子供の領分


        #1

 清々しい風を切り、穏やかな波を蹴立てて、太洋の只中をゆく小さなキャラベルがある。一丁前にジョリーロジャー、別名"ブラックジャック"とも呼ばれる『海賊旗』を掲げた帆船で。だが、物々しくも物騒だったり陰惨だったりするような気配はまるでなく、主帆に描かれた麦ワラ帽子つきの骸骨がなければ、ちょっと変わり者などこぞの富豪の船遊びという感も漂うのんびりさ加減。だが、ここは世界に名立たる"魔海"である。そう、あの『グランドライン』なのだ。思えば、こんな海域を"のんびり"航行していること自体、この船が見かけを裏切る何かを持っていると、まずは把握しなければならない…のだが。さて。

 主甲板の真ん中で、甲板の板張りに座り込み、ごちゃごちゃと何やら…どこぞの掃きだめから拾って来たようなガラクタっぽいものから、本格的そうなフラスコやら天秤ばかりやらを広げているのは、このゴーイングメリー号の、狙撃手であり営繕担当であり発明家でもある"高鼻・ラウドスピーカー"のウソップだ。
「んん? 何だ? 何か用か? 俺、今、忙しいんだがよ。…え? ルフィか? さっきまで此処にいたぜ。」
 手を止めるとちょこっと目元を眇めて、
「まったくよう。あいつと来たら、てんでお子様だから参っちまうぜ。」
 しみじみと感情を乗せてそんなことを言い出す彼で。
「さっきも、この"装置の空気の膨張率で気温と気圧が分かるぞマシン"がもう少しで完成するところだったのによ、触んなって言ってる端から手ぇ出しやがって。あっと言う間に分解しちまったぜ。…あ? 温度計や気圧計はもうあるじゃないかって? こんなデカくて嵩ばるのじゃないのがって? う…いや、そ、それは俺だって判ってたサ、勿論。」
 少々あたふたと焦ったような口ぶりになったところを見ると、大外回りに理屈だけを追いかけるあまり、別な理論のもっと画期的な現物が既にあることを"すこ〜ん"と失念していた彼らしい。独創的で"独走的"な発明家にはよくあることだが。
「ま、まあ今回のは大目に見るとしても、だ。あいつ、落ち着きが無さ過ぎると思わないか? するなって言った事に、必ず、手ぇ延ばすしよ。お、笑ってやんな、余裕あんじゃねぇか。え? 俺が言うと説得力がねぇ? うるせぇな、放っとけよ。…ルフィならさっきナミと話してたのが聞こえてたぜ。ミカンの手入れしてやがるから、おう、あっちだ。あ、そうだ。ルフィにこれ、渡しといてくれよ。さっきは、その、ちょっと大きな声で怒鳴っちまったからな。ごめんって。」
 そう言ってウソップが差し出したのは、彼お手製の、マストの上まで飛んでく保証付き、カラフルなペイントが施された可愛らしい竹トンボだった。



