ハニー・ワイン
             HONEY  WINE

        『蜜月まで何マイル?』番外編
 


        


 題は忘れたけれど、古典落語にこういうのがある。お酒を飲めないことで馬鹿にされた男が、酒粕を食べてほろ酔いになり、どうだ俺だって酒くらい飲めるんだぞと意気がるが、どのくらいの量を飲んだんだ?とか、どうやって飲んだ?冷やか?燗か?とか訊かれてボロを出してしまう話で、江戸時代辺りでもう既に、酒と女は男にとっての一種の甲斐性、嗜
たしなめて一人前、だったらしいと伺える。女はともかく、下戸の建てたる蔵はなしという言葉があるほど、男性社会においてはお酒は飲めた方が良いらしい。(酒呑みを"左利き"と呼ぶのは、人からのお酌を待てずに、杯を左手に持ち替えて自分で手酌でがんがん飲む人…というところからだとか。)でも、無理強いはよくないぞ? 俺の酒が飲めないのかなんていう無理強いは、いっそ"脅迫"とか"傷害未遂"とかって決めちゃえば良いのにね? それでなくとも、モンゴル系民族である日本人は、遺伝子的には"アルコールを受けつける因子"が少ないのだとか。お酒は飲んでも呑まれるな。楽しくやりましょうよね?


"……ふ…。"
 ぱちっと目が覚めたものの、鼻先には瞼の裏と大差無い、無表情なばかりの漆黒が立ち込める夜陰の中である。部屋の隅の方から"ぎ・ぎぎぃぎぃ…"などという船体からの呟きが聞こえて来たりするのが、普段ならそんなに気にもならないものだのに、何だか今夜は妙に耳について、
「………んっと。」
 少しだけ身を起こすと、毛布を全部手繰って頭からかぶるようにして、身体にもぐるぐると巻きつけて。それから、わしわしと手探りで自分のすぐ周りのぐるりを探した後、続いてベッドの隅から隅までを泳ぐようにまさぐって。探して探して、探して探して…、
「………。」
 がばっと起き上がる。
"…いない。"
 あんな大きなもの
(あはは)、そんなまでしなくとも、居るか居ないかなんてすぐ分かりそうなもんだけれど。彼の認識の中では"必ず居る筈"だったからこそ、手ごたえがないのがどこまでも信じられなかったのだろう。
"いないよぉ。"
 毛布をかぶったままキョロキョロと辺りを見回した。暗いのが怖い訳ではないが、何だか急に心細くなって来た。もしかして、どこか遠くへ行っちゃったんじゃないのかな。もう帰って来ないんじゃないのかなぁ。…って、太洋のど真ん中を航行中の船の上から、どうやって? どこへ?
"………。"
 かなり混乱しかかっていた思考のピントが、ふと、すすすっと絞り込まれる。
"…あ、もしかして。"
 ピンと来たところへ、タイミングよくドアがキイッと小さく軋みながら開いた。燭台も持たない慣れた様子で部屋の中へと入って来た人物には、実は妙な習慣というか習性があって、この愛船の中でも滅多に足音をさせない。あれほどゴツくて底厚な安全靴を履いているのに、板張りの通路も甲板も足音を立てずに歩き回れる変わった男である。よって、今ドアが開いたのも全く前触れのないそれで、
「…っ!」
 ベッドの中央で毛布の塊り…の芯と化していたルフィまでが、思わず"ぎょっ"としたほどだ。ここまで書けばお察しだろうが、ご帰還あそばしたのはご亭主殿であるらしく
おいおい、夜目が利く彼には、ベッドの上に蹲(うずくま)り、毛布の中で丸くなっているルフィの様子まで一目で簡単に見て取れたらしい。
「なんだ、起きてたのか。」
 寝ていると思っていたから意外ではあったらしいが、船長殿のちょいと異様な様子にも大して驚きもせずにいる彼だ。だが、こっちはそうは行かない。いつもの感覚でこちらへと気安く腕を伸ばして来たのへ、ささっと逃げを打って見せ、
「知らないから。」
と拗ねた声を投げかける。
「何が。」
「お酒臭いから嫌いだっ!」
 ははぁ〜ん。それで拗ねてたか、君は。ゾロが居なかったのが、トイレではなく酒盛りのための外出だったというのを見抜き、それに対して腹を立てているらしく、だが、ゾロの方はしゃあしゃあとしたもの。
「何だよ。別に酔っ払っちゃいないぞ?」
 だから文句はなかろうという理屈らしいのだが、それがまた性
(たち)が悪いとさえ思えてならない。どれだけ飲んでも酔わない底無しのうわばみで、"ザル"の上をゆく"ワク"レベル。いっそ、少しくらい酔っていて情けないおバカの一つでも披露したりすれば、もうしょうがないなぁと、そこを可愛げと解釈されもしただろうに。どれだけ呑んで来たかは知らねども、昼間となんら変わらないほどしゃっきりしていて、今は夜中だというのさえ、彼だけを見ているとそうだというのを忘れてしまいそうになるほどだ。それにしても…何か、飲みに行って遅く帰って来た旦那と若奥さんの会話みたいだな、こりゃ。ここで、エプロン姿のルフィと背広姿のゾロをちょいと想像してみて下さい。
〈今何時だと思ってるの?〉
と、憤懣やる方ないという顔でお冷やを出す若妻。
〈先に寝ててくれりゃあ良かったのに。〉
と、ネクタイを緩めながら"俺は悪くないぞ"と白を切る夫。
〈今日は早く帰るって言ったじゃないの。〉
と、膝を進めて"いいえ、あなたが悪いのよ"と追及する妻。
〈男には付き合いってもんがあるんだよ。〉
とばかりに、開き直りに入る夫…って、あ、この二人はどっちも男だな。その前に、ゾロは"会社の付き合い"では飲まないと思うし。
あはは 冗談はともかく、
「ほらほら、もう寝よう。」
 長身で腕も長い彼のこと。ベッドへ上がり込むことも無く、いとも容易
(たやす)く、かわいくグズる添い寝相手を大きな手で捕まえたゾロだったが、
「やだってばっ! 嫌いなんだからなっ!」
 じたじたと暴れるルフィであり………近所迷惑だから、お二人ともお静かに。


