」の説明として最も適当なものを,次の@〜Cのうちから一つ選ベ。
@
神の栄光を増すために,禁欲的かつ合理的に職業労働にいそしもうとする,勤勉な生活様式。
A 耐久消費財に代表される工業製品の大量生産・大量消費に裏づけられた,物質的に豊かで合理的な生活様式。
B 労働は生活費を稼ぐための手段であると考え,遊びやレジャーでの自己実現に価値を見いだすような生活様式。
C 自然の生態系との共存を図るために,資源の浪費をいましめ・環境に配慮した質素で内面的に豊かな生活様式。
2−19 日本における外来文化の受容についての説明として最も適当なものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。
@ 日本は,江戸時代までは,外国からの影響を受けずに,日本独自の文化を発展させてきたが,明治以降は,欧米の文化に同化した。
A 日本は,江戸時代までは主に中国から,また明治以降は主に欧米から優れた文化を選びとってきたが,日本に特有の文化は育たなかった。
B 日本は,第二次世界大戦までは,伝統的文化を保持してきたが,戦後は,アメリカ文化に同化し,日本独自の文化は見られなくなった。
C 日本は,江戸時代までは主に東アジア文化圏から,明治以降は欧米からの文化的影響を強く受けながら,日本に特有の文化を発展させてきた。
2−20 異文化との共存を実現するためには,どのような態度で異文化と接することが求められるか。次の@〜Cのうちから最も適当なものを一つ選べ。
@
異なる文化との接触は必ず摩擦を引き起こすので,できるだけ外国人との接触を避けること。
A
互いに民族文化の融合を図り,文化の多様化を解消して,人類共通の世界文化を発展させること。
B
自民族の文化を絶対視せず,それぞれの文化がもつ,ものの見方をできるだけ理解しあうこと。
C
日本の文化は特殊だから,日本の伝統文化にこだわらずに,外国の文化を積極的に身につけること。
2−21 自民族中心主義(エスノセントリズム)の例として最も適当なものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。
@
ナチス・ドイツは,アーリア民族の優秀性を宣伝し,ユダヤ人に対する迫害を正当化した。
A
長い間植民地であったアジア・アフリカの諸民族は,第二次世界大戦後,次々と独立を果たした。
B
浮世絵や日本庭園など,日本の生み出した文化の中には,国際的に高い評価を受けているものもある。
C
アメリカ合衆国では,1950〜60年代の公民権運動を通じて,黒人の文化を再評価する動きが目立つようになった。
2−22 日本における神道と仏教の混在・併存の例証として適当でないものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。
@
平安時代に起源をもつ山伏の修験道は,日本独特の山岳信仰から生まれた宗教である。
A
平安時代の末から鎌倉時代にかけて,本地垂速説が起こった。
B
鎌倉時代に法然と親鸞がひろめた念仏の教えは,民衆の間にひろく信仰されるようになった。
C
鎌倉時代に一遍がひらいた時宗の教えは,神仏に奉納する民衆芸能と関係が深い。
2−23 廃仏毀釈運動の説明として正しいものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。
@
この運動は,幕末の水戸学が神道の影響を受けて,日本の純粋な伝統を強調したために起こったものである。
A
この運動は,本居宣長が儒教や仏教を外来の宗教として排斥したために起こったものである。
B
この運動は,江戸時代の儒者たちが仏教を排斥したために起こったものである。
C
この運動は,明治維新の際に新政府が神仏分離令を出したために起こったものである。
2−24 山岳信仰と最も関係の深い仏教の宗派を,次の@〜Dのうちから一つ選べ。
@ 曹洞宗 A 浄土真宗 B 真言宗 C 臨済宗 D 日蓮宗
2−25 民衆芸能や民衆の習俗を利用して活発な宗教活動を展開した人物として最も適当なものを,次の@〜Cのうちから一つ選ベ。
@
純粋な信仰を求めて比叡山に道場を開き,世俗を絶って厳しい修業に励み,天台宗を開創した最澄。
A
念仏を書いたお符を配り,全国を遊行して踊り念仏を行って布教につとめ,市聖・捨聖と呼ばれた一遍。
B
天の神や地の神はもちろん,魔物や異端者・異教徒も念仏の力には太刀打出釆ないと主張した日蓮。
C 極楽往生するための要点は念仏にあることを,『往生要集』を著して、人々に示した浄土教の栄西。
2-26 柳田国男の民俗学において重視された課題として最も適当なものを次の@〜Cのうちから一つ選べ。
@
日本の基層文化を解明すること。
A
日本文化の近代化を解明すること。
B
日本への西洋文化の影響を解明すること。
C
日本文化の普遍的性質を解明すること。
2−27 日本の文化について述べている下の文の(1)( )〜(5)(
)に入れるのに最も適当な人名もしくは語句を,次のそれぞれ@〜Cのうちから一つずつ選べ。
(1)( )@ 相阿弥 A 世阿弥 B 観阿弥 C 本阿弥
(2)( )@ 花 A 幽玄 B 無心 C 和敬清寂
(3)( )@ 栄西 A 道元 B 明恵 C 親鸞
(4)( )@ 一休 A 宗達 B 夢窓 C 利休
(5)( )@ さび A わび B みやび C はかなさ
日本の文化の特色を示すものとして,われわれは能や茶道をあげることができる。能は民衆芸能であった申楽をもとにして,室町時代に(1)( )によって大成された演劇である。彼は能の美を(2)( )という言葉であらわしたが,この言葉は中世の歌論に由来する。また茶道は,鎌倉時代に(3)( )が中国から茶の種をもたらしてから,室町時代にさかんに行われるようになり,桃山時代に(4)( )によって大成されたものである。その精神をあらわす言葉として(5)( )という言葉が用いられる。