ゲレンデは楽しvv
 

 
 年明けと共に本格的な冬将軍が日本列島のほぼ全土を覆うほどにもやって来て、暖冬だから冬物が売れない、服飾業界では早くも春向けのパステルカラーがお目見え…なんて言ってたのが嘘のよう。戸外へ出れば、ひんやりつるん…どころか、ちくちく刺すような寒気に鼻の頭や頬を刺激され、白い吐息をついつい手に吹きかけてしまう、そんな気候が慌ただしくもやって来て。

  「…わっ、あっ、止まんないようっ。」

 どうしよ・どうしよと小さなパニックを起こしつつ、腰が引けたままに、それでも…習った通りの姿勢は何とか頑張って保って保って。ゆるやかな傾斜に敢えて逆らわぬように踏ん張って、平坦な所まで何とか到着。板が止まったその拍子に、ゆっくり“ぽてん”と横倒しになったのは、立っていられずというよりは緊張が抜けてのことだろう。そんな彼の傍らまで、なめらかなシュプールを残しながらやって来たのは、ずっと同伴していた“コーチ様”で。さして大仰ではない足元の捌き方を見せながら柔らかく止まって、目許を覆っていたゴーグルを上へと持ち上げる。
「何でそうまで及び腰になるかな。」
「うう…。」
 責めてる訳ではなく、むしろ不思議そうな訊き方をされたのだが、横倒しになったままにて“面目次第もございません”と、しょぼんと肩を落とした小さな生徒を見下ろすと、
「いや…別に怒ってないからよ。」
 即席のコーチ様はちょっぴり焦って、怪我とかしてないかとか何とか、今更ながらに執り成すようなお言いよう。ストックを雪の上へ突き立て、軽い身ごなしにて“ひょい”と屈むと手を伸ばし、小さな“生徒”に掴まりなさいと差し伸べて、
「よ…っと。」
 最新の軽い素材のを借りたとはいえ、日頃よりは随分と着膨れしているスキーウェア姿のお友達。小さなお耳を挟み込んでるボア付きのイヤーマフが何とも愛らしい、相変わらずの童顔が、雪山の寒さで真っ赤になっていて。それが間近まで起き上がり、ふにゃりとほころんで、
「ありがとーvv
 軽々と起こしてくれたお礼を無邪気に言うもんだから。
「いや…。///////
 お礼の返事なんてまだ慣れがなくて、何を言い返せばいいやらも分からない。それよりも…素直に預けてくれた小さな手を放すのが、何だか名残り惜しくてたまらない十文字一樹くんであり、
「朝に比べると結構人が出て来たよね。」
 自分たちが立ってるところから上へと広がるゲレンデを見回し、雪が足りないかもって心配されてたなんて言ってても、やっぱり来ちゃうほど、皆スキーが好きなんだねぇ。あ、これダジャレじゃないよ? ホントだよ?/////// そんな可愛らしいことを言って、ますますコーチ様の胸中を掻き回している不埒な“生徒”は、もうお察しですよねの 小早川瀬那くんだったりするのである。


