Little AngelPretty devil 〜ルイヒル年の差パラレル

    “サンタな小悪魔?”
 


小学生だけはまだまだガッコがあるのってズルイと思いません?
だいがくせーもこーこーせーも、12月になったら もうってくらい、
ガッコがお休みになって早く帰れてるのに。
何で小さい子ほど、
大変なことお クイスマスのギリギリ前まで、
我慢してないといけないのかなぁ。

 『そりゃお前、大人たちの都合だよ。』

ヒル魔くんはそんな言ってて、
こゆことには一番にぶうぶう言いそうなのに、
まあ・しゃあねえさって大人みたいに肩をすくめてた。

 『大人のつごー?』
 『そ』

早く帰らせりゃ、そのまますぐ遊びに出かけちまうだろ?
早上がりだったら、
長いこと遊んでられるからって、少し遠くまで出掛けるかもしんない。
けど、陽が落ちんのは早いから、
しまった真っ暗だって中を帰ることンなったりすると、
親は心配になるじゃんか…ってお話をしてくれてから、

 『あと、塾が特別コースなんて組むかも知れんしな。』

そっちになったらなったで、思わぬ出費が増えるしよ。
大体だ、ゆとり教育があまりに的外ればっかやらかした結果、
授業時間を減らした弊害しか出なかったのへの反省で、
それでなくとも土曜も授業してたりするガッコも増えつつある今時に、
小学生の休みは、これ以上増やせねぇんじゃねぇのかな…なんて。

 「???」

………あのね?
セナには ちょこっとむつかしーかったから、
漢字のトコだけ判らなかったのだけれども…。
きっと だから“大人のじじょー”なんだろね。うんうん。




      ◇◇◇


その年齢がやっと“2桁の大台(?)”に乗ったばかりな、
小学生のお言いようとは思えぬ、
今時の教育現場をぶった切った見解を繰り出した、
金髪金眸の小悪魔様にしたところで。
背景が把握出来ているからと言って、
そのまま納得しているのか…と言うと、
そこんところは そうでもないらしく。
毎日真面目に登校し、授業もちゃんと受けつつも、
少しでも早く終わんねぇかと、
先生方の出欠をチェックしてたりするそうで。

  だってさ、だってね

こーこーせー、もとえ高校生のお兄さんたちは、
試験休みを含めて確かに早々と授業がお休みになっちゃあいるが、
だからってそのまま“お休み”になっちゃあいない。
彼らの親しくしているお相手たちは、秋や冬こそ真剣勝負の本番だし、
選手権のトーナメントで、決勝を前に惜しくも負けちゃっても、
次のシーズンへと続く道を繋ぐべく、
体がなまらぬようにとのトレーニングに打ち込むのが常なので。

 『やっぱ、しっかり監督してやらんとな。』

近頃の若いのは根性論を端(ハナ)からバカにして、
少しでも楽しようと、そっちにばっか、無い知恵ひねってやがるから。
俺みたいな目の利くのが見張っててやらねえとナなんて、
自分の言いようへ自分で“うんうん”頷いてたのが相変わらずな、
鬼軍曹モードになっておいで。

 “ヒル魔くんはやっぱ偉いよなぁ。”

だってセナはそこまで徹底して打ち込めないもの。
大好きな進さんや、進さんが率いるホワイトナイツは応援してるけど、
セナみたいな小さな子供が口を挟まなくとも、
皆さんしっかとトレーニングに勤しんでらっしゃるし。
もしも万が一、新型ウィルスか何かで、
お兄さんたちに“練習を怠けてしまう病”が蔓延しちゃったとしても、
小さなセナには手の打ちようがないと思うの。

 「そんじゃあ何か。
  ウチの面子はそんな病気にかかっとるとでも言いたいか。」
 「にゃ〜〜〜っ☆」

翻訳するなら“何でこんなところに?!”というところか。
お買い物にと運んでた商店街の一角、
いつのまにか声に出してのブツブツ言ってたらしいセナくんの独り言を、
しっかりと拾ったらしい、金髪の鬼軍曹様が。
まだまだ明るい時間帯だってのに、
こんな平穏な場所に降臨なさっており。