        #2

 ナミが故郷のココヤシ村から持ち込んだ蜜柑の樹の鉢は3つ。キチンキチンとまめに手をかけているせいで、このグランドラインに入ってすぐのあの凄まじい気候の乱れにも負けず、すくすくと生育中。いつだって青々とした葉を陽射しに健やかに光らせていて、白い花の後には見事な粒よりのミカンを実らせてもいる。
「ルフィ? ああ、さっきまで居たわよ、此処に。」
 丁度今は収穫の時期。鉢の間際に寄って、食べ頃の、よく熟したものを1つ1つ丁寧に摘み取っているナミであり、
「美味そうだなぁってあんまり何度も言うもんだから、じゃあゲームをして勝ったら取っただけあげるわって遊んでやってたの。」
 その言いよう。きっと素直に遊んだ訳ではないに違いない。この理知的なグラマー美人は、根っからの意地悪ではないのだが、どこか…人で遊ぶというのか、からかって楽しむというか、そういう"人の悪いところ"があるから油断がならない。頭の良い人間は皆、そういう趣味があるのだろうか。
「"10番目はドボン"っていってね。みかんを10個用意して、順番に取っていくの。1つか2つか3つ。で、10個目を取っちゃった方が負け。」
 え〜っと。ご存知の方も多かろう、この遊び。種明かしをすると、相手に10を取らせたいなら自分は必ず9を取らねばならない。9を取るためには5を取らねばならない。こういうからくりさえ忘れなければ、そして相手がこの理屈に気がつかなければ、まずは負けないだろう、子供の数遊びで、
「ホントは20とか30とか、もっと大きい数字でやるんだけど、ルフィ相手なら10で充分だったわ。何十回とやって1回も勝てないんですもん。」
 …理屈に全然気がつかなかったと?
「そゆこと。しまいには拗ねちゃって。怒ってキッチンへ行ったみたいよ。可愛いったらなかったわ。…え? 大人げないって? あらだって、あたし、あいつと1つしか違わないんだし〜♪」
 悪びれずカラカラと笑う強腰は、だが、そう簡単にはこのミカンは渡せないという気持ちの裏返しなのかもしれない。何しろ彼女にとっては思い出深い宝物なのだから、そうそうあっさりと食べてもらっては困るというところなのだろう。とはいえ、ルフィが可愛くて仕方がないという気持ちも、実はしっかり持ち合わせていて、
「ああ、あいつのこと、探してるんなら…これ、渡しといてくれないかな? 残念賞よって。」
 そう言って彼女が差し出したのは、摘まれたカゴの中では大きい方のミカンが、5つもだった。



        #3

 キッチンの中にはふんわりと甘い匂いが満ちていて、そろそろ午後のおやつの時間だということを思い出させた。オーブンと流しがドアの横手にあって、そこに立っているのはこのキャビンの主のような金髪痩躯の足技コック、サンジである。
「よお、どした? んん? ルフィか? あんのクソ野郎なら、さっきまでいたが今はご覧の通りだ、此処にはいねぇよ。」
 せっかくまあまあの色男だというのに口が悪いのも相変わらず。愛用のピンクのエプロンも、ブルーのカラーシャツによく映えてなかなか可愛いというのにねぇ。
ぷぷぷ☆ とはいえ、彼には彼の言い分があって、顔の左側を覆い隠すほど伸ばした金の前髪を、ひょいっと軽くあおるように追いやると、
「まったく、あの食いしん坊が。焼く端からパクパクと食ってくれるもんだから、たかが7人分のホットケーキ焼くのに、この俺様がま〜だかかってんだぜ、ったくよぉ。」
 そ、それは…気の毒に。逆"わんこそば"状態の、権兵衛さんが種蒔きゃ、カラスがほじくる…ですな。
「大体よぉ、あの細い身体のどこに入るんだろうな、いつもいつも。よっぽどの量を食わん限り、そうそう体の形も変わらんし。」
 その代わり、変わるとなるとお腹が出て来るくらいに留まらないで、骨盤の位置が判らなくなるくらい変わりますが…。
「ま、ともかくだ。ついさっき蹴り出してやったから、そうだな、後甲板じゃねぇのかな。」
 そうと言って、サンジは傍の奥の方の棚の引き出しを開けると、そこの何かを一掴み。その手をこちらへ持って来て、
「ほら、これ、渡しといてくれや。口寂しいんならこれでも舐めてろってな。…あ、これが入ってた場所は奴には内緒だぞ?」
 手づから渡されたのは、セロファンに包まれたカラフルでかわいらしいキャンディたちであった。ヘビースモーカーな彼がこういうものを舐めているところは見たことがないので、ということは…?
「何が言いてぇんだよ、このクソ野郎が。にまにま笑ってよ。とっとと出て行かねぇと蹴るぞ、くぉらっ。」



