GSYZ04
4 民族・宗教と哲学・科学
4−1 民族間題に関する記述として適当でないものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。
@
民族とは一般的に言語や宗教などの文化を共有する集団を意味するが,同一民族内で異なる宗教が平和的に共存している例もある。
A
民族間題の一般的背景には国境と民族の地域分布との不一致があるが,国家への帰属意識が民族への帰属意識を上回る場合がある。
B
現代の民族間題の特徴の一つは,冷戦体制の終結に伴い,それまで潜在的であった民族対立が表現化した点にある。
C 現在,民族間題は先進諸国では解消したのに対し,発展途上国ではむしろ激化している。
4−2 ここ数十年にわたり民族間の共生を目指した「多文化主義」の原則が唱えられるようになってきている。これに関する記述として最も適当なものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。
@
多文化主義は多様な文化の尊重を原則とするものであり,少数民族の社会経済的地位の向上を目指したものではない。
A
多文化主義は多様な文化の尊重を原則とするものであり,同一国家の内部でも、複数の教育言語がしばしば採用される。
B
多文化主義の原則は民族対立を緩和しようとするものであり,最終的には国民国家への同化を目標としている。
C 多文化主義の原則は民族対立を緩和しようとするものであり,西ヨーロッパの先進諸国で最初に法制化された。
4−3 エスニック・マイノリテイ(少数民族)に関連して,これまで多様な国々において,人種,言語,宗教などの文化的共通性を基礎としたエスニシティや民族の個性を認め,共生を可能にする努力がなされてきた。これに関する記述として適当でないものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。
@
マレーシアでは,マレー系,中国系,インド系の人々が同等の立場で国をつくるという原則がとられ,それぞれの言語が公用語となった。
A
カナダでは,1960年代のケベック・ナショナリズムの高揚をきっかけに,英語とフランス語の二言語が公用語となった。
B
オーストラリアでは,かつて白豪主義がとられたが,その後アジア重視の政策とともに多文化主義の政策が採用された。
C
アメリカでは,マイノリティに対して,社全的差別を是正するための積極的優遇措置がとられた。
4−4 世界三大宗教に関する記述として最も適当なものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。
@
三大宗教とはキリスト教,イスラム教,仏教を指し,これに儒教とユダヤ教を含めて五大宗教と呼ばれる。
A
キリスト教はヨーロッパと南北アメリカ,イスラム教は西アジアから北アフリカを中心に広がり,東南アジアでは大多数の人々が仏教を信仰している。
B
インド亜大陸ではヒンドゥー教とイスラム教が並存し,インドとパキスタンの対立の主要な背景をなしている。
C
三大宗教の内部にも多様な立場があり,キリスト教はプロテスタントとカトリック,イスラム教はシーア派とスンニ派に二分されている。
4−5 文化の共通性に関する記述として適当でないものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。
@
すべての文化は,言語,技術,宗教,政治経済組織などの共通の要素を持っており,その個々の要素の現れ方が文化の個性を示す。
A
すべての文化は,物質的文化,制度的文化,精神的文化の三つの側面を持ち,文化の個性を示すのは精神的文化である。
B
文化は後天的に学習され,社会的に共有され,世代を超えて歴史的に継承,蓄積されるという共通の特徴を持つ。
C
文化は一般に人間の生活様式を意味し,そのうち思考や規範などを無形文化,使用される道具や作り出される製造物などを有形文化という。
4-6 異文化の交流に関する記述として最も適当なものを,次の@〜Cのうちから一つ選ベ。
@
東方文化の西方への伝播として著名なものには紙や羅針盤などがあり,西方文化の東方への伝播としては火薬や活版印刷術などがある。
A
ユーラシア大陸を舞台にした東西の異文化交流は,絹の道,草原の道、海の道の三つの交通路を中心になされた。
B
異文化交流が独自の融合を遂げた例としては,カサエルの東征によってもたらされたインドのガンダーラ芸術の成立がある。
C
インドに生まれた仏教は,上座部仏教として絹の道を通って中国へ,さらに朝鮮半島を経て日本に伝えられた。
4-7 ものごとを捉える見方や考え方には「芸術か猥褻か」「多様化か画一化か」「科学が事実を問題にするのに対して,哲学は「 」を問題にする」などなど,二分法で区分したり,対比したりすることがある。この「 」に入れるのに最も適当なものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。
