アドニスたちの庭にて “桜花繚乱”

 


 平均値を見れば暖冬だったのに記録的な豪雪を齎
もたらしもした、ややこしくて長っ尻という何とも傍迷惑な冬が、それでも何とか…名残り惜しげにゆっくりと去った後は、ようやくの春がおずおずとお目見えし。待望の桜に目映い陽光、甘やかな風。白やパステル調の淡い色彩をふんだんに用いた、眸に優しいいで立ちが街にはあふれて。陽が明るいだけなのに、理由ワケもなく嬉しい季節となって来たなと思えばそのまま、新しい何かがすぐにも始まる、慌ただしい季節。

  「此処ってホント、季節ごとにあちこちが綺麗だよな。」

 桜咲く春先にいかにも相応しい行事が訪れて、スミレ色の空の下、正門脇へと並べられた長テーブルにつくことになってた二人組。朝一番からのお当番の子たちと交替して、さて。丁度 人の流れの切れ目だったのでと、テーブルの上を整頓しがてらのお喋りがついつい始まってしまっていて。
「桜もこんな咲くなんて、去年はそれどこじゃなかったから覚えてなくってさ。」
 今年は今年で、春休み中は少し遠くにある合宿用のグラウンドつき宿舎に行ってたからな、さっき此処に着いてみてビックリしたぜと、野球部のお友達、雷門くんがしきりと感心したのへ、
「そういえば、雷門くんはやっと1年目だもんね。」
 野球の実力を買われての推薦入学だった、高等部からの中途入学者だからね。幼稚舎からこの学園に通っている小早川さんチの瀬那くんには当たり前のものと化している此処の環境が、彼にはやっと一巡りしたばかり。
「最初は凄げぇドキドキしてたもんな。だって名門校だしよ、俺とは住む世界の違う、いいとこの坊ちゃんばっかがいるトコなんだろなって、何だか色んな意味での別世界を想像してたんだけどもな。」
 それが…自分と変わらぬ背丈と童顔のセナくんと、同じクラスのお隣り同士の席となり、屈託のない彼とすぐにも仲良しになってから、落ち着いて周囲を見回せば。一部には確かに、そういう“世界の違う御曹司”の方々も居るこた居るが、本当に“一部”の話なので気に留める必要さえないくらい。二年生の誰それさんが校長先生の息子さんだそうだよという程度の遠隔地の話であって、日々の学園生活にいちいち直接関わって来る訳ではないと分かれば、どこのガッコとも大差のない、普通の高校に過ぎなくて。
“…でもま。家族でリゾート地の別荘に行くのが当たり前ってな休みの過ごし方とか、それを日用品に使うかってレベルで出てくる高級ブランド品の名前とかには、いまだに時々引いちまうこともあるけどな。”
 あははははvv それはまあ、ある程度は仕方がないのかも…。
(う〜ん、う〜ん) どっちかというと庶民に近いセナくんにだけ、こっそりとそれを話したことがあり。そんなものをわざとらしくひけらかすような、底の浅い下品な子はそれこそいない、本物の上流階級の子たちばかりだからと。だからこそ、こっちから意識することはないんだよというアドバイスを受け続けてたほど。そ〜れはともかく。
「桜は中等部の方が木も多くて見事なんだよ?」
 もともとは、こちらの高等部の周囲を取り囲んでいた並木だとかがあった辺りを開墾して、そこへと校舎や施設を建てた中等部だそうなので、こちらのフェンスに間近い辺りなどにそりゃあ年期のいった見事な桜が何本も植わっている。この高等部の正門脇に寄り添うように佇む見事な桜の木立ちにしても、よくよく見れば…生えているのはすぐお隣りの中等部の敷地の方ですしね。まま、どっちのものかなんてのは、この際 置いといて。
「…綺麗だよねぇ。」
 まだ満開には間があって、八分咲きといったところか。それでも…既にみっちりと花を宿した枝々は、空からの直射日光を遮る天蓋の代わりを余裕で務めているほどに層が厚い。晴れ渡った空の青との拮抗もくっきりと鮮やかな、ほのかに緋を帯びた白い花は、練絹のように厚みのある色合いで。それが枝々の重なりように添って展開し、幾重にも重なることで“花闇”とさえ呼ばれる空間を作り出す。樹の幹や枝の存在をさえ圧倒するほどの、深い奥行きを持つ桜花の空間は正に圧巻。無情の風に躍っては ひらりはらりと散り始める花びらの、華やかながらも切ない儚さと相俟って、凄艶荘厳、凛然華麗。誰にとってもいつまでだって見ていたくなる、春を代表する樹花に違いない。
“…そういえば、進さんが言ってたんだっけね。”
 まだ寒いうちに咲く梅の花は、それが雪の中であっても“やっと来た春だ”という暖かい感じがするが。その次に咲く桜には…咲き始めこそ壮麗にして華やかな、ファンファーレでも聞こえて来そうなほどの派手な雰囲気があるけれど。それが散り始めた途端に、ゆく春を最も惜しむ姿のような、寂しげな気配に満ちてしまうものだなと。
“お家が茶道のお家元さんだからかな。”
 ずっとずっと剣道に打ち込んでおいでのご本人は、お花より筋トレが似合う、屈強にして精悍な、いかにも武骨な方だけれど。それでも…その佇まいには、乱暴者の荒ぶるような揮発性の高さより、椿や菖蒲のような凛然とした風情が常に滲んでおいでだし。そんなお兄様が、桜が吹雪のように舞い散る凄艶な風景の中にいらしたならば、

