雨 あめ アメ




「雨の日は退屈だ」
キッチンの窓から外をじーっと眺めるルフィ。
セリフから分かるように現在外の天気は雨。
「本当にヒマだ〜」
ルフィの横でチョッパーも詰まらなそうに外を見詰める。
「さっきから何度目だよ、そのセリフ」
サンジが温かいミルクを二人の前に置く。
「だって詰まんねーんだもーん」
ゴクゴクと二人でミルクを飲む姿は海賊なんかにはまったく見えない。

ミルクを飲み終えたチョッパーはウソップと何かを作る計画を立て始め、
ルフィはしばらくボーっと二人を見ていたが急に席を立ってキッチンを後にした。
ルフィが向かったのは男部屋で、
薄暗い部屋のど真ん中でゾロが大の字になって寝ていた。
そのゾロの横へルフィもあお向けに寝転がる。
静かな部屋に天井から雨が打ち付けてくる音がよく響く。

ザーーーーーーーーーーーーーーーー………

目を閉じてみる。
目を閉じるともっと色んな音が聞こえてくる。
雨の打ちつける音、波が船にぶつかる音、
船が軋む音、風の音、時計の時を刻む音
自分の息をする音……自分の鼓動
そして隣で眠るゾロの寝息
少しだけ動いただけなのにやけに聞こえる服の擦れる音、床と擦れる音

小さな音さえ大きな音に聞こえる。
普段あまり気にしない音すら気になる。
そんな音を聞いているとだんだんと意識が薄れていく。
そしていつしか夢の中へ。

パチっと目が覚めた。
隣には寝始めた時には居なかったルフィがクウクウと気持ち良さそうに眠っている。
外からはまだ雨の音がする。
時計を見れば寝てからまだそんなに経っていない。
もう一眠り…といきたいところだがそんな気分でもないらしい。
ゴロっと身体を横にして隣で眠るルフィを見る。
ふと、ゾロは思い出す。
昔は雨なんか嫌いだったことを。
嫌なことばかり思い出すからだ。
けれど今はーーーーーーーーーー

「んー…」
小さく唸る声がして閉ざされていた瞼が開く。
「起きたか?」
「んー?おうゾロ!」
目を擦りながらゾロに視線を向ける。
「………」
「静かだな〜」
「そうだな」
その後は会話なんかなくてただ二人の間に沈黙が訪れる。
けれどもそれは決して嫌なモノではなく、温かい沈黙だった。
側に居てもいいという事。
自分の居場所。
安心できる場所。
二人の間にはそういうものがある。
だからただ黙って時間が過ぎるのを待った。


雨の日は時間が進むのが遅い。





DORAサマ、一周年記念(02.08.08.)DLF


 *立ち込めるは、静寂、静謐。
  雨音さえもが他の音に蓋をして回る“カーテン”になる。
  DORAサマは、情景描写がお上手で、
  色々な“静か、静けさ”と、それへと向かい合うルフィを、
  何ともやさしく描いてしまわれる。
  こんな日もたまには良いねと、
  顔を見合わせている二人が浮かんできます。
  で…またまた勝手にいただいてきてしまいましたvv

  DORAサマ、本当にありがとうございましたvv


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