おれの半身に何を上げよう、何を送ろう・・・。
ゾロに取って、今日が過去最高である様に、明日も過去最高の日になる様に。
35
―――確か去年はおれの本と日記だったんだよな・・・。 でも、今年は何も用意してねェな・・・。
道場で椅子に座り、一見少年に見える青年のあだ名は“アドニス”。 端から見れば呆けている様に見えるが、現在彼の深層心理では様々な葛藤が繰り広げられていた。
―――離れ離れの時は全然思わなかったけど、一年なんていう時間はあっという間だよな・・・。
「何やってんだ、カウンセラー!! ぼーっとしてる間はねェぞ!! 仕事しろっ!!!」
今年就任二年目の監督が頭を小突いてくる。
「ぼーっとしてたんじゃねェよ。 ちょっと考え事してただけだ・・・。」
其の拳を両手で握り締め、「にしし!」と明るい笑いを見せる。
「バカ・・・。 仕事中に私情を挟むな!!」
カウンセラーの考えている事が解り、照れ隠しに少し睨んで見せたのだが無意味だった様だ。 最高だと表情(かお)で告げて無邪気に言った。
「嬉しい癖に!!」
「ルフィっ!!??」
「うわ!! 魔獣が怒った!!!」
そして、何時もの様に「また始まった・・・。」と笑って見守る面々。
二人は戸籍上は兄弟、実際は生涯の伴侶として一緒に暮らしている。
カウンセラーはルフィ。 監督はゾロ。 とある実業団剣道部職員の二人。 此の剣道部は世間ではかなり有名で、大会の度にあれやこれやと新聞や雑誌やテレビで騒がれていた。
此処数年、上位を総なめにし続けている実業団。 どんな指導だろうと個人の道場経営者も見学に来る程である。
此の日の帰り道、助手席でルフィが問い掛けた。
「誕生日プレゼントに一番貰って嬉しい物って何だ?」
「あァ!?」
―――やっぱりか・・・。 必ず直球勝負だな・・・。
誕生日当日、本人に其処までハッキリ訊く人物も他には居ないだろう。 ゾロは可笑しいのを必死で堪えて何時もの様に質問に返した。
「だ〜か〜ら〜!! ゾロが貰って嬉しい物って何だって訊いてんだ!!」
唇を尖らせてブツブツと呟く姿が可愛くて、思わず笑んで頭を撫でるゾロ。
「気持ちだけで良いさ・・・。 ありがとな・・・。」
「むう! 其れじゃおれの気持ちは治まらねェぞ!!」
声を上げて幼子の様に暴れ出すルフィを宥める為、ウィンカーを出して路肩に止める。
「ルフィ・・・。 お前ェが傍に居てくれるならおれは本当に何も要らねェんだ・・・・。」
頬に手を宛い、ルフィの顔を自分に向けて口唇スレスレの処で囁くと、
「でも、おれは形になる何かを上げてェんだ・・・・。」
そう答えて瞼を伏せる。
―――参った・・・。 こうなるとテコでも動きやしねェな・・・。
大きな溜息を吐きたいが、そうする事でやりとりはエンドレスに続くであろう。 軽く口唇を合わせてから再度車を発進させて問い掛けた。
「それで・・・、何くれるつもりだったんだ?」
「思い付かねェから訊いてるんだ! あ、メシ食いに行こう! ハラヘッタ・・・。」
何時もの台詞が出て少し安心する。
「サンジの店で良いか?」
「いんや! 誰にも邪魔されたくねェから行くんなら他の店!! サンジんトコだと絶対冷やかしでナミも来ちまう!! 悪ィ奴等じゃねェんだけど、今日だけはゾロと二人っきりの空気を満喫してェよ・・・。」
何事にも正直で、何事にも真っ直ぐに言うルフィに嬉しくなる。
「じゃァ、部屋が一番じゃねェか?」
ゾロも率直に思った事を告げると「にしし!」と笑って返してくる。
「おう、そうだな! デリバリーしよう。 おれ、ピザとパスタと肉は絶対な!!」
「はいはい。」
「んで、勿論ゾロは酒要るだろ? 料理に合わせてワインか? 関係無しにスコッチか? 其れともバーボン? おれは“カシス・グレープ”な! 甘くてうめェよっ!!」
「了解!!」
結局、買い物三昧の末に両手一杯買い物袋を提げて帰宅した二人である。
ゾロが着替えを済ませて腰を下ろした瞬間、待ちかねた様に袋の中からある物を出して見せる。
「ゾロ!」
「何だ・・・?」
差し出された木箱を受け取りルフィを窺う。
「おれからのプレゼントだ。 ウィスキーの“ボウモア”だぞ!? 驚け!! 店のおっちゃんに一番高くてうめェヤツって聞いたからきっとゾロも気に入ると思ってさ! 今度の週末に父ちゃんと呑める様にもう一本買ってるんだっ!!」
木箱をもう一つ取り出して見せる。 ずっと喋り続けそうな勢いである。
「此ってすげェ高ェヤツだろうが・・・。 二本も買ったのか? 充分驚いた・・・。」
木箱の中の陶器と其のラベルを見てゾロの傍に座って言う。
「一年に一回の大切な日だぞ! こんな時くれェおれに金遣わせてくれてもイイだろ?」