  “あ………。///////

 それって…物凄く綺麗で、眸が離せない情景だろうなと。そうと思って頬が赤くなった正にそんなタイミングへ、

  「小早川さんっvv

 すぐ間近からの声がワッと勢いよく弾けたもんだから、一気に現世へと引き戻されたそのついで、
「………っっ!!」
 ドッキーンっと跳ね上がった心臓と一緒に、セナ本人までもがあたふたとパイプ椅子から躍り上がってしまった。そのあまりの慌てようへ、
「セ、セナっ。」
 おいこら落ち着けと、隣りにいた雷門くんからのお声が耳に入り、はっと我に返れば…。
「おはようございます♪」
 にこにこという音がしそうな笑顔が、テーブルの上へと立てて置いてある………な筈はなく。明るい茶褐色という奇抜な色合いの、しかも長いめのざんばら髪に、よくよく見やれば耳にはピアス。中腰どころかお膝を地面に突いて座ってるんじゃなかろうかというほどに、大柄な彼には低過ぎるテーブルの向こう側の端へと腕を乗っけて顎を載せ、セナの真正面へと屈み込んでた来賓さんがいて。お暇なついでに ぼんやりと、想像の世界に意識が飛んでいたセナのお顔を堪能していらしたらしい。お元気そうなそのお顔には、セナの側からも重々覚えがあって、
「あ…水町くん。」
 相手を見極めたことで落ち着けたらしく、パイプ椅子から立ち上がりかかってたほどの驚きを何とか静めると、セナくん、元の位置へと立ち戻る。…いや、実際は座り直したのですが。
(笑)
「ごめんね。びっくりしちゃった?」
 ちょっぴり眉を下げて、驚かしたことを謝る彼へ、うううんとかぶりを振って、
「ボクがぼんやりしてたのがいけないの。」
 こっちこそゴメンなさいと小首を傾けてやわく微笑った。セナのそんな仕草と表情へ、
「………。」
 大きな腕白くんという感のある水町くん、何かを思い出したように…彼もまたふんわりと、じわじわとした笑顔を見せて、それからね。
「お花、つけて下さい。」
 すっくと立ち上がって、改めてのお声をかけて来た。新品の制服を着て訪れる新入生たちのお胸へと、上級生たちから飾られている造花の白いバラ。小早川さんから付けてほしかったから、一緒に来た駿を放って奥の方のこっちへ回って来たんだよと、妙なことへと胸を張る。そう、本日は此処“白騎士学園高等部”の入学式が催される日であり、セナたち新二年生が式の運営のあちこちで奔走する係を担当してもいる。中等部からの持ち上がり組には一番に懐かしいお顔だろうし、たどたどしいところが新入生たちの緊張も解くだろからという含みがあってのことらしいが、
「…もちょっと上の方がいいのかな?」
 ただでさえ小さなセナに対して、この新入生くんは1.5倍ほども背が高くって。すぐの間近からお顔を見上げると、首が痛くなるか後ろへ こてんと倒れるかもしれないほど。そんな大きな相手の“胸元”に飾るお花は、バランスがよく判らなくって。まるで絵描きさんのように、つけてから一端離れて確認するところが…傍からは笑える光景で。離れちゃったのが詰まらなかったか、
「これで良いよう。」
 ロクに見もせず駄々っ子のような声を出す水町くん。あ、勿論、どうでも良いって訳じゃないけど。でもあのね、小早川さんが離れてっちゃうのはイヤだからね。悪びれないままに言ってのけ、にっぱりと笑う屈託のない子。態度や物言いはあくまでも幼いだけなのだろうけれど。体が大きいからだろか、妙に馴れ馴れしくさえ感じられ、
“…デカいな〜〜〜。”
 一緒にいた雷門くんには初めて会う相手であり、セナくんととっつかっつな背丈の彼にも、見上げて余りある長身な彼はともすれば驚異的な新入生だったのだが。そんな彼に引き続くように、
「くぉら、健悟。」
 電車が最寄りの駅に着いた関係か、すこしばかりお客人たちが集まり始めた受付の奥向きへ、ぬうと現れたもう一人。この人もまた真新しい制服を裏切るほどの、桁外れな長身だったその上に、
「勝手に先へ先へと進むんじゃない。」