  ――― こちら『白い帽子と路地裏の〜』シリーズではありませんので念のため。






 週末だったそのせいで、社会人の方々には短かったらしいお正月休み。だがだが学生さんには関係なくて、むしろ“成人の日”が“ハッピー・マンデー”で連休になったお陰様で、セナたちの通う泥門高校なぞは三学期の始業式が11日の火曜までずれ込んだほど。その連休に、都心からも程近い 某スキー場へとやって来ていたのが、推薦入試で目標にしていたR大学へと合格し、一足早く進路が決定している、元アメフト部員の6人組。何でも、読書好きの戸叶くんが葉書が余っていたからと出した雑誌の懸賞で、温水プールやジャグジーも完備という観光ホテルのスキー宿泊券が当たったのだそうで。グループでスキーを楽しもうという企画ものだったため、現地までの交通費は自己負担ながら、ホテルの宿泊券プラス、ゲレンデの様々な施設利用チケットと豪華な夕食プラス朝食バイキング付きというセットを8人分までプレゼントという太っ腹なその当選権へ、同じ苦労を味わった仲だからお前らも来いと、セナや雷門くん、小結くんにまで声をかけてくれた彼らだったのだけれども。
“…見え見えなことしやがってよ。”
 現地について、さて。それじゃあスキーに繰り出そうという段になり、
『え? モン太くんも小結くんもスキー出来るの?』
『ってゆーか、お前、一回もやったことねぇの?』
 アイススケートなら、辛うじて小学校の時に学校の授業でやった覚えはあるけれど、スキーは一度も経験なしというセナだと判明するや、
『だったらカズに教わると良いぜ。』
『そーそー。俺らん中で一番上手ぇからな。』
 何せお坊ちゃんだからと ぎゃははと笑った黒木くんへ、何だとこの野郎と掴みかかりかけたタイミングへ、
『あの、えと。教えて下さい。///////
 初めて見るスキーウェア姿も可愛らしいまま、恥ずかしそうなお顔になったセナ本人からまで そう言われては…。
『…判ったよ。///////
 そんなもん面倒だとすっぱり振り切って断れるくらいなら、最初からこんな旅行自体に同行しちゃあいないってのと。表面的には“しょーがねぇな”という態度を装いつつ、内心ではこっちこそドキドキものにて、おっかなびっくりで滑って見せる小さな同級生へマンツーマンでの“指導”にあたることと相成った。可憐に見えてもそこは…結構ハードなアメフトなんてスポーツを、半分くらいはノリもあってとはいえ、最初の1年であっさりとトップクラスのレベルの方々と肩を並べるほどまで会得出来た少年だから。あの神憑りなランをこなせるだけの足腰をしたセナには、大きくて重たいスキー板が勝手に滑ってゆくのを制御出来ないでいたのも最初のうちだけ。転び方や歩き方を教え、徐行で短い斜面を何度か登ったり降りたりするうちにも、なかなか転ばないままに1本通して滑り切れるようになり。小一時間も経てば、一丁前に板を揃えての滑降も…低斜面の短距離ながら出来るようになれて。
「見てた見てた? 今、一度も転ばなかったでしょう?」
「ああ、凄い凄い。」
 手袋をはめた手でパフパフと、上手上手と拍手をしてやれば、そんな自分のすぐ傍らまで嬉しそうに戻って来たセナが、褒められちゃったvvと目許を細めての満面の笑みを見せてくれたりして、
“あ…えっと。///////
 思わぬ不意打ちに、こっちが困ってしまう十文字くんだったりするのである。いやぁ〜、若いって良いねぇvv
(笑)
「?」
「あ、いや…。そうそう。腹、減らねぇ?」
 こちらには夜行のスキーバスにて随分と早い時間に着いた面々。ホテルに荷物を預け、軽くおにぎりや蕎麦でお腹を作ってから、すぐにもゲレンデへと出て来たが、それからもう4時間以上は遊び続けていて、
「んと、そだね。」
 わざわざ小さな手を自分のお腹にあてがう幼い仕草を見せたセナが、うんと小さな顎を弾ませる。口許からこぼれる吐息にからんだ白い湯気が、真っ赤な頬をますます赤く映えさせて、
「…じゃあ、連中呼んで飯にしよう。」
 お返事にワンテンポほど間が空いちゃったのは、見とれてたな? あんた。
(笑)
“うっせぇよっ。”


  ――― こちら『白い帽子と〜』シリーズではありませんってば。
(苦笑)






