「うっし、終わりっと」
きゅきゅ、と蛇口をひねって水を止めると、おれの一日の仕事が終わった。
何か不備はないかと部屋の中をぐるりと見回す。
きっちりと片付けられた室内。…完璧だ。
我ながら、いい仕事してるよな、と思う。
さて風呂にでも入って寝るかね、と灯りを消そうとしたそのとき。
扉が開いて、緑頭のクソ剣豪が入ってきた。
「…ああ、まだ居やがったのかエロコック」
開口一番、そんな台詞を吐きやがった。
「居ちゃ悪ィかよクソ剣豪。てめェこそ何しに…て訊くまでもねェか。
…ちょっと待ってろ」
棚から、酒瓶を取り出してヤツに放り投げてやる。
「ほれ、酒だろ」
「…気味悪ィな…。何かあったのかよてめェ」
クソ剣豪は、如何にも『不気味だ…』って顔で酒瓶を受け取った。
確かに、今日のおれは機嫌がいい。
夕食のメニューを他ならぬナミさんに気に入って頂けたからだ。
いつもだったら「てめェにやる酒なんぞ無ェ」ぐらい云ってるところだ。
それで喧嘩になって、何度ナミさんにブン殴られたか知れない。
ああ云うときのナミさんの鉄拳は最強だ。非常に痛い。
…そこがまた、ナミさんのナミさんたる所以。ステキなのだ。
まあ、それを説明したトコで、コイツには解るはずもねェから云わないでおく事にした。
「いいじゃねェか。ひとの好意は素直に受け取っとくモンだぜ?」
「…どーせ、ナミ絡みなんだろ?今日の夕メシ、美味いっつってたもんな、そう云やあ。
あーあー、幸せそうで羨ましいこったな」
なんだコイツ。マリモヘッドの癖に鋭いじゃねえか。
あ、オイオイ、ラッパ飲みすんなよ勿体無ェ。
…つーか、羨ましいって何なんだっつーの。
「あァ?てめェ今何つった?誰が幸せそうだって?」
「お・ま・えだよエロコック」
ちょっと待て。
おれがどんな気持ちで毎日毎日ぐるぐるしてっか知らないだろう、お前。
この際だ、ちょっと腹割って話そうじゃねェか。
「あのなァ、お前、よくンな事云えるな。ぶっちゃけ、おれは毎日が戦いなんだぞ」
おれは、食器棚からグラスをふたつ取り出し、入口付近に立ってたクソマリモにつかつかと歩み寄り、酒瓶を奪って自分のグラスになみなみと注いだ。
それを一気に飲み干して、どかっ、と椅子に腰掛ける。
だん、と向かいの席に空のグラスを置いて、酒を注ぐ。
空になった自分のグラスにも半分ほど注いで、それに口は付けずに懐から煙草を出して火を付けた。ヤツは呆気に取られてこっちを見ている。
そんなクソ剣豪に、まァお前も座れよ、と声を掛けた。
相手が怪訝な顔をしながらも卓に付いたところで、もう一度深く煙草の煙を吸い込んで。それを吐き出しながら、云った。
「…あのな、よく考えてみろ?意中の相手が、だな。
あんなに肩だの足だの惜しげもなく見せちゃってるんだぞ?
それで平気で居られるワケねーだろが」
幸せなモンかよ、と呟いて、煙草を灰皿に押し付けた。
そんなおれを見て、クソ剣豪は溜息交じりに云った。
「…そりゃお前、修行が足んねェんだよ。我慢しやがれ、そんくらい」
かっちィーん。
何だとコラ。今、何て云いやがった?
「…オイコラクソマリモ。てめェ何偉そうなこと云ってやがんだ?
おれは知ってるんだぜ?お前だってかなりキツイんだってことを!」
「う…!」
ふふん、図星だろう。
変な汗出てんぜ?剣豪殿。
コイツがルフィに惚れてんだってことは、まァ、暗黙の了解ってヤツで。
ルフィも、ナミさん並にがんがん肩やら足やら出してるし。
おれもコイツも19歳で。
世間一般で云う、『微妙なお年頃』なワケで。
――色々と、大変なんだってことは、誰よりも解ってしまうワケで。
「すまん…見栄張ってみた…」
アララ、いきなり素直だよ。
痛いトコ突いちまったんだろうな。面白いけど。
さっき注いでやった酒を、コイツもイッキで飲み干した。
「…でもなぁ。てめェはまだいいぞエロコック。露出過多なだけじゃねェか、ナミは。
おれなんかな…おれなんかなァ、ルフィのヤツ、露出多い上に目が覚めたら隣で無防備に寝転がってたりするんだぞ?!それだけじゃねェ!く、く、く、くっついてきたりするんだぞ!!???修行云々のハナシじゃねえっつーんだよ!」
ひと息にそれだけ云うと、酒瓶を掴んでグラスに注ぎ、また煽る。
コイツがこんなに捲し立てるなんて珍しい。殆ど怪奇現象だ。
…酔ってる、ワケじゃないんだろうな。
これくらいでコイツが酔う訳無いし。
…あー、タマってたんだろうなあ。
「おまえも大変だな…。ほれ、呑めよ…」
あまりに哀れで、このおれ様が男に酌をしてやってしまった。
つーか、何だかもう肩とかふるふるしちゃってんですけど、この人!
ああ、同類なんだなあと思ったらおれまで悲しくなってきた。
クソ!それっておれも哀れって事じゃねェかよ!
…強く生きようぜ、クソ剣豪。
了。
*珍しく意気投合して慰め合っている19歳同士。
どちらも大変な相手に惚れているとはいえ、
うむむ、何か違わないか?
…と、ならないところが不思議なパスタ様の作品の不思議。
BD企画ということでDLFとされてらしたため、
一も二もなく拉致ってきてしまいましたvv
大切に楽しませていただきますvv はいvv
パスタ様のサイト『OOKeah!!』へ⇒**

|