        2

 結局、船長さんは翌朝まで目一杯拗ねていて、ベッドの中でも恋人さんへ小さな背中を向けたままで通したし、夜が明けてからもお気に入りの羊にさえ上らない。傍にゾロが居るからだと、実に判りやすい行動で示している彼であり、そのくせ、昨夜自分をほったらかしてたその旦那と一緒に飲んでいたらしいサンジには、まるきり怒って見せないところが…どっか不思議。これが女性だったなら、旦那より浮気相手をこそ呪うほど憎むもんなんだが、そこはやっぱり感覚が違うのか、それとも直接自分を不快にした人間までで把握が精一杯な彼なのか。
おいおい そして、
"また、今度は何をもめているやら…。"
 細かい事情はまだ知らないサンジが、そのシニカルな二枚目顔の陰で、苦笑を誤間化すのに苦労していた。そう。食事が済んでからもずっと、キッチンに居続けをしているルフィであり、身体を小さく丸めるようにして膝を抱え、窓辺のベンチに座を占めている姿が、何とも判りやすく彼の不平状態を表出している。
「なあ、おい、ルフィ。」
「…なに?」
 抱えた膝の上、不揃いな黒い前髪の間から目許だけを見せて応じたルフィへ、
「パンに入れたいから、干しブドウを取って来てくんないかな。」
 見やれば、テーブルの上へ小麦粉やらバターやら玉子やら、大理石の調理用大板にオーブン用の天板にというベイカリーグッズやらを準備している彼で、
「好きだろう? 葡萄パン。たっくさん焼いてやるから、俺の部屋の棚の手前の方にあるのを持って来てくれねぇか。袋に入ってて、でっかくレーズンって書いてあるからすぐ判る。」
 青い眸をやわらかく細め、にっこり笑って頼まれると、そこは暇な身の上でもあって、
「…うん。」
 頷いて立ち上がったルフィだった。


 昼間は甲板やあちこちの蓋扉が開いているので船倉も明るく、燭台も要らない。サンジの部屋に入ると、彼の言葉通り、棚の手前の干しブドウの袋は簡単に見つかったが、同じブドウの"アルコールジュース"のボトルもすぐ傍にあって、否応無くルフィの大きな目に入った。ワインだけに留まらず、様々な酒のボトルがずらずらっと並べてあって、
"お酒なんてどこが美味しいんだろう。"
 匂いさえダメなルフィには、こんなものを水のように飲める、自分以外のクルーたちの気が知れない。…これは丸きりの余談だが、水は一遍に1リットルも飲めないのに、お酒は気がつくと2リットル近く飲めてたりするから不思議ですよねぇ。(で、実は、Morlin.は一滴も飲めなかったりする。随分と昔に禁酒したからねぇ。)
"………。"
 干しブドウの袋を抱えたまま、しばしそれらを仇敵のように睨みつけていた彼だったが…。

