数時間前 イボカエル族のテリトリー
イボカエル族がカエル族内でも向上心溢れる極右翼的勢力として有名である。
その毒気を潜んでいそうなイボがトレードマークである彼等は、外見の通りに毒を秘め、隙あらば王位を乗っ取ろうと画策していた。
そのテリトリー内を、若きイボカエル族の戦士が息を弾ませ走っていた。
「父上、帝国が動いたゲー!!」
若いイボカエル族の戦士は、自分の父親にそう報告した。
しかし、返ってきたのは怒声だった。
「馬鹿野郎!! 何だ、そのカエルみたいな喋り方は!?」
「ゲ、ゲゴ? で、でも、オレ達はカエルだゲゴ」
「馬鹿かテメェ!! 王になるなら、それらしい話し方をしやがれ、ってんだ!!」
「ゲ、ゲゴ。わ、分かったゲー!」
「分かってねぇだろ!!」
「わ、分かったですます」
「で? 何だって!?」
この頃、年老いてシワだらけになり、耳も遠くなったというのに、相変わらず怒鳴り散らす声のボリュームだけは若々しい父カエル・シノシスは、そう息子カエルのイーボに聞いた。
「て、帝国が動きましたであります!!」
「何だと!? 大変だ、すぐ迎撃準備をしろや!!」
「い、いや、東へ進軍したんだゲー!!」
「カエル言葉を止めろってんだろうが!!」
「い、い、いや、東へと進軍したんでありまして……」
「なるほど、そりゃ絶好のチャンスじゃねぇか!!」
シノシスは鼻息を荒げて、続ける。
「まったく、武者修行と称してお前を大陸に放ったのが功を制したぜ!! カエルだと思って、帝国の奴等なめやがったなッ!! ようし、兵をまとめて進軍しろ!!」
「ゲ、ゲゲゲのゲゴ? オレ達の部族だけじゃ無理だゲー?」
「あぁ!!?? なら、とっととあのチンカス王をコキャとやって、王になりゃ良いじゃねぇか!!」
「ス、スナッチ様を攻撃するでありますか?」
「おうよ!! すぐ軍を編成しろ、ゴワイトロースに雪崩れ込むぞッ!!」
相変わらず即断即決の直情型カエルのシノシスは尚も語気を強める。
「クーデターだッ、革命だ!! 行くぞ馬鹿息子!! 俺達がこれからの歴史だッ!!」
「よ、よく分からないけど……、や、やるんだゲー!!」
「カエル言葉は止めろっつたろうが!!」
シノシスの鉄拳がイーボに飛んだ。
イーボは派手にふっとぶ。
「ゲボ!?」
「オラオラオラ、気絶してる暇はねぇぞ!! とっとと、兵隊をかき集めろ!! 革命だ、革命ッ!!」
彼等は向上心には満ち溢れているが、ノリだけで行動するところはビッキ族と何ら変わりがなかった。