 そんな叱咤の言葉が飛び出すほど、先に来ていた彼とは正反対なまでの落ち着き払った態度をたたえてもいたもんだから、
“…今日びの中学生ってのは、何食ってやがるんだか。”
 こらこら。一歳しか違わん相手なのに、そんなオジン臭い言いようをするんじゃないってば。
(苦笑) 悪気はなかったがついのこととて、目許を眇めた雷門くん。手前のテーブルで“式次第”を印刷した冊子を父兄に配ってた係の子たちから応援を頼まれて。それを幸い(?)にと思ったか、
「こっちは任せた。」
 それから…何事かを一言二言、付け足すようにこそりと耳打ちしてから。出来損ないのウィンクつきで立って行ってしまった彼であり。それを見送ったセナへ、
「…もしかして気を悪くされたのかな。」
 やはりお顔をそちらへと向けていた筧
かけいくんが、静かな声でセナへとそう訊いた。先に来ていた水町くんが…やっぱり甘えたなお顔でセナくんを独占せんという勢いでテーブル前にかじりついていたのは、少し離れた向こうからでもよ〜く見えていたし、そこへと、これもやはり馴染みのない自分が現れたものだから。疎外感という気まずいものを感じた彼なのではなかろうかと、それこそ即妙な機転で感じ取った筧くんである模様。何のことやらとキョトンとしている水町くんとは打って変わって、こちらの彼はなかなかに洞察力というものが働く人であるらしかったが、
「そういうんじゃないんですよ。」
 やっぱりセナくんは小さく笑うとかぶりを振って見せ、
「実を言えば、係は多い目に割り振られているんです。なので、のんびりサボってなって声かけてってくれて。」
 そうと言ってセナが見やった先では、確かに…父兄同伴でやって来る新入生たちへ、明らかに倍くらいの数の二年生たちが競争するよに寄ってゆき、造花を付けるやら冊子を配るやらと、至れり尽くせりな持て成しに たかっている模様。全員が同時に相覲(まみえ)れば、一年生も二年生も大差ない数同士の筈だけれど、こうやって少しずつやって来るのへと対する分には、はっきり言ってこんなにも頭数は要らない係なのだ。
『こうでもして“全員参加”って形にしないと、一部だけを呼び立てるのは不公平だからね。』
 執行部だけでは手が足りないが、さりとて勝手にピックアップするのでは、忙しいのに呼ばれたとか自分は呼ばれなかったとか、後で揉めるタネにならないとも限らない。それでなくとも二年生たちというと、次の生徒会や執行部への参加を意識する子も出る頃合いだろからねと、桜庭さんが仰有ってらして。
『だから。セナくんも、当日は他の子たちと同じ仕事に勤しんでね?』
 進に甘えるのはその後だよ?なんて、余計な一言を付け足したもんだから、
『キャ〜ンvv 進が岩みたいな手で叩くの〜vv
と、先日は緑陰館にて はしゃいでらしたのだけれども。
こらこら
「堂々としたおサボリはいけませんが、こっそりなら・ね?」
 くすすvvと悪戯っぽく笑った愛らしい人。先日の初対面の時にも感じたが、幼げなお顔や仕草の中に、ほっとするような優しさがあって。きっとそれは…彼が意外なほどに懐ろ深い人だからなんだろうなと、筧くんには感じられた。あまりに手短かだったこちらからの言いようへ勘よく応じてくれたなめらかな洞察力や、慣れた者でも持て余すような、大きな図体の駄々っ子を、癇気立つごとにどうどうと窘めたという根気のよさとか。いかにも頼りなさげに儚げに見えても、その根本に誠実さというしっかりとした芯を備えているから。ただソフトなだけの“優しい”ではなく、本人が諦めない限りは折れない、撓やかに柔軟な人性が彼の中には育まれているに違いなく。
“…成程な。”
 奔放な自信家に見せていたのは強がりで、その実、ナイーブだった幼なじみの孤独を、それはやさしく癒してくれた人。自分の方こそ繊細なのに怖じけずに、表現体の乱暴な相手へ果敢にも手をかけてくれた、勇気ある人。やっぱり健悟が籠絡されたのも無理はないかと、筧くんがあらためて思い知らされていたその傍らでは、

