Little AngelPretty devil 〜ルイヒル年の差パラレル 7おまけ
   
 “小さな“約束”に至るまで…vv
 

 

 日本のアメフト界の本番は、本場であるアメリカのそれに合わせたか、それとも単に気候的な条件からか。秋の声を聞いたと同時…西欧の新年度が始まる九月から、社会人部門でも大学・高校生部門でも、リーグ戦やトーナメント戦の本番がその幕を一斉に切って落とす。大学は4つそれぞれのリーグ戦が土日を使って消化され、高校生たちの選手権大会も、週末に各会場にてのトーナメント戦が行われており。

  『ルイんトコは一番試合数が多いのな。』

 葉柱ルイが率いる、賊徒学園高等部のアメフト部“賊学カメレオンズ”はというと。この春からの新規参入チームであるその上に、そのお初の試合にて、乱闘騒ぎを起こしたことで全員が退場という処断を受けてしまったものだから。もしも最下位までの順位がついていたなら、間違いなくビリだったろうというチームなので。まあ、そんな処遇も致し方ないというところか。そんな意味合いから“馬力自慢”の注目チームという、あんまり名誉ではない下馬評を背負い、一番下層の初戦から挑むこととなった秋季都大会だったのだけれど。いざ蓋が開いてみれば…初戦も2回戦も快調に勝ち抜いて、あっと言う間の上位進出。3回戦も切り抜けて、秋の連休の残りは骨休めに使おうと、選手の面々も自主トレモードに入っており。主将で総長の葉柱は例年の恒例、幼なじみの親戚筋が所有する梨園へのお呼ばれを受けていたのだが、

  『…あ、ごめん。明日って、俺、仕事が入ってる。』

 せっかくだから一緒に行こうやと、試合の応援に来ていたもんだからその帰り道にて、至ってお気楽に誘ったところの小さな悪魔くん。日程を聞いて“あっ”と表情を弾けさせ、見る見るうちに小さな肩をすぼめてしまった。訊けば、知己でアイドルの桜庭春人が出す、来年度カレンダーの撮影に付き合わされることになっているのだそうで。今朝という急な連絡へ、いつものように二つ返事で了解したばかりなんだとか。

  『ふにぃ〜〜〜。』

 いかにも気の強そうな鋭さを秘めつつも、やわらかな線ですっきりと。玲瓏に描かれた愛らしいお顔をさも口惜しげにくしゃくしゃと歪ませている。ご本人としては“梨もぎ”の方へ行きたいらしかったが、先約としてそちらと約束したなら仕方がない。子供のクセに大人の理屈をよくよく知っており、妙なところで律儀な子。大人ぶりたがるあまりにか、それとも今更子供ぶれないのか。破天荒なこと、いくらだって発揮させられる大胆な子が、今回は…とりあえず大人の道理、契約という事項に幼稚な感情を優先させられなくて困っている模様だったので。
『それってどのくらい掛かるんだ?』
『判らない。』
 一応の手順は打ち合わせてあるけれど、こういう撮影は天候の加減とかカメラマンのノリなんかで、方針もコンセプトも、スケジュールだって大いに変わる恐れはあって。
『その日のうちには終わらせてくれる筈なんだけどもな。』
 神奈川は湘南の方まで出るらしいので、遅くなったならそっちで泊まりということにもなりかねない。試合会場から少し離れた駐輪場まで。乗って来たオートバイを停めてあるところまでをのんびりとした歩調で歩きつつ、そんな会話を交わしていて。並んで歩いていた小さな坊やの歩調が、かつて見たことがないぞというほどの しょげように呑まれて、とうとう止まり掛かった気配に…小さく苦笑した総長さん。

  『判った。迎えに行ってやっから、そんなら良いだろ?』
  『…え?』

 それが湘南でも、自宅の方でも。朝一番にバイクで迎えに行ってやる。車だと結構早く行き来出来るから、大丈夫。泊まりがけほどじゃなくなるとはいえ、一日だけでも存分に楽しめるだけの時間は取れるぞと。丸くなりかかってた小さな肩をポンポンと、大きな手のひらが軽く叩いてくれたから。

