―――今日は一体如何したんだ?
トレーニング中にふと思う。
―――近くであろうが遠くであろうが、必ずおれから見える範囲に居るアイツが見当たらねェ・・・。
後甲板に居たゾロは不意に手を止め、気になる人物を探し始めた。 直ぐに何時もの様に、何時もの場所で、何時も通りに座っている目的人物を発見出来た。 が・・・、其の後ろ姿は何処か何時もとは違うと感じる。
「ルフィ?」
近寄って呼び掛ける。
「ん・・・?」
振り向いた若き船長を見て、やはり変だと感じる。
「如何した?」
静かに訊いてみると曖昧な返事。
「ん・・・、んーーー。 解んねェ・・・。」
直ぐに前を向いて、帽子を深く被り直してしまう。
「ルフィ、ちょっと来い!!」
其の態度が気に食わないと思うと同時に船首に上り、胴体に手を回して引きずり降ろした。
「わっ! 何だよ、ゾロ!!」
「何だよじゃねェ! 来いっつってんだ!!」
ジタバタと暴れていたルフィだったが、有無を言わさずのゾロの態度を見て大人しくなる。 ルフィを脇に抱えて甲板に降り、其のまま歩き出すゾロ。
「むう、ガキじゃねェんだ。 一人で歩けるよ。 降ろせって!」
ぷくうっと膨れっ面になる辺りはやはりガキだとゾロは思う。 無言で中甲板のマスト前に座らせ、自分も正面に腰を下ろす。
「ルフィ、何隠してやがる。 一体何を拗ねてんだ?」
「拗ねてんじゃねェよ。 唯、・・・・・・。」
口籠もってまた俯いてしまうルフィから帽子を剥ぎ取り、自分の愛刀と一緒に置く。 そして、ルフィの表情を確認する為に顎をクイと上げて自分に向かせる。
「顔見せて言え! 何だって?」
「上手く言えねェ・・・。 でも、詰まんねェし自分が悔しい・・・。 ゾロが遠くて・・・・・。」
「あァ!?」
何を言いたいのだろうと少し考えてみる。 深い意味で“遠い”と言った事だけは判ったゾロである。
「ルフィ! おれ達の心は何時も傍にあるんじゃねェのか? 其れが遠いって・・・!?」
突然理解し、立て膝になって力一杯にバン!とルフィが凭れているマストに両手を付くゾロ。 其れはルフィの顔の横で絶対に逃がさないという様にわなわなと震えている。
「だって、ゾロは世界一の剣豪になるんだ! トレーニングは其の為の努力だろう? おれが邪魔しちゃいけねェと思ったんだ。 でもそう考えると、如何してもゾロが遠くなって行く気がした・・・。 おれは独りだと思っちまった・・・。 だから、置いて行かれない為におれは何をすべきか、おれが目指すものは何だったかを再確認してたんだ。 勿論大切な夢を忘れてた訳じゃねェよ!! おれは海賊王になる男だっ!!!」
鋭い目つきで言うルフィは、まるでゾロにケンカを売っている様でもあった。
「アホか? お前・・・。」
溜息を吐いて両手の力を緩める。
「出逢った時、お前言ったじゃねェか・・・。 海賊王の仲間なら世界一の剣豪くらいなって貰わないと困るってよ・・・。 其れにおれも約束しただろう? 二度と敗けねェってよ・・・。」
「うん・・・。」
同じく鋭い目つきのゾロを見上げたまま静かに返す。
「細けェ事考えんな! 海賊王と大剣豪!! 其れだけで充分だろうが・・・。」
そう言ってゾロの顔が近付いて来る。
「うん・・・。 そだな、ゾロ・・・・・。」
瞳を閉じて、迎える・・・。
「で・・・、詫びはねェのか? ルフィ・・・。」
ゆっくり離れた口唇の端が上がってそう訊いて来た。
「詫び? あ、ごめん・・・。 おれ、変だった・・・。」
「違ェって・・・。」
また溜息を吐くゾロに問うてみる。
「んじゃ、『おれを好きになってくれてありがとう』か?」
「そりゃ詫びじゃねェだろうがっ! 言葉じゃねェ・・・。 こっちの詫びが欲しい、ルフィ・・・。 おれを其の気にさせた詫びがな・・・?」
「おう、良いぞ!! ゾロになら何時でも幾らでも・・・・・・。」
ゾロの指が自分の髪を梳いて来たからやっと理解して・・・、今度は自分から口唇を重ねる。
そして・・・、未来の大剣豪は手足を絡めてしがみついて来る未来の海賊王を抱えて、愛刀と帽子を拾って立ち上がり、二人きりになれる場所へと姿を消した・・・。
諦めねェ! 敗けねェ! 必ず此の手に掴み取る!!!
共に掴む、それぞれの野望(ゆめ)!
愛しい人と共に生きる。 明日へ向かって全力で!!!
Fin.
2002.10.15. THU PM UP byヒロ
*ヒロ様のサイト“WITH”さんにて、
10,000hit突破の御礼DLFとされてらした作品を掠め取ってまいりました。
相変わらず、一本気な二人で、そこがまたおステキでございますvv
棚から牡丹餅、嬉しいプレゼントをありがとうございましたvv

|