Summer Harb Tea 〜閑話 その4
     〜なんちゃってファンタジー“鳥籠の少年”続編
 

 
 その国は、現在確認されている中では最も大きな大陸で一番の歴史と規模を持ち、よくよく練られた高度な文化・文明を誇る王国で、法規や制度も整理され、広い国の隅々にまでそれが行き届いた、文化・物量、両面ともに豊かな国家でもあった。新鋭の学問や技術への理解や保護も厚く、学校や博士の育成には資金を惜しまず。その一方で、古来よりの風習や知恵も疎かにはせず、口伝の語り部たちの保護にも積極的。そしてそして、この大陸ならではの特殊な存在、大地の"気"の流れや力を引き出したり練ったりし、それを自在に使いこなすという"咒"という魔法も、当たり前の存在として"おまじない"以上の存在を認められている国。それがここ、王城キングダムである。



            ◇



 昔むかし、天災による不作や飢饉から、悪政による理不尽な虐殺までと、長い長い歴史を紡いで来た人間たちが綴った悲劇は枚挙の暇もなく。殊に、科学や学問がまだまだ未成熟な時代の世界にては、無知から来る忌まわしき惨劇というものも数々あって。科学的合理的な物の考え方というものが民衆の間にまで普及してはいなかった暗黒の時代には、知識のある限られた者らがそれを悪用しての権力や私益に群がっての独占専横により、多くの罪なき人々が蹂躙された結果の悲劇も少なくはなく。根拠もないまま、その殆どがインチキだったにも関わらず、熱病のように欧州を駆け抜けた有名な大虐殺には"魔女狩り・魔女裁判"というものがあって。切っ掛けは様々で、疫病の流行や凶作による困窮から恐慌状態になった民衆が、普通一般の人にはない不思議な知識や技術でよく聞く薬を作れた"知恵もの"な老人を"魔"の使いと決めつけ、不幸を招いたのはそいつのせいだと論
あげつらい。ほぼ私刑に近いような理不尽な裁判にかけたのが始まりだとか言われており。やがては誰も彼もが"魔女かそうでないか"のテストを受けさせられ、金さえ積めば"魔女ではない"と判別してもらえる…などという、正に噴飯ものな審判までが厳然と執行され、数え切れないほどの罪なき善男善女が火炙りによって命を断たれた。ところでこれは近年になって明らかになったそうだが、当時の教会の総本山などという立場の方々は、躍起になって"馬鹿なことはお辞めなさい"と禁令を発し続けていたらしい。魔女なんて存在を認めるということは、そのまま教会の宗教的権威を蔑ないがしろにすることだからで。宗教や信仰的な次元での暴走というより、むしろ、地方の地主や代官クラスの人間たちが、裕福な家の者、人々からの信頼が厚い者を陥れるためにと地元の教会と結託して奨励し、処刑した後にその人物の財産や地位を"合法的に奪った"という生臭い話の方こそが、実際例として多数報告されているのだとか。古来からの人間の浅ましさが、ほらここにも。


「まあ、確かに。自分の知るところをはるかに超越した力や現象を、すぐさま正当に理解・認識するってのは、口で言うほど簡単なことじゃあねぇからな。」
 立場がある人ほど、自分の地位を脅かされる恐れもあって、脅威でもあったことでしょうしね。
「この国みたいに"そういうもんだ"の一言で片付けてる鷹揚さの方が、珍しいのかもしれないね。」
 大地の恵みや天からの制裁。自分たちより遥かに広大で強大なる自然の恵みと仲良くするためにと進められた研究の成果に過ぎないのだが、

「新興国には文字通り"歴史"という蓄積がないからね。」
「まあな。インテリゲンチャを一切含まないままの集団が"開拓"という名の下に無理から切り開いて"建国"したってケースなんかでは、そもそもいた国の組織の底辺などから好き勝手が出来る"新天地"を求めて飛び出した輩たちが"始まり"なんだし。そんなルール無用の血気盛んな人間たちに、土地々々の先住者たちが紡いで来た奥深い文化だの慣習だの、繊細なる造詣だの機微だのしきたりだのってものを、理解しろ認可しろって方が無理な相談なのかも知れないし。」