@ 価値 A 空想 B 歴史 C 法則
4-8 近代合理主義に関連して,次の文章の「A」〜[C]に入るものの組合せとして最も適当なものを,下の@〜Gのうちから一つ選ベ。
近代合理主義の祖とされるデカルトは,知識の獲得に際して,数学のように誰も疑うことのできない真理から出発する立場を鮮明にした。これは「A」とする立場であり,その考え方の出発点として[B」がある。[B]とは[C」のことである。
ア 知識は経験を通じて得られる
イ 理性を重んじ,理性を通じて知識は得られる
ウ 帰納法
エ 演繹法
オ 個々の事実を実験観察し,その共通性を見いだして,一般法則をたてる科学的研究の方法
力 普遍的原理をたてて個々の事実を証明しようとする科学的研究の方法
@ A−ア B−ウ C−オ A A−ア B−エ C−オ
B A−ア B−ウ C−カ C A−ア B−エ C−カ
D A−イ B−ウ C−オ E A−イ B−エ C−オ
F A−イ B−ウ C−カ G A−イ B−エ C−カ
4−9 ベーコンとデカルトによる従来の学問への批判を記述したものとして最も適当なものを,次の@〜Dのうちからそれぞれ一つずつ選べ。
@
従来の自然学ではさまざまな偏見によって正しい認識が妨げられてきた。だが,人間が自然を技術的に支配するためには,偏見を排し,実験や観察によって個々の経験的事実から一般的法則を発見することが必要である。
A
知識は人間生活から離れた不変の真理を捉えたものだとする偏見が,従釆の学問を支配してきた。だが,知性は問題解決に役立つかぎりでのみ意味をもつのだから,知識は常に生活の中で試され改善されなければならない。
B
哲学の仕事は世界を解釈することだという偏見に従来人々は囚われてきた。だが,大切なのは科学的認識によって世界を変えることだから,そうした実践的目的の基礎となるように哲学を作り変えなければならない。
C
雄弁術や詩作は天賦の才に左右され,また従来の道徳論は徳の認識の仕方を教えない。だが,真偽を区別する理性の力は万人に平等に与えられているから,順序よく考えていけば,学問において誰でも正しい認識に達しうる。
D
古代の学説を繰り返し,それに注釈をつけることが学問だとされてきた。だが,神は自然物を人間のために創ったのだから,神の意図の探求を自然研究の方法と合致させることによって,学問は生活に役立つものとなる。
4−10 デカルトの二元論の説明として最も適当なものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。
@
感覚によって捉えられるこの世界の根拠には,知性によってのみ捉えられるイデアの世界がある。
A
科学的な認識には,実験・観察による経験と,理性による合理的推論の両方が必要である。
B
精神は思惟のみを,物体は延長のみを本質とする,相互に独立した二つの実体である。
C
人間は神に向かう霊と,神から離れようとする肉とから成っている。
4-11 近代科学技術の「基本的性格」を表現した代表的思想家にベーコンがいる。彼の思想の説明として最も適当なものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。
@
自然法則は,個々の事実の観察・実験から・演繹法によって見いだされるものである。
A
人間は,葦のようにか弱いものであるが,思惟を持つがゆえに,強大な宇宙よりも高貴である。
B
人間は自然の法則を認識することによって,自然を支配し生の充実を達成できるのであり,知は力である。
C
良識はこの世で最も公平に分配されているものであり,重要なことはそれをどのように用いるかである。
4-12 近代的な自然観の説明として最も適当なものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。
@
自然は自浄作用や復元力をもっており,それによって環境の調和を保ち,安定した状態を維持することができる。
A
生物が種の保存という目的を目指すように,生成変化を繰り返す自然の運動は,その根底にある目的によって導かれている。
B
自然は神によって創造されたものであり,自然のそれぞれが固有の働きを示すことを通して,神の栄光が現れる。
C
自然はすべて因果関係によって説明ができる機械のようなものであるから,その法則を知ることによって利用可能となる。
4−13 近代以降,科学技術的な知とは異なる知を示した思想家がいる。彼らについての記述として適当でないものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。
@
モンテーニュは,懐疑論的な立場から、偏見や独断を排して不断に自己省察を行うことで,人間性の真実を深く探究した。
A
パスカルは,順序正しく推論を行う「幾何学的精神」に対し,直観的で感性的な「繊細の精神」の重要性を説いた。
B Bヤスパースは,ともに本釆の自己をめざす者同士の実存的交わりを「愛しながらの戦い」と呼び,これを無神論的実存主義の原則とした。