            ◇

「…遅っせぇ〜なぁ。」
 なかなか戻って来ないルフィであり、パン作りの方も、自然と中断されている。
「ったく、何をもめているのやら。」
「あら、やっぱりそうなの?」
 丁度水を飲みに来合わせていたナミが、サンジの呟きを拾って応じて来た。彼女もまた、剣豪と船長がぎくしゃくしていることには気づいていたらしい。夜はともかく昼間は照れが高じてか、あまり人前ではべたべたしない彼らなので、それだのにこんなに早く察しがつくとは、よほど注意して観ている彼女であるのだろう。何と言ったってルフィの母親代わりなのだし。
あはは それはともかく。
「ええ。ルフィが羊に登りたがらんのは、あいつがいつも通り指定席にいるからですからね。で、奴の方には引け目がないらしいから、そりゃあ譲らんでしょうし。」
「何よ、じゃあ、ルフィが一方的に怒ってるだけなの?」
「ええ。」
 そこは確信があるらしく、鷹揚そうに頷いて見せるサンジであり、
「…気がついてないのかしら。」
 ナミは目許を妖しく眇めながら、窓から上甲板を見やって、そこで仮眠中の剣士殿を視線で示す。こういう…手振りを省いたスマートな会話にはサンジも慣れていて、ナミが指したものも先刻承知。
「さあ。子供の駄々くらいに思ってて、忘れるまで待つ気なのかも知れませんね。」
 くすんと微笑ってオーブンの中を覗き込む。第一陣のバターロールとクロワッサンが仕上がりつつあるからだ。パタッと、傍目には"あ、間違えた"と思わせるような素早さで、扉を薄く開けて閉めたサンジであり、彼にはこんな一瞬に漏れ出て来た余熱や香りだけで、充分確認が出来るらしい。
「どうでも良いような詰まらないことに、手をかけてやったり甘かったりする割に、肝心なトコで気が回らないでしょう? あいつ。だから、とりあえず謝るとか、機嫌を取るとか、そういうことは出来なくって、それでこじれてんじゃないんですかね。」
 パタパタと床を軽く叩くようにして、いつの間にか靴底の爪先で調子を取っていた彼であり、
「…よし、あがり。」
 扉を開いて、オーブンから鉄のトレイを順次引っ張り出す。つややかなバターロールとクロワッサンがずらりずらずらと並んでいて、芳ばしい香りがキッチンに満ち、ナミも思わず深呼吸して見せた。
「良い匂い…。」
「でしょう♪ も少し冷めたら、どれか1つ、お味見して下さいな。あ、ビビちゃんにも焼きたてを1つ。」
 にっこり微笑って、だが、エプロンを外すサンジであり、
「どこ行くの?」
「ルフィの馬鹿があんまり遅いんでね。ちょっと見て来ますよ。缶詰の下敷きんでもなってたらコトですし。」


 …で。
「あ〜あ、甘いとはいえこれも酒だっての。」
 サンジが手にしたボトルのラベルには"HONEY"つまりは"蜂蜜"とあって、しかもさくらんぼの匂いと色がついているから、ただのジュースと勘違いしたのだろう。コルクを抜いて一気にあおったらしく、
「ん〜、そうなんだ。」
 棚の傍にへたり込んでしっかり酔っているルフィが、どこか他人事のような調子で応じて来た。子供っぽい顔の、頬も目許も見るからに真っ赤々で、へちゃりと床に座り込んでいる様は、このままぐずぐずと溶けていってしまいそうな様相だ。
「…お前ね。」
 すぐ前に屈み、抱えてやろうと手を伸ばすと、抵抗なく凭れてくる。頼りないままに力なくまとわりついてくる身体には、ふにゃふにゃと正体がなく、日頃のゴムゴムがすっかりと"餅々"に変わり果てている。
おいおい
「サンジ、良い匂い〜♪」
「はいはい。」
 猫の仔のように懐くのをいなしつつ、抱き上げて立ち上がると、
「好きィ〜♪」
 肩口と胸元の狭間辺りへ顔を伏せ、腕全部を使って、ぎゅうっと熱烈にしがみついて来るとあって、
「ありがとよ。………っと☆」
 適当に応じてやっていたそこへ、背条に不意に寒気を感じたコック殿だったりする。とはいえ、今は凍りついてる場合じゃない。
「…ゾロ。誤解しとる暇があったらこっち来い。」
 顎をしゃくるようにして、戸口で殺気立ってトグロを巻きかけている剣豪を呼んだ。わ、判りやすい人たちだ、相変わらず。
「ほら、ちゃんと受け取りな。」
 切れ長の緑の目を眇めかけていた彼の、そのごっつい腕へと少年の身を渡し、続いて目の前に振って見せたのは、せいぜい100ミリリットル…牛乳ビンの半分ほどの大きさのボトルが一本。
「この量だから大したことないまま代謝されるとは思うが、俺らと違って全然免疫がないからな。一応、傍についててやれや。」
「…判った。」


