京も結構雪の降る土地で、
宮廷のある都大路は、
広く開けている上に人々が生活して出す熱もあるせいか
さほどに降り積むことはないけれど。
少しでも山野辺となれば、
日本海に間近い、しかも盆地なだけに、
枯れ山水そのままの風景が、
そこここに何ぼでも見受けられるほどで。
「ぷや?」
きんと冴えた空気を脅やかすよに
かささ・がさごそ、
熊笹の大きな葉が落ちて来た雪に揺れて鳴ったのへ。
一丁前に袷と袴の上へ小さな簑を負うた童が、
陽だまりの中、何だ何だと振り返り。
正体を見つけられなんだものか、
きょろきょろいつまでも見回しておれば。
ちょいと大仰なその仕草に添うて、
真ん丸な頭の上で、
甘い色合いの髪を束ねた房が
はさはさ振り回されているのが何とも愛らしく。
「なんか、音した。」
「したね。」
「したした、音。」
右を左をと、はたはた
いやに忙しく見回していたかと思いきや、
ひたりと止まった坊や、
実はよう似た二人連れであり。
変ねぇ、そうねぇと
向かい合ってのお互いの右へ左へ、
かっくりこっくり、小首を傾げ合うのがまた、
傍から見れば互い違いなのが
ちょっとしたお遊戯みたいで 何とも愛らしい。
寒さのせいでか、
それとも昨夜のうちに少し降った雪のせいか、
小さな雑木林は、
小さな童二人の駆け回る気配しかしない。
ちょっぴり開けた空き地の中、
冬枯れした芝草の上へ、うっすら積もった雪は、
強い風にも吹き飛ぶほどの僅かなものだが、
それでも誰かの痕跡を残すには十分あったようで。
「あ。」
「あ?」
片やの坊やが、何かに気がつき、
はややと駆けてった先には、
点々と連なる小さな足跡。
ふわりはたりと、
たゆたゆ揺れるふさふさのお尻尾を宙に遊ばせ、
何だなんだと、二人連なって追っかけて。
小さなお鼻をくんすんと近づけてみたものの、
「誰だお?」
「だえかな?」
楢やスズカケの木立ちの根元、
先程二人が驚かされた熊笹のところまで追ったけど、
それでもやっぱり判らずに、
あれれぇ?あややぁ?と
四ツ這いになっての
ふくふくの頬っぺをくっつけ合って、
やっぱり小首を傾げ合う愛らしい和子二人。
柔らかそうなお尻尾といい、
頭の上へひょこりと覗く三角のお耳といい、
“ありゃあ、気づいてないんだろうな。”
もはや人の和子へという転変変化(へんげ)の咒は解けており、
あのままでお屋敷へ戻ると
人目に触れて騒ぎになるやも知れぬのにと。
樹上から楽しげに見下ろすは、お馴染みの裏山の主様だったが、
そんなことを思いつつ、
送ってってやる口実が出来たのが嬉しいらしい邪妖の御大。
蛇神様、ウサギの気配が嗅ぎ分けられないのは、
見咎めのうちに入ってないらしくって。
おとと様といい おやかま様といい、
そしてそしてこちらの大妖の君といい、
今年も、ちびさんたちを
甘やかす気 満々でおいでなようでございます。
〜Fine〜 14.01.04.
*るふるん、るふるん、ユキウサギ♪という
カルピスのCMを覚えてる人はどのくらいおいででしょうか。
ホットカルピスが無性に飲みたくなる季節の到来ですね。
そいや、ホットポーってのもあったような…。
めーるふぉーむvv 
or *

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