C
シュヴァイツアーは,科学技術による自然支配が生命の軽視をもたらしたことを批判し,倫理の原則として「生命への畏敬」を唱えた。
4-14 人間の本来のあり方と死との関係について考察を深めた思想の潮流として最も適当なものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。
@ プラグマティズム A 実存主義 B 社会主義 C 功利主義
4-15 ドイツの思想家ヤスパースがいうような,死を限界状況として経験するとはどのように生きることなのか。最も適当なものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。
@
死はだれにでもやってくる不可避なものである。それ故に死のことは考えずに毎日を楽しく生きよう。
A
死は魂の本来の住処への帰還である。それ故に,現世のことは忘れ去り,来世に日をおいて生きることが大切である。
B
死はもはや乗り越えがたいものではない。科学技術は無限の生を可能にする。死を忘れて生きて行こう。
C
死は乗り越えがたい壁のようなものである。しかし,だれにも代わってもらえない自分の死を引き受けて生きるところに,自己の存在がある。
4−16 科学技術に対する倫理的問いかけがさまざまになされているが,その記述として最も適当なものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。
@
医療技術が証生と死をも操作するようになって,生命倫理学という分野が成立した。それは,治療や研究に倫理的指針を与えるだけでなく,患者の自己決定権をインフォームド・コンセントという形で提唱してもいる。
A
『沈黙の春』は環境問題を倫理的に問う上で重要なきっかけとなった書物の一つである。こうして生まれた環境倫理学は,その一特徴として,問題解決のための行動を将来の世代にまかせるという世代間倫理を主張している。
B
ラッセル=アインショタイン宣言は・核兵器を開発・製造した科学者よりも,それを使用する政府指導者にこそ倫理的責任があるとして,核兵器廃止のための連帯した行動を彼らに要求している。
C
資本主義体制における労働の疎外とともに,機械文明の中での人間疎外をも倫理的に問題とするマルクスの主張からは,カウンセリングその他の心理的な癒やしによる疎外の解消という通が導き出される。
4-17 倫理の範囲を人間だけに限定することが多かったヨーロッパの思想史の中で,それを生命一般へと押しひろげ・「生命への畏敬」が倫理の根本であると主張した思想家はだれか0次の@〜Cのうちから一つ選ベ。
@ ニーチェ A シュヴアイツアー B サルトル C カント
4-18 いわゆる「脳死」に対する反論の基礎となるような死についてのさまざまな「見方」の例として適当でないものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。
@
心臓の機能停止後に生じる身体の変化は劇的なものであり,死はこのような明白な時点に定めるべきである。
A
死は,身体の一部の機能停止によってのみ判定されるべきではなく,あくまで身体の全体にかかわるものである。
B
死は,厳密な意味では,人間にはまだ分からない時点で生じるのであるから,死の判定はできるだけ遅らせることが安全である。
C
生きていることには意識的活動が不可欠だから,その活動が最終的に失われたと確認きれた時点を死と考えるべきである。
4-19 脳死問題の「哲学的な側面」についての記述として最も適当なものを,次の@〜Cのうちから一つ選ベ。
@
科学技術の発達によって発生した脳死問題も,あくまで人の死にかかわる問題であるから,科学とは異なる死生観に基づいて考えなければならない。
A
脳死問題は,医学の中の脳死を個体死とする見地と,それに反対する議論の両方を吟味し,わたしたちの生の全体から考えるべきである。
B
脳死問題は,感情的・社会的な反応を排して,あくまで科学的見地に立って考えることが求められている。
C
脳死問題においてはっきり現れているのは,それが本来,医学の基礎にある科学的思考と相容れないということである。
4−20 古代ギリシャの思想家ソクラテスの言葉として最も適当なものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。
@
人間にとって最高の生は,観想的生である。
A
人間の人格は,それ自体として,絶対的な価値を持つ
B
満足した豚であるよりは,不満足な人間である方がよい
C
人間にとって大切なことは,単に生きることではなく,善く生きることである
4-21 私たちの人格は,それ自身が絶対的な価値を持つ目的として扱われるべきであって,他人のための手段としてのみ扱われるべきではないと説いたのはだれか。次の@〜Cのうちから一つ選べ。
@ カント A サルトル B デューイ C へ−ゲル