        #4

 後甲板にいたのは乗用カルガモのカルーと、そのオーナーでもあるビビ皇女。青みの強い銀の髪をポニーテイルにした、清楚な、だが、飛び切り意志の強そうな面差しの少女だが、
「ルフィさんですか? さっきまで居たんですけれど…あの、何だか慌てて駆けて行ってしまって。」
 大きな瞳を伏し目がちにして、何だか歯切れが悪そうな彼女であり、
「こっちへ来てたって気がつかないで子守歌を歌っていたんです。そしたら拍手してくれて。」
 海賊には音楽家が必要だと常々言って憚
はばからないルフィは、この皇女の語る様々なおとぎ話と同じくらい、彼女が時々口ずさむ子守歌が大好きなのだ。なればこそ、それが聞こえたとあれば何をおいても傍まで聞きに来るだろうし、拍手だってするだろう…と、その辺りは納得も行く顛末だが、
「あの…それはとっても嬉しかったんですけど、カルーがびっくりして跳ね起きてしまって。」
 語る彼女の手で羽根を撫でられながら、心なしか…そのカルーまでもが済まなさそうに"クゥ…"と喉を震わせて目尻を下げているような。
「それでルフィさんの方まで驚かれたみたいで。ごめんごめんって言いながら駆けて行ってしまって…。」
 どこか臆病なカルガモであり、そんな彼を自分がひどく驚かしてしまったと思ったルフィであったのだろう。自分まで驚いたように跳び撥ねて、謝りながら逃げるように駆け去った様が目に浮かぶようだ。
「ああまで気にされることはなかったのに…何だか悪いことをしたようで。あの…ルフィさんを見つけたら、これ、渡して下さいませんか? 今朝ほどナミさんと二人で焼いたんです。」
 そう言って彼女が白い手で差し出したのは、レース模様のふわふわした小袋に入ったクッキーだった。