            ◇



 丸太組みのコテージタイプのロッジハウスには、様々なスキーグッズのレンタルを扱う受付やら自動販売機の並んだ喫茶テラス、お土産屋さんなどが1階にあり、ずんと広いセルフサービスの食堂のフロアが2階全部を占めている。暖房が効いた暖かい室内は、やはり昼食や休憩にと座を占めている人々のざわめきに賑やかで、
「…あ、ありがとー。」
 ゲレンデを一望出来る大きな窓に近い、明るい席を取ってたセナの元、トレイを抱えて戻って来た十文字がお向かいに腰を下ろして、さて。
「いただきますvv
 ホカホカの親子丼さんを前に、お行儀よく手を合わせたセナへ、フェイントをかまされて“おおう/////”とちょこっと引きかけた十文字だったが。何をやっても可愛らしいもんだから、却って彼の方が周囲に照れて見せていたりするところが…はっきり言って“重症”である。
(笑) ここに入る前に、少し上の方の中級者用、そっちこそが所謂“ゲレンデ”である斜面で滑っていたお仲間たちへと携帯で連絡を取ってみたところが、
【ああ、俺らこっちのログハウスで食うからさ。】
 そちらにも食事が出来るような休憩所があるらしく、沢山滑りたいから寸暇も惜しい、そっちまで降りるのが面倒だからなどと言い連ね、
【セナが上達したら、こっちまで登って来いや。】
 それまでは別行動を楽しめよんvv なんて、白々しい言いようをされた十文字。最後のおまけは省いて“これこれこう”と説明すると、
『そっか。』
 せっかく沢山で来たのにこれでは仲間外れみたいな扱いであり、寂しそうにするかと危ぶんだが、
『…じゃあ、こっちはこっちでご飯にしよ?』
 早くしないと混み合っちゃうしネと、そこはやっぱり男の子だということか、案外こだわらないままに割り切った言いようをしてくれて。
「…あ、こら。タマネギ避けてどうするよ。」
「あ、と…。」
 これでも随分と好き嫌いは直ったのに、ついクセで…なんて。小さな肩をすくめてちゃんと食べるセナであり、板が揃えられるようになったから、もう少し頑張ったらモン太くんたちと合流出来る? ああ、もうちょっとだけな。よ〜し、今日中にゲレンデまで上がるんだから。そんな風に楽しそうに話していたものが、ふと、箸を止めて。

  「…ごめんね。」

 少ぉし俯いて もじもじと。改まった言いようをする。んん?と視線を上げて訊き返せば、
「だってさ。十文字くんだって、もっと上の方から思い切り滑り降りたいだろに。」
 上手なんだもん、それだけに…こんなファミリー用のほとんど平地で、バイトで雇われた訳でもないのに初心者のコーチなんかに手を焼いてるなんて、きっと詰まらないだろうなって思ったの。それにね、気づいてた? 十文字くんて体つきもがっしりしてるし、お顔もきりりって引き締まってるから。とってもカッコいいからさ、女の子がチラチラッてこっちばっか見てたんだよ? スキーっていうのはサ、海水浴と同じで、此処で誰かと知り合えるのも楽しみなんでしょう?
「ボク、もう一人で練習出来るから。」
 だから、ご飯食べたら十文字くんだけでも黒木くんたちと合流してよと、そんなことを言い出すセナへ、

  「…ば〜か。」

 ちょいと目許を眇めると、自分が食べていたドリアセットの付け合わせ、ポテトサラダをスプーンに掬って、お向かいさんに“あ〜ん”と口を開けなと促して見せる。条件反射ならある意味で困ったもんだが、素直にスプーンごとパクンと咥わえちゃったセナくんへ、今度は“くすす”と笑って見せて、
「いやいやなもんへ半日も付き合うほど、俺は心が広かねぇんだよ。」
 さっきまで時々赤くなっては戸惑いながらの応対をしていたのはどこのどなたかと思うほど、それはそれは強気な態度にて、あっさりと言い返した十文字くんであり、
「あ…えと。///////
 それって、あのね。一緒にいて楽しいよって言ってくれたんだよねって。こちらは素直に解釈し、やわらかな頬に嬉しそうな笑みを浮かべたセナくんへ、
「第一、俺はスキーが一番好きって訳じゃあないしな。」
 にんまり笑った十文字くん。え?と、きょとんと小首を傾げるセナくんへ、
「今はアメフトの方が面白いし。」
 すんなりとそう言ってくれたのが、どうしてかな、胸の奥から“きゅう〜んん”ってなるほど嬉しくて。わあっvvて明かりが灯ったみたいにくっきりと嬉しそうに笑ったら、
「…あのな。」
 あれれ? 今度はちょっち呆れたようなお顔をされた。こっちもまた、ころころと判りやすく表情が変わるセナの、柔らかそうな小鼻の先っぽ近くへ、人差し指をちょいちょいと伸ばして来て、
「言っとくけど、俺とお前ってそんなにもアメフト歴が違う訳じゃねぇんだからな。」
「…あ。」
 そういえば…セナだって高校1年生になってから始めたのであって。十文字くんとの差は、1ヶ月あるかないか。えと、つまり。物凄いキャリアに差がある“先輩”格でもないのにね、
「好きになってくれてありがとうって思った。」
「…やっぱしな。」
 しょっぱそうな、ほろ苦そうなっていう不敵なお顔が似合う、そりゃあ大人っぽい十文字くん。今日だけじゃない、いつだって助けてくれた。試合ではセナが突破出来るようにって頑張ってくれてるし、日頃だって…ひょいって手を伸べては“あやや”とたたらを踏むことの多いうっかりなセナを支えてくれてる。
“いじめっ子だったなんて、嘘みたいだ。”
 大きな手。ひょいって伸ばされてもね、怖くないの。だってほら。くしゃって髪をね、掻き混ぜてくれるだけって判ってるから。一緒にいてくれる優しい人。ちょっと不器用なところが進さんに似てるかも…な。ボクなんかよりずっと男らしくって、でも。照れ隠しにそっぽ向いたりするトコは、もしかしてボクと変わらない子供っぽさで可愛くて。