        3

 ふにゃいにゃ…と、どこかご機嫌そうにも見えなくはない少々ゆるんだ表情で、ゾロの腕の中に軽々と抱えられて部屋まで運ばれた。扉を開けていれば、天井に蓋扉の開いた通路が少しは明るいが、閉じてしまえば丁度昨夜の夜半とまるきり同じシチュエーション。そのままベッドの上へ横たえられ、サイドテーブルの上の水差しからコップへ注がれた水を口唇まで持って来てもらったが、
「や〜だよ。」
 ここに至って"ふいっ"とそっぽを向く。
「こら、ルフィ。」
「要らないもん。」
 起こした上体を支えてくれている腕から転げるように向こう側へと逃げると、広いベッドの上を這うようにして遠くへ離れようとする。転げた弾み、麦ワラ帽子がすっぽ抜けてゾロの足元へ転げ落ちた。
「いい加減にしとけよ、おい。」
 あまり暴れると悪酔いするかもしれない。気分が悪くなるぞと案じて、帽子を拾い上げてやりながら、そうと声をかけたゾロだったが、
「いーかげんなのはゾロの方だろ?」
 言い返せるだけ、まだまだ意識はしっかりしているルフィらしい。
「何がだ。」
「こないだ、俺は飯より下だよな、なんて言ってたけど、ゾロだって俺より酒の方が上じゃんか。」
 おお、懐かしい台詞だ。『お留守番』の3章ですな。
こらこら
「…何でそうなるんだよ。」
「だって、やんないじゃんか。お酒飲みに行く前は。」
「…はあ?」
 正直、意味が判らずにキョトンとするゾロへ、ルフィは事もなげに詳細を繰り返す。
「抱いてくんないもん。飲みに行く晩は。」
「………っ☆」
 おおお………。つ、つまり。飲みに行くのは"夜の睦み"がない時に限られていると、船長さんにおかれては気がついたらしいのだ。筆者、表現にかなり努力しました。
おいおい それはともかく。…まあ、奥さんたら大胆な発言を。こらこら
「…あのなぁ。」
 この言いようには、ゾロもまた少々焦ったような顔になったが、
「お酒の方が大事なんだ。だから、俺んコト適当に寝かしつけて…。」
 いくらルフィにはとことん甘くて優しいとはいえ、この旦那様、決して"優柔不断"ではない。誤解はあくまで解こうと思ってか、昨夜と同様、長い腕を伸ばして少年をあっさり掴まえると間近へ引き寄せ、まだ何か言いつのろうとする彼の顎を、人差し指と親指だけでクイッと捉らまえて、
「何でそういう順番になるんだよ。」
 聞きただした。ちょっと強い語調で訊かれて、多少は気勢が削がれたらしく、
「だってさ…。」
 いつもそうじゃないかとか、小さな声でぶつぶつと呟く船長さんへ、その大きな肩を落とすほどの大仰なため息をわざわざついて見せ、
「今夜は飲むぞなんて前以ての約束なんかしたことないんだぜ? その日その日の行き当たりばったり。」
「…そうなの?」
「ああ、いつもそうだ。」
 そういや似合いませんものね、そういうの。二人がそういう約束している図って、むしろちょっと笑えるかも。
「コックが夜更かしすんのはお前だって知ってるだろうが。いつ行っても大概起きてんだよ、あいつは。」
「でもさ。」
 言い返しながら、まだ"とろん"とした顔でいるのは、酔っているからだろうが、それにしては大人しいのは、恋人さんの言葉へ耳を傾けようという姿勢になって来たからか。そんなルフィの髪を、自分の無骨な指に搦めて梳き上げながら、
「だから、その………やってない…晩に限って呑みに出てるんじゃなくってだ。その、まだ眠くないから、だな。それで起き出して酒飲みに行くだけで、酒のために………その…やんないって順番じゃねぇんだよ。」
 ルフィはペロッと言えたことを口ごもるとは、相変わらず変なところで純情な剣豪であるらしい。…夜は結構大胆なクセに。