        #5

 さて、そうなると後はスタート地点の上甲板に戻っているのか、それとも…と見上げたのは宙空へと聳
そびえ立つメインマスト。きしぎしとロープや索具を軋ませながら見張り台を目指して登ってゆくと、やがて、麦わら帽子と、その縁から少ぅしだけはみ出した黒い髪が見えた。
"…此処だったか。"
 やっと見つけた幼い船長殿は、丸い陽溜まりの中、もこもこな毛並みのトナカイを抱き枕に、安らかな寝顔を穏やかな陽射しへさらしてくうくうと午睡中。こちらに気づいたチョッパーとほぼ同時、口の前に"しーっ"と指を…チョッパーの方は蹄を立てる仕草が重なって、お互いに声を押さえて苦笑し合う。
「さっき寝たトコだ。」
 こそこそっと囁く船医殿に頷いて、ゾロはひょいっと縁を飛び越え、音もなく中へと降り立った。(…もうお気づきでしたでましょ?)
"…まったくまあ。"
 この小さな船の隅から隅までを捜し回ってしまった剣豪殿は、彼の妙にこまやかな?行動に舌を巻いている。クルーたち全員にちょっかい出したり出されたり。
"キャプテンというより、とんだマスコットだよな。"
 頭上にははたはたと"風の太鼓"を鳴らす海賊旗。トレードマークの頭蓋骨の台座にぶっちがいの大腿骨をデザインした、海賊たちの信念の印。冒険や野望や誇りへ、自分の生命を懸ける心意気を誓った旗。潮風に鞭打つようにたなびくそれを見上げていたチョッパーは、ふと、
「なんで、ルフィより大きいゾロやサンジがキャプテンじゃないんだ? ルフィは一番年下なんだろ?」
 唐突な質問だった。子供の"大きい"は形や嵩としての大きさだけでなく、年齢の大きさ、"年上"という意味もある。チョッパーの幼い声にゾロはくつくつと笑い、
「そりゃあ簡単だ。俺たちは元は海賊じゃあなかった。こいつから"仲間になってくれ"って強引に誘われたから海賊になったっていう順番だからだ。」
 低くやわらかな声になってそうと応じた。一応、ルフィが起きないようにと気を遣ってのことだろう。チョッパーは耳が良いので、心地良い声の質にすぐ気がついて、気持ち良さそうに、だが、ちょっぴりくすぐったそうに、小さく微笑った。ゾロの腕に掻い込まれたルフィが、いつもすぐに眠ってしまうのはこのせいだなと思ったからだ。それはそれとして、
「じゃあ、誘われてなかったら海賊にはならなかったのか?」
「そうなるかな。」
 サンジは誇り高きコック…とやらだったし、ナミは経緯
いきさつもあってのことだが元々海賊を嫌っていたし。ウソップだけは海賊を目指してこそいたが、その把握にはどこかで現実と地続きではなかったような節があって、旅立ちの時も自分たちと同行するつもりはなかったようだったし。そして自分はといえば、海賊を狩る側の人間だったし。
「誘われたからってだけでなれるもんなのか?」
 たいそう簡潔ながら、だからこそ…分かりやすいまでに奇妙なことなんだぞという点がやたら強調されて聞こえる。そんな訊き方をするチョッパーに苦笑をし、
「ルフィが誘ったから、だと思うぜ。他の奴のことまでは俺も良くは知らねぇが、どいつにせよ、確かに最初は"海賊になんかなるもんか"って嫌がってたからなぁ。」
 簡潔に答えてやると、
「…ふ〜ん。」
 自身の内に思い当たる節でもあるのか、チョッパーは考え込むように身の裡
うちへと視線を落とす。この小さなトナカイ船医が仲間に入った経緯も、実を言えば…ゾロは良く知らない。ウソップやビビはナミやサンジから話を聞いていたようだが、ゾロとしては、本人が、そしてルフィが言わないことだから、気をつけなきゃならないものがあったとしても、付き合ってく内に判って来るだろうと、わざわざ聞きほじることもあるまいと構えている。本人たちが気づいているかどうかはさておいて、そういう…今更どうしたって引っ繰り返せない"過去"を知っても仕方がないという考え方も、似た者同士な二人であり、
「俺なんて、モロに"成り行き"で仲間になったようなもんだしな。」
「…え?」
 ゾロの場合、ルフィとの付き合い自体が、そのうち判って来るさという構え方から始まった蓄積でもある。他の連中が、彼の彼ならではな馬力や信念に助けられたり、もしくは一緒に途轍もない苦難を乗り越えたりという、お互いを"判り合う"のに充分なほどの機会があったのに対し、ゾロだけはちょいと趣きが異なる。殆ど…刀を人質ならぬ"モノ質"に捕られての脅迫に近かったような"始まり"で、一応『ルフィの迂闊から大剣豪になれなかったなら腹斬って詫びろ』という約束をこそしてはあるが、
「どういう奴なのか、良く判らないままに一緒に来ちまったからな。」
「…うわぁ。」
 同情とも呆れとも、何とも言いがたいというしみじみとした声を出されてしまい、そんなチョッパーにゾロとしては苦笑を誘われた。
「そんなに奇矯(変)かねぇ。」
「ううん、そうじゃなくって。だってゾロとルフィって、なんか違うから。」
「…違う?」
「うん。最初は、二人だけ、兄弟かなって思ってた。」
「全然似てねぇぞ、こいつと俺って。」
「…そういう意味じゃなくって。」
 漫才してどうしますか。チョッパーとしては…二人揃って他の面子たちと違うと、そう感じさせる何かがあるらしい。
「いちいち相手に言わなくても通じてるものがあったりするだろ? それとか、言葉が足りない言い方でも充分全部判ってたり、素っ気ない構われ方してもそれはそれで温かいみたくて、満足し合ってるし。」
「…良く見てるんだな、お前。」
 そして、
「相手のこと、良く判んないのについて来ただなんて…余程波長でも合わなきゃ出来ないことじゃないのか?」
「う〜ん…。」
 改めて訊かれてもなぁと、ゾロは短い髪をがりがりと掻いた。大きな手、頼もしい体躯。剣のように凛と冴えた眼差し。そういった外見のみならず、包容力もあって、何とも頼もしい男だのに…こんな風に時折拙い部分に気づいては、たどたどしい顔をする朴訥さ。
"こういうの、何て言うんだっけ。…破れ鍋に綴じ蓋?"
 チョッパーさん、それはあんまりでは…。
「…で、どうしてそこ、そんなにボコボコなんだ?」
 本人からはそうそう答えが出ないことらしいと判断したらしく、チョッパーは質問を変えることにした。彼が指さしたのはゾロの腹巻きで、
「あ、ああ。あちこちで色々預かってな。」
 折り返しから彼が引っ張り出したのは、ウソップから預かった竹トンボに、ナミから預かったミカン。サンジから預かったキャンディと、ビビから預かったクッキー。床の上、道具箱を台座にそれらを並べていると、
「………うにゃ。」
 ルフィがうっすらと目を開けた。
「何か…食いもんの匂い、する…。」
 ふらふらと漂っていた視線が、ミカンの上に止まって、ぱっちり開いた。柑橘類の香りには神経をしゃきっと冴えさせるリフレッシュ効果があるそうだが、さすがさすがの御利益だ。
おいおい
「わぁ〜。それ、ナミのミカンじゃないのか?」
「ああ。さっきのゲームの残念賞だと。」
「もらって良いのか? 食って良いのか?」
「らしいぞ。」
 やりぃと笑って手を伸ばし、両手に握った1つずつを…まずはゾロと膝の上のチョッパーに手渡した。
「?」
「? なんだ?」
 キョトンとする二人へ、
「やる。」
 にっこり笑って、
「滅多に食えねぇけど、ナミのミカンって凄げぇ旨いんだぞ。だから一緒に食おう。」
 珍しいことを言う。
"槍でも降らにゃあ良いが…。"
 おいおい、ゾロさん。槍はともかく、雨や雪は降りそうにない晴れ渡った青空に、皮から弾けた金の飛沫が散って、シトラスの独特の香りが広がる。甘酸っぱいミカンを頬張って、
「ーーーっ!」
「〜〜〜っ♪」
「…お前ら、食べ切ってからにしろ。」
 言葉になってないが、双方"美味しいっ!""そうだろう♪"という会話になっているらしいお子様たちを相手に、ゾロが小さな苦笑を見せた。そこへと、
「お〜い、ルフィ、ゾロ、チョッパーっ! おやつだぞっ!」
 足下の甲板からのサンジの声がして、
「そこまで持ってけってか?」
「メニューは何だぁ? ホットケーキか?」
「ホットケーキはさっき手前ぇがさんざん食っちまったから変更したよ。
 シュークリームとエクレアだ。とっとと食いに降りて来いっ!」
 こんな声が飛び交うあたり、どの辺が海賊船なんでしょうか、ここってば。
"まあ、一隻くらいはこういう海賊船があっても良いんじゃなかろうか。"
 そうですね。それぞれに途轍もない強者
つわものな船員の全員が、幼くも破天荒な船長に揃って首っ丈で。呑気でお子様な彼の方針に沿って運営されている、世界一ハッピーな海賊船。麦ワラ帽子を冠された無表情なはずのジョリーロジャーも、何だか陽気に笑っているように見える、ここはそんな船であるらしい。