 ………な、なんか微妙に乱暴なことを言うとりませんか? 魔導師様たち。

  *このお話はフィクションですので、
   登場いたします名称・団体・存在などに、特定の実在例はございません。

「小心な奴だな。細かいことはスルーしなっての。」
「そうそう。人間って"天動説"だったから此処まで進化繁栄出来たんだしね。」
 て、天動説って。そりゃあまあ、環境の方を人間の都合に合わせてばかり来た、今時のぶっちゃけた言い方をするなら"自己チュウ"ですけどもサ。相変わらずに過激で好き勝手な御説をぶち上げている彼らだが、他所の時空のお話はともかくとして、此処の世界のお話の方へこそ、さあさ戻って下さいませな。
(苦笑) 緑あふれる中庭に向いたテラスにて、陶製のスツールに腰掛けて のんびりと寛いでらっしゃいますが、今日は例のお勉強会はないんでしょうか?
「此処も夏に入ったは良いんだが、今年は連日とんでもなく暑いんでな。ここんとこの何日かは俺らも医療班に割り振られて、熱射病への緊急救急出動ってのに駆り出されてたりするんだよ。」
 おやおや、そんな事情からの一休みなんですね。この"熱射病・熱中症"というのも、なかなか原因が判らないままだった症候群だそうで、ポカリ○エットのCMにもこういうのがありました。昔のとある鉱山で、労働者たちがばたばたと倒れた。有毒ガスが出るような山でなし、確かに大変な労働ではあるが体力自慢の坑夫たちだ、過度の過労という訳でもない。なのに、悪くすればそのまま多臓器不全で亡くなる人もいたものだから、極度の脱水症状だろうということで、水を取りなさいと呼びかけたがそれでも効果は上がらず。そこで、とある医学博士が塩分も十分取れと奨励したところが、倒れる人は激減したとか。(大量発汗によるナトリウムの欠乏というのが原因だったんですね。)知識や学問は日進月歩。でもそうそう何でもが素早くめきめきと進むものでもなく、多くの犠牲があって気がつくような進歩や発見も当然のことながらあるんですねぇ。何だか今回はのっけから小理屈が続いておりますが、さては筆者も暑さにあたったかな?
おいおい ………でもさ、この国なら、

  「セナ様のお力で どかんと雨を降らせてもらうとか、
   夏が終わるまで涼しい風を招いてもらうって訳には行かないの。」

 うう…、白魔導師さんに先回りされました。大地の力に頼らない、むしろ従えることさえ出来るほどの咒の力を持つ、陽白の眷属"光の公主"様。そんなセナ王子には、大仰な表現ではないままに…その地の天候を変えられるほどの力だってあるのだが、
「そういう無理や無茶は別なところへ思わぬ歪みを生むから、出来れば使わない方が良いんだよ。」
 まま、確かにね。過ごしやすい冷夏だと、実りの秋に向けての作物が育たないってもんですし。四季というものは意味があって巡っているのだから、そんな傲岸なことでねじ曲げちゃあいけないのは当然のことか。筆者を窘め、ほのかに苦笑をなさった、こちらは黒魔導師様。切れ上がった目許に苛烈そうな気概を滲ませた、華やかなご容姿に見合うだけの過激な気性をなさっており、いかにも破天荒が得意技という感の強い方だが、そこはそれ、自分の専門分野なだけに、ゆるがせに出来ないことへの分別くらいはあるらしい。

  "そんでも時々は"緊急避難だ"とか言って、無茶苦茶をやる人だけれどもね。"

 あははvv それを言っちゃあ…。
(苦笑) それにつけても。こそこそと囁いた白魔導師様こと桜庭さんもそうだが、黒魔導師様の蛭魔さんまでもが…ずっときっちり着付けてらした、仰々しくも威圧的にかっちりしていたあの道着姿ではなく、ゆったりした薄絹のシャツに動きやすそうなボトムというあっさりした恰好でいらっしゃるのがなかなかに新鮮で、