  “えへへ…vv

 急に御機嫌が増したらしい小さなお友達の、屈託のない笑顔に見とれつつ、
“こんなトコで一人でなんて放っておけるかよ…。”
 最近は女の子だって大胆だから、可愛〜いなんて言いながら女子大生あたりがグループで寄って来て“教えたげるから”と攫われかねないセナかも知れないと思うと、到底 放ってなんか行かれない十文字くんであったらしい。…それって、想い人への杞憂というよりも、立派な子供扱いなのでは?
(苦笑)






            ◇



 食休みをしてから、もう一度、スキーの捌き方をお浚いして。それからそれから、リフトに初めて乗って、モン太くんや黒木くんたちがいた、中級者も滑ってるゲレンデへと到着して。初めてでここまで滑れるようになったなんて凄いぞって、褒められながら皆と一緒に斜面を滑って楽しんで。冷たい雪山の風が心地良いほど、たぁっぷりとウィンタースポーツを堪能出来たセナくんたち。

  “…あれ?”

 陽が落ちてからはホテルへと戻り、カニ鍋付きの美味しい会席料理をお腹いっぱい食べてから、ライトアップされたゲレンデが見渡せる大きな窓が取り巻く、広々とした温水プールやジャグジーを楽しんで。ゲレンデでは離れていたからか、食後にホテルの中の設備を見て回る顔触れには、いつものチビっ子たちと組んだセナであり。風呂までは一緒だったものの、それから以降は残念ながら見失ってしまった十文字が、これも“彼”という対象に限って鋭敏な感知能力の賜物か。宵闇に沈みかかったウッドデッキテラスへと出ていた小さな背中を、その視野の中へしっかとキャッチしていたりする。部屋へ戻ってからのことなのか、一応はコートを羽織っていたものの、湯冷めしたらどうすんだと声を掛けようとして、

  「…はい。それじゃあ、おやすみなさいです。」

 特に態度を作ってなんかないのだろうにね。自分たちへと話しかける声とはどこかが違う、やわらかな声音にハッとした。自分でも“使い分けている”というような意識なんか、してはいない彼なのだろうけど。それでも…すっかりと甘えている、その相手しか見えてはいない、そんな声だとちゃんと判る。

  “…そっか。”

 そういえば。彼
の人は、近々アメリカ遠征に出向く、日本代表の“ジュニアチーム”にも選抜されている筈で。今はその直前だろうから、練習だのミーティングだのがあってそうそう逢えはしないが、それでもね。寸暇を惜しんでという勢いで、お互いへの連絡が密になっていて当然で。
“そういうことへは気が回らねぇ奴に見えたんだがな。”
 恐らくは…セナが寂しがらないようにという気遣い。こんなぎりぎり出発直前の忙しいだろう時期、お邪魔になるだろうからと遠慮こそすれ、セナの側から掛けたというのは考えにくいから。あの、気の利かなさそうだったお兄さんの側からの連絡に違いなく。セナの側もまた、恐縮や畏縮をしないまま、自然体にて受け止めて。その胸に沸き立つのだろう、ふんわりと甘い気持ちを余すところなく堪能しているらしいのが、微笑ましいやら…苦々しいやら。