       ◆◇おまけ◇◆◆

「よ〜しっっ! 誰が一番早く降りられるか、競争だ。」
「あ、狡いぞ、ルフィっ!」
 言ったその途端にまんま足から飛び降りているルフィを追って、自分もそうしようとする小さなトナカイを、ゾロがすかさずひょいと捕まえる。
「こんなことくらいで我を忘れてんじゃねぇっての。」
 成獣型のトナカイに変化すれば、彼にとってもこのくらいの高さ、悠々と楽勝なのかもしれないが、もしかして怪我をしないとも言い切れない。さすがはMr.ブシドー、冷静である。おんぶして降りてくると、
「あ〜っ、狡いぞ、チョッパー。」
 たちまち見咎めた船長殿が駆け寄って来て、そんな風に言いつのるものだから、
「上る時はお前が抱えてやったんじゃなかったのか?」
「そうじゃなくって。ゾロに肩車してもらったこと、まだないぞ、俺。」
「………お前ねぇ。」
 お子様たちの無邪気な言い争いの只中に、何故だか巻き込まれることの多い今日この頃な、剣豪殿なのであった。(…あれ? どっかからテーマが擦り変わってないか?)


     〜Fine〜  01.11.23.〜11.25.

  *カウンター9174HIT ゴロ番?リクエスト
    スカイ様 『ルフィ以外のクルーたちが彼について話す』



  *何だか収拾がつかなくなった締めですが。(泣)
   ルフィ本人が出て来ないと話がなかなか発展しないから、
   ああ私ってやっぱり"船長ラブ"な人だったのねと再認識させていただけました。
   なんか変なお話になってしまいましたが、
   いかがでしょうか? スカイ様。
  


back.gif