Little AngelPretty devil 
      〜ルイヒル年の差パラレル 番外編

    “落ち葉かさこそ”
 


昼の間、陽の中にいると暖かいのだが、
それでも風が随分と冷たくなったし、
何よりその陽が照っている時間も短くなった。
朝早く起き出しての水仕事はそれはもう大変だし、
晩も足元や床板からの冷たさが
ほんの半月前とは段違いで、

 『そうなんだよなぁ。
  ちょっと前までは礼服でいるのが難儀で、
  いつまで暑いんだって言ってたはずなのによ。』

瀬那の乳兄弟で、
神祗官であらせられる武者小路家に仕える書生の陸くんも、
ちょっとしたお使いに来たときにそんな風に言っており。
セナよりも利発さが尖っている感のある、
ずんと活発な子ではあるが、

 『ウチのお師匠様が、
  足元には熱が逃げもするから、
  上へ何か掛ける以上に下に分厚く敷きなって。』

 『あ、そうなんだ。』

セナが言われた心掛け、
素直に訊いてって試したら“随分違う”と喜んでた素直さは、

 “ある意味、血統が同じなんだろうな。”

悪いことではないが、
ああいう子はしっかりしてるようでいて、
ころっと しょむないことで足元掬われるんだよなぁと。
余計なお世話な方向への 心配なんだか懸念なんだか、
ついつい思ってしまったらしい、
こちら、
うら若き身で神祗官補佐という大役に就いておられる術師殿。
年よりの白髪でもない限り、日乃本にはまずは二人といなかろう、
陽を浴びて淡くけぶるような金の髪を時折風になぶられながら、
宮中への出仕のため、玄関先へと出ておいでで。

 「いってらっしゃいませ。」
 「うむ。」

一応は鷹揚に応じたものの、
内心では“あ〜あ、つまんねぇ”の連呼であり。
見送りの面々の中、
傍らに小さな仔ギツネ坊やを従えて、
小さな書生くんが立っているのに気がつくと、

 「おい、せなちび。」
 「はい。」

気安く呼んで、桧扇を開いた陰で言い付けたのが、
今日の最優先なお仕事だったのだが。

 「…本当なのかなぁ。」

 『楓の葉っぱだけで焚いた焚き火で焼いた焼き芋は
  格別美味いと聞いたから、それを昼餉に用意しておけ。』

そりゃあまあ、ウチの敷地の内にも楓はたくさんあって、
落ち葉には事欠かないし。
朴の葉や楢の葉が紛れるくらいは
摘まんで除ければ済むことなので、
特に難しいことじゃあないのだけれど、

 “あのお師匠様がそんな素朴なものを食べたいだなんて。”

聞いたというのが本当でも、
じゃあ自分も食べたいと思うものかしらと、
そっちの方への不審というか怪訝がつのっているらしき書生くん。
ざりざりと竹ボウキでお庭や門口を掃き、
集めた落ち葉の山のそばに屈んで、
楓のだけを丁寧に選り分けておれば、

 「あ、葉っぱっ。」

陽あたりのいい広間の濡れ縁にて、
今日は一緒に降りて来たこうちゃんと一緒に遊んでいたはずの
仔ギツネ坊やが、
落ち葉のお山に眸をきらりんと輝かす。
それっと駆けて来たのでいやな予感がしたものの、

 「はにゃ?」
 「ありゃ。」

仔ギツネの姿でならばいざ知らず、
寸の足らない人の和子の姿のまんまの、
とてとてとてという、いかにも幼い駆けっこだったので。
なんぼでも対処は取れるというか、
飛び込もうとした枯れ葉のお山の手前へ、
別なお山がガサアッと振り落ちて来たものだから、
そこへバサアッと総身で飛び込む格好になってしまった坊やであり。

 「く、くうちゃん、大丈夫?」

思わぬ出来事、さぞやビックリしたんじゃないかしらと、
そっちを気遣うセナのお耳へは、

 「きゃぁ〜いvv」
 「こおも、こおも はいゆvv」

よ〜く乾いて温かい枯れ葉だったようで、
葉っぱのお風呂よろしく、
じたばたまみれて喜んでおいでの くうちゃんなのへ、
後からついて来たこおちゃんまでが えいっと飛び込んでいる始末。

 「…でも、こんないっぱい、どこから。」

飛んで来たというよりも
突然現れたというか、がさっとまとめて落ちて来た感があり。
ちょうど傍らにあったのは、だが、そちらは常緑の椿の木。
おかしいなと小首を傾げるセナくんなのを見下ろして、

 「やっぱあのくらいはねぇとな。」

童が埋まって遊ぶには、
あれじゃあ木の葉が足らないと思ったらしい誰か様の
思わぬ悪戯というか名乗らぬ贈り物だったようで。

 「よっし、もうちょっとだvv」

お芋が焼ける焚き火まで、もうちょっとと、
再び選別を始める小さな書生くん。
一方で、珍しいことを言い出したお師匠様は様で、

 「じゃあ貰って行くからなvv」
 「うん。あ、セナくんにもよろしくねvv」

畏れ多くも東宮さまからの賜り物、
今年は特に蜜たっぷりで甘い出来だという、
本場は薩摩からの甘藷を笊に山ほどいただいて。
さてでは帰るべえと、
黒の侍従さんに荷を任せ、ほくほくと帰途へつくところ。
ええそう、
たまにはこういうお珍しいことも企むお師匠様だったようで。
早く戻って美味しい焼き芋で
行きすぐ秋をほっこりと堪能してくださいまし…。






   〜Fine〜  13.11.18.


  *いやはや、
   まだまだ陽は明るいのに
   陽だまりは暖かいのに
   それでも日に日に冷え込みますね。
   皆様、お風邪など拾わないよう、ご自愛くださいますように。


 めーるふぉーむvv
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