  『でも…ルイは向こうで一泊するんだろ?』

 葉柱もまた、自分の自宅から来る訳ではないのだから、下手を打てば…梨園のある郊外地から湘南までなんていう長距離の往復をすることになるのに? たった今、終わったばかりの試合でだって随分と疲弊している筈なのに。そんなの大変なのではないかと、上目遣いになって案じた坊やへ、

  『何をまた殊勝なことを言い出すかな。』

 かっと呆れたように言い放つもんだから。人が心配してやってるのにっと。たちまちお元気な応酬が返って来て、

  『じゃあ、絶対に迎えに来いよ。』

 遅れたり事故ったりしたら承知しねぇからなと、打って変わって脅かすようなお言いよう。やった、梨もぎも出来るようvvと、それはそれは判りやすい元気が戻った坊やの笑顔に、こちらまでもがついつい破顔してしまった総長さんだった。







            ◇



 3回戦の次は準々決勝だったりするのだが、連休だった3回戦よりも観客席はがらんとしており、
「まあ、あんまり注目のカードじゃないからな。」
 別会場で行われる二試合の方が、チームも有名だし話題も上という4チームが固まっているんだとか。高校生レベルのアメフトへの世間様からの関心はまだまだ低い。わざわざ会場まで観戦に来てくれるとなるのは、よほど入れ込んでいるファンくらいのもので。そんな条件まで重なっては、こちらの会場の客席の寒々しさも已を得ないというものなのかも。十月最終の週末を、それでも観に来てくれただけでもありがたい。そんなギャラリーの声が…さすがは空いているせいか、試合前のベンチにもくっきりと届いて、

  「あ、ラバくんだvv

 フェンス前という至近に陣取っていた女子高生らしい数人が、大会のパンフレットを広げつつ、そんな声をつと上げたのが。不意を突かれたせいもあって、葉柱の耳へスルリと飛び込む。注目選手の写真も掲載されているから、それを見ての声らしく、
「王城は向こうの会場だっていうじゃんか。」
「しょうがないよう。間違えたって気がついたの、こっちついてからだしサ。」
 あ〜あと落胆半分な会話。どうやら彼女らの本命は、高校アメフト界の王者、王城ホワイトナイツであったらしく、だっていうのに会場を間違えてしまったらしい。…で、今から向こうへ向かうのが面倒だという彼女らでもないらしく、
「でもあっちは午前の試合だからサ。もしかしたら、偵察にってこっち来ないかな。」
 そう、開始時間まで間違えてのご来場。たとえ会場が正しくとも、肝心の試合自体に間に合ってなかったというイージーぶりで、
“試合で疲れてる奴らが直接は来ねぇって。”
 会場が同じならともかくも、結構離れたこっちへなんて。偵察にというなら主務や監督が来る程度だろうし、人目を引いてしまいまくる、アイドルタレントの桜庭春人をわざわざ連れ回す筈がない。ファンでもない自分がちょこっと考えただけでも判ることながら、ファンの心理とは恐ろしく。自分にだけは何か奇跡が起こるかも知れないと、常に心を高揚させていられるもんだそうな。………まあ、そんなこんなは自分には関係ないんだがと、意識を振り切ろうと仕掛かったそのタイミングへ、

  「キャンvv 相変わらず可愛いよねぇ、ヨーイチくん。」

 心臓に悪いほど覚えのある名前が聞こえて、
“げ…っ☆”
 ベンチ横で固まってしまった主将殿。そぉっと…肩越しに振り返れば、その女の子たちが広げていたのは、重々見覚えのある写真集であり。………一体 何をしに試合会場に来た子たちなんでしょうかね。
(苦笑)

  「ホント、可愛いよね、この子。」
  「ジャリプロの子なのかな。」
  「でも、他のCMとかには全然出てないしィ。」
  「だよね〜。こんな可愛い子なんだもん、出てたら話題になる筈だって。」
  「ラバくんの親戚の子じゃないの?」
  「あるある。こんな可愛いんだもんvv」