「ありがとう・・・。」
其れ以上の言葉は思い付かない。 引き寄せて、唯抱き締めた。
「誕生日おめでとな、ゾロ・・・。」
微かな声と背中に回される手と擦り寄せる頬がまた嬉しくなる。
―――ルフィの事だ・・・。 恐らく此の数日間、現金を持ち歩いてたな・・・。
其の姿を想像すると、可愛いと口に出しそうになるが止める。
「ゾロ、食おう!」
途端に腕からスルリと抜けて、袋からあれやこれやと出してテーブルに並べ始める。
「ん? またムードブチ壊したか?」
振り返って自分の行動がいけなかったかと確認するので、少し意味深に笑んで頭を撫でて立ち上がる。
「否、其れは後でしっかりと堪能させて貰うから良い!」
「ゾロのエッチ!!」
声を押し殺して笑いながらグラスや氷などを取ってきてテーブルに置き、ルフィのカシス・グレープを作り始める。
「ゾロ、何時まで肩震わせて笑うつもりだ?」
目の前に置かれたカクテルよりも、かなりの空腹の自分の状態よりも、ずっと笑っているゾロの事が気になって仕方がない。 そう言った後もずっと笑い続けるゾロに少しカチンと来たルフィ。
「むう!! 笑えない様にしてやる!!」
ゾロの両頬を押さえてグイと自分に向けると、勢いよく口唇を合わせた。 が、勢いを付け過ぎたらしい。
「「イテっ!!」」
両者共、口を押さえて見合わせた。
「ぷっ!!」
「あ! また笑ったな!! もうイイ!!」
吹き出したゾロに、ぷいっと顔を背け怒っている。
「悪かった・・・。 此で良いか?」
ふわりと肩を抱かれて、ふわりと降りてきたのは何時もの優しい口唇だった。
「ん・・。」
―――ずりィ。 おれ、何も言えなくなる・・・。
言葉の代わりに、背中へと伸ばした両手でゾロの服を握り締める。
「ん、食おう!!」
テーブルに食事を並べ終わり、ゴキゲンになってゾロの膝に向かい合わせで座る。
「ルフィ?」
「何か問題あるか?」
突然の事でまた驚いてしまう。 多分今は自分の感情を思いっ切り顔に表しているだろうとも思う。 今まで食事中にだけはそうしなかったルフィであるのにと。
「ゾロ?」
「否、ねェな・・・。 こういうのも悪くねェ・・・。」
ニッ!と笑んで軽い口吻を落とす。
「過去最高の誕生日だ。」
ルフィへと心を込めてそう告げて、グラスを渡す。
「おう、其のつもりだ! おめでとう、ゾロ!!!」
「ありがとうな、ルフィ。」
互いのグラスを軽く合わせた後に少し口に流し込み、にしし!と照れ笑いの後に「ゾロ、あ〜ん♪」と大口を開けて待つルフィ。
「はいはい・・・。 どっちの誕生日が解りゃしねェ・・・。」
苦笑いを態と作り、ルフィの好物から順に運ぶ。
「んっめェよ!!! ゾロ!!!」
「ガキかよ。」
呆れて見せるが無意味である。
「以前(まえ)にガキのままで居ろって言ったのはゾロだ。 あ〜ん♪」
「計画犯め・・・。」
結局散々飲み食いさせて貰って満足し、ゾロが自分の腹を満たしている間に其のままの体勢で寝息を立て始めたルフィ。
「おい、其のまま寝るな!」
慌てて揺り起こすと、両腕を首に巻き付け囁いてきた。
「一番のプレゼント・・・。 ちゃんと、あるかんな・・・。」
「一番・・・?」
「そうだ・・・。 とっておきの一番だかんな・・・。 堪能・・しろ・・・。」
ほんのり色付いた頬をして、潤んだ眼をして間近でそう言う。
「そりゃまた嬉しいとっておきの一番だな・・・。」
クスリと笑って口唇を重ねる。
唯、「明日も仕事なんだが何処まで堪能出来るだろう。」とゾロが本気で考えた事は此の時のルフィは知る由も無かった。
今頃作成してどうするよ? なお話でスミマセン・・・<m(_ _)m>
はい、思いの外に嬉しいご感想を頂きまして調子に乗ったワタクシです(-_-メ)
実は続きもあるやもですが、其れはまたの機会にと言う事で(笑)
完結後の番外編はゾロの誕生日話で御座いました
お構いのない方、貰ってやって下さいまし<m(_ _)m>
20021117 SUN PM UP byM
*うひゃあですvv
もうもう大好きで、先が気になって気になって
通いつめて読ませていただいたあの『Adonis』の続編です。
しかもゾロ誕仕様でDLFvv
こんな大作の続編を惜しげもなく〜vv
ありがたく攫わせて頂きましたvv
相変わらずにイチャイチャしてますねィ。
シアヤワセオーラ全開ってとこですねvv
大事に読みます、ありがとうございましたvv
*………で。
このお話の大人様だけへの続きがございますvv
サイト内に新しく増設いたしました
“お姉様たちからの贈り物のお部屋”をお探しくださいvv

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