  「…蛭魔さん、ですか?」

 人違いだったらごめんなさいという、恐る恐るの声がかかったほど。サイズが少し大きめなのか、胸元やら袖やらに揺れる ゆるやかなドレープのラインも優美な、薄絹のシャツが いや映える、金髪痩躯の咒術の講師様。跳ね上げるように髪を立ち上げられていることで、露にされた真白きうなじを優しく包んでなだらかに前へ。短めの裾まですとんと降りる襟には、丹精込められた錦の刺繍も華やかに敷き詰められた。ウエストカットタイプのベストを薄い肩に羽織った導師様であり。サッシュできゅうと絞められた細腰といい、一応の教育を施されての品の良い所作や、鋭利で玲瓏な麗しさをたたえた容姿といい、軽やかなお姿がそのまま貴籍の方のよう。勿論、その傍らにおいでの白魔導師様の、いかにも青年らしき健やかにして爽やかなる美形さ加減もまた、際立ったそれであり。ふわりとやわらかな亜麻色の髪を伸ばした彼の、若々しき顔容
かんばせが優しくほどけて。人懐っこい甘い微笑を浮かべたそのまま、
「どうしましたか? セナ殿下。」
 そんなお声を返したものだから、
「…もうっ。///////
 その呼び方は辞めて下さい、と。ふわふわの頬をたちまちほのかに染めた小さな王子様が、恥ずかしそうに言い返す。お立場としてはそうお呼びして間違っていないのだが、慣れのない呼称である上に、奥ゆかしい性格のセナ様。お世話になった親しき方々にまでそう呼ばれるのはお嫌いでいらっしゃる。それが判っていての茶目っ気で呼んでみた桜庭であり、これには蛭魔も…彼自身の連れさえも、小さな苦笑を見せるばかり。こちらさんも初夏向きの薄い絹のシャツをまとっており、下には筒裾ボトムを履いて、長い錦の帯の真ん中に頭を通して前後に垂らしたような、王族のみがまとう型の日常着を羽織った、いかにも軽快なスタイルでいらっしゃるセナ殿下。小脇に平たいザルのような籠を抱えており、奥庭で何かしら作業していたところから出て来て此処へと通りかかったらしく。ここ数日の猛暑の中にあっても、あの…真っ黒で詰襟で長袖長裾、そのまま軍服として流用出来そうな、がっちりした生地の道着を着込んでいた蛭魔だったものが、打って変わって涼しげで優美ないで立ちに変わっていたから。本当に本人なのかしらと見違えてしまったのだろう。白魔導師さんから軽く からかわれて、愛らしくもぷくりと頬を膨らませた王子様だったが、改めてそのお連れへと視線を戻すと、
「蛭魔さんも暑さが堪
こたえたのですか?」
 どこか案じるような顔で訊く。平然としていたが、その実、やはりあの恰好では体がもたないと、それでこんな軽快爽やかな恰好に着替えているのかしらと心配したらしい。相変わらずに誰かを案じることを優先するところの強い、気立ての優しい王子様へ、
「そんなじゃねぇよ。」
 案ずるなと言いたげな機敏な動作にて、長々と伸ばされた脚をひょいと組み、
「誰かさんがな、見た目が暑苦しいから涼しそうな恰好をしろって煩せぇんだ。」
 ちろりと見やった先、セナの小さな肩の向こうにいたのは、濃色のシャツに鞣し革の上着とボトムという、狩人のような装束も相変わらずの屈強そうな武人。ざんばらな漆黒の髪に、男臭い強壮さを滲ませた面差しをした、セナ王子専属の護衛官で"白い騎士"こと進清十郎さんであり、
「え? 高見が言ったんじゃなかったの?」
 これには桜庭くんも、意外や意外というお顔になった。誰がどんな恰好をしていようと…どころか、ご本人でさえも。見苦しくない程度に何か羽織ってりゃあそれでよかろうというような、着るものなんぞには無頓着そうな御仁だというのにと思えば、それは意外。セナも怪訝そうなお顔になって背後につき従っている屈強精悍な剣士様を振り返ったが、
「……………。」
 特に何という言い訳弁明はしないまま、常日頃のように黙している彼になり代わり、
「見栄え優先のやせ我慢でのあの恰好をしていたとして、俺まで暑さ負けで倒れたら。チビが心配するだろうってのが、そやつにとっての"コトの順番"らしかったがな。」
 やれやれと言いたげに目許を眇めて蛭魔が言ってのけ、
「ふ〜ん。」
 言葉少なな彼のこと、そこまではっきり言ったとは思えないながら、そんな解釈をした蛭魔であったのが…桜庭のみならずセナ殿下にも、何となく納得がいったような。
「………。」
 やっぱり眉ひとつ動かさず、表情もそのままな騎士様だったが、