 思い切り勝手なお言いようへ呆れつつ、だが、

  『次の試合、勝ったら…キスしてやる。』

 先日の梨狩りにて、その坊やから唐突に言われた一言を思い出し、

  「………。」

 その場にそのまま固まりかかった主将さんでもあったりする。小生意気で尊大。子供ならではの“物知らず”から来る“怖いもの知らず”な言動ではなく、あの坊やの場合は…大人でも舌を巻くほどの豊富な知識という、確固たる下地あってのディベートの妙を発揮して下さるものだから。アメフトとバイクと喧嘩以外には能がない自分なんぞは、易々と手玉に取られて当たり前。どんな大人が相手であっても何とも思わず腰さえ引かず、若しくは…達者な演技で可憐な美少年を装っては煙に撒き、ちゃっかりと美味しい想いをしている強かな子供。そんな素性や性格を重々知っておりながら、そんなところをこそ大物視してだろう、対等な関係でもって可愛がって下さる大人のお友達の顔触れも多岐にわたり、そういった人脈という点でも恐るべき子だっていうのに…どういう訳だか。一番新参で、恐らくは一番頼りにならんかもな自分へ、妙に懐いて下さる彼であり。

  『判った。迎えに行ってやっから、そんなら良いだろ?』
  『…え?』

 梨狩りのお誘いを断らざるを得ないことへ、妙にしょんぼりするもんだから。特に大変なことでなしとお迎えを言い出してやれば、

  『でも…ルイは向こうで一泊するんだろ?』

 そんな気遣いまで示してくれて。これまでの定石だったなら、むしろ坊やの方からこそ“迎えに来い”と無茶を言い出すところだろうにと、葉柱には意外すぎる反応だったりもしたのであって。そしてそして…約束通りに迎えに行っての梨園ではあんな運びになった訳で。

  “…撮影ん時に何かあったのかな。”

 大人に負けない強かさや気丈さを誇る彼であれ、そこはやっぱり経験値の足りない子供だから。あんまり気の進まない態度なり演技なりを強要されて、心細い想いなぞしたのだろうか。事情に通じている桜庭が付いていたのだから、そうそう無体はさせなかろうが、上下関係をかざされて、彼でも何ともしがたい場面とやらがあったとしたら?
“けど…駅で会った時とか、ずっと機嫌は良かったんだがな。”
 待ち合わせたのは彼の自宅と目的地の中間の駅。撮影も済んで自宅に戻れたという電話が夕刻にあったので、じゃあ家まで迎えに行くと告げたところが、これだけは譲らねぇと意地を張ったので、そういう段取りになり。仄かに陽灼けしていたお元気そうなお顔は、実は初めて堪能する梨もぎへの好奇心という、わくわくとした輝きで目一杯明るく塗り潰されていた。到着した梨園でも、それははしゃいではしゃいで、秋の行楽を満喫していた様子だった。それが…不意に。いつもの我儘でこちらを叩き起こすのではなく、そぉっと身を寄せ、起こさぬようにそぉっとそぉっと…頬にキスなどしてくれたもんだから。昼寝と言っても微睡
(まどろ)んでいただけだった葉柱を叩き起こすには、十分すぎるサプライズ。その直後に不覚にも思い切り立ち上がった弾みで頭頂部を枝へぶつけた衝撃でさえも、掻き消すことはかなわなかったほどだったから、推して知るべし。(おいおい) しかもその混乱も覚めやらぬうちに、

  『次の試合、勝ったら…キスしてやる。』

 こそりと、そんな爆弾発言までしてくれて。

  “…う〜ん。”

 あの時は、何となくながら空気も取り繕えて、そのままいつもの雰囲気にてお家まで送ってもやれたのだけれど。それから以降は…実を言えば、それには触れずに過ごしていた。坊やの方でも学校の行事で忙しいのか、珍しくも連絡を取って来ないもんだから、それに乗じて考えないようにと後回しにして来て、そして。今日のこの日を迎えてしまった。いつもなら“応援に行ってやるから迎えに来い”と、ありがたいメールなり電話なりを下さる小悪魔様なのに、ぎりぎり待っても何の連絡もないままで。

  “…う〜〜〜ん。”

 やっぱズボラするんじゃなかったか。ちゃんとこっちから連絡してやらんと、向こうもあれで…やっぱりそこは“子供”だから。恥ずかしいなとか気まずいなとか、思っていたのかもしれないし。
「ルイ?」
「……………。」
「どした? ………おいっ。」
 そろそろ試合が始まるぞと、声をかけたマネージャー嬢にも反応を返せなかったものだから。

