サ〜クラ咲いたら一年生♪ (あ、保育園のお話だったわ/笑)



はるっていうのは、あたらしいものがはじまるきせつ、なんだって。よくわかんないけど、マキノやエースが、そうゆってた。でも、おしょーがつも“あたらしいとしの、まくあけ”とかって、おとしだまくれながら、シャンクスがゆってたのにな。きいろいぼうしに、ぶれざーってゆう、うわぎ。あたらしいくっくのかかとが、かたくて、いたいってゆったら、ふんずけたら、やわかくなるぞってエースがゆって。でも、ふんでたらマキノにおこらりた。エースのうそつき…。



 はしっこい子で愛嬌があって、そりゃあ元気な腕白坊主で。ご挨拶もちゃんと出来て、人懐っこくて、ご近所の皆さんから、そりゃあもうもう可愛がられている、マスコットのような男の子。
「おやおや、そうか、今日から保育園なんだね?」
 斜
ハス向かいのご隠居さんが、マキノに手を引かれて表へと出て来た小さな腕白さんのいで立ちに気づいて、そんな声をかけて来た。それへと、
「うんっ!」
 大きな目の据わった愛らしい顔を目映いほどにほころばせ、それは元気よく頷く坊やであったが、マキノはちょっとばかり苦笑して見せる。
「ルフィ、お返事は“はい”でしょう?」
「そか。えと、はいっ!」
 黄色い帽子に黄色のバッグ。『もんきぃ=D=るふぃ』と書かれた名札はヒマワリの形。紺色の制服は兄のエースのお下がりではなく新品だ。背の高さが違い過ぎて着られなかったからで、
『中学や高校でもお下がりってのはナシかもな、こりゃ。』
 シャンクスは笑ってそんなことを言っていたが、意味が分かるようになったら、いくらルフィでも怒りますよとマキノが窘めていた。



ほいくえんってゆーのは、せんたらる・ぱーくみたいな“ゆーえんち”かって、エースにきいたら、ちょっとちがうぞってゆってた。いちにち、あそんでてもいいところだけど、きまったじかんにごはんたべて、おひるねとか、おゆーぎとかがあって、たっくさんのおともだちがいて、おんもしれぇとこだぞって、ゆってた。よくわかんなかったけど、ほいくえんには、ゾロがいるんだ。きょねんのきょねん、さきにほいくえんにいくよになって、おひるまではあそんでくれなくなったから、すごくつまんなかったけど、きのう、こうえんで“おれもあしたから、ほいくえんにいくから”ってゆったら、そか、じゃあ、まえよりかはあそべるなって、わらってた。



 ルフィ坊やの手を引くマキノという女性は、坊やの父上、某・中堅貿易商社の社長であるシャンクスの秘書だった人で、もっと小さい頃に亡くなった母上の代わりにずっと傍らにいてくれて、坊やを始めとする男所帯の世話を細々と焼いてくれているよく出来た人だ。マセたところのあるエースなぞは“とっとと結婚すればいいのに”なぞと言って憚らないが、もう少し、せめてルフィが“お母さん“というものを理解してからでも良いのではと、マキノの側からそんな風に言っているのだとかで、
『…それって、遠回しに断られてるんじゃあ?』
 マキノは“さあ、どうでしょう?”と言って“うふふ”と微笑っていた。



エースは“おとこは、ほっとでなけりゃあな”と、いつもゆう。でも、ゾロは、どっちかってゆうと“くーる”だ。じぶんではゆわないけど、ねんちょうさんのジョニィとヨサクが、ゆってた。ふたりは、ゾロを“あにき”とゆう。ホントの“おにいちゃん”じゃないけど、なんでかそうゆう。あにきっていうのは“くーる”で“かっこいいひと”のことで、だから、じぶんたちはゾロのこと“あにき”ってよぶんだって。でも、エースは“ほっと”っていうやつだけど、おれのにいちゃんだ。………よのなかって、むつかしい。



