Little AngelPretty devil 
      〜ルイヒル年の差パラレル 番外編

    “忘れ霜”
 


梅が咲いて、菜の花が咲いて、
濃緋が可憐な桃や、お待ち兼ねの桜が咲いて。
いよいよの春到来だね、これからは暖かくなるんだねと、
はらはらと散る桜へ寂寥を覚えつつも、
長かった冬ととうとうお別れだとワクワクしておれば、

 「なんだ、この寒さはよっ

毎年のことだというに、
しかもしかも、気候の巡りとかに関しては、
ある意味で“専門家”だというに。
それでもやはり腹立ちを押さえられないお館様の、
お怒りが満ち満ちたお声を苦笑交じりに聞きながら、

 「仕方がないですよォ。」

所によっては遅霜が降りるほど、
この時期は 陽が出る直前の冷え込みが半端ではない。
いわゆる“放射冷却”の桁じゃあないほど、
ともすれば真冬並みの寒さになることもザラであり。
そうなるから気をつけなと、
里の人々にも説いて回ったことだってあったお人が、
実際に自分がこうむる段には ここまで怒る判りやすさよ。
小袖に単(ひとえ)に袷(あわせ)にと、
羽織れるだけ羽織ったその下も、
細身の袴に指貫にと重ね着をしてという重装備。
しかもしかも、お膝にふっかふかのくうちゃんを抱えて、
炭櫃の間近に陣取るという、
冬場の防寒対策となんら変わらぬ身構えであり。

 「おやかま様、寒いの?」

何でなんで?と 不思議がりつつ懐ろから見上げてくる坊や。
見た目は 袷に袴を着込んだ、すべすべ頬っぺの和子ながら、
実はまだ微妙に冬毛をまとっておいでの仔ギツネさんなので。
じかに触れるとその感触が何とも柔らかで心地よく。

 「くうが いると大助かりだのvv」
 「きゃいぃ〜っvv」

いつもそれは頼もしいお館様から頼られるのは格別か、
お褒めの言葉をいただけて、ご機嫌になった仔ギツネさんだが、
うふふ〜vvと笑顔なのには、実はもう1つほど理由があって。

 あんね? こやっておやかま様から抱っこっこさえゆとね、
 おんもに出てく前に、
 おとと様からも抱っこっこ してもやえゆのねvv

お館様がお仕事や調べものに入られると、
いきなり暇になっちゃう仔ギツネ坊や。
となれば、裏山まで遊びにと飛び出してくのが常なのだが、

 「ちょおっと待った、くう。」

それは頼もしい おとと様こと、トカゲの惣領様が、
お待ちと呼び止め、そのまま抱っこ。
こちら様はさほど寒がりということもないので、
何でかなと瀬那くんに訊かれ、
何でだろ?と、小首を傾げたそのまんま、
やっぱり理由は判らないままの おちびさんたちなんだけど。

 『ああ、そりゃあ あれだ。』

くつくつくつと楽しそうに笑った蛇神様だが、

 『武士の情けだとか何とかゆって、
  くうには おしゅえてくりないの。』

子供みたいなところへムキになってる、大人のおとと様。
間接的に“ぎゅう”し合っちゃうようでイヤだなんて、
ホントかわいいねぇ…なんて理解出来るよになるには、
まだまだ早いお子様たちであるようで。
朝晩が寒いうちは毎日続くこの段取りへ、
何でかなぁ何でだろぉと、
庭の木立へ遊びにくる小鳥みたいに、
かわいらしく小首を傾げ合う、
そんな若葉のころなのでした。





   〜Fine〜  14.04.14.


  *いちいちそこまで考えちゃあいなかったと思いますよ、
   お館様は元より、あぎょんさんにしても。
   ほんに可愛らしい葉柱さんです、ええvv


 めーるふぉーむvv  
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