  「…っ☆ あだだっっ!」
  「ぼけ〜〜〜っとしてんじゃないよっ。試合開始だ、エール掛けて来なっ。」

 いきなり大きなメガホンで、まだヘルメットをかぶっていなかった頭をどつかれた。よかったねぇ、あの竹刀でじゃなくて。
(苦笑) 何が気になってるのかは知らないが、とりあえず今は準々決勝に集中しなさい、と。皆が待つ円陣へと主将を蹴り飛ばし、溜息混じりにベンチへどっかと座ったマネさん。

  “…そういえば。”

 この1週間ほど、あの坊やの顔を見てないままだねと。背後で喧しい場違いな女子高生たちの声に、彼女もまたそんなことを思い出していたのである。








            ◇



 終わってみれば…僅差ながらも見せ場の多かったなかなかいい試合であり、しかも何と何と、
「…おお。賊学が勝っちまったよ。」
「ベスト4、進出だぜ。」
 何が馬力の素になったか、それとも余程のこと、それを忘れてしまいたいと振り切りたいものでもあったのか。
(こらこら) ラインバッカーのキャプテンさんが、疲れを知らない走りで張り切りまくっての大金星。常勝チームとして有名で春季大会の準優勝チームを倒してしまったもんだから、関係筋の記者たちが唖然としたのは言うまでもなく。失礼なことをお言いだねとばかり、迫力のあるガンつけをくれたマネージャーさんからの一瞥に竦み上がって退散したものの、このままだと…決勝戦ではあの王城と当たることとなるだけに、
“ま、判らないではないか。”
 そこはそれなり、わきまえというのか分相応というのか、そういう客観的なものも重々判っている冷静なマネージャーさん。ムッとしたその直後に、苦笑がこぼれてしまっていたりする。そして………。

  “………お。”

 この結果にすっかりハイになってしまい、はしゃぎもって更衣室へと突撃し、口々に試合を振り返ってはそれぞれの活躍や見せどころをわめくように語り合い、祝杯だお祝いだと気の早いことを言うお仲間連中へ、羽目の外し過ぎだけはすんなと言い置き、マネさんと並んで冷静な副主将へ後を任せて。軽い疲弊さえ美酒となる、そんな余韻に浸っているような横顔のまま、試合会場の出入り口、壁へとその屈強な長身を凭れさせ、何という当てもないままに待っていると。その会場の中へと入る通用口から、ちょろりとこちらを伺う気配があって。こっちから隙なく構えて見つけてやろうとするのも大人げないしと、気づかぬ振りでいた葉柱に…却って焦れてしまったか。

  「…この鈍感。」

 実のところは痺れを切らしてだろう。舌打ち混じりの仕方なくという、相変わらずの生意気な風情にて。ちょっぴり怒ったようなお顔で、葉柱が立っているのへ向かい合うように、真正面まで出て来て下さった、ほぼ1週間振りに会う小悪魔さん。前立ての部分が斜めになって白地と濃紺の重ねになった、ちょいとお洒落なデザインシャツに、浅いベージュのスーツ調ベストと半ズボンのアンサンブルという、相変わらずに小洒落た格好をして来ており。せっかくの装いだってのに、
「…何だ、その顔は。」
 ちょっぴり膨れていながら、ちょっぴり躊躇してもいて。何とも複雑そうなお顔でいる金髪の坊や。
「試合、」
「観てた。」
 皆まで言わせず、自分で言い切り、
「凄げぇ奇跡だ、台風が山ほど来たのも猛暑だったのも、今日のと同じつながりの異変だったんだなって、隣りにいた新聞記者の兄ちゃんが言ってたぞ。」
 自分も同感だと言わんばかりな言いようをしてくれたけれど。
「…ふ〜ん。」
 そんな毒舌なんぞ今更だからか、誰に何を言われようと関係ない揺るぎない自信があるからか、それとも…疲れているので感覚や反射が一部マヒしているのか。葉柱の反応は至って穏やかなもの。坊やの側も、
“ま、そいつには俺が報復しといてやったがな。”
 失敬なことを言った記者の尻ポケットから覗いていた携帯電話をそぉっといじって。ロック番号を適当なものへ変えてやった上でマナーモードにしてやったので。それと気がつくまではともかく、設定変更でちょびっと
(?)泡を食うことだろう。まま、それは済んだことだから置いといて。(こらこら)
「帰んねぇのか?」
「帰るサ。」
 壁から背を浮かせ、足元に置いてあったバッグを持ち上げ、さてとと歩みを運び始める総長さんの、それは長い脚を追いかけて。肩から提げてたバッグへと、唐突に飛びついてしがみついた坊や。
「こらこら、危ないだろうがよ。」
 重くはないがいきなりなこと。バランスを崩して横手へとたたらを踏みかかった葉柱が、肩越しにそちらの方をと見下ろせば、