  “…しょうがねぇよな。”

 ホントだったら…自分の方が先に知り合っていたのにね。あまりにも鮮烈な出会いへ、それは真摯に、真っ向から向き合って。お互いから眸を逸らさず、相手へのみならず誰へでも…自身にも。誇れる自分でいようと常に頑張っていた者同士だからこそ、結ぶことの出来た堅い絆だろうと思うから。世を拗ね、他者の真剣さをダサいと嘲笑してこき下ろし。カッコばかりを気にして、好きなものを好きだと言えなかった、素直じゃなかった自分が悪いと判ってる。腰の引けてたセナが、胸を張って頑張ってるのを知ってから…では、何もかもが遅すぎて。それでも。どうしても。気になって気になってしまって、今に至ってる。
“…ダセぇよな。”
 あの悪魔な先輩さんにも とうに見透かされてる横恋慕。どうにもならんぞと忠告されたのは、あまりに愚かなことへと呆れての同情からだろうか。女の子が相手だったらどうしてただろ。もっと美人やもっと気の利く子がいるさなんて言って、簡単に振っ切れたのかな。見栄えとか仕草とかじゃないのにな。やわらかい手とか耳に馴染む声とかに惹かれた訳じゃないのにな。ちんまくて、なのに懸命で。何でも出来る訳じゃないけれど、出来るまで諦めない根気とか。相手の身になって…代わりに泣いたりするほど優しいトコとか。気がついたら目が離せなくなっていて、手を貸してやりたくなっていて。あんなでも男なのになって思いつつ、怖がらないで笑い掛けてくれるようになったのが、ドキドキするほど嬉しかったから。飛び切り気持ちの良いそのドキドキを沢山拾おうとしていたら………後戻り出来なくなってたってやつだと思う。

  “………ま・いっか。”

 色々なことへ色々な意味から口惜しいけど、こればっかりは仕方がないしな。無邪気な彼のすぐ傍らに居られるんなら、ただの“お友達”としてでも構わない。喧嘩っ早くて柄も悪い、乱暴なばかりの自分なのに、すっかり信用されてるんだ、気持ちいいんだから良いじゃんか。一体誰への言い訳なんだか、その胸中にて ひとしきり呟いてから、あらためてテラスへと踏み出して、
「こら、風邪引くぞ。」
 ぱたりと携帯を閉じていたセナへと声を掛けている。にっこり笑った小さなチームメイトは、うんと頷いて、ほら。パタパタパタ…って真っ直ぐこっちへ駆けて来るから。何にも警戒しないままな、屈託のない笑顔で見上げてくれるから。これだけで充分だよって、小さく笑った十文字くんである。


  ――― コート、部屋へ置いて来な。
       うん。あ、そうだ。その後でゲームセンターに行こうね?
       ゲームセンター?
       うん。お土産コーナーの奥にあったの♪
       構わねぇけど、スロットマシンはごめんだからな。
       ? …なんで?
       さてな。///////



 どうか二人とも湯冷めしないでね?



  〜Fine〜  05.1.10.


  *筆者は膝が悪いので、
   スキーもスノボも体験したことがありません。
   悪くする前にアイススケートの経験がわずかほどあるだけなので、
   ウィンタースポーツがからむお話は、
   そういえば一度も書いたことがなかったなと思いまして、
   今回、恐らくは生まれて初めて扱ってみました。
   よって、描写におかしいところがあってもどうかご容赦くださいませです。

  *それにつけても…何だかやっぱり
   『白い帽子と路地裏のマリア。』みたいな話はこびになってしまいましたな。
   向こうは遠距離恋愛ながら“両想い”だからまだいい。
   こっちは切ないばかりで、十文字くんがちょっと可哀想かもです。

ご感想はこちらへvv**


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