  「あの、ありがとうございます。///////

 気が短くて荒っぽく、セナには少々怖いセンセイであり。誰の意見だってそう簡単には聞き入れないようなところのある蛭魔へでさえ、セナを思って意見しちゃったというそのお気持ちが嬉しいと。小さな殿下が直々に、雄々しき騎士様へお礼を一言。すると、

  「……………。
///////

 おおお、耳だけ赤くなったぞ、器用な奴めと。桜庭くんと蛭魔さんとが思わず肘でお互いを突々き合って"あれを見な見な♪"と愉快そうに教え合ったほど。何だかんだ言って、どのお人も可愛いところをお持ちな方々であることよ。
(笑)

  「ところで。あんな奥まった所に潜り込んで、一体 何やってたんだい?」

 かっちりと綺麗な手の指先をぱちんと弾いて、あと2つほどスツールを出した桜庭が、それをセナたちに勧めながら尋ねると、
「あ、えと。ハーブを摘んでおりましたvv
 小脇に抱えたままだったザルを、やはり陶製のテーブルの上へと少し傾けて、殿下が中を見せてくれた。
「雷門く…陛下が、このところよく眠れなくて何だか体もだるいと仰せなので、夏バテ回避のお茶を作って差し上げようと思って。」
 ナイフみたいに鋭い縁で指が切れそうな真っ直ぐの葉や、ヨモギのように複雑に入り組んだ縁のやわらかい葉、糸のように極細のものや椿の一種だろうか堅い葉もあり。そうかと思えば、淡い紫のカモミールのような小さな花や、野蒜のような根から抜かれたものもある。素人の目には同じような雑草に見えもするような、他愛ない草も多数混ざっているものの、
「へぇ〜。お、サファイアグラスじゃねぇか。えらいもんが生えてんだな、此処は。」
 覗き込みつつ、細い指先で1つ1つを掻き分けていた蛭魔が感心するところをみると、本格的なハーブばかりを摘んで来たセナであるらしい。蛭魔の側の"それ"は、導師として泥門の師匠のところでの学習で身につけた専門知識であるのだが、

  「これを見分けられるとはな。
   まもりとかいう娘は、お前によほど色々のことを教えたらしい。」

 小判型の葉の裏が鮮やかな青という珍しい草を指先で摘まみ、金髪の魔導師様が尚の感心を込めてそんな風に呟いた。高い薬効がありはするが、そんなせいで乱獲されたか今では希少で珍しいハーブ。なればこそ知る者も少ない筈なのに、それを知っていたセナだったということは、教えた者がいかに豊富な知識を持っていたかを偲ばせる。記憶を封じられていたセナが、だが、こんな風に結構いろいろ知っているのは、身の回りの世話を焼いてくれた侍女の まもりという女性が、しっかりと学ばせたからに他ならず、
「セナくんのハーブ茶は凄い効き目があるもんね。」
 先の秋、一連の騒動にも終止符が打たれて決着したものの、その御身を魔の者に乗っ取られていらした皇太后様は、随分と憔悴疲弊なさっていらっしゃり。なのに無理をして政務を立て直そうと頑張っておられたので、セナは庭を駆け摺り回ってハーブを探し、精のつくようにという薬湯を煎じた。それを毎日飲み続けた皇太后様は、たった数日でお元気になられ、これも光の公主の尊いお力だろうかと拝まれてしまったほど。それを思い出した桜庭がにこりと笑ったのへ、
「あやあや…。///////
 大したことではありませんようと、あらためて頬を染め、恥じらう愛らしさよ。そんなセナ王子のお顔をまじまじと見やって、