  「〜〜〜〜〜。//////

 真っ赤になっての上目遣い。何事か言いたいらしい坊やのお顔と視線がかち合った。高貴な花のように凛とした、その美貌に見合うだけ、我儘で傲慢で、偉そうで生意気で。でもでもだけれど、これで義理堅い子だからね。あの約束をちゃんと覚えてて、顔が合わせにくいけど、でも約束だからって、それで思い切って出て来てくれたのだろう。

  “こっちだって、そんくれぇは判ってるんだがな。”

 忘れたと知らん振りをしてやった方が良いのか、でもそれでは、こうまで思い詰めてるこの子には悪いのかも。ちょいとはしゃいでいた出先で口走ったことで、そんなもん知らないって言い出せばそれで済むことなのに。何でまたこの子は…とんでもなく破天荒なことは颯爽と英断して速やかにしでかすくせに、モラルなんて子供らしさなんて知ったことかと小悪魔ぶりを発揮しまくっているくせに。自分なんぞとの どうでも良い約束なんてもんへ、なんでまた そうまで…こんなに恥ずかしそうにしてまで律義なんだろか。

  「………。」

 ここで溜め息なんかついたりしては、彼のプライドにも堪えるだろから。バッグにぶら下がってるそのまま、ひょいと腰のひと揺すりで持ち上げつつ腕を背へ回し、ワンアクションにて背中へ負ってやり、
「ここじゃあ不味かろうさ。」
 低い声で、だが、くっきり届くように言ってやる。小さな顎がこくりと引かれたのを見届けて。そこからのんびりと歩きだす葉柱であり、


  ――― この1週間はどうしてた?
       ガッコ行ってたサ。
       ふ〜ん。
       学芸会の稽古もあったし。
       役も仕事も何にもないって言ってなかったか?
       センセも皆もトロ臭いからよ、つい手伝っちまうんだよ。
       そっか。
       ………別にサ。
       ?
       ルイに会うのが気まずかったとか。そんなじゃないから気にすんな。
       おお。
(苦笑)


 背中にくっついた小さな温み。やたら饒舌な辺りは、やっぱり何だか様子が妙で。でも、こういう反応になっているのへ、何故だかホッとしてもいる葉柱で。間違いなく日頃の彼らしくはない態度だけれど、十分に子供らしい焦りや何やであり。そんな判りやすい可愛げを、慣れぬものとして扱いあぐねている様子が、何とも微笑ましくてしようがない。

  「………ルイ。」

 ぽんと合図のように肩を叩いて来た小さな手。何だと振り返れば、その頬へと柔らかいものが…掠めるように“ふわん”と触れた。一瞬のことだったから、風に乗って来た気の早い落ち葉でも当たったかのような、それは軽やかな“接触”だったけれど。

  「…これで約束通りだからなっ。////////

 真っ赤になった坊やの、ムキになってるお声が…お耳に入っているやらどうやら。舗道の真ん中にいきなり立ち止まっては、通行中の皆様に大変な迷惑がかかるので。そこの大柄な白い長ランの高校生。早く歩き出すか、せめて路肩へ寄りなさい。顔が赤いが、急性の熱中症ならば、背中に乗ってるはしっこい坊やに言って、救急車を呼んでもらうと良いからね………と。筆者がついついふざけてしまったほどほどに、坊やと大差ない純情可憐さを露呈してしまった総長さんであり、

  「ル〜イ?」

 背中の坊やが不審げに、乗っかったままゆさゆさと身を揺さぶるまでの幾刻か、固まったままだった彼だった。



  ――― 先は長いぞ、“光”化計画。
(笑)


   「誰がそんなもん、立てとるかっ!!///////
(いやん)




  〜Fine〜  04.9.23.


  *いよいよのラブラブでしょうかvv(笑)


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