 「グランドに行かなくてもいいの? ヒル魔くん。」
 「そういうお前こそ、何でこんなトコにいる。」

今日は進さんとグランドデートなのぉ〜とか言ってなかったかよと、
少々ワイルドに、着慣らした感のあるライダージャケットを羽織った小悪魔さん。
スリムなラインのダメージデニムのパンツがまた、
何ともおしゃまなコンビネーションとなって、
華奢な肢体にはマニッシュさを強調してのようよう決まっており。
透き通るような色白の肌に、力みが利いた双眸といい、
どこぞのファッション雑誌から出てきたような垢抜けた風貌が、
駅前商店街の一角をいきなり華やかな雰囲気へといざなう威力さえ齎したものの。
そんな坊やと向かい合う、こちらの坊やだって
愛らしさでは堂々と張り合っての大したもの。
ややまとまりの悪い軽やかさを、唯一の難としているやわらかそうな黒髪に、
黒目がちの大きな瞳は、潤みの強い、無垢な黒曜石(ぬばたま)のようだし、
ふかふかしている頬や小さなお手々は、
淡雪みたいな質感を、見ただけで感じさせるほどに真っ白で。
ラビットだろうか、ふさふさほわほわな栗色の毛並みのファーを、
衿から前合わせまでのぐるりと縁取りにした、ソフトダウンのジャケット羽織り、
ボトムはビロウドのような質感のある、淡い緋色のフリースパンツといういでたちが、
そりゃあ愛らしく映えるかわい子ちゃんだったりするものだから。
買い物客のお母様方、ああ、あんな子がウチの孫だったらねェなんて、
遠まわしに“ウチの嫁には無理な相談でしょうけど”なんて、
心の中にて愚痴ってみたりするほどで。
(こらこら)

 「セナはね、あのえと……ブーツの詰め放題に来たの。」

といっても、
渡された袋へ、色んなタイプの長靴やカジュアルブーツを入るだけ詰め込むような、
アウトレットモールでもやんなかろう、
珍妙な客寄せイベントなんかじゃあ勿論なくて。
クリスマスになるとお菓子屋さんや、今ならコンビニなどにもお目見えする、
ブーツ型の入れ物の中へ、
小分け包装された飴やチョコなどが詰まっている季節もの。
“クリスマスブーツ”というのを用いた、此処の名物イベントで。

 『ああ、あれな。』

確か蛭魔くんにも言ったようなと思い出す。
でもなあ、
あれって滅多に聞かないメーカーの飴とかチョコとかラムネばっかだろ?
小さい会社の製品だからどうのこうのって言うんじゃなくて、
ああいうのは甘いのが前提だろからなぁ。
子供でも買えるような価格帯で、
いかに安く甘く出来るかに全力投じて作ってなさるから、
俺みたいな辛党のもんにはちょっとなぁと。
随分と早い時期から疎遠になってるもんでナなんて、
どこの渋々なおじさまですかというよな言い草してなかったか。

 「???」

なのになんでここに居るの?と、
キョトンとして見せるセナくんなのへ、

 「なに、今年は品揃えを変えたって聞いたからよ。」
 「品揃え?」

そういえば、子供らが順番制で群がるアクリルのボックスには、
そこが見えぬほどの菓子が色とりどりに入っているが、
カラフルな銀紙のチョコや個包装された飴にと、
例年通りの顔ぶれのラインナップの中、
メジャーなキャンディーや粒ガムもちらほらと混ざってる。

 「あれれぇ?」

M社のキャンディーなんて、
一袋そんなに入ってないのが200円とかするんだのに。
あ、Lのチョコもあるよ。何で何で?

