Little AngelPretty devil 
      〜ルイヒル年の差パラレル 番外編

    “晩秋一宵”
 


風の中にいたせいか、
肩や背中が思っていたより冷えてたようで。
こんなに がさごそ着込んでいるのになと、
狩衣一式、
ばさばさと荒っぽくはだけての脱ぎ落とせば、

 「おいおい、せめて奥に入ってからにしな。」

月の青で染まった夜気の冷たさに
わざわざ素肌をさらしてどうするかと。
封滅に使ったあれやこれや、
錦の袋に詰め込まれた荷を文机へと載せつつ、
蜥蜴の総帥が呆れたような声をかける。
今宵の務めはそれほど手もかからなくて。
それはいいのだが、
このごろは結構な寒さが
しんしんと降り落ちる夜更けだけに。
大して体も動かさなんだ仕儀とあっては、
ただ寒さへ浸りに行ったようなものであり。
極端な痩躯でおわすこともあってか、
こちらの術師殿、実は寒さがやや苦手。
だというのに、何をまた寒々しいかっこでいるかなと、
気を利かせた賄いのお女中が出しておいて下さった
唐渡りの陶器の火鉢へ向けて、ぱちりと
長い指を擦り合わせて鳴らせば、
時間が掛かるはずの熾火がたちまちおこる。

 「おお、これは至便な。」
 「あのな。」

喜々とした声を上げつつ、
そちらもやや早いめの綿入れを、
袷の上へと引っかぶる彼なのへ。
相変わらずの漆黒づくめな直衣をまとった葉柱が、
まるで彼の陰であるかのように、歩みを運び、
白い頬へと大きめの手のひらをあてれば、

 「…冷たいな。」
 「まぁな。」

畏れ多くも主人の顔に断りなく触ってんじゃねぇとの
激しくも偉そうな一蹴りが来ない。
荒っぽい殺陣回りこそなかったが、
その白い手で、天からの雷光を呼んで地脈を活性化させ、
結構な大きさの岩から
出て来ようとしていた妖異を押し返した咒は、
かなりの念を要したに違いなく。

 「お前の手は温いのな。」
 「まぁな。」

その手から腕へと自分の手を這わせ、
つつと上らせる途中、葉柱がその手を捕まえて、
痩躯ごと懐ろの中へと強引に掻い込んでしまえば。
厚いめの袷をまとっても
その体躯の輪郭はすぐにも辿れての、
あっさりとすっぽりと。
邪妖の男の体熱の中へ、
その身 そっくりとろけたいのか、
適当に衣紋を掻き分けるから。

 「ああ待て待て。」

そこを引いても緩みはしないと、
衿の重ねをごそりと開き、
素直に丸まる主人を暖めることへ徹する季節が
やれ、今年も始まった……





   〜Fine〜  13.11.04.


  *そろそろ晩は膝掛けが要るようになって来ました。
   そして去年は入院しちゃったこの時期なので、
   毛布をいつ出したらいいものかが
思い出せません。
   あんまり早くから厚く掛けると
   夜中に蹴り飛ばしてたような
気もするんですが…。


 めーるふぉーむvv
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