 この家は父親のシャンクスを筆頭に、長男で今年から中学生のエースと、この愛らしいルフィ坊やという男ばかりの3人家族。他に、シャンクスの会社の社員で後輩でもある男衆たちも多く出入りするにぎやかな家で。花見だ、盆踊りだ、運動会だと、力仕事や人手のかかる行事には、屈託のない海の男たちぞろいの社員総出で準備段階から参加してくれるものだから、その頼もしさから町内の名物一家としても有名だ。
 ………そして、先ほどから坊やのモノローグにさんざん名前の出てくる“ゾロ”というのは、同じ町内に住まう剣道師範の長男坊。ルフィより2つほどお兄ちゃんの、ちびっ子剣士のことである。躾けの厳しい、だが、豪快さではルフィの家ととっつかっつな剛毅な家庭だそうで。そして、物心付くかつかないかというくらいに小さい頃から、ルフィは…実の兄のエースよりも、どこかぶっきらぼうで口数の少ないロロノアさんチの長男坊の方に引っついて、何かと遊んでもらっていたようだった。



おれ、かおに、やっとふさがって“ばっし”っていうのもすんだ、おけががあって。おちゃわんのほうのめのしたに、くぎでひっかいて、けがしたんだ。まださむかった、ずっとちょっとまえ、ひろっぱでゾロとゾロんチのいぬとあそんでた。ゾロはらいねんから、おじさん(ゾロのおとうさんのこと)のどーじょーで“けんどー”をならうんだって。まだならってないのに、ゾロはかめんライダー“あぎと”とか、がおレンジャーとかの“そーど”をつかうのが、すっごくじょうずなんだ。(あ、がおレンジャーはおわったんだ。えと、こんどは、なにレンジャーだったかな?)
『かめんライダーも、こんどは“りゅうき”っていうのになったんだぜ?』
 ゾロには“すたんとまん”っていうのをやってる、いとこのおねいちゃんがいる。おっきくなったら“あくしょんはいゆー”っていうのになるんだって。あそびにくると、たたかいのときのふりつけで“たて”っていうのをおしえてくれるんだ。(筆者註:殺陣のことらしい)その“くいなおねえちゃん”がかってくれたっていう、かめんライダー“りゅうき”のそーどを、いぬがパクッて、くわえてもってっちゃったんだ。あとでゾロんチのおじさんがゆってたけど、いぬは“もってこい”っていうのをれんしゅうしてたから、そーどをみて、そのときにくわえる“ぼう”とまちがえたんじゃないかって。そいで、おれ“こらっ”っていっておっかけた。いっつもここで、おにごっこしてるから、いぬだけみておっかけた。そしたら、なにかにつまずいて、かおから、じめんにぶつかって。そいで、えと、あんまり、よくおぼえてないけど、かおの、めのとこが、あつくなってきて、あかくなってきて。はしってきたゾロが、おれのかおみて、ものすごくびっくりして。そいで、シャツぬいでおれのかおにあてるんだ。こうしてろって。そいから、
『おれ、あすこのお家に行って、でんわ、かしてもらって来るから、ここでまってな』
って。でも、なんかこわくて、ひとりはいやだっていったら、せなかむけてしゃがんでくれて、のんなっていって、おんぶしてくれて。