  「なんで駿には敬語使うの?」

 その水町くんご本人が、少々ご機嫌を傾しがせている模様。そういえば…セナくんたら、こちらの彼には丁寧な口利きで通してますよね、初見から。
「あ…と。」
 本人も訊かれて初めて気づいたらしく…何でだろ?と首をかしげたセナくんだったが、
おいおい
「きっと…あのその、堂々としてるところが大人っぽいからだよ。」
 何とか言い返した弁明へ、
「む〜〜〜。」
 それではご不満だったらしい。そですよね、じゃあ自分の方は“子供っぽい”って言われたみたいですものね。
「駿は ただ“威張りんぼ”なだけなんだからね。」
 怖くないからそんな丁寧にしなくていいよと、何だか妙な言いようをする水町くんであり。ありゃりゃ拗ねちゃったかと、やっぱりふんわりと苦笑った小さな先輩さん。そんなところへ、

  「あれ? もしかして水町じゃねぇの?」
  「そうだ、水町だ。」
  「久し振りだなぁ〜。」

 受付から離れた新入生たちが声をかけて来た。何たって一際目立つ背丈と風貌をしている彼であるし、
「何だよ、お前。戻って来てたのか?」
「まずは小早川さんにご挨拶か? 相変わらずだよな。」
 一昨年度に中等部へ留学生として滞在していた彼を知る、元同級生くんたちだから、
「相変わらずといえば、やっぱりデッカイなぁ。」
「此処のスポーツ部に入るのか?」
「その背丈ならバレーかバスケだな。」
 わいわいと気安くかけられた声へ、
「勝手に決めてくれるなよな。第一、背丈だけで選手になれるほど甘くはなかろうよ。」
 ざっかけない言いようを、にししと笑いながら返すところは、
“あの頃よりかは人が練れたのかな。”
 初めの頃はネ、悪気はなかったんだろうけど…乱暴に放り投げるような言い返し方をしていた彼だったから。ぴしゃりと叩かれたような気がしては、皆して萎縮していたものだった。それでなくたって大柄で、スポーツは万能だった水町くん。日本人なのにアメリカ育ちの完璧なバイリンガル少年で、物の考え方とか、そうそう口ずさむ歌までアメリカのヒップホップだったりしたものだから。本人にはひけらかすつもりなんてなくとも、周囲が引いてしまうには十分で。ほんのちょっとした微妙なズレの積み重ねから生まれた齟齬は、あっと言う間に…背の高い彼でも越えられないほどの、高くて堅い壁へと育ってしまったみたいで。

