クリスマスボウルへの出場高校も、クラッシュボウルへの出場大学も決まった十二月。今年は残念ながら観客の側に落ち着いてしまった身としては、それでも腐ってる場合じゃあないと、次のシーズン目指しての日々の蓄積も欠かさない。公式戦はすべて消化したけれど、それならそれで、次期のチーム編成だって考えにゃならないし。何よりも、体力やポテンシャルの保持への集中を途切らせることなく、地道なトレーニングに打ち込まないと、マシンガン抱えた小悪魔様が、景気のいい機銃掃射でもってメンバー全員を追い回して下さるので、
『少なくとも粘り強くはなったわよねぇvv』
それまで鬼マネの名をほしいままにしていたメグだけが、ほくほくと喜んでいるばかりだったりし。
……という 出だしで始まったお話を、高校生編の“進セナお題”Ver.の方で、つい先週書いたのだけれど。つまりは そういう時期です、あしからず。(こらこら)
「ズボラしてんじゃねぇよ、筆者。」
「そうだぞ。いくらその通りでもだな、」
ちなみに大学生の場合、後期試験は冬休み明けなので、この時期は年またぎのアルバイトへ突入するか、一昔前ならスキー三昧になるかだったそうな。今時の大学生はそうまでスキー好きでもないらしいし、じゃあと車の免許を取りに行くでもないとかで。……何やって過ごしてんでしょうかね?(う〜ん) それはともかくとして。その大学生たちにあたる賊学のアメフト部員らはというと、公式戦がないからったって、のほほんと緩んでいる場合じゃあない。試合へ向けての特化トレーニングこそないとはいえ、基本的な練習というのは毎日のようにある。そうしておかにゃあ、十代後半の体はすぐにも鈍(なま)るからだというのもあるが、それ以上に…ついつい体が勝手に、部室や仲間のいるところへ向かってしまうからで。決して小さな悪魔様からの報復が怖いからってだけじゃあない。
「…いちいち引っ掛かる言いようしてんじゃねぇよ。」
言い直してやったんだから有り難いと思いな…なんていう応酬ばかりやってたんでは話が進まない。(まったくだ) 何だかんだ言いつつも、防具込みの練習着に着替えた面々がグラウンドまで出てゆけば、
「おお…vv」×@
ボールや何やという用具一式を準備する当番部員やマネージャーたちと共に、既に出て来ていた上背のある姿が他の面子らの眸を引いてやまない。高校生時代のトレードマークだった、あの真っ白い長ランはさすがにまとわなくなったけれど。その代わりだと言わんばかり、この秋から“フリル・ド・リザード”のグラウンドコートは、白地に緑のデジタル模様がアクセントというデザインのものへとエクスチャンジしたものだから。それを羽織った誰かさんのいで立ちは、見様によっては一年振りの懐かしき勇姿でもあり。
「……う〜ん。やっぱカッコいいよなぁvv」
「俺、高校からアメフト始めたの、あの白ランのルイさんに惚れたからだしな。」
「そんなの殆どの奴がそうだって。」
総長の親衛隊も同じという実態だった、あのカメレオンズの面子が殆どついて来ている今の部なだけに。一回生らはもとより実は二回生の皆様へも、このグラウンドコート姿、涙ものの勇姿復活と喜ばれていたりする。高校に上がってからは背丈と共に筋骨の方も充実したが、それでも手足の長さのせいかスリムな印象が強く。そんな微妙なバランスを良い方へと貫禄づけて映えさせていた あの純白の戦闘服は、ほんの三年の間だったとは思えぬインパクトで、彼らの総帥の神々しさを象徴してもいたものだから。それをもう着なくなった大学生の春からは、何とはなくうら寂しいものを感じなくもなかった一同で。それが…秋の公式戦を前に、ユニフォームから何から、高校時代のそれに重なるような配色のものへと大きく変更が入ったことを、あの小さな“敏腕コーチ”殿から決定事項として伝えられ。何だそりゃ、聞いてねぇぞと反駁しかけた皆の口が…笑えるくらいにピタッと封じられたのが、
『…どうした?』
真っ黒な直毛を撫でつけた髪形も、いかついタイプじゃあない鋭角な面立ちの、実は結構 整ってる精悍さもそのままに。白を基調としたユニフォームと、その上へ羽織った裾の長いウィンドブレーカーという恰好でグラウンドへ現れた葉柱へ、全員の視線が釘付けとなったからだったのは…こちらの彼らには記憶に新しい一幕で。何をそんなまで驚いてる面々なのか、ちっとも判らなかったのがご当人のみだったのも大いに笑えたそれ以降、寒さが少しでも増すと、不思議と全員の練習へと出て来る時間帯が早まるようになったのが、
『とんだ効用だわねぇvv』
理由が理由なだけに笑えてしようがなかったのは、やっぱりメグさんだけだったところが穿ってる。総長殿は相変わらずによく判っていない様子だし、
