誰も知らない、誰もいないところでの待ち合わせってさ、
何だかイケナイコトしてるみたいな、そんな気がしない?
ちょっとソワソワ。
見咎められるんじゃないかってドキドキ。
早く来ないかなってソワソワ。
もしかして、すっぽかされたかなってドキドキ。
「………。」
路地を勢い良く通り抜けたカモメの群。
ビビルほどじゃあなかったけど、
尻が冷たいなって思って。
体育座りの膝の上、載せてた手元から眸を上げて、
もう何度も見やった向かいの壁に、も一度視線を投げてみる。
くすんでて古臭くて、シミも一杯で。
どこにどんなひびが走ってるのか、
目を瞑(つむ)ってても正確にまぶたの中に再現できるくらい、
何遍も何遍も眺めた、何とも素っ気ないコンクリートの壁。
いつも此処に来てるのに。いつも見てた筈なのに。
こんなだったって判ったのは今日が初めて。
だっていつもは、着いたらすぐにどっか行くもんな。
いつも待ってるのはゾロの方。
そうだったんだってことも、今日初めて気がついた。
"今、何時だろ。"
腕時計なんて気の利いたものは持ってない。
進学祝いだって伯父さんから貰ったのがあるけど、
ごつくてダサイやつだから引き出しにしまったままだ。
ゾロに"誕生日だから"って買って貰ったのもあるけど、
凄っごい嬉しかったし、気に入ってて宝物にしてるから、
普段は滅多に持ち歩かない。………これ、内緒だぞ?
「………。」
ポケットから取り出したケータイ。
パカッて開いて画面の時刻表示を見る。
まださっきから5分と経ってない。
"何ぁんだ"って思って、パタンと閉じた。
溜息は出ない。だってまだ5分と待ってない。
ホントはさ、待ってるのは結構好きなんだ、俺。
こう言うとナミとかサンジとか、ウソップやチョッパーまで、
何か凄げぇ変な顔すんだけど、ホントだぞ。
だってさ。必ず来るって判ってるしさ。
早く会いたいのは山々だけど、来るまでのドキドキとかも嫌いじゃない。
…うん、そうだな。他のは待ってらんねぇな、やっぱし。
"どんなカッコで来るのかな。"
来られなきゃ速攻で"行かれない"って返事くれるもんな。
ゴメンなで始まって、ゴメンなで終わるメールで。
それがなかったから絶対来るし。
"こないだのスタジャン、着て来ないかな。"
ゾロって着痩せして見えるから、
あんなにごついのに、その上にコートとかジャンパー着ても
あんまし"ムクムク"になんねぇんだよな。
前んトコと背中が渋いグレーがかったメタルグリーンのスタジャン。
髪も緑なのに同んなじ緑の服着るかなって、サンジは笑ってたけどさ、
俺は凄げぇ似合うって思って、頬が緩んでしょうがなかった。
…………………………あ。
「来た来た♪」
「"来た来た"じゃあない。」
「どしたんだ? そんな、息切らして。定期切れてたんか?」
「あのな。いくら俺でもガッコから走って来た訳じゃねぇよ。」
「あ、やっぱガッコだったんだ。いいの? フケても。」
「………………良いさ。」
「なに?」
「何かあったんかって思ったんだよ。」
「? ん〜ん、何もない。」
「だよな。見りゃ判る。」
「何だよ、それ。」
「大体だな、あんなメールがあるかよ。」
「でも、ゾロ、ちゃんと来たじゃん♪」
「来られはしたけどな、フツーは…。」
「良いから、どっかいこ。俺、腹減ってるし。」
「………ま・いっか。何、食うよ。」
「んっとね♪ まずは肉まんだろ? そいで…。」
「? どした?」
「ゾロ、手ぇ冷てぇ。手袋貸そうか?」
「いらねぇって。それよか……………。」
【from;ルフィ 会いたいから、待ってるな。】
〜Fine〜 02.10.19.
*岸本礼二さま。
サイト『Second Color』さんへの、立ち上げお祝いSSでございます。
大したこと出来なくてごめんなさいです。
お忙しい身なのに、でも頑張って下さいませね?

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