Little AngelPretty devil 
      〜ルイヒル年の差パラレル 番外編

    “春の足音?”
 


昨年も随分な大雪で、
地行である北方の所領の無事を確認するのへ
自身の咒力も少なからず必要な“式”を
使いまくりだった術師殿だったのだが。
今年もまた、半端ない寒さが、
しかも京の都へまで襲い来たものだから、

 “まあ、此処も
  暑さ寒さの厳しい土地じゃああるんだが。”

内陸のしかも盆地ゆえ、
夏は南の内地から、
冬場は北の海沿いからの気団が停滞しがちで。
本来からして、それに翻弄される土地ではあるものの、
それでも例年の比じゃあないほどの
積雪に見舞われたこの数日であり。
単なる雪除け寒さ除けの工夫のみならず、
咒も大盤振る舞いしての寒気除けをしたからこそ、
何とか保ったというよな順番のあばらや屋敷。
蛭魔のそれもだが、勿論のこと葉柱も踏ん張ったし、
瀬那くんも、
それから仔ギツネ坊やがまといし防御の妖力も働いたか。

 「……お。」

実は一晩中という長さで大荒れだった風雪が、
何故だか こちらのお屋敷とその周辺へは、
ちいとも関わってなかったのが あからさますぎて。

 「これはこれで、
  京の都の七不思議へ数えられちゃいそうですね。」

世間体を気にする訳じゃあないけれど、
実は大妖に縁故でもあるんじゃあと
大きに勘ぐられぬか恐れた書生くんの言いようへ、

 「今更だから放っておけ。」

それって荒唐無稽の言い掛かりじゃあないのだしと、
蛭魔が にやにや笑ったのは言うまでもなくて。

 「お師匠様ぁ。」

調伏することもお役目の我らが
そうと怪しまれては問題がないかと
案じたらしいセナくんなのへは、

 《 蛭魔もそれくらいは判っておろう。》

殊更にセナへの風よけを頑張っていた進が
主人の小さな肩をポンと叩いてそんな助言をする。

 《 そも、様々な祈祷のみならず、
   怪奇への調伏をこなせることへも、
   学問上の理屈でではなくのことと、
   知る筋には知られておるのだし。》

それが自然世界の条理だという 約束事とか手順とか、
きっちり踏まえれば素人にでもこなせるような
学問の道理だけを使っての単純な咒術でいいのなら、
他にもこなせる関係者、
寺社仏閣を訪ねればそれなりのが多数いる。

 そうではなくて

本物の妖かしに悩まされているとか、
真剣壮絶な呪いを受けたとかいう、
術師自身の咒力や技巧も持ち出さねば、
何ともしがたいような事態へも、
頼りにされる蛭魔だからこそ。

 《 傍杖を食いたくはない衆生の輩は
   いっそ此処には近づかぬ方がいいのだ。》

蛭魔自身豪放磊落を装いつつ、
間接的にそうと思っているのだろうさと、
淡々とセナへ説く、式神の彼なものだから。

 「でもボクは、お師匠様が誤解されるのはちょっと…。」

いやだなぁ、と、
声には出さずに呟いたセナくんで。
だってお師匠様は、ホントは優しいし、思いやりもある人だもの。
怒ると怖いけど、
それは自分たちがとっても危険なものへ関わっている身だからこそ、
自分の見幕くらいがおっかないなら もう辞めなと、
そうと言いたいのだって判るから、大反省して次を頑張れるのだし。

  それより何より

とっても危険な依頼の調伏で、
大怪我なさることだってあろうに、
そんなもん晒せば弱みになるとうそぶいて、
平気な顔を強いられもして。
どうしてそうも、敵だらけの身でおわすのかと、
小さなセナには時々つらい。
理解者がいなくはないけれど、
十分に徳のある方々が、
ちゃんとした把握をしてくれてはいるけれど。
街でほんの小さな童などを躾けるのに、
悪い子は鬼みたいな祈祷師が攫いに来るよなんて言い、
大人が怖がらせたりしているのを聞くと、
そんなことはないんだよと言いたくなるし、

 「…つか、そんな風にも有名なのか、あいつ。」
 「え? あ…。///////」

隣りの領地の雪の解けようを
見に行ってたらしい黒の侍従さんが、
まとまりの悪い髪を乗っけたセナくんの頭を、
ぽんぽんと軽く押さえると。

 「いっそのこと、それを言ってあれば喜ぶぞ、あいつ。」
 「言えませんて。///////」

もうもうこれだから大人の皆さんはと、
真っ赤になったセナくんの、
そんな無垢で純情な真摯さこそ貴重なのだと。
だからこそ、君は傍らにいてやってと、
皆さんが思っているのを、
はてさて、それこそ ご当人は気がついておいでなものか。
どこかの梢で里へ降りかけのウグイスが、
幼い声で春告げの声を聞かせた、
そんな都の場末での、かわいらしい一幕でございました。





   〜Fine〜  14.02.23.


  *セナくんも、
   進さんの言いようとか
   葉柱さんの把握とかが判らんではないのだけれど。
   それ以上に、蛭魔さんを悪く言われるのは
   凄い人なのにと判っていればこそ、
   チクンと来るのでしょうね。
   蛭魔さんに言わせれば、
   こんな嫌われものの術師には、到底なれぬセナくんこそ、
   どうやって箔をつけるつもりなのだろかと、
   そこが今から心配だったりするんですよ?(親ばか〜vv)


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