同日 ゴワイトロース
豪雨の中、カエル共は集った。
オヤマを傀儡にし、独裁・強権・圧政吹き荒れるファシズム体制を築き上げたスナッチが壇上で叫んだ。
「今こそ地上を我が物だと勘違いしている人間共に、裁きの鉄槌を下す時である!!」
ムラサキ、マダラ、アゴシロ、イボ、トノサマ、アマカエル等、魑魅魍魎の如きカエル共が歓声を上げる。
調子に乗る。
雨の所為もあるだろう。
適度な湿気が彼等のフルパワーを引き出すのだ。
カエル共は皆、あの頃の我等に戻っていた。
スナッチは一人悦の入りつつ、酔いつつ、調子こいて続ける。
「我等がベルヌーブの地に根を下ろしてから幾年月、我等が自立の行動は蒙昧なる人間共によって遮られてきた……」
「蒙昧って、何だゲー?」
「さあ?」
カエル共はスナッチの演説を半分も理解出来ていなかった。
ただ、何となく神々しいなと思いつつ、聞き入っていた。
雨が降って高揚している所為もある。
「我等が父祖の不断の努力も、人間共に踏みにじられてきたのだ!! 最早、我等は語るまい!! 愚かなるシンバ帝国は、メキドの火によって焼かれるだろう!! 今こそ、立てよ国民! 我等が生きて栄光を掴むのだ!!」
「カエル万歳! カエル万歳!!」
「オヤマ万歳! オヤマ万歳!!」
ここで決して『スナッチ万歳』とはこないから、スナッチとしては許し難い。
前王の事だけでメモリー容量を満杯にしてしまうカエルの低能ぶりが嘆かわしい。
しかし、だからこそ今の独裁体制を作れたのだが。
オヤマだけ祭り上げておけば、ヘコヘコ頭を下げるような連中だ。
何せ、かのイボ・カエル族ですら息子を人質同然で従軍させたくらいだ。
「諸君、諸君の救国の志し、我が胸にしかと届いた! 戦の準備をせよ、まずは人間共の尖兵が駐在するベクトリアを強襲する!!」
「ベクトリアって、何処だゲロ?」
「さあ?」
産まれてこの方、沼地以外は見た事がないカエル達は地理的感覚にも欠けていた。
しかし、高々と振り上げられたスナッチの拳に、何やらただならぬものを感じる。
でも感じるだけだから、種族としての気質はあくまで暢気である。
それでも、スナッチのテコ入れで彼等は動き出した。
目標はベクトリア。
こうして、どこまで本気なのか――いや、スナッチとしては真剣な――大陸制覇への侵攻が始まった。