  『お弁当、一緒に食べない?』

 同情なんか要らないって。あんなに明るかったのが嘘みたいに、そんな思い詰めたようなお顔をしていた彼へ、あんまり話したこともない立場で声をかけるのはとっても勇気が要ったけど。不意を突かれたその顔が、何とも頼りなげなそれだったから、あのね? どんなに突っ撥ねられても爪を立てられても、頑張って仲良しになろうって思ったセナだった。だって、たくさん人がいる中での“独り”はとっても寂しいから。此処に居るのに居ないってされるのは、とっても哀しいことだって、よくよく知ってたからね…。

  「………そういえば。」

 間近からの声へ、少し離れた相棒さんを眺めやっていた筧くんが見下ろした先、
「水町くん、あの頭はどうしたの?」
「………はい?」
 こないだ逢った時にも思ったんだけど、前はもう少し黒い髪だったよ? アメリカでは黒いままってあんまりよく思われないの? でもそれだったら、筧くんはそのままなのにね。ひょこりと小首を傾げて見せて、
「此処への編入試験を受けた時、何も言われなかったのかなぁ?」
 そんなにも細かく厳しい校則がある学校ではないけれど、それはそういうものがなくとも飛び抜けた振る舞いやいで立ちをする者が、これまでそうそういなかったからだ。
「ピアスまで増えてるし。向こうのガッコでは構わなかったにしたって…。」
 今の彼が着ている濃紺の詰襟制服には、あまりに不似合いな頭と装いには違いなく。セナには“内緒話”のつもりはなかったらしく、適当にご挨拶を交わし合ったご本人が戻って来ると、小さな手をえいと伸ばして、
「前髪、鬱陶しいですよとか、言われなかったの?」
「あ痛たた…。」
 ちょいと引っ張られただけなのに、大仰に痛がったデッカイ後輩くん。これはさすがに、辺りにいた他の父兄の皆様からの注目が集まってしまったのでと、慌てて手を放したセナくんへ、こちらもすぐにも笑って見せてから、
「別に怒られたりはしなかったさ。」
 人差し指をピンと立て、チッチッチッと振って見せる。

  「なんか、これどころじゃないくらいに真っ黄っきな頭の人がいるんでしょ?」
  「……………あ。」

 言われて…即座に思い当たったほどの有名人が、そういえば既にいるですよ。
(笑) 確かに派手な風体をしている人ですが、セナくんには特に身近なお人なので。すっかり馴染んでしまったそのまま、うっかり忘れておりました。そんなところへの改めてのご指摘へ、あやや…と我がことへの指摘のように肩を窄めてしまったが、
「清潔にしていれば構いません、だって。」
 屈託なく笑ってそれからね、
「三つ編みとかに結いなさいって言われたら どうしようかって思ってたからさ。」
「………☆」
 駿だってそこまでは器用じゃないだろから、やっぱ切らなきゃいけないかなって、これでも心配してたんだと付け足されたご陽気な見解へは、
「あ…。」
 固まってしまったセナくんへ、ほらほらこんな感じと両手で自分の髪を耳のそばへと持ち上げた水町くんだったので。…しかもしっかり、両肘を体へと寄せての“ぶりっ子ポーズ”だったので。堪らず…吹き出してしまったセナくんでありまして。さわさわと柔らかな風が、満開の桜の梢を揺らしてそよ吹く四月の新学期。何だか愉快な顔触れが加わったみたいですが、一体どんな新生活がスタートすることになりますやら。お母さんは…ただただドキドキしているばかりでございます。
おいこら




  〜Fine〜  05.3.25.〜3.30.


  *自分で大所帯にしてどうするよという“アドニス”でございますが。
   あああ。まだちょっと不安な水町くんと筧くんです。
   ビジュアルでは筧くんがカッコいいなと思いつつ、
   今まで触ったことがないタイプな水町くんが
   妙に可愛くてしようがありませんです。
   本物の“アイシールド21”ってのにこだわってた筧くんは、
   セナくんにはセナくんだとしての納得がいったのですよね?

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