「あの日の事は、忘れられる訳がねェ!!」
そう言ってくれたから、嬉しくて・・・


 Anniversary


 此の日は朝からソワソワしているルフィだった
 皆、最初は不思議に思ってそれぞれ問うたのだが、
「何でもねェ!」
の一言しか返って来ないから、誰も其れ以上深くは追求しなかった  だが、唯一人近寄りがたい空気を醸し出しているルフィに近付く・・・



「ルフィ、皆が心配している・・・  珍しくおめェが考え込んでるってな  何かわりィモンでも食ったんじゃねェかとか病気なんじゃねェかとかうるせェから、そういう顔は止めろ!」
 ゾロは少し不機嫌そうに言うが、自分に対して怒っている訳ではないとルフィは知っている
 先程までキッチンに居たのだが、皆から質問の嵐攻撃を受けて返事をするのが面倒になり後甲板に移動したと言うゾロだった
 ―――確かにおれは此の間から今日という日が来るのを待ちわびていた  でも、そんなに解り易い態度だったか?  「アンタの考えなんかお見通しよ!」って言うナミが一番しつこく訊いて来てた  うん、未だ誰にもばれてねェ!  必死で隠してたかんな!
「さっきから何百面相してんだよ!?」
首を左右に傾げながら何を考えていると頭をガシガシと揺らして来る相棒に少し含んだ笑いを見せて返す
「にしし!  未だ内緒だ!!  時間が来たら教えてやる!!」
「あ?  あァ、時間か・・・  まァ、そうだろうな・・・」
「んん?」
 ―――「そうだろうな」ァ?
ゾロが言った途端にルフィの顔付きが「むう!」と変わり、恨めしそうな眼で見上げて突っ掛かる
「ゾロはそうやって、いっつも余裕だ・・・  口惜しい・・・  ずりィぞ!?  おれの何歩も先を行くなよ!!」
「そういう風に考えられるとは意外だったな・・・  おれはそんなに余裕かましてるか?」
心外だと言いながらルフィをふわりと包み込む  漂う香りと伝わって来る体温に安らいで、目の前の胸に頬を付けて浸る
「此処、ホッとする・・・」
「おれもルフィが此処に居ると落ち着く・・・」
何時も嬉しい言葉をくれるゾロと、今日という日のある時間だけは望む場所で過ごしたくたくなる
「ゾロ!  おれ、ナミのトコ行って来る!!」
「解った」
何時も言葉少ない自分の全てを理解してくれる  嬉しさと好奇心とを抑え切れなくて狭い甲板を走ってナミの居るキッチンまで移動した

「ナミ!  あとどれ位で島に着くんだ?」
 突然扉が開いたと思ったら、何やら切羽詰まった様な顔で其処に立っている
「そうねえ、気候が安定して来たからあと1時間で着くんじゃないかしら  でも今回は冒険は絶対ダメよ!!  物資調達だけだからね!!」
キツい眼で窘めるナミに返す
「ん〜?  ゾロと少し散歩するだけなら良いだろう?」
「散歩!?  アンタとゾロが其れだけで終わるとは思わないけど・・・」
「今日だけは譲らねェぞ!?  行くっつったら絶対行くかんなっ!!」
珍しく一歩も退かないルフィの態度に驚くナミ  紅茶を持ってテーブルに近付いて来たサンジも疑問に思い声を掛ける
「オイオイ・・・  おめェ、今日は本当に変だぞ?  メシ食う時も食いっぷりが悪いって言うか上の空って言うか・・・  何時ものクソ元気さは一体何処行ったんだよ!」
ナミとロビンの前にそれぞれカップを置いた後、少し挑発してみるが思った通りの反応ではない
「おれは元気だぞ!  でも、今日だけは散歩に行きてェんだ  夕方までには絶対ェ帰る、ケンカもしねェし冒険もしねェ!  だから良いだろ?」
 冒険をしたいと言う時の顔ではなく、今まで見た事のない真剣な表情である  何かは判らないがとても重要な事があるらしいと判断したナミは其れ以上反対が出来なくなってしまった
「解ったわ・・・  本当に夕方までよ?」
「おう、さんきうなっ!!」
溜息を吐きながらナミが言うと、満面の笑みになって何時ものお子さまルフィに戻ってキッチンから飛び出し、甲板に居るだろうゾロの所へパタパタと走って彼を呼ぶ
「ぞ〜ろ〜っっ!!」
ナミもサンジもウソップもチョッパーもロビンもクスクス笑い出してしまう  何かに付けてする報告は何時もの事で、でも、今回だけは特別だと解る態度である
「何故理由を訊かなかったの?」
ロビンが不思議そうにナミに質問すると、カップを持ちながら笑って言った
「訊いちゃいけない事だと思ったから  ゾロにしか解らない事で、ゾロとだけ共有したい時間があるみたいだったもの」
「特別な日みたいだな、今日は・・・」
「うん、秘密の匂いがしたぞ!」
ウソップとチョッパーも言うと、サンジもタバコを取り出し火を付けながらこう言う
「おれ達にゃ入って行けねェ世界だろうな・・・」
「なる程ね・・・」
何かは解らないが、今日だけは好きにさせてやろうという事になった

