グアテマラの洗礼

 スペインからグアテマラに到着。アンティグアという街に2ヶ月間、ホームステイしながら滞在した。 その最初の2週間、グアテマラに来たものには必ずといっていいほど訪れる洗礼を身をもって知ることになる。

 それは下痢だ。それもかなり強烈な。俺は基本的には薬を飲まない人間だが、 このときばかりはあまりにもひどかったので、万が一のときのために持ってきていた正露丸を飲む羽目になった。

 が、これが効かない。まったく効果がないのだ。そんなとき、一緒にホームステイしていた アメリカ人のロニーが何気に聞いてきた。
「腹の調子はどう?」
「えっ?」
「腹壊してるんじゃないかと思って」

 なんで教えてもないのにわかったのかというと、ロニーもグアテマラに来た当初、これに悩まされたらしい。
「こいつを飲んでみ」
ロニーはそういって4錠の薬を差し出した。こいつは普通の薬と違って何倍もの強さがあるらしい。
「効果が出るまで2,3日かかるよ」
彼はそう言って、まず1錠飲んでみろと促した。

 言うとおり、効果は数日後に表れた。それまではスペイン語学校の授業も辛いぐらいだったが、 この薬のおかげで助かった。それ以降、軽い下痢などはあったが、深刻ではなかった。 2ヶ月の間でいろいろな学生や旅人が訪れたが、必ずといっていいほど同じ洗礼を受けていた。

 個人レッスンの先生パティは言う。
「グアテマラ人でも下痢するのよ」
さらに、下痢のために授業にならなかった話を面白おかしくしてくれた。 中には深刻な場合もあり、寝込んでしまう生徒もいたらしい。

 ロニーからもらったその薬の残り3錠のうち、1錠はメキシコで飲んだ。 これまた強烈な下痢をしていたからだ。残り2錠は今も手元にある。この薬の出番はまだあるのかもしれない。