 よくもまあと、大人たちが感心した一件である。春になって雑草が生い茂り始め、足元がよく分からなかったのだろう。玩具の剣を咥えて逃げた犬を追って、足元も見ずに勢いよく駆け出したルフィは、だが、見事に転び、しかもその先には…誰が捨てていったのか、ボール紙の箱に入ったクギの山があった。雨に濡れてかぼろぼろではあったが、それでも箱に入っていたためにあまり錆びてはおらず、また、眸に食い込まなかったことがせめてもの幸いではあったが、とんでもない大怪我には違いない。すぐ真下の雑草の上へとぽたぽた降って濡らすほどあふれ出す鮮血に、ただ呆然としていたルフィへと駆け寄ったゾロは、こちらもまだ5歳かそこらの子供だったというのに、それはてきぱきと動いた。自分が着ていたシャツをトレーナーごと脱いで、砂や埃で汚れてるだろうトレーナーではなくシャツの方を傷に当てさせた。それから、すぐ近所の家へ“迎えに来て”と大人を呼ぶ電話をかけに行こうとしたのだ。しかも“一人で待ってるのは嫌だ”とルフィが愚図ったため、小さな背中に弟分を背負い、出来る限りの大急ぎでそこから一番近かったお宅へと向かった。
「すいませんっ、誰かいますか? 電話、貸して下さいっ。」
 出て来た家人は坊やの怪我に驚いて、
「これは…おウチの人よりまず救急車呼ばないとね。おばさんが呼んであげるから、ボクはその子の傍に居ておあげ。」
 お医者はイヤだと、そっちを怖がって愚図るルフィを宥め賺
すかしたり、病院から自分チとルフィの家へと連絡を取ったり。そりゃあもう、どこの五歳児がそこまでと呆れるほどてきぱきと、するだけのことをし尽くしてから、
「…ボク?」
 ほ〜〜〜っと息をついた途端、待ち合い室の電話の傍にしゃがみ込み、今頃怖くなったのか、必死で涙を堪
こらえていたようですよ…と、看護婦さんが大人たちに話していたそうな。



オレとゾロは、やくそくしてることがいっぱいある。ひとつは、ゾロが“けんどー”のせかいいちになること。もひとつは、おれも“なにか”のせかいいちになること。まだちっちゃいから“なにに”かは、いそいできめなくて、いいって。ゾロって、やさしーよなー。くふふ…♪ そいでな、こないだのけがをしたときに、あんまりいたくて“おいしゃはイヤだ”って、あんまりないたから、そしたらやくそくって。おっきくなったら、おれが“よめさん”にしてやるって。せかいいちのけんしのよめさんなら、せかいいちのよめさんだから、そんでいいだろ?って。やっぱ、やさしーよなー♪



 …何でそういう運びになったのかが、大人たちには今一つ理解が追いつかなかったらしいが、どうやら“顔に傷が出来た”ことから、どこぞの古めかしいメロドラマよろしく、そんなことを言い出したゾロであり、それを喜んで受け入れて、大嫌いなお医者様の治療中、ずっといい子でいたルフィだったらしい。
『…ゾロ、そんな責任を感じなくても良いんだよ? 悪いのはあんなとこにクギを捨てたどこかの大人なんだ。結婚ってのは、もっと大きくなってから真剣に考えなきゃいけないことでだな…。』
 混乱してか脱線しつつある社長殿へ、
『社長…そうじゃないでしょう。』
 何言ってんですかと、シャンクスの側近でマネージメント秘書のベックマン氏が苦笑をし。また、片やのご家庭では、
『あら、ルフィちゃんがお嫁に来てくれるの? お母さん、嬉しいな♪』
 暢気な母御が浮かれて、
『ホントね。あたしも遊びに来がいがあるわ。ルフィちゃん、殺陣
たての飲み込みが早いんだもの。教え易いったらvv』
 今度はVシネマの戦隊ものに出るのだという、くいなお姉ちゃんがにっこり笑ってた。


  「おっきくなったら“せかいさいきょうのふうふ”になろうな?」
  「ああ。」

 ………おいおい、どういう目標だい、そりゃあ。(笑)



  〜Fine〜  02.3.28.〜3.29.


  *久世さ〜ん♪ 書いたよ〜ん♪
   こんなで良かったかな?
   全然“子供”してない変なお話になっちゃったけど、
   そこはまあ、あの人たちのお話だからねvv(おいおい)
   …ということで、
   このお話は久世様のサイト
『遊楽天国』サマの新TOPに萌えたMorlin.が
   ついつい書いてしまった、このお話こっきりの
   “チャイルド・パラレル話”です。
   受けるとす〜ぐ図に乗るMorlin.ですので、ご用心のほどを。
(笑)

ご感想はこちらvv**

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