「はい、此あんた達のね」
 上陸前にナミからお金を受け取る
「おう!? メシ、食って来て良いのか?」
「良いけどそこそこにしといてよ?  サンジ君が夕食は豪華にするって言ってたからね」
ワクワクを隠せないルフィに笑って言うと、不思議顔をする
「今日、ナミ変だぞ!?  妙に優しくねェか?」
「あんたの変なのが伝染したかもね」
「おれは何時だってまともだ!」
腰に両手を当ててふんぞり返ってそう言うと何時もは拳骨が振り下ろされるから身構えたのに、何事もない
 ―――やっぱ変だよな・・・
そうは思うが、此以上考えてもきっと自分には解らないと判断し、何時もの「ま、いっか!」の言葉が出る
「あ、ルフィ!  解ってるとは思うけど、自分達が賞金首だって事は忘れないでよ?  絶対揉め事も起こしちゃダメだからね!?」
「解ってるって!!  んじゃ行って来る!!」
元気に言って下で待っているゾロの隣にヒラリと飛び降りた



 ゾロにお金を渡して説明するとやはりゾロも不思議に思ったと言う
「へェ・・・  どういう風の吹き回しだ?」
「解んね  けど何か機嫌良かったぞ!」
 ―――雨が降らなきゃ良いがな・・・
ナミが変に優しいという事で勘ぐったゾロは、誰かに後を付けられていないかと振り返る  其れを見たルフィが
「多分な、今日は邪魔されねェと思うぞ!  何となくカンだけどな」
と、言う
「あァ、そうだと良いな・・・」
そうは言うが、如何しても警戒してしまう
「別にイイじゃんか!  其れより急ごうっ!  先メシだかんな!」
突然ルフィが走り出し、ゾロが後を追う  そして、珍しく迷わず辿り着いた目的地  食べ物に対してだけは方向音痴にはならないらしい
 其の後、たらふく食べて本当の目的地へ行く  塀によじ登り敷地内を見渡すルフィ
「ゾロっ!  あの場所にそっくりだ!!」
「あァ  そうだな・・・  何処でも大して変わらねェモンだが此処まで似てるとは思わなかった」
 其処は海軍基地  二人が出逢った場所の風景其のものと変わらない  本当は出逢った場所に行きたかったのだが、現在の状況で行く事は不可能である
「あの場所にゾロが居てさ、おれがロープ解いたんだよな」
「そしておれは海賊になった」
「ん!!  近くまで行ってみよう!!」
懐かしくて、想いが沢山の磔場  あの頃からずっと一緒に居た自分達  あの出逢いがなければどうなっていただろう
「よっ!!」
ピョンと飛び降りて走る  考える前に身体が動く
「気を付けろ!  捕まっちまったら洒落になんねェぞ!?」
「ゾロも来〜〜い!!  もうじきあの日と同じ時間になる!!」
まるで遠足に来た子供である
「ったく、なァ・・・」
やれやれと言いつつもルフィの傍に行き問い掛ける
「楽しいか?」
「おう、楽しくてしやわせだ!」
笑っていたが不意に真面目な顔になる
「ゾロ、おれと出逢ってくれてありがとうな」
「何言ってんだよ  突然・・・」
「今日の此の時間に言いたかったんだ  一番最初に仲間になってくれたし、一番おれの事解ってくれるし、ずっと感謝してる」
「本当に如何したよ  やけにしおらしいじゃねェか  らしくねェって!」
「今日という日を来年もまた次の年もゾロと一緒に此の時間を過ごしてェっておれが言うと変か?」
「否、そうじゃねェ・・・  おれから言おうと思ってた事だからな・・・」
ゾロが何を言わんとしているかを考えて小首を傾げる  頭をガシガシ掻きながら照れているのは何故だろうと・・・
「ゾロ?」
「おれが此の日を忘れる訳ねェだろうが!  あの日の事は、忘れられる訳がねェ!!」
ぱぁっと明るくなった顔をして掻き付いて来る  いきなりだったがちゃんと受け留めてくれたゾロに微笑む
「ルフィ!?」
「しししっ!!  ゾロ、大好きだ!!  此からもヨロシクなっ?」
「あァ、勿論だ!」
「にっしっし!」
望む言葉をくれるから、嬉しさが込み上げる

「其処にいるのは誰だ!?  勝手に入られちゃ・・・って、お前は麦わらのルフィ!!  そっちはロロノア・ゾロじゃねェか!!」
 声のする方を見ると、海兵が立っていた
「ヤベっ!  見付かった!!」
突然の事に呆然となり次の行動に移れない海兵  面食らうのも当然だろう  まさか1億ベリーと6千万ベリーの賞金首がこんな場所に来るとは思っていなかったのだから
「行くぞ!!」
「おう!!」
 海兵を後目(しりめ)に走り出す  そして、大勢の海軍を引き連れて船に戻ってしまい後でナミに大目玉を食らった二人であった





 一緒に進むと誓った日
 今日はおれ達の出逢い記念日










皆さまのお陰様で、旧クソダサイト「SHARE(シェア)」立ち上げから1年が経ちました
有り難う御座います〜(涙)
マジっスか!?  本当に1年経ったですか??(嘘みてえ・・・)
即行で書き上げて未チェックιιιという相変わらずのクソ駄文ですが、貰ってやって下さる方はどうぞです
今後も頑張りますので、どうか宜しくお願い致します<m(_ _)m>

20030303 MON PM UP   byM


ヒロ様、サイト開設一周年、おめでとうございますvv
ご自身が大変な時でもそれをそうと悟らせず、
それはお元気なルフィを書き続けていらした、ファイト溢れる方で、
Morlin.も随分と御世話になっておりますです。
記念日や御誕生日も大切になさる方だし、
細やかな心遣いがまた、真似出来ないくらいサービス満点。
これからもどうかよろしくですvv


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