  「…にしても、お前はタフなもんだよな。」

 この小さな身体で彼もまた、炎天下にて倒れた人々を手当てするため、蛭魔や桜庭と一緒に城下や近隣の村まで出ての救急活動を手伝った身。冗談抜きにやんごとない身分の方だから、そんな"お仕事"は本来なら人任せにすべきところだが、それよりも。病や疲弊に多少は詳しい身だからと、自ら進んで申し出られての参加であり。具合の悪い人々の間をかたかたと駆け回ってお水や氷を配ったり、薬湯の調合や煎じの指示を出したりと、人一倍働いていらしたし。今だって…さほど涼しいとも思えない庭先でハーブ摘みに精励なさってらしていたというのに、笑顔もしゃっきりと それはそれはお元気でおいでのご様子で。見るからにひ弱そうなのになと、褒めているのだか間接的に腐しているのだか。にんまり笑いつつ相変わらずにひねた言いようをなさる蛭魔さんへ、ちょっぴり困ったような微笑い方をして見せて、
「ボク、暑いのには強いんですよ。」
 少なくとも北方にある此処、王城よりも南方にいましたしと、にこりと笑った王子様。そんなお返事へ、
「あ、そっか。あの村って結構暖かい土地だったんだ。」
 今更ながら思い出したと、桜庭くんが納得のお声。セナがその能力と記憶を封印されたままで身を潜めていた寒村は、この大陸の上では王城から最も遠い、南の果てに位置していた。魔導師さんたちが訪れたのは晩秋だったので、それなりに落葉も始まりの、人恋しい雰囲気がやって来かかっていたものの、
「冬場は雪も滅多に降りませんし、夏はもっともっと暑くなりますし。」
 だから。そこに比べたら北の国である王城の夏は、まださして堪えませんと。珍しくも自信ありげに、えっへんとその薄い胸を張って見せたセナ殿下である。幼い容姿の彼には何とも微笑ましいお顔だったが、

  「…ってことは。此処の冬場は結構堪
こたえたんじゃねぇのか?」

 ロジックとも呼べないくらい単純な理屈。いくら ずんと幼い頃は此処で生まれ育ったらしき彼だとはいえ、それならそれで。まだまだお小さい頃ならば、春のように暖められたお部屋で宝物のように…雪の白ささえ知らないというよな"箱入り"扱いで過ごしたに違いなく。そんな身のままに南国で数年ほど過ごしてから戻って来たこの国の、結構凍てついた冬は、さぞかしキツかったことだろうにと。テーブルの上へ肘をつき、白い手のひらの中へ するんとした頬を軽く埋めるようにしての頬杖をついて。さしたる他意もなく、あっさりと訊いた蛭魔さんだったのだが。


   「………あ、と。その………。///////

   ――― ? んんん? それってどういう反応でしょうか?


 えっへんから一転して、急に歯切れ悪く口ごもってしまわれた王子様。一体何を、そんなにも動揺しているのかと、直接訊いた蛭魔のみならず、桜庭までもがキョトンとしたものの、
「あ、暖かだったですよ? はい。///////
「そうか? 先の冬は記録的な雪も降ったって言ってなかったか?」
「そそそ、そうでしたっけ? ///////
 あやあやと。困った困ったと真っ赤になってる小さな王子様の、あまりの不自然なうろたえように、
"???"
 不審を覚えつつ…ふと。ご本人の後方に控えている寡黙な武人の方を、ちろりと見やった金髪の魔導師様。相変わらずの能面のような無表情にて、置物のように黙って控えている彼だったものの、

  "…………………はは〜ん?"

 どんなに上手に隠しても♪

  "耳の先があれじゃあなvv"

 真っ赤なお耳が見えてるよ♪ …という訳で。天下に名を馳せし騎士ともあろうものが、何ともたやすく見透かせる心の裡
うちかと呆れつつ、

  「そっか。むっつりカイロが付きっきりだったか。」

 ぼそりと言って
「………っ☆」
「あっ、あのあのっ。////////
 心辺りがあればこそ、そんな短い言いようで可愛らしい純情カップルをあたふたとたじろがせたまでは良かったが、

  「なんだァvv 僕らと同んなじじゃないかvv

 あっけらかんと余計なことを付け足した人物があったものだから。
「………は、はい?」
 セナ殿下がキョトンとし、やはりこれにはついて来れなかった白い騎士様が眸を点にしたところへ、
「お前はなぁ〜〜〜。///////
 あくまでもお暢気な相棒さんへ、キィッと怒った魔導師様が拳を振り上げたのは言うまでもないことでございました。
(笑)




  〜Fine〜  04.7.16.


  *土用の入りは19日ですが、暑中お見舞い申し上げます。
   ………何だかなというお話になってしまいましたな。
おいおい
   だって、暑っついんだも〜ん♪
こらこら

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