"…///うるせぇよっ。"
 あっはっはっはっ。一方で、
「そっか。」
 そんな彼であるというところまで気がついたのかどうか。ルフィはやっと…昨夜からこっちの初めて"にぱっ"と笑って見せ、
「じゃあ、俺、お酒とサンジに負けたんじゃなかったのか。」
「おいおい。」
 そんな誤解をしとったんかい、あんたは。ウチは時々サンルとかサンナミはやるけど、ゾロサンはやんないってば。
「…? 何? 今の声。」
「さあ?」
 あらやだ、聞こえました? やぁねぇ、気にしないでよ、うんっ。
「………とにかくだ。」
 やっと素直にぽそんと凭れて来たルフィの、いつもより少し熱い頬を胸板にくすぐったく感じながら、
「お前がイヤだって言うんなら、俺も少しは控えるから。」
「んん? 何を?」
 大きな眸が胸元から真っ直ぐ見上げて来るのへ、
「だから、酒をだな…。」
「無理だよ、そんなの。」
 おやや。即座に"決めつけ却下"をされてしまった。これでも、どちらかと言えば"寡欲"、ストイックな方だという自覚が密かにあったらしい剣豪殿としては…選りにも選って年少さんのルフィに指摘されたというのも加わって、さすがに少々"カチン☆"と来たらしい。
「…何で言い切るんだよ。」
「だって、ゾロって他には寝ることくらいしか楽しみないじゃん。俺もちょっと言い過ぎたし、浮気じゃないなら悔しくないから別に良いよ?」
 な、なんか、どさくさ紛れにエラいこと言ってませんか、この人。いくら酔っ払っているからって、ボキャブラリーまでそうそう増えるものだろうか。
"…またナミ辺りから要らんことを吹き込まれたな、こいつ。"
 ああ、やっぱり。
「な? だから…。」
「? だから?」
「ん〜んん。」
 胸板に添ってくっつけた頬。ゾロの胸板へ身を揉み込むように擦り寄せて来ているルフィであって、
「あ、えっと…だな。」
「なあ、良いじゃん。」
 どうやら…頬が染まっているのはアルコールのせいだけでもないらしい。というよりも、このバージョンに限っては結構"はにかみ屋さん"なところがある彼だのに、アルコールのせいで随分とその辺りが開放的になってしまっているらしく、
"…こいつはぁ〜。"
 どうあっても引っ張り回される相性なのは、どのバージョンでも根本的に同じな二人であるらしい。少ぉし潤んだ眸にまんまと射すくめられて、ついつい唇が重なって。昨日の続きの"夜"をやり直そうよと、差し伸べられた手を掴み取る。



   はい、皆さん、ご一緒に。
    "酒は飲んでも呑まれるな。"


    〜Fine〜  01.9.24.


 *カウンター1800&1900HIT リクエスト
   カエル様 『何故か酒に酔ってしまっているルフィと、
                   それをどう対処するのよ、ゾロ』



 *お酒がからむネタというのは実はストックの中に既にありまして、
 "うっわぁ〜〜〜っ、どうしようっ!"とか思ったのですが、
  これもまたリクエストにありがちな試練だと思い、
  何とか頑張ってみました。
  ただ、今は頭が"蜜月モード"なものですから、
  こんなカラーのになってしまいまして。(とほほ)
  設定が特殊な話をキリリクに使うのって反則ですか?

  今思ったんだけど、カエル様のとこにお嫁に出した作品って、
  3つそれぞれがバラバラで、統一性が無さすぎるような気が…。
  同じ人間が書いたとは思えないかも。
  こんなんでも良ろしいでしょうか? カエル様?(ドキドキ)
  


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