 「ほら、セナ坊までなんか変だと思っとるぞ。」

え?と振り向くと、お菓子屋さんからは道を挟んだ対面のお店の軒下、
今はシャッターが降りてる御酒のお店のところに、葉柱のお兄さんが立っている。
こんにちはといい子のご挨拶をしてから駆け寄れば、
おうよとの会釈を下さってから、

 「有名コンビニとかスーパーじゃあ、
  賞味期限が半年とか3ヶ月とか切ると、
  もう店頭には並べられなくなるんだと。」

お菓子に即席めん、清涼飲料水に調味料。
まだまだ全然大丈夫なのに、
そういう規約なんで置いとけなくなって投売りされてたのを、
あっちこっちから探して来てのまとめ買いし、
お菓子の類はこちらのお店に買っていただいたのだとか。

 「そういういいこともやっとるとはな。」
 「うっせぇなっ!//////」

実をいや、ここのお菓子屋さんも、
近所に出来たコンビニに押されぎみで赤字経営が続いてるのだとか。
だったら、毎年恒例のこれへ、
親御に敬遠されがちな無名メーカー品とそれから メジャーなのを混ぜとけば、
お買い得感が出るから飛びつくぞとのプランを持ちかけたのだそうで。

 「ここの親父さんは、
  ずっとずっとここいらの子供会の代表とかしてんじゃねぇかよ。」


蛭魔くんチは長いことお父さんが戻らぬお家だったので、
お母さんもそうそう付き添うわけにもいかず、
そういうのの集まりには、妖一くん、あんまり出られなかった。
そんなヨウイチくんにも、ちゃんと後からお菓子や何や、
家まで届けてくれた優しいおじさんだったので、

 「何か恩返しでもと思ったらしいぜ?」

問屋さんから山ほどの荷を運ぶ足代わりにされた葉柱のお兄さん。
ったくよ、何往復させやがると苦笑をしつつ、
後から後から子供らが並ぶのでどんどこ伸びる列を見回し、

 「セナ坊も並ぶんじゃなかったか?」
 「あ、そうだった。」

でもあのネ? もうちょっとしたらば進さんが来るから、それを待ってるの。
詰め放題のお隣りで、金貨チョコのつかみ取りっていうのもやってるでしょう?
進さんの大きいお手々で山ほどとってもらうんだものと、
嬉しそうに笑いつつ、小さなお手々で口許を押さえる。
本来だったなら、他所のお国の風習だのにね、
いまやこんなにも心が弾むお祭り騒ぎ。
誰かを困らせる企みは案外と簡単だ。
助けることってのは倍くらい大変で、
失敗しちゃうと助けたかった人をもっと落胆させるしさ、
俺には向いてねぇことなんだろな、なんて。
一生懸命に言い訳していた可愛い小悪魔。
でも、そんな言う割にはたいそう手際よく、
情報収集やら荷の流通取引への割り込みってゆ手配やら、
てきぱきこなしていた坊やでもあったらしくて。

 “どっちが向いていないのやら、だな。”

ギネスに載りそな小さなサンタ、
ブーツにたくさん詰める要領なんぞ、小さい子供に伝授してやりつつ、
彼なりのクリスマスを楽しんでおいで。

  そんな彼らにとっての最高のクリスマスプレゼント、
  高校生になるまでのお預けになってる、
  夢のフィールド“クリスマスボウル”へと、
  早くいけるといいのにねvv


  〜Fine〜 09.12.20.


  *いきなり襲った寒波ですが、クリスマスには緩むそうですよ。
   そんなイベントの直前のお祭り、まずはの高校生篇
   今年のクリスマスボウルは、
   日本大学第三高等学校(関東) 対 立命館宇治高等学校(関西)
   12月23日(水・祝)10:00開場 12:00キックオフ
   in 試合会場 味の素スタジアム(東京都調布市) だそうです。

めーるふぉーむvv ご感想はこちらへvv

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