ご存知とおり、死海は塩分濃度が高く、プカプカと浮かべるところだ。
イスラエル側とヨルダン側からアプローチできると思うが、私はヨルダン側の死海を楽しんだ。
今はどうだかわからないが、当時は死海までの直通バスはなく、アンマンからアブダリ→サルト→シューナ→死海と乗り継いでいかねばならなかった。
いろいろ聞いたりして何とか最後の死海に行くバスに乗ったはいいが、途中『DEAD SEA』の看板を見て、つい下車してしまった。
実際、まだ到着していないにもかかわらず・・・。言葉が通じないってつらいね。
看板があるってことはすぐ近くかも知れん、ということで歩いてみた。
が、歩けどそれらしきものはぜんぜん見えなかった。
結局、親指を出すことにした。とはいえ、行き交う車などほとんどない。
何度かスルーされたが奇特な人がいるものだ、止まってくれた車があった。
止まってくれたというよりは、自分から近づいてきたとでもいおうか。
『死海のレストハウスまで乗せてもらえないか?』
運転手は快く乗車させてくれた。何よりも英語が通じてよかったのだが、経験上、観光地において、
英語圏以外で英語をしゃべって近づいてくる奴は信用ならん、という一文が私の脳内辞書にはあったのだが、
ここはしかたがない。
運ちゃんは飛ばし屋だった。しかも、スピード違反計測器みたいのは完全無視。
レストハウスに行きたかったのだが、そんなとこより『Dead Sea Hotel』に連れて行ってやるという。
断ったのだが、あれよというまにそこに連れて行かれてしまった、レストハウスを横切って・・・
『ジョルジと言えばOKさ』という。ミネラルウォーターを持っていると貧乏だと思われるので置いてけ、とまで言われた。
そしてジョルジは付き添いの人にことを説明し、去っていった。
その付き添いの人はホテルの支配人に説明し、ちょっと渋い顔をしつつ、営業スマイルで『どうぞ楽しんでください』と言った。
ジョルジって何者だよ。なんだよ、この高級そうなホテルは。
どう見ても自分に不釣合いなこのホテルを俺は抜け出した。
ジョルジには申し訳ないが、Tシャツにジーンズの田舎者が、盛装の社交場に放り出されるようなものだ。
居心地悪いったらありゃしない。
レストハウスまでは近いようで遠かった。日は燦燦と照りつけ、ハエはたかってくる。
ということで、また親指を出した。今度は軽トラックのおじさんだった。
あっという間にレストハウスに到着、ベトベトしながら死海を味わった。
それにしてもあのジョルジという男、本当に何者だったんだろう。
悪い奴ではなかったが、怪しい奴ではあった。
まぁ、親切にしてくれたのは素直に感謝したい。ジョルジを含め、ヒッチさせてくれたおじさん、どうもありがとう。