「発案者があのチビだってのが、口惜しいっちゃあ口惜しいが。」
「それを言っちゃあ…。」
そう。こうなることを重々予測していたらしき、小さな鬼コーチ様に至っては、
『お前ら、読まれやすすぎだぞ?』
そんなだから ○×戦では後衛陣のフェイクを何度も何度もかまされやがったんだしよ…などと、ここぞとばかりにツッコミを入れられている始末。しかも、
「お前ら、遅いぞっ!」
だらだら来てんじゃねぇよ、とっととウォームアップにかからんか…と。幼い甘さの重々居残るお声での、堂にいった鋭い叱責が飛んで来て。明らかにそれへと弾かれて、どひゃあと肩をすくめたレギュラー陣が、ジャケットやウィンドブレーカをあたふた脱ぎ捨て、グラウンドに散って柔軟を始める。紛うことなくお子様のそれだと判っているのに、居丈高な声だけで言うとおりに動く身を、恨めしいと思う時期はとうに過ぎ。あの坊やの声なんだから逆らうまいとの順番になってる“刷り込み”の恐ろしさに気づくのは、練習も終わってフィールドから下がったあとの、全く関係ない時ばかり。それはきっと、間違った指示じゃあないからなんだろうけれど、それでも…せめて睨んでやろかいとばかり、どっから響いた声だったんかしらと、視線を巡らせたところ、
「………あ。」×@
平坦で開けた場所なだけに、時折 吹き抜ける風もあるっていうのに、総長殿のコートの裳裾、あんまり大きくひるがえらないのはどうしてかと思いきや。ボタンは留めていないその前合わせ、内側から引っ張り合わせている存在がいて。二人羽織もかくあらん、自分の襟元までを覆うようにと、お兄さんの羽織るコートの前合わせを手繰り寄せ。お母さんの腹袋から顔を出す仔カンガルーよろしく、金色の髪を冬の陽に光らせ、懐ろへとちゃっかりもぐり込んでた誰かさん。随分と背が伸びたとは言っても、まだまだ頭の先が肩へも届かぬ おチビゆえ。すらりと引き締まった体格をした総長さんの胸元へ、言いようとしてはおかしいが、十分な小ささでぴったりと収まっている懐ろ猫っぷりなのが、
“……う〜ん、ちょっとうらやましい。”
こらこら、誰ですかこれは。(笑) あんな恰好になっちゃあ身動きには邪魔じゃないかと思えば、そこは総長さんの方でも心得ており。ちょっとした身動きへは坊やの方でちまちまと動いて合わせ、大きく歩き出すようなときは、葉柱の方がコートごと坊やを軽々と担ぎ上げての移動という呼吸になってるらしく。…ますますと二人羽織以外の何物でもないんですが。
「あれをいちゃついてるとは思ってない、ルイさんの天然っぷりってどうなんだ。」
「小学生相手なんだから しょうがなかろ。」
つか 坊主のほうも、日頃 大人ぶっちゃいるがああいう構われ方に照れが出ねぇのは、立派にお子様だって証拠じゃね? あ、それ言えてる。俺なんか 気のある相手にああまでくっついたら平常心じゃあ居られねって。そこがお子様だってか? そうそう、言えてる言えてる…vv
“一美にギンに、足塚に近藤に、と。”
i-Podを聞いてる振りで、その実、高性能の人声感応集音マイクにて拾った内緒話、きっちりチェックしている小悪魔様だったりもするのだが、
“…いちいち照れてちゃ勿体ねぇじゃんか、ば〜か。/////////”
寒いからってな極上の言い訳を、見す見す逃す手はないこの季節。背中から腕までと、くるんと抱えてもらえる至福を独占しもっての、更には、
「おーしっ、ポジション別のシフト・ラン、行くぞ。」
「おおっ。」
ふわさと脱がれた真白いコートを、匂いや温みごと預かって。すぐの眼前にてボールを奪い合う勇姿を眺めていられるのだから、
“う〜ん。やっぱ、俺、夏よりこの時期のほうが好きかも。”
寒いの苦手だったはずなのにな。父ちゃんが帰って来るかもしんないからっていう、微妙なドキドキでイライラしてたのも今は昔になっちったしで、ほこほこと暖かいことばっかになった冬の日が、いつの間にやらお気に入りになってたこと、白い頬を赤くして、しみじみ感じ入る坊やであったらしいです。
「…っ、こらそこっ、簡単に抜かれてんじゃねぇよっ。
右が甘いクセ、とっとと直せ、一美っ!」
いやはや、元気元気♪
〜Fine〜 08.12.08.
*12月に入って急にお寒くなりましたね。
年末の慌ただしいあれこれは待ってはくれずで、
それへと構けた挙句、うっかり薄着になったり汗かいたりを放置せず、
しっかりお手当て なさってくださいましね?(苦笑)
めーるふぉーむvv


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